ゲスト
(ka0000)
【東幕】虎の胃に入る狐
マスター:紺堂 カヤ

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/11/28 22:00
- リプレイ完成予定
- 2018/12/10 22:00
オープニング
今回の仕事もなかなか骨が折れた、と、若き忍は息をついた。たった今、報告を済ませてきたばかりの仕事のことだ。あの客の仕事は常にひと癖もふた癖もある。しかし、苦労と危険に報いるだけの払いはしてくれる客だ。そうでなければ、とっくに契約を切っている。
(そもそも契約するだけでも危ない客だっての)
胸中で毒づく。支払いのよい客とは、つまりはそういうものだ。そんなことは百も承知で、別に不満はない。
若き忍──月白(ゲッパク)は、旅商人姿で街道を急いでいた。実際に急いでいるかどうかは問題ではない。怪しまれないためには必要最低限のことだ。のんびりした足どりで暢気に歩いている商人など存在しないのだから。
急いでいるかどうかはともかく、忙しいことは事実だった。裏稼業である忍の仕事も、表立ってやっている仕事も、どちらもやることは山積みだ。
(加えて、気になることもあるし……)
歩みを緩めぬままに、月白は考え込んだ。裏稼業の折に耳に入ってきた噂のことだ。近頃、登箭城下によく当たる占い師が来ているらしい、という噂で、それは静かに、しかし妙な期待を持って語られていた。それがどうも月白には気になって仕方がなかった。
(良い方向に、か、悪い方向に、か……それすらもまだわからないが、捨て置けないことは確かだ)
後ろ暗い世界に身を置く者特有の「勘」というやつかもしれなかった。探っておかない手はない。今後、どう仕事に繋がっていくか知れないのだ。忙しい間を縫って情報収集してこそ、この世界では生き残ってゆける。
探り方をどうしようかと考えているうちに、月白は街道を抜け、人通りの少ない道へと入って行った。そこからさらに細い道へ入り、暗い森へ続く方向へと足を向けると、周囲にたっぷりと注意を払ってから、サッと森の木々の中へ姿を消した。
(近道、近道っと)
実はそう近道になるわけでもないのだが、どうせ追手を巻かなければならないことを思えばこうするのが一番の近道だ。
そう、月白は自分がつけられていることをしっかり感じ取っていた。それも、複数に。そのほとんどは、振り切れたはずだ。
(ったく、ここのところ有名になっちまったからな、俺も。有名な忍なんて忍の価値を落としかねないってのにさ……、優秀すぎるのも考えものか……なんてな)
森へ入ったのと同時に目にもとまらぬ瞬間技で旅商人姿から黒装束に替えた月白は、樹の上を飛びまわり、風のように森を駆け抜けてゆく。
これで、僅かに残っていた追手もすべて振り切れた。と、そのとき。
(ん……?)
月白の視界の端に、不可解な動きをするものが映り込んだ。足を止めて目を凝らすと、深くえぐれた溝に、一匹の狐がいた。不可解な動きだと思ったのもそのはずで、狐はそこから這い上がれずにもがいているのだった。
(うーん、このままじゃあ命はないな、あの狐……、ほぼ穴と言ってもいいくらいの溝だし……、仕方ない、助けてやるか)
見つけてしまったものを放置していくのは寝ざめが悪い。
「よいしょっと、さ、こっちへ来いよ。怖がらなくていい。……そう、いいこだな」
月白は溝へ降り、口を覆う布を外してそっと笑いかけ、狐に手を差し伸べた。ずいぶん深くまで追って行ってようやく、狐は月白へ近付いてくる。と。
ガシャン!!
