ゲスト
(ka0000)
【空の研究】牡丹雪が降る前に
マスター:紺堂 カヤ

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/01/04 15:00
- リプレイ完成予定
- 2019/01/16 15:00
オープニング
アメリア・マティーナ(kz0179)は今にも雪の降りだしそうな曇天の下にいた。ぴりぴりと寒気が体を刺す。
「……何かをはっきりさせるには、あまり似合いでない天気かもしれませんねーえ……」
黒いローブのフードをすっぽりとかぶったまま、そう呟いてアメリアはひとり歩いてゆく。
似合いではない、などとは実に勝手な言い分だ。アメリアは呟いたばかりの自分の言葉に苦笑する。天気とは、空が作り出すもので、空にとって人間の都合など知ったことではない。何にもとらわれずにすべてを超越して存在している……、それが、空だ。
だから、その空を人間の都合のよいように利用しようとする『空の研究』は、本当は触れてはならない領分に手を出した、禁忌の研究であるのかもしれない。
「そうであるとわかっていても、私はこれしか、できないのですけれどねーえ」
自嘲気味にアメリアはため息をついて、小さな家へ近づいていった。
ここには、ひとりの女性を住まわせて……いや、率直に言えば「軟禁して」いる。その女性は、アメリアの従姉妹……、シェーラ・チェーロだ。
シェーラは、ことあるごとにアメリアと空の研究所の活動を邪魔してきた張本人である。アメリアの策によって捕らえることができたものの、何を尋ねても黙ったままで、行動の理由がわからぬままだったのである。また邪魔をされてはかなわないし、かといって厳罰に処すこともできずにただとどめておくしかなかった。
だが。
「私は、研究者ですからねーえ。わからないことを、いつまでもそのままにしておくわけにはいかないのですよーお」
アメリアは、小屋の扉を開いた。
何の感情も見せぬ瞳で、シェーラは姿勢よく椅子に座り、アメリアを見据えた。アメリアもそれに対して少しの動揺も見せず、シェーラの真正面に椅子を置き、向き合って座った。
「今日はひとつ、仮説を聞いていただきましょうかねーえ」
穏やかな口調で、アメリアは語り始めた。シェーラは何の反応も返さない。だが、アメリアはそれを意に介さなかった。
「シェーラ、あなたがなぜ私や空の研究所の邪魔をしてきたのか、私にはわからなかったのですよーお。わかりませんでしたから、知りたいと思いましてねーえ。それを知るために、あなたのことについて、調べさせていただきましたよーお。ずいぶんと、手間はかかりましたけれどねーえ」
アメリアは、ハンターの力を借りてシェーラの実家であるチェーロ家について調べたあとも、自分の研究の傍ら、独自に調査を続けていたのである。チェーロ家はアメリアの母の実家でもある。つまり。
「あなたについて調べることは、意図しないところであったとはいえ私自身のルーツを知ることでもありました」
そう、アメリアは、自分自身についてもずいぶんと調べることになったのだった。これまで、アメリアが特に知りたいとも思わなかったことだった。アメリアにとって「知る価値、解明する価値のあること」はほとんど「空に関すること」だけだ。
「私の母は、何らかの事情でチェーロ家と疎遠になった……、それは私も知っていましたよーお。その事情が何だったのかは、調査しても出てきませんでしたがねーえ。しかしひとつわかったことがあります。母は、チェーロ家でも将来を嘱望された優秀な学者候補だったようですねーえ。そう、兄に妬まれるほどに。母の兄……私にとっては伯父、あなたにとっては父となる人ですねーえ……」
アメリアは、その伯父についてほとんど何も知らない。
「シェーラ。あなたは、父親に命じられたのでは? 私を、殺せと」
率直に、アメリアが告げた。これは、ハンターの手を借りてチェーロ家を調査した際に得られた情報だった。これを聞いてもシェーラは、是非を答えず、微動だにすらしなかった。アメリアは構わず続けた。
