ゲスト
(ka0000)
血脈なき絆
マスター:有坂参八

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- サポート
- 現在1人 / 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/01/22 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/01/31 19:00
オープニング
●
歪虚ハイルタイの襲撃によって、有力部族オイマトの戦士達が多数戦死した事件は、辺境の部族たちに少なからぬ動揺を与えた。
余所者の帝国軍は兎も角として、同時に捜索を行ったスコール族さえもオイマト族を救えなかった。
その事実に、辺境の諸部族は今……心の拠り所を失いつつあった。
事件から数日後のある日、スコール族族長ファリフ・スコール(kz0009)はマギア砦の中庭で一人、物思いにふけっていた。
族長という肩書きからみればあまりに幼く無垢なこの少女にとって、こんなことはまれである。
だが、オイマト族の救出に失敗した日から、ファリフはずっと、この中庭で過ごしていた。
「『弱い獣が吼えるだけでは、縄張を守れない……』」
ファリフは小さな声で、呪文のように呟く。
オイマト族の戦士が大勢死んだあの日、ファリフは無力だった。
オイマトを救うため、あるいは、部族の誇りを守るために、先陣を切って戦っているつもりだった。
けれど実際は違う。事を成しているのは、オイマト族であり、手を貸してくれるハンター達であり、あるいは部族に帰順を迫る帝国軍であった。
知識も知恵も力もなく、ただ部族を守りたいと声高に叫ぶ……それは、そう、まさに子供の様な姿。
その残酷な事実を、ファリフはつきつけられた。
「……っ」
何度もこぼれそうになる涙を、ファリフは零すことなく堪えた。
勇敢なる戦士達を統べる者にとって、それは、許されない醜態だから。
――がさ
「……誰!?」
不意に背後の茂みが蠢き、ファリフは振り返った。
すぐに茂みの中から、小柄な背の丸い人影があらわれる。
「ふにゃぁ~。気づかれましたにゃ~」
現れたのは、辺境部族風の服をまとった、ファリフと同年代の少女。
だが、ただ事ではない。少女は傷だらけで、あちこち流血していた。
「テト?」
「おひさしぶりですにゃぁ、ファリフ」
その少女を、ファリフは知っていた。決して、近しい間柄でなかったが。
「その怪我、どうしたの」ファリフが問う。
「にゃにゃにゃ……順番に説明しにゃーなりませんにゃ」
対面する猫背の少女は、憔悴しきった表情でなお、精一杯に言葉を紡ぎだしていた。
「スコールの長殿。本日はお師匠様……蛇の戦士シバ(kz0048)の託により、お力添えを請いに参りましたにゃ」
「シバ……さん、が」
シバ。辺境に長年生きた戦士でありながら真っ先に帝国軍に降り、裏切り者の謗りを受けた男。
その名前を聞き、ファリフはほんの少し、背筋を伸ばした。
●
テトの語った内容はこうだ。
オイマト族捜索の際に帝国側への背信行為を行ったとして、シバは辺境帝国軍の審問隊ベヨネッテ・シュナイダーの監視を受ける様になった。
シバが辺境でも指折りの知識と情報力を持ち、帝国軍がそれを必要とする以上、帝国がシバを処断することは今の所ありえない。
だが、その行動が制限されてしまったのが、問題となった。
歪虚との戦いにあって、シバの報せはいつでも、並ぶ物がないほど程に早く、正確だった。
その理由こそは、彼と繋がる仲間。
テトは詳細を語らなかったものの、シバは自分と同じ、戦いで部族や故郷を失った戦士を集め、しかし戦いではなく諜報活動に従事する組織を作っていたらしい。
『部族なき部族』と自らを呼ぶその組織が情報収集活動に専念し、そこから情報を得たシバは自らの所属する山岳猟団を誘導、歪虚を撃退していたのだ。
本題は、ここからだ。
その『部族なき部族』の戦士が、歪虚の領域……マギア砦北東、黒き沼の森に取り残された。
近頃の騒動で動きを活発化させた歪虚を偵察する為に、テトを含む三人で敵地の奥深くに入った際、歪虚に察知されてしまった。
