ゲスト
(ka0000)
愛の味は行列をつくる
マスター:サトー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/01/17 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/01/26 19:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
町を囲い込むように林檎の木が林立する。
人口数千の小さな町に冬の息吹きが流れ込み、通りを行く人は身を竦めて足早に往来を抜けていく。
その店の前も、人々は立ち止まることなく通り過ぎるばかりだった。
「暇ですねぇ……」
カウンターの女が背後に向かって話しかけるも、どこからも応えは無い。
店内に客の姿は無く、従って話しかけた相手は自ずと奥の調理場にいる店長ただ一人なのだが、調理場からは何の音も届いてこない。
「あまりに暇すぎて、死んじゃったんでしょうか……」
女は前に向き直って、ため息とともに呟く。瞬間、ごつんと良い音がして、女が頭を押さえてうずくまった。その背後には、店長らしき中年のおっさんが立っていた。
「人を勝手に殺すな、バカタレ」
うんうんと呻く女を放って、店長はカウンターの椅子に腰かける。店内をぐるりと見回して、むすっとした顔になった。閑散とした店内にため息も出てこない。
リゼリオで修行すること十年、ようやくこの町にて自分の店を持つことができたというのに、状況は芳しくない。
最初の半年はうまくいっていたのだ。
リゼリオから三日ほど離れたこの町に出来た初めての菓子店ということもあって、珍しがった客が毎日のように押し寄せてきては男の焼き菓子をいくつも買っていき、嬉しい悲鳴をしぼり出させた。
調理から販売まで全て一人でこなしていたため、店は小ぢんまりとしたものだったが、近隣の町村からも客が来て、売り切れなど日常茶飯事だった。
一人ではとても回せないと店員を一人雇うことにして、さあこれからガンガン稼ぐぞ、という頃合いに、できたのだ。どこぞの大都市にある大店の支店を名乗る菓子屋が。
大方、男の店が繁盛しているのを噂にききつけ、需要があると見て取り、支店を出店することにしたのだろう。
味はどっこいどっこいだったが、商品は同じ焼き菓子。また、如何せん規模が違いすぎた。男の店よりも遥かに大きく、調理師も店員も十全で、より多くの種類を、より安く、町の人々に提供した。
加えて挑戦的なことに、その店は男の店のはす向かいにあった。
家からの距離が同じならば、より充実した店に行くのは道理だろう。
男の店はあっという間にすたれ、残ったのは、贔屓にしてくれる数少ない良客と不出来な店員と店を建てた時の借金……。このままでは早晩店は潰れ、自分達は路頭に迷うだろう。
「痛いですよぉ……。私も一応女なんですから」
「役立たずに女も男もあるか」
頭をさすりながら立ち上がった女性店員に、店長は吐き捨てるように言った。
「私のまかない美味しいじゃないですか。店長もそう言ってたでしょう?」
「お前なあ……ここは飯屋じゃなくて、菓子屋なんだよ! いくら飯を作るのがうまかろうが、肝心の菓子作りができなきゃ意味ねえんだ!」
その言葉に、女は不平を述べようとしたが出てこなかった。事実だったからだ。
女の菓子作りの腕は壊滅的だった。男がいくら懇切丁寧に教えようとも、簡単なクッキーすらまともに作ることはできなかった。
ふざけて作っても普通はこうはならないだろう。どこをどう間違えたらこんな味になるのか、と男はゴミ袋に向かって呪詛の言葉を吐くのが常だった。
「でも! 私はお菓子が大好きなんです! お菓子が作れるようになりたいんですよ!」
「口だけなら何とでも言えような。本当にやる気があるんなら、少しは何か身についてもおかしくないだろう。ぼーっと突っ立って飯ばかり食いやがって、それ以上肉なんかつけてもしょうがねえぞ」
男の無思慮な言葉に、女の意気も上がっていく。
「本気です! やる気だってあります! このお店だって……私が立て直して見せます!」
確かにやる気があるのは、男も認めているところだった。何とか一人前の菓子職人に育ててやりたいという気持ちもあった。だが、そのような余裕はこの店からはもう無くなってしまった。このままここで、女の夢を閉ざしてしまうのは忍びなかった。
息が上がりつつある女を見て、男ははんと鼻で笑った。
「いいだろう。そこまで言うんなら、見せて貰おうじゃないか」
「え?」
「一週間だ。一週間後にテストをする。何か目玉になる新しい品でも考えて来い」
「い、一週間って! っていうか、なんですかそれ! 新しい品? そんなの無理です。無理無理」
迷うことなく両手でバツを作り首を振る女に、男が怒鳴りつける。
「お前にはこの町に対する愛が足りねえ!
