ゲスト
(ka0000)
裁かれし者
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/01/24 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/02/02 19:00
オープニング
「――おかえりなさい、アイリス!」
扉が開いた瞬間、階段を駆け下りて女は少女に笑顔を向けた。
「ただいま、姉さん」
「お努めご苦労様! 怪我はなかった? 大丈夫?」
「森に侵入したゴブリンを追い払っただけですよ」
しかし姉は外套の下に手を隠す少女の仕草を見逃さなかった。引っ張りだすと、少女は腕に傷を負っていた。
「これは……その……」
「どうして隠すの? 痛い事や辛い事、隠さないでってお願いしてるのに」
「すみません……」
「じゃなくて?」
「……手当をお願いします、姉さん」
姉は笑顔を作り、妹を椅子に座らせると手当を始める。
二人は本当の家族ではなかったが、妹がまだ物心ついたばかりの頃からずっと一緒なのだ。
他人行儀な仕草をされるのは嫌だったし、妹には自分を本当の家族だと思って欲しかったのだが、妹は少々真面目過ぎた。
一人で生きていけるようにと里の警備隊に志願し、めきめきと頭角を表したのはいい。ただ、それが自分に迷惑をかけず生きる為だと思うと、どうにも寂しさがこみ上げる。
「警備隊では上手くやれてる? 最年少で部隊長だって聞いたけど」
「先人に助けられながら、なんとか」
「そっか。本当、出来のいい妹で姉さん鼻が高いな。だけど、無茶だけはしないでね」
「心配無用です。姉さんこそ、“図書館”の一員として多忙なのですから。私に構わずとも……」
「妹を構わない姉なんていません! もう、何も心配しないでずっと家にいたらいいのに!」
「そういうわけには……ね、姉さん……苦しいです」
突然姉に抱きしめられ顔を赤らめる妹。その視線の先、机の上には姉の開いた本があった。
あれは読書用ではない。書庫の一員である姉が情報をまとめる為に使っている執筆用だ。
「姉さん、あれは?」
「うん? 維新派の活動を纏めていたのよ」
その言葉に妹は苦い表情を浮かべる。
「維新派……人間と和解しようという一派でしたか。私には到底理解出来ませんね」
「人には言葉も文化も感情もあるのよ。話が出来るのなら、分かり合う事は可能だわ。いずれはゴブリンとも仲良くなれば、誰も傷つかずに済むでしょう?」
妹は無表情に目を逸らした。
森を実際に守る為に戦う警備隊の妹と、森の未来を想うも書庫に篭もり情報だけを知る姉。両者には温度差があった。
だが姉は本気で信じていたのだ。いずれこの森が開かれ、帝国に限らず全ての人間と手を取り合える日が、
「――目が覚めたか?」
夢は突然終わりを告げた。頭から被せられた冷水の冷たさに身体の芯まで凍てつくようだった。
エルフハイムの奥地にある石牢の一つ。天井から下がる鎖にジエルデ・エルフハイムが繋がれてから何日が経過しただろう。
長老の一人と、執行者が一人。青ざめた顔を上げジエルデは目を細める。
「長老にも罰は必要だ。特別若い貴様は尚更である」
秘宝である浄化の器を人前に晒し、挙句その器に触れるという禁忌を犯した。その罰が監禁なら安い物だ。
長老だからこれで済んでいるのだ。その辺のエルフや人間ならどうなっていた事か。
「申し訳……ございません」
「我々も貴様を重宝している。本意ではないが、罰は与えねばならん」
執行者は前に出ると、丸めた鞭を伸ばす。ジエルデは息を吐き、ただ頭の中をからっぽにする。
「申し訳ございません」
それが一番早く済むし楽だという事は、こう何度も投獄されれば理解する。
「もうしわ、け……ございません」
痛みも苦しみも、心を捨てれば堪えられる。
「申し訳……ぐっ、ございま……せ……」
楽しい事だけ思い出そう。少しでも早く終わるように。
まだ大切な家族と、妹と一緒に過ごしていたあの頃の事を。
「もう、し……わ、けっ、ござ……いっ、ま……せっ……あっ、うあ……」
はにかむように笑う妹の頭を撫で、一日の終わりに話を聞こう。本を書く手を止めて、お茶を淹れて、それで――。
「タングラム様、どちらへ?」
フクカンに何も返事もせず、タングラムはAPVを後にした。