二人の戦士が囮となり、テトだけを包囲から抜け出させたが、その二人は今も敵に逃げ道を塞がれ、孤立したままだという。
●
「私達を襲ったのは、像みたいにでっかい真っ黒なイノシシの歪虚。心当たりはございませんかにゃ」
「たぶん、だけど……『黒槌グロボル』。大昔に森の北、紫の山脈より出でて、赤き大地の戦士を何人も殺した歪虚だ」
「さすが悠久の血脈スコールの長! 博識でございますにゃ」
「……おだてなくって、いいよ」
不意に無邪気に言い放ったテトに、ファリフは苦笑した。
「本来はシバ様に報告して知恵を仰ぐ所ですが、今のシバ様は虫篭に入ったバッタ状態ですにゃ。いま部族と接触してるのがばれたら、審問隊が何するか判らんですにゃ」
「それで、僕に……?」
ファリフの問いに、テトは頷く。
「それが、シバ様の託ですにゃ。窮して策失わば、スコールとオイマト、いずれかの長を頼れと」
その言葉にファリフは、にわかに信じられないといった風に、目を丸くした。
オイマト族は先の戦いで大打撃を受け、長のバタルトゥも部族の立て直しに奔走している。
とすれば……
「何よりも、黒き沼の森は、歪虚の手に陥ちるその前はスコール族の土地でしたにゃ。土地の事を知っていて、道理も通るってんなら、ファリフに頼むのが『べすと』ですにゃ」
「で、でも……」
ファリフは、言葉を淀ませ、肩を落とした。
いまや辺境を取り巻く情勢は、茨のごとく複雑に絡み始めている。
いかにその資質を見出されたといえ、幼い一人の少女がすべてを見通し、正しい判断を行うには、あまりにも……
「……シバ様が帝国軍に降った事、まだお恨みですかにゃ。これが、部族に服従を迫る帝国への助けになってしまうと。あるいは、オイマト族を救えにゃんだ、自分自身の力を疑っているとか」
「……っ」
猫背の少女の、金色の瞳が、ファリフをじっと見つめた。
「これ以上は私も申しませんにゃぁ。お願いは唯ひとつ……仲間を、助けて頂きたく」
それから、深く、頭を下げた。
ファリフは、黙ったままだ。
「これから、ハンターズソサエティにも助けを求めますにゃ。手伝ってくれるハンター達と戻ってきた時に、もう一度、答えをお伺いしますにゃぁ」
それっきりテトは姿を消し、その場にはファリフだけが取り残された。
テトが立っていた場所には、彼女の体から流れ落ちた血が、大地に赤い染みを作っていた。
ファリフはじっと立ち尽くし……その赤い染みを見つめ続けた。
歪虚ハイルタイの襲撃によって、有力部族オイマトの戦士達が多数戦死した事件は、辺境の部族たちに少なからぬ動揺を与えた。
余所者の帝国軍は兎も角として、同時に捜索を行ったスコール族さえもオイマト族を救えなかった。
その事実に、辺境の諸部族は今……心の拠り所を失いつつあった。
事件から数日後のある日、スコール族族長ファリフ・スコール(kz0009)はマギア砦の中庭で一人、物思いにふけっていた。
族長という肩書きからみればあまりに幼く無垢なこの少女にとって、こんなことはまれである。
だが、オイマト族の救出に失敗した日から、ファリフはずっと、この中庭で過ごしていた。
「『弱い獣が吼えるだけでは、縄張を守れない……』」
ファリフは小さな声で、呪文のように呟く。
オイマト族の戦士が大勢死んだあの日、ファリフは無力だった。
オイマトを救うため、あるいは、部族の誇りを守るために、先陣を切って戦っているつもりだった。
けれど実際は違う。事を成しているのは、オイマト族であり、手を貸してくれるハンター達であり、あるいは部族に帰順を迫る帝国軍であった。
知識も知恵も力もなく、ただ部族を守りたいと声高に叫ぶ……それは、そう、まさに子供の様な姿。
その残酷な事実を、ファリフはつきつけられた。
「……っ」
何度もこぼれそうになる涙を、ファリフは零すことなく堪えた。
勇敢なる戦士達を統べる者にとって、それは、許されない醜態だから。
――がさ
「……誰!?」
不意に背後の茂みが蠢き、ファリフは振り返った。
すぐに茂みの中から、小柄な背の丸い人影があらわれる。
「ふにゃぁ~。気づかれましたにゃ~」
現れたのは、辺境部族風の服をまとった、ファリフと同年代の少女。
