ゲスト
(ka0000)
情景 しじまに吹く風
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/01/18 15:00
- リプレイ完成予定
- 2015/01/27 15:00
オープニング
父との思い出は、そう多くはない。
創設とほぼ同時に宇宙軍として勤めることになった父は、何もかもが新しいその事業の中でかなり忙しかったようで、家に戻れる日も、僕が起きている時刻に帰って来られる事はあまりなかった。
ただそれでも。
例えば、眠りの浅い夜に朧げに感じた、低く柔らかい声で呼ばれる己の名と、頭と頬を撫でる大きな掌の感触。
短い時間の中、不器用でも、残されたぬくもりはあった。
――愛されていたと、思う。
その推論が確信に変わる事は、もうないのだが。
父は、短い時間に語ってくれた夢もろとも。
火星へ向かう宙に砕け散ったからだ。
●
ハンターオフィスで、ぼんやりと掲示を見上げていたときだった。
「その依頼、受けるの?」
不意に掛けられた声に、振り向く。
一人の少女がそこにいた。服装と振る舞いからして、クリムゾンウェストの人と思われた。
「――……あなたは?」
「んーいや。あたしはなんとなく依頼探してるだけだから、まだ決めたわけじゃないけど」
「……。いえそうでなく。あなたは誰ですか?」
見覚えのない顔だった。もしかしていつかどこかの依頼で同行したのだろうかとも思ったが、引っ掛かる記憶はない。
「あーそうか。ごめんごめん、えっとあたしは――……」
てへ、と笑いながら少女が名乗る名は、やはり聞き覚えのないもの。
というか、改めて名乗るということはつまり。
「……初対面、ですよね?」
「うん、そうだよ」
「それでいきなり、声を掛けてきたと?」
「うん。なんか熱心に見てるなーと思って」
……。
いや、彼女の性格の良し悪しについて、ここで僕一人が判ずるのはよそう。
人によっては好ましく感じるものではあるのだろう。分け隔てなく振りまかれる愛想。それが、決して見た目も印象も悪くない少女からのものであればなおさら。
それが素直に受け止められない要因は、むしろどこかささくれ立った僕の気分のほうにある。
冷静になろうと、僕はそう分析して気持ちを落ち着けて――おや?
ささくれ立っている。
僕の気持ちは今、ささくれ立っているのか。
間の抜けたことに、そうして僕は今更、そのことを自覚した。
「それで、その依頼、何かあるの?」
お構い無しに、少女は再び話しかけてくる。……僕の心情はともかく、初対面の人間にいきなり声をかけたことについて、怪訝さを表明したことについてはもう少し構って欲しいのだが。
「……さあ」
ただ、僕がそっけなく返事をしたことは、別に意趣返しというわけではない。
傍目には熱心に見ていたように見えたのかも知れないが、実のところ、適当に視点を定めていただけで、内容などロクに頭に入っていなかったのだ。
改めて、依頼の内容を確認する。
最近良く見る、辺境での討伐依頼だった。
可もなく不可もない。だからこそ、これまでの僕であれば、こんなものかと応募していた依頼。
――今は即断できない。
要するに、今の生活にある程度余裕が出てきたということなのだろう。
突如異世界に飛ばされ、覚醒者とやらになり力に目覚めた結果、ひとまず生活の糧を得るためにハンターという生き方を選んだ。
思い返すそれだけで、眩暈がするような急転直下。……そんな激変にも、僕はいつの間にか慣れてしまったわけだ。
だから、考える余裕が生まれてしまった。
僕は今何をしているのか。
僕がすべきことは、今この世界で戦うことなのか。
そうして闘う先に、僕に何がある?
