ゲスト
(ka0000)
【血断】綴られるは誰かの物語
マスター:凪池シリル

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在14人 / 1~25人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/05/15 22:00
- リプレイ完成予定
- 2019/05/29 22:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
●例文です
「あら、いらっしゃい」
カランとドアベルを鳴らすと、店主が出迎える。バーカウンターの奥から二番目の定位置に座ると、いつもより強めの酒を注文した。
「あらあ。今日は時間つぶしじゃないのかしら? 喧嘩?」
「……そんなんじゃねえよ」
揶揄うような店主の声にシュンはそれだけを答えて呷るようにグラスを傾ける。何かを察したらしい店主は、一先ず静観するように言葉を置いた。
──選択、なんて。
歪虚を倒すか倒さないか。闘うか闘わないか。そんなことで俺が迷う事なんて無い──と、シュンはこれまで思ってきた。
生きる意義を、生まれてきた価値をすべて失ったあの日、生きるために復讐を燃料に焚き上げた黒い炎は幸せを得ても消えてはくれなかった。
「──……君はやっぱり、殲滅を選びたいかい?」
見透かすように、愛するリッキィは聞いてくる。
その質問の口ぶりから、相手は違う選択肢を見ているのだろうと思った。それに応えるべきなのか、今こそこの黒い炎を消すときなのか……そう思って、すぐに出来ない己が居た。
「揺れてくれるのか。今はそれで十分だよ。でも……それなら、お互いギリギリまで考えないか」
そう言われて……まずは一旦、お互い一人で考えようか、という事になったのだ。
悲願の、邪神の討伐。その代償として黒い炎が焼くのがこの身だけならば、どうしようもない奴だと独り死ねたかもしれない。だけど、それが愛する人の生き甲斐を。
(だけでも……ねえのか)
グラスを置くとともに伏せていた顔をふと上げる。グラスを磨く、いつの間にか馴染みになってしまったバーの店主。言われた通り、ここにはよく時間潰しに来た。機導術の研究。その時間だけはシュンすらも侵すことをリッキィは許さない。シュンもそこだけは自分が理解するところだと、リッキィがその殻に籠った時は邪心が沸かぬよう一人町に出ることにしていた。その時間によく使うようになった場所。
食えない店主。巧みな言葉と距離感で、惚気も愚痴も気付けば随分吐かされた。そうしてそれが……危うい己が愛する人を壊すのを防いでくれていたと、思う。
殲滅。その代償に、捧げることになるもの。どこから、どこまで。……ここは、含まれるのか。
「ようシュン! なんだあまたリッキィにおんだされたか!」
別の客が入ってきて、シュンにそう笑いかける。これもいつの間にか顔を覚えた客。見回す。意識する。いつの間にか、二人きりですらなくなった世界。これを、俺は──
リッキィは一人、手慰みに魔導機械の分解整備をしては気持ちを整理していた。
自分にとって選びやすい物は決まっている。機導術は人類を幸せにするために。父からそう教わって自分も当たり前のようにその意識で魔導機械に触れ続けていた。邪神殲滅はあくまで手段であって、その為に世界が滅びるなど本末転倒だ。
ただ、それ以外にちらつくものはあった。エバーグリーンの、そして先の大戦の光景。
自分も回収に加わった兵器たちが、無残に散らばる戦場の光景。
……道具を惜しみ、人が命を失うなどそれこそ本末転倒であると思う。あれらは正しく使われた。極端を承知で言えば論文を書くためにつけペンの先を使い潰すことに想い入れていても仕方あるまい。愛着があったとしても、寂しさよりも感謝がそこにあるべきだ。
オートソルジャー、その他の『狭義の自動兵器』なら、まだ。
ならオートマトンなら?