金属の音が、した。したと思ったら。
「!? しまっ……」
狭い溝の入口は、驚くほどに頑丈な金網で塞がれてしまったのだった……。
「やられたな……」
月白は、金網をぐい、と押してみて呻いた。とてもひとりで動かせそうにない。周りの土を掘れば出れないこともないかもしれないが、なにせ妙な形にえぐれた溝である、不用意に掘ればたちまち生き埋めになるだろう。
「ったく……、つけてた奴らに偶然見かけられちまった、ってところか。それにしても卑怯なことしやがる」
月白の隙をついて攻撃せず、わざわざここへ閉じ込めたということは、月白と戦って勝つ自信が相手にはなかったからだろう。たとえ隙を突かれても何人で襲われたとしても、月白は滅多な相手に負けを取ることはない。それだけの腕を、持っているのだ。
「卑怯上等だ」
月白はニヤリと昏く笑うと、紙と筆を取り出し、さらさらと何か書きつけた。最後の署名を、少しだけ迷って、月白とは違う名前を書く。
「……まさか忍がハンターに依頼を出すわけにいかないよな」
自嘲気味にそう呟いて、月白は懐から伝書鳩を一羽出した。緊急の時の為にいつも連れているのである。長時間懐に隠されていても問題ないよう、訓練されている鳩だ。金網の隙間も、この鳩であればすり抜けて飛び立てる。
「頼むぜ、助けを連れてきてくれ」
手紙を鳩の足に縛り付けて放ち、月白はふう、と息をつくと黒装束の姿をまた着替えた。商人の姿……、それも、顔を一切隠さぬ少年商人の姿に。
「ま、なんとかするしかないよな」
手紙の最後に記した名前は、史郎。
「もうちょっと辛抱してくれよ」
史郎は、ともに閉じ込められてしまった狐の背中を優しく撫でた。
(そもそも契約するだけでも危ない客だっての)
胸中で毒づく。支払いのよい客とは、つまりはそういうものだ。そんなことは百も承知で、別に不満はない。
若き忍──月白(ゲッパク)は、旅商人姿で街道を急いでいた。実際に急いでいるかどうかは問題ではない。怪しまれないためには必要最低限のことだ。のんびりした足どりで暢気に歩いている商人など存在しないのだから。
急いでいるかどうかはともかく、忙しいことは事実だった。裏稼業である忍の仕事も、表立ってやっている仕事も、どちらもやることは山積みだ。
(加えて、気になることもあるし……)
歩みを緩めぬままに、月白は考え込んだ。裏稼業の折に耳に入ってきた噂のことだ。近頃、登箭城下によく当たる占い師が来ているらしい、という噂で、それは静かに、しかし妙な期待を持って語られていた。それがどうも月白には気になって仕方がなかった。
(良い方向に、か、悪い方向に、か……それすらもまだわからないが、捨て置けないことは確かだ)
後ろ暗い世界に身を置く者特有の「勘」というやつかもしれなかった。探っておかない手はない。今後、どう仕事に繋がっていくか知れないのだ。忙しい間を縫って情報収集してこそ、この世界では生き残ってゆける。
探り方をどうしようかと考えているうちに、月白は街道を抜け、人通りの少ない道へと入って行った。そこからさらに細い道へ入り、暗い森へ続く方向へと足を向けると、周囲にたっぷりと注意を払ってから、サッと森の木々の中へ姿を消した。
(近道、近道っと)
実はそう近道になるわけでもないのだが、どうせ追手を巻かなければならないことを思えばこうするのが一番の近道だ。
そう、月白は自分がつけられていることをしっかり感じ取っていた。それも、複数に。そのほとんどは、振り切れたはずだ。
(ったく、ここのところ有名になっちまったからな、俺も。有名な忍なんて忍の価値を落としかねないってのにさ……、優秀すぎるのも考えものか……なんてな)
森へ入ったのと同時に目にもとまらぬ瞬間技で旅商人姿から黒装束に替えた月白は、樹の上を飛びまわり、風のように森を駆け抜けてゆく。
これで、僅かに残っていた追手もすべて振り切れた。と、そのとき。
(ん……?)
月白の視界の端に、不可解な動きをするものが映り込んだ。足を止めて目を凝らすと、深くえぐれた溝に、一匹の狐がいた。不可解な動きだと思ったのもそのはずで、狐はそこから這い上がれずにもがいているのだった。
(うーん、このままじゃあ命はないな、あの狐……、ほぼ穴と言ってもいいくらいの溝だし……、仕方ない、助けてやるか)
見つけてしまったものを放置していくのは寝ざめが悪い。
「よいしょっと、さ、こっちへ来いよ。怖がらなくていい。……そう、いいこだな」
月白は溝へ降り、口を覆う布を外してそっと笑いかけ、狐に手を差し伸べた。ずいぶん深くまで追って行ってようやく、狐は月白へ近付いてくる。と。
ガシャン!!