……気付いてしまった。
気づかないほうがよかったんだろうか。
だけど、いつかは考えなければならない問題。
そうして、暫くぼんやりと、僕はまだそこに佇んでいたと思う。
「でー、結局、どうするの?」
……先ほどの少女はまだ、そこにいた。
「僕がこの依頼に応じるか否かについて、あなたに何か関わりが?」
「あーうー。さっきから冷たいなー。スーパークールだなー。うん、何か悔しいから、君が参加するならあたしも参加するー」
……何故そうなる。何故。
溜息と共に、僕は告げた。
「……僕は、あなたと親しくなろうとは思いません」
分っている。
「別に、これまでのあなたの態度がどうというわけではありません。紅の世界に、深く立ち入るべきではないと、僕は考えます」
彼女が悪いわけでは、ないのだ。
目を丸くして、どうして、と視線で尋ねる彼女に、半ばやけにやって僕は答える。
先ほど浮かんだ、迷いの答えを。決意を、言葉にする。
「僕の目標は、地球へ帰ることです。帰って、父が目指した火星の空を掴む」
これから僕は、そのために闘う。ただそれだけを目指す。それはつまり。
「……もしその方法が発見された折には、いち早く地球へと帰還すべし、という態度をとることになるでしょう」
そう言って僕は少女を見る。案の定、あまり良く分っていないような顔をしていた。
「……つまり、いずれ帰ることになるから、仲良くしないってことなのかな?」
要はそういうことだが、それだけでは不足だ。
「……状況によっては、いずれ『見捨てて』帰るということになりえます」
災厄の十三魔、だったか。その脅威が喧伝されて喧しいこのごろだが、例えばその大半を残した状態で、地球への片道切符が手に入ったらどうするのだろうか?
あくまで仮定の話だが。
だけど、この先、目的を持って闘うならば。何かを決断しなければならないときは、くるのだろう。
「ふうん……」
少女が、そこで初めて、じっくり思案する顔を見せ、そして。
「なるほど。生真面目なんだねえ、君は」
それだけ言った。
……。
……。
暫く待った。
もしかして、それで終わり、なのか?
めまいを覚えながら、僕は無理矢理理解する。
「成程。天然なんですね、あなたは」
多分、この切り返しは半分くらいは意趣返しだろう。
ただまあ、結局はそういうことだ。この手の人間には、何を言っても通じない。
ならば、そう、僕に出来る最大の自衛は、さっさとこの場を切り上げることだ。
再びの溜息と共に、僕は所定の用紙を持って受付へと向かった。
「あ、結局応募するんだ」
「ひとまずは。出来ることからやっていくしか、当面の方針はありませんから」
なんのことはない雑魔退治だがCAM実験場からそう遠くはない。CAMを動かし、何れはロッソの動力を復活させる。現状、無理矢理目標を定めるとしたらこんなところだろう。
「あたしも応募していいかな?」
「……。止める権利は、僕にはありません」
めんどくさそうに僕は答えて。
決意はしたものの、まだ揺らいでいる己も自覚した。
これからはただ闘うのではなく、その中で己を見定めていかなければならない。
ちょうどそういう頃合で、機会なのだろう。
強引に、そう思うことに、した。
創設とほぼ同時に宇宙軍として勤めることになった父は、何もかもが新しいその事業の中でかなり忙しかったようで、家に戻れる日も、僕が起きている時刻に帰って来られる事はあまりなかった。
ただそれでも。
例えば、眠りの浅い夜に朧げに感じた、低く柔らかい声で呼ばれる己の名と、頭と頬を撫でる大きな掌の感触。
短い時間の中、不器用でも、残されたぬくもりはあった。
――愛されていたと、思う。
その推論が確信に変わる事は、もうないのだが。
父は、短い時間に語ってくれた夢もろとも。
火星へ向かう宙に砕け散ったからだ。
●
ハンターオフィスで、ぼんやりと掲示を見上げていたときだった。
「その依頼、受けるの?」
不意に掛けられた声に、振り向く。
一人の少女がそこにいた。服装と振る舞いからして、クリムゾンウェストの人と思われた。
「――……あなたは?」
「んーいや。あたしはなんとなく依頼探してるだけだから、まだ決めたわけじゃないけど」
「……。いえそうでなく。あなたは誰ですか?」
見覚えのない顔だった。もしかしていつかどこかの依頼で同行したのだろうかとも思ったが、引っ掛かる記憶はない。
「あーそうか。ごめんごめん、えっとあたしは――……」
てへ、と笑いながら少女が名乗る名は、やはり聞き覚えのないもの。
というか、改めて名乗るということはつまり。
「……初対面、ですよね?」
「うん、そうだよ」
「それでいきなり、声を掛けてきたと?」
「うん。なんか熱心に見てるなーと思って」
……。
いや、彼女の性格の良し悪しについて、ここで僕一人が判ずるのはよそう。
人によっては好ましく感じるものではあるのだろう。分け隔てなく振りまかれる愛想。それが、決して見た目も印象も悪くない少女からのものであればなおさら。
それが素直に受け止められない要因は、むしろどこかささくれ立った僕の気分のほうにある。
冷静になろうと、僕はそう分析して気持ちを落ち着けて――おや?