俺がこうして店を開いていられるのも、お前がここで働いていられるのも、全て町の人が商品を買っていってくれるおかげなんだ。お客を喜ばせてやろうって気がねえのか!」
「そりゃあ、喜ばせられるなら喜ばせて上げたいですけど……。私には向いてないっていうか、荷が重すぎるっていうか……」
両手の人差し指を突き合わせて、女は上目づかいに見てくる。その仕草が男の怒りを掻きたてる。
「お前はこの町を愛してるって言いきれんのか!?」
「は、はい!」
「なら、その気持ちを形にしてみろってんだ!
てめえを生かしてくれてるこの町に感謝の念でも抱いてりゃ、新しい品でも作って喜ばせてやろうって気になるだろうが」
「そ、それなら店長が作れば――」
「俺のこたぁいいんだよ!
一週間だ。それまでこの店は閉めとくからよ。俺もちょっと休暇でリゼリオに行ってくるから、調理場は好きに使え。期日までにできなかったら、クビだ」
そう言って、男は女の尻を蹴り飛ばして店からたたき出す。
目の前で閉められた扉の前で、女は立ち尽くすこと十分、仕方なしととぼとぼと歩き出す。
「横暴だよぉ……」
だが嘆いていても状況は何も変わらない。不満を訴えるお腹の声に、お昼時なのを思い出し、女は露店で焼き林檎を買って与えてやる。
「美味しいなぁ」
年中購入可能な林檎の中でも、このお店のは格別なのだ。
リスのように頬一杯に膨らませ、女は愉快に通りを練り歩き、自宅に向かう。
「考えてても仕方ないし、とりあえず作ってみるかな。――あ、でも、眠くなってきちゃったから、お昼寝しようっと」
女が目を覚ましたのは翌日の朝だった――。
そうして五日が過ぎた。
「どうしよぉぉぉぉーーーーーー」
約束の期日は明日だというのに、未だ何もできていない。
新商品を急に作れなどと言われても、普通の焼き菓子すらまともに作ることができないというのに、何を言っているのだろうか。
「はぁ、このままじゃクビになっちゃうよ……」
貯蓄は雀の涙ほど。他に行くあてもない。
女は往来をいったりきたり。日暮れも間近。何のアイデアも浮かばないことが、歩調を更に強めていく。悲嘆にくれた声が、店長――ロモロへの愚痴と呪いの言葉に変わり始めた頃、女――メリサはそこに行き当たった。
――ハンターオフィス。そこは、数多の願いを叶えてきた場所――。
町を囲い込むように林檎の木が林立する。
人口数千の小さな町に冬の息吹きが流れ込み、通りを行く人は身を竦めて足早に往来を抜けていく。
その店の前も、人々は立ち止まることなく通り過ぎるばかりだった。
「暇ですねぇ……」
カウンターの女が背後に向かって話しかけるも、どこからも応えは無い。
店内に客の姿は無く、従って話しかけた相手は自ずと奥の調理場にいる店長ただ一人なのだが、調理場からは何の音も届いてこない。
「あまりに暇すぎて、死んじゃったんでしょうか……」
女は前に向き直って、ため息とともに呟く。瞬間、ごつんと良い音がして、女が頭を押さえてうずくまった。その背後には、店長らしき中年のおっさんが立っていた。
「人を勝手に殺すな、バカタレ」
うんうんと呻く女を放って、店長はカウンターの椅子に腰かける。店内をぐるりと見回して、むすっとした顔になった。閑散とした店内にため息も出てこない。
リゼリオで修行すること十年、ようやくこの町にて自分の店を持つことができたというのに、状況は芳しくない。
最初の半年はうまくいっていたのだ。
リゼリオから三日ほど離れたこの町に出来た初めての菓子店ということもあって、珍しがった客が毎日のように押し寄せてきては男の焼き菓子をいくつも買っていき、嬉しい悲鳴をしぼり出させた。
調理から販売まで全て一人でこなしていたため、店は小ぢんまりとしたものだったが、近隣の町村からも客が来て、売り切れなど日常茶飯事だった。
