ゲスト
(ka0000)
プレゼントはレンチ?
マスター:サトー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 4~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/01/27 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/02/05 12:00
オープニング
●1
蒸気工場都市フマーレ。その商業区に、一組の男女がいた。
「もう何をプレゼントするか決めたのかい?」
灰色のつなぎを着た三十過ぎの細面の男が、手を繋ぐ少女に問いかける。
「ううん、まだ」
少女は男――シンクを振り仰いで、さらさらとした緑の髪を横に振る。円らな瞳は困ったように歪み、細い鼻梁が悲しげに縮む。少女は薄い唇を尖らせた。
「ねぇ、パパ。男の子は何を貰ったら嬉しいの?」
八歳となる娘の友人へのプレゼント。まだ恋心とまではいかないだろうが、娘がその同い年の友人を慕っているのはよく分かっている。まだまだ娘はやれないが、誕生日のプレゼント位は上げてもいいだろう。
雑貨店には、様々な商品が並んでいる。娘には、どれを上げれば男の子が喜ぶのか分かっていない。
シンクはうーんと唸る。
「そうだなぁ……。やっぱり、これかな」
そう言ってシンクが懐から取り出したのは、一本のレンチ。シンクの仕事道具だ。
「それをあげると喜ぶの?」
娘の問いに、シンクはしっかと頷く。
「ああそうだ。ピッキオ君も大きくなったら、絶対に必要になる。今から自分のを持てたらきっと喜ぶぞ」
「そうなんだぁ」
父を疑うような娘ではない。彼女はレンチが置いてある棚を眺めて、すっかりそれを貰って喜ぶピッキオの姿を思い浮かべていた。
と、店内にドスの利いた声が響く。
「意固地になっても、いいことなんてねえぞ!」
「うるさい! 何度言っても同じだ! さっさと帰ってくれ!」
「けっ、後悔すんなよ」
店主が胡乱な者達を外へ追い払う。
「どうかしたんですか?」
つい気になって、シンクは店主に尋ねた。
「ああ、立ち退きしろってしつこくてね」
男達は二束三文で立ち退きを迫ってくるらしい。陸軍に相談してはというシンクに、店主はそこまでのことじゃないよ、その内諦めるさと笑って流した。
シンクはふと手を強く握られた。どうやら娘は、今の状況を少し怖がっているらしい。彼は店を出ることにした。日暮れは近い。そうゆっくり品を選んでもいられない。今日はもう諦めたほうがいいか。
そうして、少し行ったところで、路地裏から怪しげな声が届く。
「――もう力づくにしましょうや」
シンクは路地裏を透かし見る。先ほどの男達だった。
「そうだな。もう限界だ」
「なに、ちょっと痛めつけてやればすぐに――」
何やら良からぬ事を企んでいるようだ。誰かに知らせなければ、と振り返った瞬間、シンクは腹に強烈な痛みを感じた。
「盗み聞きは良くないぜ」
「どうするんですかい?」
住宅区の外れ、木々に隠れるように立つ木造の平屋にて、先ほどの荒くれ者達は顔を突き合わせている。
「つい勢いで攫っちまったが」
十人の男が囲むのは、気を失っている一人の少女。少女は長い睫を伏せて、すやすやと眠りについている。
「このままじゃ足がつきますぜ。どうにかしないと」
「んなことは分かってる!」
親分らしき男が怒鳴ると、子分達は一斉に押し黙った。
「おい、馬の用意しとけ」
「へい」
二人が裏口から外に出る。もう外はすっかり日が落ちていた。馬小屋に繋がれた馬の嘶きが、しんとした辺りに染みる。
「最悪、場所を変えなきゃならんかもな」
親分の呟きに、子分の一人がため息を漏らしてその場を離れた。折角あと一息という所まで来ているのに、と子分の嘆き顔が窓に映る。
「ん? 親分!」
「なんだ?」
「誰か来やすぜ!」
「なに!?」
ここら辺は人通りなど滅多に無い。しかも、もうこんな時間だ。それも、今日は失態を犯したばかり。こんな時に人が訪れて来るなど偶然のはずがない。