「私の母は結局、学者として大成することはありませんでした。けれど、娘である私は、研究者となった……、空の研究所を設立し、王国の承認を得た……、シェーラ、あなたの父は、それが気に入らなかったのではありませんかねーえ?」
アメリアが、そこで言葉を切ると。しばらくの沈黙ののち、シェーラは、はーっ、と大きくため息をついた。そして。
「……半分、正解ね」
「半分、ですか」
「今、あなたが話したことは、すべてそのとおりだわ。でも、もう少し、足らないの。私が父に命じられていたのは確かだわ。だけれど、父の思惑とは別に、私の考えもあったのよ。……それが、あなたにわかって?」
「……いいえ、残念ながら」
「でしょうね」
シェーラはまたため息をついた。
「答えを、教えてあげてもいいわ。ただし、もう少し仮説を持っていらっしゃい。そしたら私は本当のことを話す。そして、もうあなたの邪魔をしないと約束もしてあげましょう」
「ふうむ……。誰かの知恵を借りても?」
「いいでしょう。どうせ、もう、あなたにはこれが限界でしょうし」
シェーラが、あきらめたように肩を落とすのを、アメリアは苦笑して眺めた。
「すみませんねーえ。では、もう少し、待っていていただきましょう」
アメリアがシェーラの部屋から出てくると、そこには空の研究所の研究員であるキランと、職員であるスバルが待っていた。ふたりとも、中の様子をうかがっていたらしい。キランは憤慨している。
「被害者はこっちだってのに、なんであんな偉そうなこと言われなくちゃならないんだよ!?」
「まあまあ」
アメリアが苦笑してキランをなだめた。
「おそらく、シェーラには折れるためのきっかけが必要なのですよーお。その証拠に、彼女は『正解を示せ』ではなく『仮説を持ってこい』と言いましたからねーえ」
「では、正解を出さずとも、理由を話してくれる、と?」
スバルが心配そうに尋ねる。ええ、とアメリアは頷いた。
「私は、他人の気持ちを推し量るのが苦手ですからねーえ。被害者は確かにこちらではありますが、きっと彼女も傷ついているのでしょう、なぜだか、わかりませんが。……ですので、ここはひとつ、皆さんの知恵を借りることにしましょうかねーえ」
「ったく、面倒くせえ女だなあ」
キランがぼやき、スバルが笑った。
「そうですねーえ。人とは本来、面倒くさいものなのでしょうからねーえ。……ああ、上手くいけば、皆でゆっくり、雪見でもできるかもしれませんねーえ」
アメリアは、窓の外、相変わらずの曇天を眺めて、呟いた。
「……何かをはっきりさせるには、あまり似合いでない天気かもしれませんねーえ……」
黒いローブのフードをすっぽりとかぶったまま、そう呟いてアメリアはひとり歩いてゆく。
似合いではない、などとは実に勝手な言い分だ。アメリアは呟いたばかりの自分の言葉に苦笑する。天気とは、空が作り出すもので、空にとって人間の都合など知ったことではない。何にもとらわれずにすべてを超越して存在している……、それが、空だ。
だから、その空を人間の都合のよいように利用しようとする『空の研究』は、本当は触れてはならない領分に手を出した、禁忌の研究であるのかもしれない。
「そうであるとわかっていても、私はこれしか、できないのですけれどねーえ」
自嘲気味にアメリアはため息をついて、小さな家へ近づいていった。
ここには、ひとりの女性を住まわせて……いや、率直に言えば「軟禁して」いる。その女性は、アメリアの従姉妹……、シェーラ・チェーロだ。
シェーラは、ことあるごとにアメリアと空の研究所の活動を邪魔してきた張本人である。アメリアの策によって捕らえることができたものの、何を尋ねても黙ったままで、行動の理由がわからぬままだったのである。また邪魔をされてはかなわないし、かといって厳罰に処すこともできずにただとどめておくしかなかった。
だが。
「私は、研究者ですからねーえ。わからないことを、いつまでもそのままにしておくわけにはいかないのですよーお」
アメリアは、小屋の扉を開いた。
何の感情も見せぬ瞳で、シェーラは姿勢よく椅子に座り、アメリアを見据えた。アメリアもそれに対して少しの動揺も見せず、シェーラの真正面に椅子を置き、向き合って座った。
「今日はひとつ、仮説を聞いていただきましょうかねーえ」