ささくれ立っている。
僕の気持ちは今、ささくれ立っているのか。
間の抜けたことに、そうして僕は今更、そのことを自覚した。
「それで、その依頼、何かあるの?」
お構い無しに、少女は再び話しかけてくる。……僕の心情はともかく、初対面の人間にいきなり声をかけたことについて、怪訝さを表明したことについてはもう少し構って欲しいのだが。
「……さあ」
ただ、僕がそっけなく返事をしたことは、別に意趣返しというわけではない。
傍目には熱心に見ていたように見えたのかも知れないが、実のところ、適当に視点を定めていただけで、内容などロクに頭に入っていなかったのだ。
改めて、依頼の内容を確認する。
最近良く見る、辺境での討伐依頼だった。
可もなく不可もない。だからこそ、これまでの僕であれば、こんなものかと応募していた依頼。
――今は即断できない。
要するに、今の生活にある程度余裕が出てきたということなのだろう。
突如異世界に飛ばされ、覚醒者とやらになり力に目覚めた結果、ひとまず生活の糧を得るためにハンターという生き方を選んだ。
思い返すそれだけで、眩暈がするような急転直下。……そんな激変にも、僕はいつの間にか慣れてしまったわけだ。
だから、考える余裕が生まれてしまった。
僕は今何をしているのか。
僕がすべきことは、今この世界で戦うことなのか。
そうして闘う先に、僕に何がある?
……気付いてしまった。
気づかないほうがよかったんだろうか。
だけど、いつかは考えなければならない問題。
そうして、暫くぼんやりと、僕はまだそこに佇んでいたと思う。
「でー、結局、どうするの?」
……先ほどの少女はまだ、そこにいた。
「僕がこの依頼に応じるか否かについて、あなたに何か関わりが?」
「あーうー。さっきから冷たいなー。スーパークールだなー。うん、何か悔しいから、君が参加するならあたしも参加するー」
……何故そうなる。何故。
溜息と共に、僕は告げた。
「……僕は、あなたと親しくなろうとは思いません」
分っている。
「別に、これまでのあなたの態度がどうというわけではありません。紅の世界に、深く立ち入るべきではないと、僕は考えます」
彼女が悪いわけでは、ないのだ。
目を丸くして、どうして、と視線で尋ねる彼女に、半ばやけにやって僕は答える。
先ほど浮かんだ、迷いの答えを。決意を、言葉にする。
「僕の目標は、地球へ帰ることです。帰って、父が目指した火星の空を掴む」
これから僕は、そのために闘う。ただそれだけを目指す。それはつまり。
「……もしその方法が発見された折には、いち早く地球へと帰還すべし、という態度をとることになるでしょう」
そう言って僕は少女を見る。案の定、あまり良く分っていないような顔をしていた。
「……つまり、いずれ帰ることになるから、仲良くしないってことなのかな?」
要はそういうことだが、それだけでは不足だ。
「……状況によっては、いずれ『見捨てて』帰るということになりえます」
災厄の十三魔、だったか。その脅威が喧伝されて喧しいこのごろだが、例えばその大半を残した状態で、地球への片道切符が手に入ったらどうするのだろうか?
あくまで仮定の話だが。
だけど、この先、目的を持って闘うならば。何かを決断しなければならないときは、くるのだろう。
「ふうん……」
少女が、そこで初めて、じっくり思案する顔を見せ、そして。
「なるほど。生真面目なんだねえ、君は」
それだけ言った。
……。
……。
暫く待った。
もしかして、それで終わり、なのか?