だが、ただ事ではない。少女は傷だらけで、あちこち流血していた。
「テト?」
「おひさしぶりですにゃぁ、ファリフ」
その少女を、ファリフは知っていた。決して、近しい間柄でなかったが。
「その怪我、どうしたの」ファリフが問う。
「にゃにゃにゃ……順番に説明しにゃーなりませんにゃ」
対面する猫背の少女は、憔悴しきった表情でなお、精一杯に言葉を紡ぎだしていた。
「スコールの長殿。本日はお師匠様……蛇の戦士シバ(kz0048)の託により、お力添えを請いに参りましたにゃ」
「シバ……さん、が」
シバ。辺境に長年生きた戦士でありながら真っ先に帝国軍に降り、裏切り者の謗りを受けた男。
その名前を聞き、ファリフはほんの少し、背筋を伸ばした。
●
テトの語った内容はこうだ。
オイマト族捜索の際に帝国側への背信行為を行ったとして、シバは辺境帝国軍の審問隊ベヨネッテ・シュナイダーの監視を受ける様になった。
シバが辺境でも指折りの知識と情報力を持ち、帝国軍がそれを必要とする以上、帝国がシバを処断することは今の所ありえない。
だが、その行動が制限されてしまったのが、問題となった。
歪虚との戦いにあって、シバの報せはいつでも、並ぶ物がないほど程に早く、正確だった。
その理由こそは、彼と繋がる仲間。
テトは詳細を語らなかったものの、シバは自分と同じ、戦いで部族や故郷を失った戦士を集め、しかし戦いではなく諜報活動に従事する組織を作っていたらしい。
『部族なき部族』と自らを呼ぶその組織が情報収集活動に専念し、そこから情報を得たシバは自らの所属する山岳猟団を誘導、歪虚を撃退していたのだ。
本題は、ここからだ。
その『部族なき部族』の戦士が、歪虚の領域……マギア砦北東、黒き沼の森に取り残された。
近頃の騒動で動きを活発化させた歪虚を偵察する為に、テトを含む三人で敵地の奥深くに入った際、歪虚に察知されてしまった。
二人の戦士が囮となり、テトだけを包囲から抜け出させたが、その二人は今も敵に逃げ道を塞がれ、孤立したままだという。
●
「私達を襲ったのは、像みたいにでっかい真っ黒なイノシシの歪虚。心当たりはございませんかにゃ」
「たぶん、だけど……『黒槌グロボル』。大昔に森の北、紫の山脈より出でて、赤き大地の戦士を何人も殺した歪虚だ」
「さすが悠久の血脈スコールの長! 博識でございますにゃ」
「……おだてなくって、いいよ」
不意に無邪気に言い放ったテトに、ファリフは苦笑した。
「本来はシバ様に報告して知恵を仰ぐ所ですが、今のシバ様は虫篭に入ったバッタ状態ですにゃ。いま部族と接触してるのがばれたら、審問隊が何するか判らんですにゃ」
「それで、僕に……?」
ファリフの問いに、テトは頷く。
「それが、シバ様の託ですにゃ。窮して策失わば、スコールとオイマト、いずれかの長を頼れと」
その言葉にファリフは、にわかに信じられないといった風に、目を丸くした。
オイマト族は先の戦いで大打撃を受け、長のバタルトゥも部族の立て直しに奔走している。
とすれば……
「何よりも、黒き沼の森は、歪虚の手に陥ちるその前はスコール族の土地でしたにゃ。土地の事を知っていて、道理も通るってんなら、ファリフに頼むのが『べすと』ですにゃ」
「で、でも……」
ファリフは、言葉を淀ませ、肩を落とした。
いまや辺境を取り巻く情勢は、茨のごとく複雑に絡み始めている。
いかにその資質を見出されたといえ、幼い一人の少女がすべてを見通し、正しい判断を行うには、あまりにも……
「……シバ様が帝国軍に降った事、まだお恨みですかにゃ。これが、部族に服従を迫る帝国への助けになってしまうと。あるいは、オイマト族を救えにゃんだ、自分自身の力を疑っているとか」
「……っ」
猫背の少女の、金色の瞳が、ファリフをじっと見つめた。
「これ以上は私も申しませんにゃぁ。お願いは唯ひとつ……仲間を、助けて頂きたく」
それから、深く、頭を下げた。
ファリフは、黙ったままだ。
「これから、ハンターズソサエティにも助けを求めますにゃ。手伝ってくれるハンター達と戻ってきた時に、もう一度、答えをお伺いしますにゃぁ」
それっきりテトは姿を消し、その場にはファリフだけが取り残された。