穏やかな口調で、アメリアは語り始めた。シェーラは何の反応も返さない。だが、アメリアはそれを意に介さなかった。
「シェーラ、あなたがなぜ私や空の研究所の邪魔をしてきたのか、私にはわからなかったのですよーお。わかりませんでしたから、知りたいと思いましてねーえ。それを知るために、あなたのことについて、調べさせていただきましたよーお。ずいぶんと、手間はかかりましたけれどねーえ」
アメリアは、ハンターの力を借りてシェーラの実家であるチェーロ家について調べたあとも、自分の研究の傍ら、独自に調査を続けていたのである。チェーロ家はアメリアの母の実家でもある。つまり。
「あなたについて調べることは、意図しないところであったとはいえ私自身のルーツを知ることでもありました」
そう、アメリアは、自分自身についてもずいぶんと調べることになったのだった。これまで、アメリアが特に知りたいとも思わなかったことだった。アメリアにとって「知る価値、解明する価値のあること」はほとんど「空に関すること」だけだ。
「私の母は、何らかの事情でチェーロ家と疎遠になった……、それは私も知っていましたよーお。その事情が何だったのかは、調査しても出てきませんでしたがねーえ。しかしひとつわかったことがあります。母は、チェーロ家でも将来を嘱望された優秀な学者候補だったようですねーえ。そう、兄に妬まれるほどに。母の兄……私にとっては伯父、あなたにとっては父となる人ですねーえ……」
アメリアは、その伯父についてほとんど何も知らない。
「シェーラ。あなたは、父親に命じられたのでは? 私を、殺せと」
率直に、アメリアが告げた。これは、ハンターの手を借りてチェーロ家を調査した際に得られた情報だった。これを聞いてもシェーラは、是非を答えず、微動だにすらしなかった。アメリアは構わず続けた。
「私の母は結局、学者として大成することはありませんでした。けれど、娘である私は、研究者となった……、空の研究所を設立し、王国の承認を得た……、シェーラ、あなたの父は、それが気に入らなかったのではありませんかねーえ?」
アメリアが、そこで言葉を切ると。しばらくの沈黙ののち、シェーラは、はーっ、と大きくため息をついた。そして。
「……半分、正解ね」
「半分、ですか」
「今、あなたが話したことは、すべてそのとおりだわ。でも、もう少し、足らないの。私が父に命じられていたのは確かだわ。だけれど、父の思惑とは別に、私の考えもあったのよ。……それが、あなたにわかって?」
「……いいえ、残念ながら」
「でしょうね」
シェーラはまたため息をついた。
「答えを、教えてあげてもいいわ。ただし、もう少し仮説を持っていらっしゃい。そしたら私は本当のことを話す。そして、もうあなたの邪魔をしないと約束もしてあげましょう」
「ふうむ……。誰かの知恵を借りても?」
「いいでしょう。どうせ、もう、あなたにはこれが限界でしょうし」
シェーラが、あきらめたように肩を落とすのを、アメリアは苦笑して眺めた。
「すみませんねーえ。では、もう少し、待っていていただきましょう」
アメリアがシェーラの部屋から出てくると、そこには空の研究所の研究員であるキランと、職員であるスバルが待っていた。ふたりとも、中の様子をうかがっていたらしい。キランは憤慨している。
「被害者はこっちだってのに、なんであんな偉そうなこと言われなくちゃならないんだよ!?」
「まあまあ」
アメリアが苦笑してキランをなだめた。
「おそらく、シェーラには折れるためのきっかけが必要なのですよーお。その証拠に、彼女は『正解を示せ』ではなく『仮説を持ってこい』と言いましたからねーえ」
「では、正解を出さずとも、理由を話してくれる、と?」
スバルが心配そうに尋ねる。ええ、とアメリアは頷いた。
「私は、他人の気持ちを推し量るのが苦手ですからねーえ。被害者は確かにこちらではありますが、きっと彼女も傷ついているのでしょう、なぜだか、わかりませんが。……ですので、ここはひとつ、皆さんの知恵を借りることにしましょうかねーえ」
「ったく、面倒くせえ女だなあ」
キランがぼやき、スバルが笑った。
