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  • 無し

【陶曲】2人のオートマトン

マスター:KINUTA

このシナリオは2日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 3~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
プレイング締切
2019/01/20 22:00
リプレイ完成予定
2019/01/31 22:00

オープニング

●反省会と今後の方針



 嫉妬の歪虚サイゴンはハンターたちと一戦まみえた経験により、力押しだけでは駄目だ。作戦と言うものを考えなくてはいけないということを学んだ。
 ……だが、その作戦というものを具体的にどうしたらいいのかまでは、いまいち頭が回らない。
 なので、ラルヴァに聞いた。
 ラルヴァはこう答えた。

「そうだね、お前が軍団全部を一人で操るのは難しいだろうね。要となれるレベルの兵隊を作り、一部それに指揮を任せてはどうだい。レベルが高い兵隊を作るには、並の兵隊数十体を作る以上に力がいるから、その分軍団全体の総数は減ることになるがね」

「なるほど。そいつはとてもよさそうなお考えだど。おらっち、やってみるど。そのためには、なんかいい仲間を見つけねばなあ」

 早速前回のゴミ捨て場へ行ってみようとしかけたサイゴンを、ラルヴァがすかさず呼び止める。

「サイゴン、この際オートマトンを使ってみてはどうかね。カッツォが以前集めてきたものが、いくらか残っているよ。満足な姿形ではないが」



●小骨が喉に刺さったような



 オートマトンのユニは町角のベンチに座って、年明けの昂揚が醒め切らぬ通りを眺めていた。
 たくさんの人が通る。

 種族――人間、エルフ、ドワーフ、鬼、ドラグーン。オートマトンは、わずか。
 性別――男、女、両方、どちらでもないもの。
 年齢――赤ん坊からお年寄り。

 ユニにとっては最後のカテゴリー『年齢』が、目下一番気にかかる。
 人間は刻々姿を変えていく。
 乳母車に乗った赤ん坊が、脇を歩いている兄弟と同じ姿に、次いで車を押している両親と同じ姿になる。
 オートマトンの姿は時と共に変化しない。
 経年劣化してあちこち機能が衰えたりすることはあるだろうが、同じ姿、同じ顔だ。
 子供として作られたものは子供のまま、大人として作られたものは大人のまま。
 今自分と同じ背格好の子供がいたとしても、何年かのうちにその子は、違う姿になってしまう。
 オートマトンは人間からどう見えるのだろう。
 彼らから見て本当に同じ『人間』として映っているのだろうか。
 自分が知っている異世界生まれの英霊は、明確にその点を否定し続けているのだが。
 人間は人間の中から新しい人間を作り出すことができる。たとえ種族が違っていても、そこだけは共通項だ。
 その共通項がオートマトンにはない。
 オートマトンの中から新しいオートマトンは生まれない。
 そしてこの世界にはオートマトンを新しく作り出す技術がない。
 その状態がこのまま続くとすれば、今存在している異世界渡りの機体が使い尽くされると同時に、オートマトンという存在も消え失せてしまう。
 だけど人間は消えない。常に新しい個体が発生し続けるのだから。

「……」

 ユニはなんともおかしな気分を味わっていた。
 腹立たしいような、悲しいような、苛々するような。
 折よく尋ねることが出来る人がその場にいれば、教えてくれたかもしれない。ユニ、それは嫉妬というものだ。あなたは人間を羨ましく思っているのだと。
 しかしそういう人は、今この場にいない。
 もやもやしたものを抱えたままユニは、軽く伸びをした。そこで、通りを行く1人の人物に目を留めた。
 オートマトンだ。
 青い髪に青い目をしている。
 外見年齢は――12かそこいら。

(ワタシと同じくらいですね)

 オートマトンにありがちな男女の区別がつけにくい面相。

(そこも、ワタシと似てますね)

 とはいえ、全体の印象から言うと少女ではなく少年――ぽい。
 体全体をカーキ色のローブで覆っている。無表情な顔の右半分には厚いベールがかかっている。
 そんな彼(多分)からユニは、目が離せなかった。
 オートマトン仲間だからという理由からではない。彼が全身から醸し出している剣呑な空気を、微妙に感じ取ったのだ。
 彼は他の人間と変わらぬ自然な、早くも遅くもない歩みで歩道を歩いて行く。前だけを見ながら。
 その歩みがふと止まった。
 側にいる家族連れの、乳母車に視線を降ろす。
 次の瞬間彼の手は、父親が押していた乳母車を掴んだ。