「明かりを消せ! ドアは全部開けるな! 適当に追い返せ!」
親分は椅子や置物を辺りに転がし、卓を盾のように立てかけその陰に身を隠す。
明かりの落ちた部屋。月明かりを背に、親分は少女を抱え、懐から刃物を出す。いざというときは――。
●2
若い女が走っていた。
商業区に買い物に出かけた夫と娘が帰らないのだ。もう日は沈んでいる。幾ら何でも遅い。最初はゆっくり歩いていたものの、探し始めてから一時間が経過した頃から、女の脚は徐々に回転を増した。
女は走り、夫と娘が行きそうな店を訪ねて回る。だが、どこにも姿は無い。
途切れる息を整えつつ、女は曲がり角を曲がろうとした。
「きゃっ」
出会い頭にぶつかって倒れた女に手を差し伸べたのは、やたら雰囲気のある集団。お互いに謝罪しつつ、すぐに駆けようとした女を、集団の一人が呼び止める。
「随分お急ぎのようで」
尋常ではない女の様子に、ピンときたのだろうか。何か困っているのではないかと問われ、女は一にも二にもなく肯定する。力になれるかもしれない、という彼らに、女は事情を打ち明けた。
人手が欲しい。一人で探すよりも、人数がいた方が楽なのは間違いない。
事情を聞いた集団は、落ち着いた様子で胸を叩いた。
「後はハンターにお任せを」
●3
「くそっ!」
暗闇の中、シンクは何度も身をよじる。後ろ手に結ばれた縄を何度も何度も壁に、柱に、置物にこすり付ける。かれこれ一時間はそうしているだろうか。全身汗まみれだ。
「っっ……よしっ!」
その成果が実り、漸く縄が切れ自由になった。とはいえ、辺りは真っ暗闇。
シンクは手探りで出口を探す。しばらくして探り当てた扉を押したり引いたりしてみるも、全くびくともしない。悪態が漏れる。どこかの建物の地下室に放置されたことまでは分かっている。娘が傍にいないということも。
父は焦っていた。娘は無事なのか。ただただ、それだけが気がかりだった。
「セルバ……。待ってろ……」
不意に物音がする。シンクは耳を澄ませた。何やら上が騒がしい。
と、階段を降りて来る足音が聞こえた。
シンクは扉の脇に隠れる。手にはレンチが握りしめられている。
扉を開けたが最後。シンクはいつでも飛びかかれるように、身構えてその時を待った――。
蒸気工場都市フマーレ。その商業区に、一組の男女がいた。
「もう何をプレゼントするか決めたのかい?」
灰色のつなぎを着た三十過ぎの細面の男が、手を繋ぐ少女に問いかける。
「ううん、まだ」
少女は男――シンクを振り仰いで、さらさらとした緑の髪を横に振る。円らな瞳は困ったように歪み、細い鼻梁が悲しげに縮む。少女は薄い唇を尖らせた。
「ねぇ、パパ。男の子は何を貰ったら嬉しいの?」
八歳となる娘の友人へのプレゼント。まだ恋心とまではいかないだろうが、娘がその同い年の友人を慕っているのはよく分かっている。まだまだ娘はやれないが、誕生日のプレゼント位は上げてもいいだろう。
雑貨店には、様々な商品が並んでいる。娘には、どれを上げれば男の子が喜ぶのか分かっていない。
シンクはうーんと唸る。
「そうだなぁ……。やっぱり、これかな」
そう言ってシンクが懐から取り出したのは、一本のレンチ。シンクの仕事道具だ。
「それをあげると喜ぶの?」
娘の問いに、シンクはしっかと頷く。
「ああそうだ。ピッキオ君も大きくなったら、絶対に必要になる。今から自分のを持てたらきっと喜ぶぞ」
「そうなんだぁ」
父を疑うような娘ではない。彼女はレンチが置いてある棚を眺めて、すっかりそれを貰って喜ぶピッキオの姿を思い浮かべていた。
と、店内にドスの利いた声が響く。
「意固地になっても、いいことなんてねえぞ!」
「うるさい! 何度言っても同じだ! さっさと帰ってくれ!」
「けっ、後悔すんなよ」
店主が胡乱な者達を外へ追い払う。
「どうかしたんですか?」
つい気になって、シンクは店主に尋ねた。
「ああ、立ち退きしろってしつこくてね」
男達は二束三文で立ち退きを迫ってくるらしい。陸軍に相談してはというシンクに、店主はそこまでのことじゃないよ、その内諦めるさと笑って流した。
