• 戦闘

【碧剣】仄暗く無明には遠い世界の底で

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
シリーズ(続編)

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,300
参加人数
現在7人 / 3~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2019/02/19 12:00
リプレイ完成予定
2019/02/28 12:00

オープニング


 遠い昔、それはただ一柱の光に過ぎなかった。
 ――世界に、罅が入るまでは。



「が、ア、アアアア……ッ!」
 赤滅する視界の中、少年は絶叫していた。眼前には、“敵”。切断し消滅させるべき忌まわしき存在、歪虚だ。それはヒトの形をしていた。そして、少女のように見えた。見えた、というのは、ともすれば老人のようにも見えそうな外観のせいだ。
 目立つのはひび割れた肌。何かしらの体液がこびりついている。そこをまばらに覆うのは茨と――鱗、そして、不規則に蠢く眼玉。そんな【モノ】が、尋常なヒトであるはずが、ない。
 しかし。
「w■▲a ■aksur s!g m※st▲ nest■n ▲oa?」
 絶叫する少年を眺めて、首をかしげたまま言葉を紡いだ。なめらかな動きには明らかな、意思があって。そっと、手を伸ばす。ゆるゆると、近づいてくる。
 そいつはまるで、剣を手に絶叫しがちがちと震える少年を――案ずるように。
 その歪虚に対し、少年は。
「い、ゃ、だ……!」
 少年の絶叫が、石壁を叩く。



「という夢を見たんだ」
「……そうか」
 作戦決行前。シュリ・エルキンズが現上司であるロシュ・フェイランドに報告したところ、上役は渋い顔で応じた。シュリだって、こんなことを唐突に言われたら困りもするだろうとは思う。ロシュは蛋白にこう応じた。
「それで、お前はその歪虚を斬れたのか?」
「斬ったよ」
「斬った……お前が、か?」
 今度こそ意外そうに、ロシュは振り返る。その顔つきからロシュが本気で驚いていることが分かり、シュリは苦笑した。
「夢の中だから、理由とかもあんまりはっきりしないんだけど、僕は斬ったみたいだ。“彼女”は消えて、それでおしまい」
「……そうか」
 言いよどむロシュに配慮が透けて見え、シュリは若干の後悔を覚えなくもない。しかし、本心を隠し続けた結果、望まぬ事態に至ってしまった過去が、シュリの背を押した。
「シュリ。もし万が一、お前が生存者に希望を見出しているようならば……やめておけ。何も考えずに、一振りの剣となるほうがいい。分水嶺は、とっくの昔に超えているんだ」
「……?」
 ロシュの鋭い視線に、息を呑む。
「“歪虚が満ちた場所で普通の人間が生きていけるはずがない”。あのシャルシェレット卿ですら、歪虚に接していた時間ゆえに危篤に陥り、今だって治療と幾重もの浄化を受けねばまともに生活もできん」
「……」
「地底にいるのは、墜ちた存在だけ――お前の敵だ。夢の中のお前は、正しかった。斬らねばならない、それが、必要なことだった。だから、此処から先では躊躇うなよ。……」
 ロシュはそのまま何かを続けようとして、言葉を切った。少なくとも、シュリにはそう見えた。
「どうしたの?」
「……なんでもない。言うべきは言った。俺は休む」
「うん。ありがとう、ロシュ」
 別室へと移動していくロシュは、返事をすることも、振り返ることもなかった。シュリはその背をじっと眺めたまま、左手で愛剣の柄に触れていた。

 ―・―

 自室に戻ったロシュは、息を吐く。自嘲と痛みを洗い流すように、深く。
 想起されるのは、騎士団長ゲオルギウスの忠告だった。

 シュリに、歪虚を憎む兆候が見えるようならば。狂戦士に成り下がり、混乱に陥る前に――シュリを……。

 そのために、絶好の機会だったというのに。果たせなかった。
「もう」
 震える声で、吐き出した。あり得べかざることだが、もし、万が一、生存者がいるならば。もし、シュリが夢で見たように、知性を持つヒトがいるならば。そうさせた敵の目的にシュリと碧剣が関連しているとは思えないが、それでもシュリは歪虚を憎み得る。そのことが、ただただ、苦しい。
「……もう、十分に傷ついたはずだ。そうだろう」