空はどんよりと曇り、一雨降りそうな気配だ。握り締めた手紙に一度目を落とし、重い足取りで歩き出した。
フクカンが預かっていた手紙は、或いはこの幸せな時間を終わらせる為の物だった。だから何も言えなかったのだ。
これから自分がどうなるかわからない。だからこそ、誰も巻き込むわけにはいかない。
向かった先はリゼリオを出て暫く行った街道沿いにある雑木林の中だ。さして視界も悪くない、しかし人のあまり立ち寄らないその場所で男は待っていた。
「逃げずに来るとは思わなかったぜ。タングラム……いや、アイリス・エルフハイム」
あの外套には覚えがある。エルフハイム警備隊の……いや。独特の鋭い殺気は紛れも無く“執行者”のものだ。
「否定しないんだな。まさかお前が人間と一緒に、しかも帝国の手先として仲良くやってるとは誰も思わなかったろうぜ。俺もお前を見つけたのは単なる偶然……いや、お前のお仲間のハンターのお陰だった」
執行者が追いかけるのはエルフハイムに害を成すと長老会が定めた咎人達。その中でも特別な大罪人としてアイリスの名は語られる。
「俺はあんたの事は知らないが、あんたが何をしたのかは知っている。そして……あんたの家族が今どんな目に遭っているのかもな」
「きみは、ジエルデと親しいのですか?」
「ただの上司でそれ以上でも以下でもねぇがな。あんたが居なくなった後、あいつがどんな地獄を生きてきたのかは知ってんだよ」
――かつて、エルフハイムに反旗を翻し、人間と組んで森を焼いたとされる大罪人、アイリス・エルフハイム。
その者は部下でもあった警備隊を壊滅させ、執行者四名を返り討ちにし、当時の“浄化の器”を強奪。逃亡戦の挙句、器を殺害したという。
「お前の姉貴だってだけで、あいつは死んだ方がマシな目に遭ってんだ。死ぬ事すら許されずしょっちゅう一人でメソメソ泣いてんだ。別に世直しがしたいわけじゃねぇが、寝覚めが悪すぎんだよ」
唾を吐きながらタングラムを睨み、男は拳を構える。
「何故里を裏切った? ジエルデは育ての親代わりでもあったはずだ。あんたに情ってもんはねぇのか?」
「きみに答える義理はないのですね」
「……そうかい。だったら力づくで聞かせてもらうまでだッ!!」
音もなく、しかし強い踏み込みで加速する執行者。タングラムは無言で二対の短剣を抜き、繰り出される拳に身構えた。
扉が開いた瞬間、階段を駆け下りて女は少女に笑顔を向けた。
「ただいま、姉さん」
「お努めご苦労様! 怪我はなかった? 大丈夫?」
「森に侵入したゴブリンを追い払っただけですよ」
しかし姉は外套の下に手を隠す少女の仕草を見逃さなかった。引っ張りだすと、少女は腕に傷を負っていた。
「これは……その……」
「どうして隠すの? 痛い事や辛い事、隠さないでってお願いしてるのに」
「すみません……」
「じゃなくて?」
「……手当をお願いします、姉さん」
姉は笑顔を作り、妹を椅子に座らせると手当を始める。
二人は本当の家族ではなかったが、妹がまだ物心ついたばかりの頃からずっと一緒なのだ。
他人行儀な仕草をされるのは嫌だったし、妹には自分を本当の家族だと思って欲しかったのだが、妹は少々真面目過ぎた。
一人で生きていけるようにと里の警備隊に志願し、めきめきと頭角を表したのはいい。ただ、それが自分に迷惑をかけず生きる為だと思うと、どうにも寂しさがこみ上げる。
「警備隊では上手くやれてる? 最年少で部隊長だって聞いたけど」
「先人に助けられながら、なんとか」
「そっか。本当、出来のいい妹で姉さん鼻が高いな。だけど、無茶だけはしないでね」
「心配無用です。姉さんこそ、“図書館”の一員として多忙なのですから。私に構わずとも……」
「妹を構わない姉なんていません! もう、何も心配しないでずっと家にいたらいいのに!」
「そういうわけには……ね、姉さん……苦しいです」
突然姉に抱きしめられ顔を赤らめる妹。その視線の先、机の上には姉の開いた本があった。
あれは読書用ではない。書庫の一員である姉が情報をまとめる為に使っている執筆用だ。
「姉さん、あれは?」
「うん? 維新派の活動を纏めていたのよ」
その言葉に妹は苦い表情を浮かべる。
「維新派……人間と和解しようという一派でしたか。私には到底理解出来ませんね」