金属の音が、した。したと思ったら。
「!? しまっ……」
狭い溝の入口は、驚くほどに頑丈な金網で塞がれてしまったのだった……。
「やられたな……」
月白は、金網をぐい、と押してみて呻いた。とてもひとりで動かせそうにない。周りの土を掘れば出れないこともないかもしれないが、なにせ妙な形にえぐれた溝である、不用意に掘ればたちまち生き埋めになるだろう。
「ったく……、つけてた奴らに偶然見かけられちまった、ってところか。それにしても卑怯なことしやがる」
月白の隙をついて攻撃せず、わざわざここへ閉じ込めたということは、月白と戦って勝つ自信が相手にはなかったからだろう。たとえ隙を突かれても何人で襲われたとしても、月白は滅多な相手に負けを取ることはない。それだけの腕を、持っているのだ。
「卑怯上等だ」
月白はニヤリと昏く笑うと、紙と筆を取り出し、さらさらと何か書きつけた。最後の署名を、少しだけ迷って、月白とは違う名前を書く。
「……まさか忍がハンターに依頼を出すわけにいかないよな」
自嘲気味にそう呟いて、月白は懐から伝書鳩を一羽出した。緊急の時の為にいつも連れているのである。長時間懐に隠されていても問題ないよう、訓練されている鳩だ。金網の隙間も、この鳩であればすり抜けて飛び立てる。
「頼むぜ、助けを連れてきてくれ」
手紙を鳩の足に縛り付けて放ち、月白はふう、と息をつくと黒装束の姿をまた着替えた。商人の姿……、それも、顔を一切隠さぬ少年商人の姿に。
「ま、なんとかするしかないよな」
手紙の最後に記した名前は、史郎。
「もうちょっと辛抱してくれよ」
史郎は、ともに閉じ込められてしまった狐の背中を優しく撫でた。
解説
■成功条件
閉じ込められた史郎(月白)を救出する。
■森の状況
背の高い針葉樹が多い森。
地面には起伏が多いうえに、下草が生い茂っているためその起伏がわかりにくい。
史郎と狐が閉じ込められている溝は、横穴に近い状態のもので、入口は直径50センチほど。
入口にはめられた金網は重さ推定100kg、厚さ5cm、網の目はひとつ2cm四方で空いている。上部にワイヤーがかけられており、近くの樹木にワイヤーを伸ばして結びつけるかたちで固定されているとみられる。
森に今も史郎をつけていた連中がいるかどうかは不明。
史郎が閉じ込められた時点で時間はほぼ正午。鳩がハンターオフィスに辿り着くのはその一時間後とする。なお、ハンターオフィスから森の該当場所までは徒歩三時間かかる。
※閉じ込められている場所については手紙に地図がついており、ここまでは迷うことなく辿り着けるものとする。ただし、道中で襲撃に遭う危険性については不明。
■その他
「月白=史郎」はPL情報。
閉じ込められている状況を史郎は「商売の途中で道を間違え、狐を見つけて助けたらなぜか閉じ込められた」と依頼の手紙で説明している。
(質問には可能な範囲で史郎が回答します。出発の24時間前までにお願い致します)
閉じ込められた史郎(月白)を救出する。
■森の状況
背の高い針葉樹が多い森。
地面には起伏が多いうえに、下草が生い茂っているためその起伏がわかりにくい。
史郎と狐が閉じ込められている溝は、横穴に近い状態のもので、入口は直径50センチほど。
入口にはめられた金網は重さ推定100kg、厚さ5cm、網の目はひとつ2cm四方で空いている。上部にワイヤーがかけられており、近くの樹木にワイヤーを伸ばして結びつけるかたちで固定されているとみられる。
森に今も史郎をつけていた連中がいるかどうかは不明。
史郎が閉じ込められた時点で時間はほぼ正午。鳩がハンターオフィスに辿り着くのはその一時間後とする。なお、ハンターオフィスから森の該当場所までは徒歩三時間かかる。
※閉じ込められている場所については手紙に地図がついており、ここまでは迷うことなく辿り着けるものとする。ただし、道中で襲撃に遭う危険性については不明。
■その他
「月白=史郎」はPL情報。
閉じ込められている状況を史郎は「商売の途中で道を間違え、狐を見つけて助けたらなぜか閉じ込められた」と依頼の手紙で説明している。
(質問には可能な範囲で史郎が回答します。出発の24時間前までにお願い致します)
マスターより
ごきげんいかがでしょうか。紺堂でございます。
……才能のあるひとってのは、大変でございますねえ……。
さて。美少年商人の救出をお願い致します。成功条件はあくまでも「閉じ込められた史郎の救出」です。これ以上を語りませんが、どうぞお間違えのなきよう……。
あ。知らなくても全然、かけらも問題ありませんが、紺堂が説明したかったのでさせていただくと、タイトルの読み方は「とらの いに いる きつね」です!
……才能のあるひとってのは、大変でございますねえ……。
さて。美少年商人の救出をお願い致します。成功条件はあくまでも「閉じ込められた史郎の救出」です。これ以上を語りませんが、どうぞお間違えのなきよう……。
あ。知らなくても全然、かけらも問題ありませんが、紺堂が説明したかったのでさせていただくと、タイトルの読み方は「とらの いに いる きつね」です!
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/12/04 21:42
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ジュード・エアハート(ka0410) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/11/28 18:37:49 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/28 17:49:32 |