「諸君のおかげで十分に情報を集めることができた」
 明朗なロシュの言葉がブリーフィングルームに響く。過日との違いといえば、ハンター以外の人間の数が多いこと。年の頃はロシュと同じくらいだが、騎士というには匂いが異なる。どこか砕けた雰囲気を漂わせていた。
「こいつらは私が非公式に招集した。騎士ではないが、覚醒者で……王国貴族だ。私にとっては学友にあたるが、この場ではおもねる必要はない。危険の多い調査に参加せず、成果に群がっているだけだからな」
「……ロシュ、そんな言い方しなくても」
 彼らと面識があるらしいシュリが反駁するが、ロシュはおろか、召集された貴族たちですら苦笑している。
「【傲慢王】で騒がしいこの時期に領内から出てこれる程度の立場なんだ。本当に気にしないでくれ」
 魔杖を手にした男が言えば、他の面々も頷いている。
「話を戻すぞ。目標の歪虚は地下に潜っていることは明らかだが、その出入り口は雪に閉ざされている。重要なのは、それを抉じ開けることは我々の存在が露呈することと同義だということだ。周囲一帯の獣達が襲ってくると考えて相違ない」
 故に、と前置いて、
「我々が取り得る作戦は2つだ。敵を釣りだして侵入するか、敵を突破して侵入するか。前者の場合、こいつら貴族たちには陽動を、後者の場合は退路確保を依頼する形となる。3箇所同時の突入か、一箇所のみの突入かは……ハンター、お前たちに任せる。取りやすい作戦を選べ。空を飛んで監視が出来るのは一箇所限りだが、幸い、連日の調査で騎士も同地での潜伏が可能になった。監視ぐらいなら可能だろう。
 ただし、作戦にあたり、留意すべきことが2つある。シュリ・エルキンズ」
「は、はい?」
「一つ。敵はおそらく、未だ『我々の存在』を知らないはずだ。過日、私達は遭遇こそしたが、その後の警戒を見るに対応としては自動的な範疇だったと見える。しかし――二つ。我々が潜伏先に突入した瞬間に敵は……シュリ、貴様のことを想定するはずだ。歪虚の気配だけで居場所を探れる存在など限られている上に……おそらくそれは、敵こそが想定し、備えていることだろう」
「……たしかに」
「シュリが囮に回ろうが陽動に回ろうが殿につこうが突入しようが事態は変わらん。好きにしたらいい。重要なのは――敵が、予見される貴様の侵入に、何を用意していたかだ」


 人間であれば4,5人は並んで通れそうな広々とした石造りの空間を、ヒタリ、ヒタリ、と少女は歩んでいく。
「w▲ dar※r……」
 歪虚たちが住まうにしては過剰なほどに『負のマテリアル』が乏しい。しかし石壁はほのかに光り、少女が進む道を照らすようだった。

 少女を無視するように、傍らを老人と中年の姿をしたモノが歩みすぎていった。
 彼らはそれぞれの手に盆を抱えていた。何処かへと歩み去る二つの歪虚を誇らしげに少女は見送ったのち、たどり着く。
「■■■■■■■」
「■――■……」
 少女にとっては聞きとれぬ言葉が満ちた空間。それでもそこは、彼女にとっては幸福に満ちた空間だった。

 しずかに膝を付き、祈りを捧げる――。

解説

●目的
1.前回発見した入り口より突入してください。(方策はお任せします)
2.突入後、内部の調査/制圧を行ってください。

●解説
状況は『入り口に対して突入後』より開始します。
OP内にあるとおり、「何箇所から突入するのか」「どういう方針で突入するのか」を決定した上で依頼に臨んでください。何れの場合でもNPCがサポートします。

内部の状況は現状では不明ですが、突入直後に以下のことが明らかになります。
1.内部は成人男性が4−5人程度は並んで通れる程度の広さ。(幅4〜5Sq)
2.上下左右に入り組み足場に凹凸はあるが原則支障はない程度
3.視界に支障を感じない程度には壁そのものがほのかに輝いている
4.上記に依り見通しは悪い所が多々ある
5.突入事態は露見しており、奥に敵の気配が多数接近中
6.汚染はなく、浄化術は不要


●付記
ここから、次のシナリオまで連戦となります。そのため、以下の点に注意してください。
・スキル回数減少
 今回の戦闘のスキル使用状況によって次戦闘時に使用回数に制限がかかります。
・スキル変更不可
・生命値減少
 今回の戦闘後回復が挟まらなければ生命が減少した状態で次のシナリオが開始します

●PL情報
※ハック&スラッシュシナリオです。
※いくつか枝分かれしており、時折直径100Sq程度の部屋や倉庫があります(こういった部屋から地上へのルートが合計3つありましう)
※内部では「人型」の歪虚が存在しますが、2種に別れます。
 1.知性がある存在:攻撃されるまで非敵対的です。
 2.知性がない存在:自動的に襲ってきます。
※その他、獣型歪虚が多数存在しています。敵が倒れる際、例外なく『溶けるように』消えていきます。
※「生存者」は「います」
※深部まで到達するとクリアになります。

マスターより

こんにちは! 寒さも深くなってまいりました。気温が下がりすぎて闇落ちした北海道の画像に恐れおののくばかりのムジカです。

さて。解説にもお書きしましたが、第三話は「ハック&スラッシュ」です!
内部で何が行われているかは今回のリプレイである程度お見せできる想定ですが、めちゃくちゃ勘のいい方なら今回からある程度介入は出来るかもしれない、そんな感じのシナリオです。もちろんしなくても大丈夫。
成功度はあくまでも「ハクスラ」に依存しますので!

真相はきっと、この場面に至ってしまった人にとっては苦いもの。シュリ然り。ロシュ然り。PCのみなさま然り。
みなさまのプレイング、お待ちしております。

関連NPC

  • 碧剣を抜きし少年
    シュリ・エルキンズ(kz0195
    人間(クリムゾンウェスト)|15才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/03/08 08:02

参加者一覧

  • Stray DOG
    ヴォルフガング・エーヴァルト(ka0139
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 嗤ウ観察者
    アルヴィン = オールドリッチ(ka2378
    エルフ|26才|男性|聖導士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 弓師
    八原 篝(ka3104
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 冬の狩り 第3日【相談卓】
エアルドフリス(ka1856
人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2019/02/18 22:36:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/16 14:43:29