シンクはふと手を強く握られた。どうやら娘は、今の状況を少し怖がっているらしい。彼は店を出ることにした。日暮れは近い。そうゆっくり品を選んでもいられない。今日はもう諦めたほうがいいか。
そうして、少し行ったところで、路地裏から怪しげな声が届く。
「――もう力づくにしましょうや」
シンクは路地裏を透かし見る。先ほどの男達だった。
「そうだな。もう限界だ」
「なに、ちょっと痛めつけてやればすぐに――」
何やら良からぬ事を企んでいるようだ。誰かに知らせなければ、と振り返った瞬間、シンクは腹に強烈な痛みを感じた。
「盗み聞きは良くないぜ」
「どうするんですかい?」
住宅区の外れ、木々に隠れるように立つ木造の平屋にて、先ほどの荒くれ者達は顔を突き合わせている。
「つい勢いで攫っちまったが」
十人の男が囲むのは、気を失っている一人の少女。少女は長い睫を伏せて、すやすやと眠りについている。
「このままじゃ足がつきますぜ。どうにかしないと」
「んなことは分かってる!」
親分らしき男が怒鳴ると、子分達は一斉に押し黙った。
「おい、馬の用意しとけ」
「へい」
二人が裏口から外に出る。もう外はすっかり日が落ちていた。馬小屋に繋がれた馬の嘶きが、しんとした辺りに染みる。
「最悪、場所を変えなきゃならんかもな」
親分の呟きに、子分の一人がため息を漏らしてその場を離れた。折角あと一息という所まで来ているのに、と子分の嘆き顔が窓に映る。
「ん? 親分!」
「なんだ?」
「誰か来やすぜ!」
「なに!?」
ここら辺は人通りなど滅多に無い。しかも、もうこんな時間だ。それも、今日は失態を犯したばかり。こんな時に人が訪れて来るなど偶然のはずがない。
「明かりを消せ! ドアは全部開けるな! 適当に追い返せ!」
親分は椅子や置物を辺りに転がし、卓を盾のように立てかけその陰に身を隠す。
明かりの落ちた部屋。月明かりを背に、親分は少女を抱え、懐から刃物を出す。いざというときは――。
●2
若い女が走っていた。
商業区に買い物に出かけた夫と娘が帰らないのだ。もう日は沈んでいる。幾ら何でも遅い。最初はゆっくり歩いていたものの、探し始めてから一時間が経過した頃から、女の脚は徐々に回転を増した。
女は走り、夫と娘が行きそうな店を訪ねて回る。だが、どこにも姿は無い。
途切れる息を整えつつ、女は曲がり角を曲がろうとした。
「きゃっ」
出会い頭にぶつかって倒れた女に手を差し伸べたのは、やたら雰囲気のある集団。お互いに謝罪しつつ、すぐに駆けようとした女を、集団の一人が呼び止める。
「随分お急ぎのようで」
尋常ではない女の様子に、ピンときたのだろうか。何か困っているのではないかと問われ、女は一にも二にもなく肯定する。力になれるかもしれない、という彼らに、女は事情を打ち明けた。
人手が欲しい。一人で探すよりも、人数がいた方が楽なのは間違いない。
事情を聞いた集団は、落ち着いた様子で胸を叩いた。
「後はハンターにお任せを」
●3
「くそっ!」
暗闇の中、シンクは何度も身をよじる。後ろ手に結ばれた縄を何度も何度も壁に、柱に、置物にこすり付ける。かれこれ一時間はそうしているだろうか。全身汗まみれだ。
「っっ……よしっ!」
その成果が実り、漸く縄が切れ自由になった。とはいえ、辺りは真っ暗闇。
シンクは手探りで出口を探す。しばらくして探り当てた扉を押したり引いたりしてみるも、全くびくともしない。悪態が漏れる。どこかの建物の地下室に放置されたことまでは分かっている。娘が傍にいないということも。
父は焦っていた。娘は無事なのか。ただただ、それだけが気がかりだった。
「セルバ……。待ってろ……」
不意に物音がする。シンクは耳を澄ませた。何やら上が騒がしい。
と、階段を降りて来る足音が聞こえた。
シンクは扉の脇に隠れる。手にはレンチが握りしめられている。
扉を開けたが最後。シンクはいつでも飛びかかれるように、身構えてその時を待った――。
解説
目的:
シンク(父)とセルバ(娘)の救出。
状況:
フマーレ住宅区の外れ、木造の平屋。
馬の嘶きすら室内に聞こえてくるほど、閑静な場所。
荒くれ者10人。非覚醒者。
地下室への隠し扉は小部屋内にありますが、カモフラージュされています。
簡単な調査で判明すること:
・●1に出て来る雑貨店に父娘がいたこと。
・店主と荒くれ者達が揉めていること。
・その後、荒くれ者達が父娘を背負って歩いているところを見た者がいること。
・荒くれ者達が住宅区の外れに向かったこと。
・向かった先には、当該の家屋しか存在しないこと。
建物内:
出入口は正面玄関と裏口。
窓は2つ、大部屋のみ。小窓が1。人間サイズの大窓が1。小窓は玄関脇。大窓は……。
部屋は小部屋が1。大部屋が1。地下室1。キッチンなどは省略。
大部屋は広さ10m四方ほど。小部屋は4m四方ほど。地下室は6m四方ほど。
家具は棚や卓、椅子やソファーなど、一般的な範囲内で置かれています。
凡その図(雑ですが)
―玄関----------|
| 小 |
| 大部屋 | 部屋 |
| |__ _|
| | 裏口
| 親分 |
――――――――― 馬小屋
備考:
●1の最後に平屋に近づいて来る人と●2に出て来るハンターは、皆さんのことです。
時系列は●1前半→●2→●1後半→●3。
●3はリプレイの終盤のことになるかと思います。プレイング次第で、足音の主が変わります。
荒くれ者の中には、一目散に逃走を図る者もいます。
シンク(父)とセルバ(娘)の救出。
状況:
フマーレ住宅区の外れ、木造の平屋。
馬の嘶きすら室内に聞こえてくるほど、閑静な場所。
荒くれ者10人。非覚醒者。
地下室への隠し扉は小部屋内にありますが、カモフラージュされています。
簡単な調査で判明すること:
・●1に出て来る雑貨店に父娘がいたこと。
・店主と荒くれ者達が揉めていること。
・その後、荒くれ者達が父娘を背負って歩いているところを見た者がいること。
・荒くれ者達が住宅区の外れに向かったこと。
・向かった先には、当該の家屋しか存在しないこと。
建物内:
出入口は正面玄関と裏口。
窓は2つ、大部屋のみ。小窓が1。人間サイズの大窓が1。小窓は玄関脇。大窓は……。
部屋は小部屋が1。大部屋が1。地下室1。キッチンなどは省略。
大部屋は広さ10m四方ほど。小部屋は4m四方ほど。地下室は6m四方ほど。
家具は棚や卓、椅子やソファーなど、一般的な範囲内で置かれています。
凡その図(雑ですが)
―玄関----------|
| 小 |
| 大部屋 | 部屋 |
| |__ _|
| | 裏口
| 親分 |
――――――――― 馬小屋
備考:
●1の最後に平屋に近づいて来る人と●2に出て来るハンターは、皆さんのことです。
時系列は●1前半→●2→●1後半→●3。
●3はリプレイの終盤のことになるかと思います。プレイング次第で、足音の主が変わります。
荒くれ者の中には、一目散に逃走を図る者もいます。
マスターより
お疲れさまでございます。
ピッキオ君の好みは謎です。ですが、まだ8歳なので、歳相応の物の方が喜びそうですね。
いや、もしかしたら、案外レンチでも喜ぶ変わり者の子なのかもしれません。どうなんでしょう。
おやすみなさい。
ピッキオ君の好みは謎です。ですが、まだ8歳なので、歳相応の物の方が喜びそうですね。
いや、もしかしたら、案外レンチでも喜ぶ変わり者の子なのかもしれません。どうなんでしょう。
おやすみなさい。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/02/02 17:20
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/27 08:11:23 |
|
![]() |
相談用 サントール・アスカ(ka2820) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/01/27 08:09:38 |