「人には言葉も文化も感情もあるのよ。話が出来るのなら、分かり合う事は可能だわ。いずれはゴブリンとも仲良くなれば、誰も傷つかずに済むでしょう?」
妹は無表情に目を逸らした。
森を実際に守る為に戦う警備隊の妹と、森の未来を想うも書庫に篭もり情報だけを知る姉。両者には温度差があった。
だが姉は本気で信じていたのだ。いずれこの森が開かれ、帝国に限らず全ての人間と手を取り合える日が、
「――目が覚めたか?」
夢は突然終わりを告げた。頭から被せられた冷水の冷たさに身体の芯まで凍てつくようだった。
エルフハイムの奥地にある石牢の一つ。天井から下がる鎖にジエルデ・エルフハイムが繋がれてから何日が経過しただろう。
長老の一人と、執行者が一人。青ざめた顔を上げジエルデは目を細める。
「長老にも罰は必要だ。特別若い貴様は尚更である」
秘宝である浄化の器を人前に晒し、挙句その器に触れるという禁忌を犯した。その罰が監禁なら安い物だ。
長老だからこれで済んでいるのだ。その辺のエルフや人間ならどうなっていた事か。
「申し訳……ございません」
「我々も貴様を重宝している。本意ではないが、罰は与えねばならん」
執行者は前に出ると、丸めた鞭を伸ばす。ジエルデは息を吐き、ただ頭の中をからっぽにする。
「申し訳ございません」
それが一番早く済むし楽だという事は、こう何度も投獄されれば理解する。
「もうしわ、け……ございません」
痛みも苦しみも、心を捨てれば堪えられる。
「申し訳……ぐっ、ございま……せ……」
楽しい事だけ思い出そう。少しでも早く終わるように。
まだ大切な家族と、妹と一緒に過ごしていたあの頃の事を。
「もう、し……わ、けっ、ござ……いっ、ま……せっ……あっ、うあ……」
はにかむように笑う妹の頭を撫で、一日の終わりに話を聞こう。本を書く手を止めて、お茶を淹れて、それで――。
「タングラム様、どちらへ?」
フクカンに何も返事もせず、タングラムはAPVを後にした。
空はどんよりと曇り、一雨降りそうな気配だ。握り締めた手紙に一度目を落とし、重い足取りで歩き出した。
フクカンが預かっていた手紙は、或いはこの幸せな時間を終わらせる為の物だった。だから何も言えなかったのだ。
これから自分がどうなるかわからない。だからこそ、誰も巻き込むわけにはいかない。
向かった先はリゼリオを出て暫く行った街道沿いにある雑木林の中だ。さして視界も悪くない、しかし人のあまり立ち寄らないその場所で男は待っていた。
「逃げずに来るとは思わなかったぜ。タングラム……いや、アイリス・エルフハイム」
あの外套には覚えがある。エルフハイム警備隊の……いや。独特の鋭い殺気は紛れも無く“執行者”のものだ。
「否定しないんだな。まさかお前が人間と一緒に、しかも帝国の手先として仲良くやってるとは誰も思わなかったろうぜ。俺もお前を見つけたのは単なる偶然……いや、お前のお仲間のハンターのお陰だった」
執行者が追いかけるのはエルフハイムに害を成すと長老会が定めた咎人達。その中でも特別な大罪人としてアイリスの名は語られる。
「俺はあんたの事は知らないが、あんたが何をしたのかは知っている。そして……あんたの家族が今どんな目に遭っているのかもな」
「きみは、ジエルデと親しいのですか?」
「ただの上司でそれ以上でも以下でもねぇがな。あんたが居なくなった後、あいつがどんな地獄を生きてきたのかは知ってんだよ」
――かつて、エルフハイムに反旗を翻し、人間と組んで森を焼いたとされる大罪人、アイリス・エルフハイム。
その者は部下でもあった警備隊を壊滅させ、執行者四名を返り討ちにし、当時の“浄化の器”を強奪。逃亡戦の挙句、器を殺害したという。
「お前の姉貴だってだけで、あいつは死んだ方がマシな目に遭ってんだ。死ぬ事すら許されずしょっちゅう一人でメソメソ泣いてんだ。別に世直しがしたいわけじゃねぇが、寝覚めが悪すぎんだよ」
唾を吐きながらタングラムを睨み、男は拳を構える。
「何故里を裏切った? ジエルデは育ての親代わりでもあったはずだ。あんたに情ってもんはねぇのか?」
「きみに答える義理はないのですね」
「……そうかい。だったら力づくで聞かせてもらうまでだッ!!」
音もなく、しかし強い踏み込みで加速する執行者。タングラムは無言で二対の短剣を抜き、繰り出される拳に身構えた。
解説
●目的
タングラム様を連れ戻して下さい!