一人ではとても回せないと店員を一人雇うことにして、さあこれからガンガン稼ぐぞ、という頃合いに、できたのだ。どこぞの大都市にある大店の支店を名乗る菓子屋が。
大方、男の店が繁盛しているのを噂にききつけ、需要があると見て取り、支店を出店することにしたのだろう。
味はどっこいどっこいだったが、商品は同じ焼き菓子。また、如何せん規模が違いすぎた。男の店よりも遥かに大きく、調理師も店員も十全で、より多くの種類を、より安く、町の人々に提供した。
加えて挑戦的なことに、その店は男の店のはす向かいにあった。
家からの距離が同じならば、より充実した店に行くのは道理だろう。
男の店はあっという間にすたれ、残ったのは、贔屓にしてくれる数少ない良客と不出来な店員と店を建てた時の借金……。このままでは早晩店は潰れ、自分達は路頭に迷うだろう。
「痛いですよぉ……。私も一応女なんですから」
「役立たずに女も男もあるか」
頭をさすりながら立ち上がった女性店員に、店長は吐き捨てるように言った。
「私のまかない美味しいじゃないですか。店長もそう言ってたでしょう?」
「お前なあ……ここは飯屋じゃなくて、菓子屋なんだよ! いくら飯を作るのがうまかろうが、肝心の菓子作りができなきゃ意味ねえんだ!」
その言葉に、女は不平を述べようとしたが出てこなかった。事実だったからだ。
女の菓子作りの腕は壊滅的だった。男がいくら懇切丁寧に教えようとも、簡単なクッキーすらまともに作ることはできなかった。
ふざけて作っても普通はこうはならないだろう。どこをどう間違えたらこんな味になるのか、と男はゴミ袋に向かって呪詛の言葉を吐くのが常だった。
「でも! 私はお菓子が大好きなんです! お菓子が作れるようになりたいんですよ!」
「口だけなら何とでも言えような。本当にやる気があるんなら、少しは何か身についてもおかしくないだろう。ぼーっと突っ立って飯ばかり食いやがって、それ以上肉なんかつけてもしょうがねえぞ」
男の無思慮な言葉に、女の意気も上がっていく。
「本気です! やる気だってあります! このお店だって……私が立て直して見せます!」
確かにやる気があるのは、男も認めているところだった。何とか一人前の菓子職人に育ててやりたいという気持ちもあった。だが、そのような余裕はこの店からはもう無くなってしまった。このままここで、女の夢を閉ざしてしまうのは忍びなかった。
息が上がりつつある女を見て、男ははんと鼻で笑った。
「いいだろう。そこまで言うんなら、見せて貰おうじゃないか」
「え?」
「一週間だ。一週間後にテストをする。何か目玉になる新しい品でも考えて来い」
「い、一週間って! っていうか、なんですかそれ! 新しい品? そんなの無理です。無理無理」
迷うことなく両手でバツを作り首を振る女に、男が怒鳴りつける。
「お前にはこの町に対する愛が足りねえ!
俺がこうして店を開いていられるのも、お前がここで働いていられるのも、全て町の人が商品を買っていってくれるおかげなんだ。お客を喜ばせてやろうって気がねえのか!」
「そりゃあ、喜ばせられるなら喜ばせて上げたいですけど……。私には向いてないっていうか、荷が重すぎるっていうか……」
両手の人差し指を突き合わせて、女は上目づかいに見てくる。その仕草が男の怒りを掻きたてる。
「お前はこの町を愛してるって言いきれんのか!?」
「は、はい!」
「なら、その気持ちを形にしてみろってんだ!
てめえを生かしてくれてるこの町に感謝の念でも抱いてりゃ、新しい品でも作って喜ばせてやろうって気になるだろうが」
「そ、それなら店長が作れば――」
「俺のこたぁいいんだよ!