「そうですねーえ。人とは本来、面倒くさいものなのでしょうからねーえ。……ああ、上手くいけば、皆でゆっくり、雪見でもできるかもしれませんねーえ」
アメリアは、窓の外、相変わらずの曇天を眺めて、呟いた。
解説
■成功条件
シェーラがアメリアの邪魔をしてきた理由の「仮説」を立て、シェーラの前で発表する
■アメリアおよび空の研究所が狙われた事件
『【空の研究】戦艦白雲』以降、長きに渡って続いた。
『【羽冠】【空の研究】我が北斗星』において収束。
(※過去の依頼は確認しなくても問題ありません。ただし、最低限、前依頼『【空の研究】北風か太陽か』はご確認願います)
■仮説
参加ハンター全員で1本以上用意すること。
全員が1本ずつ用意することもできる。ただし、仮説本数が参加者人数を超えてはならない。
仮説を立てる際の相談にはアメリアは加えないものとする(質問は回答可能な範囲で受け付ける)。
■役に立ちそうな情報(アメリアの調査結果、軟禁中にスバルが聞き出したことなど)
・アメリアが幼いころはまだ少しアメリアの母とチェーロ家には行き来があった(前依頼の情報)
・幼いころのシェーラはアメリアにかなり懐いていた(アメリアは覚えていない)
・アメリアの母がチェーロ家と疎遠になった時期と、アメリアが空の魅力にとりつかれた時期はほぼ同じ(関連性は不明)
・シェーラの父は厳格で娘を可愛がったことがない
■その他
仮説を披露する場は、シェーラが住まわされている家の中の居間。
軽食やお茶の用意がある。
シェーラがアメリアの邪魔をしてきた理由の「仮説」を立て、シェーラの前で発表する
■アメリアおよび空の研究所が狙われた事件
『【空の研究】戦艦白雲』以降、長きに渡って続いた。
『【羽冠】【空の研究】我が北斗星』において収束。
(※過去の依頼は確認しなくても問題ありません。ただし、最低限、前依頼『【空の研究】北風か太陽か』はご確認願います)
■仮説
参加ハンター全員で1本以上用意すること。
全員が1本ずつ用意することもできる。ただし、仮説本数が参加者人数を超えてはならない。
仮説を立てる際の相談にはアメリアは加えないものとする(質問は回答可能な範囲で受け付ける)。
■役に立ちそうな情報(アメリアの調査結果、軟禁中にスバルが聞き出したことなど)
・アメリアが幼いころはまだ少しアメリアの母とチェーロ家には行き来があった(前依頼の情報)
・幼いころのシェーラはアメリアにかなり懐いていた(アメリアは覚えていない)
・アメリアの母がチェーロ家と疎遠になった時期と、アメリアが空の魅力にとりつかれた時期はほぼ同じ(関連性は不明)
・シェーラの父は厳格で娘を可愛がったことがない
■その他
仮説を披露する場は、シェーラが住まわされている家の中の居間。
軽食やお茶の用意がある。
マスターより
大変地味な依頼ではございますが、どうぞご協力のほどよろしくお願いいたします。
「仮説」は正解を見つけ出さなくても問題ありません。
ただ……、シェーラをただ単に解放してしまうのか、今後に繋げていけるのかは、この「仮説」にかかっているかもしれません……!
空の研究に参加経験のない方も、どうぞお気軽にご参入くださいませ!
「仮説」は正解を見つけ出さなくても問題ありません。
ただ……、シェーラをただ単に解放してしまうのか、今後に繋げていけるのかは、この「仮説」にかかっているかもしれません……!
空の研究に参加経験のない方も、どうぞお気軽にご参入くださいませ!
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/01/14 19:28
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談・考察卓 雨を告げる鳥(ka6258) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/01/04 12:18:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/01/02 23:56:58 |