●概要
あっ、丁度いいところに!
実はさっきタングラム様あてにお預かりしていたお手紙をお渡ししたのですが……何か様子がおかしいんです。
あんなに思い詰めた様子のタングラム様を見るのは何年ぶりか……とにかく、何か良くない事が起きているんじゃないかって心配で。
私が追いかけてもいいんですけど、タングラム様が私に何も言わないって事は、多分知られたくない事なんですよね。
だから、皆さんにはたまたま居合わせたって感じで……いえ、行き先によっては居合わせましたじゃ済まないんですけど……。
ああっ、時間がないです! 早くしないと追いつけなくなってしまいます! 手の開いてる人、誰でもいいので追いかけて下さい!!
●???
『ハジャ』
エルフハイム執行者の疾影士。
単独で咎人を討つ為高い戦闘力を持つ。徒手空拳で戦うが、色々武器も仕込んでいる模様。
確かに強いが、複数人の覚醒者相手に勝利出来る程ではない。
『タングラム』
帝国のユニオンリーダー。疾影士。短剣使い。
色々と素性の知れない人物で、過去と共に顔を仮面で隠している。
エルフハイムとは浅からぬ因縁があるようだが……。
タングラム様を連れ戻して下さい!
●概要
あっ、丁度いいところに!
実はさっきタングラム様あてにお預かりしていたお手紙をお渡ししたのですが……何か様子がおかしいんです。
あんなに思い詰めた様子のタングラム様を見るのは何年ぶりか……とにかく、何か良くない事が起きているんじゃないかって心配で。
私が追いかけてもいいんですけど、タングラム様が私に何も言わないって事は、多分知られたくない事なんですよね。
だから、皆さんにはたまたま居合わせたって感じで……いえ、行き先によっては居合わせましたじゃ済まないんですけど……。
ああっ、時間がないです! 早くしないと追いつけなくなってしまいます! 手の開いてる人、誰でもいいので追いかけて下さい!!
●???
『ハジャ』
エルフハイム執行者の疾影士。
単独で咎人を討つ為高い戦闘力を持つ。徒手空拳で戦うが、色々武器も仕込んでいる模様。
確かに強いが、複数人の覚醒者相手に勝利出来る程ではない。
『タングラム』
帝国のユニオンリーダー。疾影士。短剣使い。
色々と素性の知れない人物で、過去と共に顔を仮面で隠している。
エルフハイムとは浅からぬ因縁があるようだが……。
マスターより
お世話になっております神宮寺です。
予定を全く守れませんでした。まだ一月上旬です。僕の中では。
タングラムを連れ戻すだけならばとても簡単だと思います。なにせハジャよりタングラムの方が強いですから。
今回はタングラムが関連していますが質問には答えませんので、質問で遊ぼうとしても無駄ですよ。
それではよろしくお願い致します。
予定を全く守れませんでした。まだ一月上旬です。僕の中では。
タングラムを連れ戻すだけならばとても簡単だと思います。なにせハジャよりタングラムの方が強いですから。
今回はタングラムが関連していますが質問には答えませんので、質問で遊ぼうとしても無駄ですよ。
それではよろしくお願い致します。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/01/29 13:51
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/20 00:27:00 |
|
![]() |
相談卓 リサ=メテオール(ka3520) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/01/24 11:16:11 |