一週間だ。それまでこの店は閉めとくからよ。俺もちょっと休暇でリゼリオに行ってくるから、調理場は好きに使え。期日までにできなかったら、クビだ」
そう言って、男は女の尻を蹴り飛ばして店からたたき出す。
目の前で閉められた扉の前で、女は立ち尽くすこと十分、仕方なしととぼとぼと歩き出す。
「横暴だよぉ……」
だが嘆いていても状況は何も変わらない。不満を訴えるお腹の声に、お昼時なのを思い出し、女は露店で焼き林檎を買って与えてやる。
「美味しいなぁ」
年中購入可能な林檎の中でも、このお店のは格別なのだ。
リスのように頬一杯に膨らませ、女は愉快に通りを練り歩き、自宅に向かう。
「考えてても仕方ないし、とりあえず作ってみるかな。――あ、でも、眠くなってきちゃったから、お昼寝しようっと」
女が目を覚ましたのは翌日の朝だった――。
そうして五日が過ぎた。
「どうしよぉぉぉぉーーーーーー」
約束の期日は明日だというのに、未だ何もできていない。
新商品を急に作れなどと言われても、普通の焼き菓子すらまともに作ることができないというのに、何を言っているのだろうか。
「はぁ、このままじゃクビになっちゃうよ……」
貯蓄は雀の涙ほど。他に行くあてもない。
女は往来をいったりきたり。日暮れも間近。何のアイデアも浮かばないことが、歩調を更に強めていく。悲嘆にくれた声が、店長――ロモロへの愚痴と呪いの言葉に変わり始めた頃、女――メリサはそこに行き当たった。
――ハンターオフィス。そこは、数多の願いを叶えてきた場所――。
解説
◎メリサのために、新商品製作の手伝いをしよう!
目的:
目玉となる新商品の開発。
状況:
期限は翌朝まで。
調理場や器具は店のものを使用。
材料は、小麦粉、バター、砂糖、牛乳、生クリームなど、店にあるものは無償。
それ以外のものは、自分たちで探すか購入(メリサから現金支給)。
継続して販売できなければならないので、希少な材料は不可。
メリサの頭的に、作るものは一品ないし二品が限度(数は依頼の成否に無関係。二品の場合、どちらかが成功すれば依頼達成)。
メリサ:
やる気十分。ドジっ子。何かと首を突っ込みたがる。スネやすい。
「お金? 新商品の開発なんですから、当然お店持ちですよ!
あ、それと、みなさんに依頼したのは、店長には内緒ですからね?
え、報酬? え、えと、それもお店から、内緒で……だ、大丈夫ですよ。タブン」
備考:
調理にはメリサも参加。(何をすればいいか都度指示が必要)
言われた通りにできると思っては痛い目を見ます。
皆さんが落ち着いて作業に集中できるとは限りません。作業に失敗すれば、やり直し。
(元より商品として販売可能な質をロモロに証明する必要があるため、高い練度が求められます)
一度の作業で成功させるのは困難。一つの作業に専念した方が、練度は上がりやすい。
メリサをスネさせても依頼の成否には影響なし。
目的:
目玉となる新商品の開発。
状況:
期限は翌朝まで。
調理場や器具は店のものを使用。
材料は、小麦粉、バター、砂糖、牛乳、生クリームなど、店にあるものは無償。
それ以外のものは、自分たちで探すか購入(メリサから現金支給)。
継続して販売できなければならないので、希少な材料は不可。
メリサの頭的に、作るものは一品ないし二品が限度(数は依頼の成否に無関係。二品の場合、どちらかが成功すれば依頼達成)。
メリサ:
やる気十分。ドジっ子。何かと首を突っ込みたがる。スネやすい。
「お金? 新商品の開発なんですから、当然お店持ちですよ!
あ、それと、みなさんに依頼したのは、店長には内緒ですからね?
え、報酬? え、えと、それもお店から、内緒で……だ、大丈夫ですよ。タブン」
備考:
調理にはメリサも参加。(何をすればいいか都度指示が必要)
言われた通りにできると思っては痛い目を見ます。
皆さんが落ち着いて作業に集中できるとは限りません。作業に失敗すれば、やり直し。
(元より商品として販売可能な質をロモロに証明する必要があるため、高い練度が求められます)
一度の作業で成功させるのは困難。一つの作業に専念した方が、練度は上がりやすい。
メリサをスネさせても依頼の成否には影響なし。
マスターより
こんばんは、サトーです。
町への愛情を表現した一品を求められています。
リゼリオから一通の書状を持って帰ってくる店長のロモロを驚かせてやってください。
メリサをスネさせずに済めば、依頼完遂後、お礼の手作り菓子が貰えるかもしれません。
町への愛情を表現した一品を求められています。
リゼリオから一通の書状を持って帰ってくる店長のロモロを驚かせてやってください。
メリサをスネさせずに済めば、依頼完遂後、お礼の手作り菓子が貰えるかもしれません。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/01/23 06:40
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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新商品の開発相談卓 結樹 ハル(ka3796) 人間(リアルブルー)|16才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/01/16 18:29:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/16 18:50:34 |