テトが立っていた場所には、彼女の体から流れ落ちた血が、大地に赤い染みを作っていた。
ファリフはじっと立ち尽くし……その赤い染みを見つめ続けた。
解説
●依頼内容
黒き沼の森に取り残された『部族なき部族』二名の救出。
以上
●『部族なき部族』
救出対象である二人は、森の中にある洞窟に逃げ込んだものの、出口を黒槌グロボルに塞がれて孤立しています。
二人とも、部族を戦いで失った辺境出身の霊闘士です。
●黒き沼の森
マギア砦の北東にある森林地帯。
所々に沼地があり、道が少し入り組んでいます。
●黒槌グロボル
象ほどの大きさの、黒い猪型の歪虚。
木々を薙ぎ倒す程の強烈な突進が、唯一にして最大の攻撃。
言葉は解しませんが獣を凌ぐ知能を持ち、洞窟内部に二人を追い込んだのも明確な意図を持つ行動と思われます。
●味方
ファリフ:
幼きスコール族長。
黒き沼の森については、口伝で教えられた程度の知識を持っている模様。
本来ならば明朗にして勇敢な性格の霊闘士ですが、昨今の事件によって自信を喪失しています。
テト:
帝国軍に降った辺境の戦士シバの弟子にして、『部族なき部族』の一員。なんとなく猫っぽい。
現場の状況を詳しく知っているはずですが、負傷しています。
二人の行動は、ハンターのプレイングに大きく影響を受けます。
質問にはファリフが、可能な範囲で回答します。
黒き沼の森に取り残された『部族なき部族』二名の救出。
以上
●『部族なき部族』
救出対象である二人は、森の中にある洞窟に逃げ込んだものの、出口を黒槌グロボルに塞がれて孤立しています。
二人とも、部族を戦いで失った辺境出身の霊闘士です。
●黒き沼の森
マギア砦の北東にある森林地帯。
所々に沼地があり、道が少し入り組んでいます。
●黒槌グロボル
象ほどの大きさの、黒い猪型の歪虚。
木々を薙ぎ倒す程の強烈な突進が、唯一にして最大の攻撃。
言葉は解しませんが獣を凌ぐ知能を持ち、洞窟内部に二人を追い込んだのも明確な意図を持つ行動と思われます。
●味方
ファリフ:
幼きスコール族長。
黒き沼の森については、口伝で教えられた程度の知識を持っている模様。
本来ならば明朗にして勇敢な性格の霊闘士ですが、昨今の事件によって自信を喪失しています。
テト:
帝国軍に降った辺境の戦士シバの弟子にして、『部族なき部族』の一員。なんとなく猫っぽい。
現場の状況を詳しく知っているはずですが、負傷しています。
二人の行動は、ハンターのプレイングに大きく影響を受けます。
質問にはファリフが、可能な範囲で回答します。
マスターより
この依頼をご紹介いたします、有坂参八と申します。
過去依頼「【虚動】未来への錯綜」から直接繋がる物語となります。
辺境を取り巻く問題は今や複雑に絡まりつつあり、ただ『依頼』を解決するだけでは良い結果が得られないかもしれません。
同時に、ここが正念場、皆様ハンターの真価を問われる時ともなるでしょう。
どうか、助けを必要とする者に、手を差し伸べて頂きたく思います。
過去依頼「【虚動】未来への錯綜」から直接繋がる物語となります。
辺境を取り巻く問題は今や複雑に絡まりつつあり、ただ『依頼』を解決するだけでは良い結果が得られないかもしれません。
同時に、ここが正念場、皆様ハンターの真価を問われる時ともなるでしょう。
どうか、助けを必要とする者に、手を差し伸べて頂きたく思います。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/01/30 06:39
参加者一覧
サポート一覧
- アカーシャ・ヘルメース(ka0473)
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 三日月 壱(ka0244) 人間(リアルブルー)|14才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/01/22 00:15:21 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/20 01:20:46 |