めまいを覚えながら、僕は無理矢理理解する。
「成程。天然なんですね、あなたは」
多分、この切り返しは半分くらいは意趣返しだろう。
ただまあ、結局はそういうことだ。この手の人間には、何を言っても通じない。
ならば、そう、僕に出来る最大の自衛は、さっさとこの場を切り上げることだ。
再びの溜息と共に、僕は所定の用紙を持って受付へと向かった。
「あ、結局応募するんだ」
「ひとまずは。出来ることからやっていくしか、当面の方針はありませんから」
なんのことはない雑魔退治だがCAM実験場からそう遠くはない。CAMを動かし、何れはロッソの動力を復活させる。現状、無理矢理目標を定めるとしたらこんなところだろう。
「あたしも応募していいかな?」
「……。止める権利は、僕にはありません」
めんどくさそうに僕は答えて。
決意はしたものの、まだ揺らいでいる己も自覚した。
これからはただ闘うのではなく、その中で己を見定めていかなければならない。
ちょうどそういう頃合で、機会なのだろう。
強引に、そう思うことに、した。
解説
なんか辺境に出た2mくらいの亜人型雑魔4体を退治する依頼で場所は辺境の荒野でOPの少年はイェーガーで少女はストライダーで同行しますが
その辺あんまり深く考えないでいいですか。
なぜなら、戦闘依頼は、たんに行き摺りの人間どうしがあつまって考えて欲しいだけのお膳立てで!
この依頼のカテゴリ自体は戦闘系じゃなくて心情系、だから、だ!
そんなわけで、どんな風に戦いながらどんなことを考えるか、そのお膳立てとして最低限情報は載せますが。適当にやれば勝てます。はい。
えー。
紅の世界に蒼の船が漂着してそれなりの時が過ぎました。
蒼の世界の人は、紅の世界で戦う、あるいは戦わされる自分のことを。
紅の世界の人は、当たり前のように蒼の世界の人が隣で闘うことを。
この辺で、今どう感じるのか、一旦考え、己を見つめなおしてみるなどいかがでしょう。
そんな、キャラクター掘り下げ用の依頼となります。
同じ依頼を見ていたあなた方は、OPの少年少女の会話を偶然耳にしたと思ってください。
(会話部分のみです。少年のモノローグ部分は、PCには分りません)
その上であなたは何を思ったでしょうか。
少年のようにうだうだ悩むもよし。
少女のようにスパッと割り切るもまたよしでしょう。
あ、別に少年の悩みを解消しろとかそういう依頼でもありません。
ガチで面倒くさいお年頃の14~15才です。見知らぬ人間の言葉一発でそうそう解決するもんじゃなし。
あくまで、あなたのロールプレイの一助として、少年や少女に話しかけるのはよし。
どうでもいいなら、うっちゃってけっこうです。
その辺あんまり深く考えないでいいですか。
なぜなら、戦闘依頼は、たんに行き摺りの人間どうしがあつまって考えて欲しいだけのお膳立てで!
この依頼のカテゴリ自体は戦闘系じゃなくて心情系、だから、だ!
そんなわけで、どんな風に戦いながらどんなことを考えるか、そのお膳立てとして最低限情報は載せますが。適当にやれば勝てます。はい。
えー。
紅の世界に蒼の船が漂着してそれなりの時が過ぎました。
蒼の世界の人は、紅の世界で戦う、あるいは戦わされる自分のことを。
紅の世界の人は、当たり前のように蒼の世界の人が隣で闘うことを。
この辺で、今どう感じるのか、一旦考え、己を見つめなおしてみるなどいかがでしょう。
そんな、キャラクター掘り下げ用の依頼となります。
同じ依頼を見ていたあなた方は、OPの少年少女の会話を偶然耳にしたと思ってください。
(会話部分のみです。少年のモノローグ部分は、PCには分りません)
その上であなたは何を思ったでしょうか。
少年のようにうだうだ悩むもよし。
少女のようにスパッと割り切るもまたよしでしょう。
あ、別に少年の悩みを解消しろとかそういう依頼でもありません。
ガチで面倒くさいお年頃の14~15才です。見知らぬ人間の言葉一発でそうそう解決するもんじゃなし。
あくまで、あなたのロールプレイの一助として、少年や少女に話しかけるのはよし。
どうでもいいなら、うっちゃってけっこうです。
マスターより
はーい。面倒くさい凪池の面倒くさいNPCでこんにちは。
皆様のおかれる状況について、実際に何かがすぐにどうこうなるとは思わないです。今はただ、皆様のPCらしさを見せていただければ、と。
今回は、物寂しくもどこか温かみのある、そんな音楽と共にお届けします。
皆様のおかれる状況について、実際に何かがすぐにどうこうなるとは思わないです。今はただ、皆様のPCらしさを見せていただければ、と。
今回は、物寂しくもどこか温かみのある、そんな音楽と共にお届けします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/01/25 15:55
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/13 17:55:55 |
|
![]() |
考え中。【相談卓】 エイル・メヌエット(ka2807) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/01/18 12:49:02 |