「何をする!」

 とっさに身構えた父親が倒れた。腹を刺されて。
 母親が悲鳴を上げる。
 乳母車が魔導トラックが疾駆してくる車道に放り投げられた。中に入っている赤ん坊ごと、軽々と。

「うぉ!?」

 反射的にトラックドライバーがブレーキを踏む。
 だがブレーキをかけたからといって、車が急に止まるものではない。
 ユニは反射的に車道へ飛び出す。乳母車をかばい抱き、トラックと接触しつつも受け身を取る。守り切る。
 『彼』はそんな彼女の行動を見ていない。
 その前に乳母車の側にいた兄弟2人の腕を右手と左手で掴んで引き寄せ、軽々跳躍する。通りの建物の屋根へ。
 その激しい動きによってローブの一部がめくれた。
 そこに見えたのは、金属部分が剥き出しになった腕、足。服で隠されている部分も――恐らく同様ではあるまいか。
 隠されている顔の右半分も、多分。
 ユニは乳母車から火がついたように泣いている赤ん坊を出し、母親のもとへ戻す。
 母親は助けを求めていた。血を流し倒れている夫の傍らで。突然の出来事にどうしていいか分からず狼狽しきっている。

「誰か、誰か――子供が! 助けて!――夫が――!」

 その間にオートマトンは、建物の屋根沿いに走って行く。
 引きずられて行く子供たちは体をあちこちにぶつけられている。屋根瓦、煙突、出窓の庇。
 傷だらけになって泣きわめくその声を、オートマトンは意に介していない。
 むしろいよいよスピードを速め、跳躍する。屋根から屋根へと。
 片方の子供がその拍子に思い切り、腹を屋根の角へぶつけた。ぐっ、という呻き声。子供は白目をむいて気絶する。
 それでもオートマトンは意に介していない。どうも、死んでもいいと思っているらしい。
 ユニは母親に向かい、力強く言った。
 
「大丈夫です、助けますから!」

 そして、走り出した。もう1人のオートマトンを追いかけて。


解説

補足説明 


これは正体不明のオートマトンから子供たちを奪還することを目的とするシナリオです。



*現在の被害者状況。

父親――腹を刺されている。重体。要応急手当。
母親――無傷。
赤ん坊――無傷。
兄弟――軽傷から重傷へ移行しつつある。オートマトンへの対処の如何によっては死亡もあり得る。



*オートマトン情報

外見――少年。
機動力――高い。
戦闘力――不明。
武器――恐らく刀剣の類を持っている。
目的――不明。

――――――ここまでがPC情報。ここからがPL情報


●このオートマトンはサイゴンが新しく作った兵隊である。
●サイゴンの命令通り動くが、自分の意思もある程度持っている。ある意味サイゴンの分身のようなものである。
●今回町に来た目的は、情報収集である。騒ぎを起こしたのもその意図があってのことである。
●人間、特に子供というものに対して根深い敵意を抱いている。害を与えられる機会があればもれなく与えてやろうとする。
●自分がオートマトンであることを理解している。オートマトンの成り立ちや歴史も分かっている。人間側に立つオートマトンには反発を抱く。その逆なら親近感を持つ。
●子供を盾にすること、殺すことを何とも思っていない。それが自分にとって必要なら意図的に痛め付けることもやる。




今回の作戦には、NPCユニも加わります。
職種は闘狩人。武器はバトルハンマー。レベルは初級の上。
オートマトンとしての存在意義について色々モヤっている様子ですが、戦いにおいては確実に人間側ですのでご安心ください。

マスターより

KINUTAです。
新年おめでとうございます。
初夢から覚めたらこの有り様です。



リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/01/28 01:00

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • アウレールの太陽
    ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 潰えぬ微笑
    空蝉(ka6951
    オートマトン|20才|男性|舞刀士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • ヒーローを目指す炎娘
    百鬼 一夏(ka7308
    鬼|17才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/01/18 23:44:47
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 舞(ka0377
人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2019/01/20 13:08:38