それから。
戦場に向かうオフィスの転移門で様々な顔を見た。覇気に満ちたもの、青褪めながら己を奮い立たせるもの……何人かに声をかけ、互いに励まし合い、無事を祈り合った──それでも、還らぬ者はあの中に居ただろう。
封印、恭順という選択肢は。それらの死に誠実と言えるだろうか。
(……損切を惜しんで負けがこんでいく考え方ではある……な)
認めてリッキィは苦笑して。また思索にふける。
恭順、新たな世界の可能性と、失敗したら終わりまでの永遠のループか。
……ほんの少しだけ、考える。何千、何万と繰り返しそれでも、私は君を、君は私を選ぶのか、と。
●例文です
「あら、いらっしゃい」
カランとドアベルを鳴らすと、店主が出迎える。バーカウンターの奥から二番目の定位置に座ると、いつもより強めの酒を注文した。
「あらあ。今日は時間つぶしじゃないのかしら? 喧嘩?」
「……そんなんじゃねえよ」
揶揄うような店主の声にシュンはそれだけを答えて呷るようにグラスを傾ける。何かを察したらしい店主は、一先ず静観するように言葉を置いた。
──選択、なんて。
歪虚を倒すか倒さないか。闘うか闘わないか。そんなことで俺が迷う事なんて無い──と、シュンはこれまで思ってきた。
生きる意義を、生まれてきた価値をすべて失ったあの日、生きるために復讐を燃料に焚き上げた黒い炎は幸せを得ても消えてはくれなかった。
「──……君はやっぱり、殲滅を選びたいかい?」
見透かすように、愛するリッキィは聞いてくる。
その質問の口ぶりから、相手は違う選択肢を見ているのだろうと思った。それに応えるべきなのか、今こそこの黒い炎を消すときなのか……そう思って、すぐに出来ない己が居た。
「揺れてくれるのか。今はそれで十分だよ。でも……それなら、お互いギリギリまで考えないか」
そう言われて……まずは一旦、お互い一人で考えようか、という事になったのだ。
悲願の、邪神の討伐。その代償として黒い炎が焼くのがこの身だけならば、どうしようもない奴だと独り死ねたかもしれない。だけど、それが愛する人の生き甲斐を。
(だけでも……ねえのか)
グラスを置くとともに伏せていた顔をふと上げる。グラスを磨く、いつの間にか馴染みになってしまったバーの店主。言われた通り、ここにはよく時間潰しに来た。機導術の研究。その時間だけはシュンすらも侵すことをリッキィは許さない。シュンもそこだけは自分が理解するところだと、リッキィがその殻に籠った時は邪心が沸かぬよう一人町に出ることにしていた。その時間によく使うようになった場所。
食えない店主。巧みな言葉と距離感で、惚気も愚痴も気付けば随分吐かされた。そうしてそれが……危うい己が愛する人を壊すのを防いでくれていたと、思う。
殲滅。その代償に、捧げることになるもの。どこから、どこまで。……ここは、含まれるのか。
「ようシュン! なんだあまたリッキィにおんだされたか!」
別の客が入ってきて、シュンにそう笑いかける。これもいつの間にか顔を覚えた客。見回す。意識する。いつの間にか、二人きりですらなくなった世界。これを、俺は──
リッキィは一人、手慰みに魔導機械の分解整備をしては気持ちを整理していた。
自分にとって選びやすい物は決まっている。機導術は人類を幸せにするために。父からそう教わって自分も当たり前のようにその意識で魔導機械に触れ続けていた。邪神殲滅はあくまで手段であって、その為に世界が滅びるなど本末転倒だ。
ただ、それ以外にちらつくものはあった。エバーグリーンの、そして先の大戦の光景。
自分も回収に加わった兵器たちが、無残に散らばる戦場の光景。
……道具を惜しみ、人が命を失うなどそれこそ本末転倒であると思う。あれらは正しく使われた。極端を承知で言えば論文を書くためにつけペンの先を使い潰すことに想い入れていても仕方あるまい。愛着があったとしても、寂しさよりも感謝がそこにあるべきだ。
オートソルジャー、その他の『狭義の自動兵器』なら、まだ。
ならオートマトンなら?
それから。
戦場に向かうオフィスの転移門で様々な顔を見た。覇気に満ちたもの、青褪めながら己を奮い立たせるもの……何人かに声をかけ、互いに励まし合い、無事を祈り合った──それでも、還らぬ者はあの中に居ただろう。
封印、恭順という選択肢は。それらの死に誠実と言えるだろうか。
(……損切を惜しんで負けがこんでいく考え方ではある……な)
認めてリッキィは苦笑して。また思索にふける。
恭順、新たな世界の可能性と、失敗したら終わりまでの永遠のループか。
……ほんの少しだけ、考える。何千、何万と繰り返しそれでも、私は君を、君は私を選ぶのか、と。
解説
フリー描写系シナリオとなります。
テーマは「モブ」。馴染みの店主であったり、戦場の一兵卒であったり、名も与えられぬ自動兵器であったり。
名を記されず、物語を残すこともない者。登場するとしたらそう、あなたへと当たるスポットライト、その範囲に入ったその時だけ。そんな存在とのひと時。
そんな彼らとの、平和な日常の一幕。あるいは、戦場で交わした最後になることになった言葉などを、ご自由に考えてください。
それは即ち。「選択の結果によって犠牲になるかもしれない命」であり「選択の結果によって無駄になるかもしれない死」です。
それらを見つめるという視点で、彼らとのひとときを自由に演出し、あなたの【決断】への足掛かりとしてご利用ください。
性質上、凪池の管理非管理を問わず今回は「名前付きNPCの登場は不可」とします。
テーマは「モブ」。馴染みの店主であったり、戦場の一兵卒であったり、名も与えられぬ自動兵器であったり。
名を記されず、物語を残すこともない者。登場するとしたらそう、あなたへと当たるスポットライト、その範囲に入ったその時だけ。そんな存在とのひと時。
そんな彼らとの、平和な日常の一幕。あるいは、戦場で交わした最後になることになった言葉などを、ご自由に考えてください。
それは即ち。「選択の結果によって犠牲になるかもしれない命」であり「選択の結果によって無駄になるかもしれない死」です。
それらを見つめるという視点で、彼らとのひとときを自由に演出し、あなたの【決断】への足掛かりとしてご利用ください。
性質上、凪池の管理非管理を問わず今回は「名前付きNPCの登場は不可」とします。
マスターより
凪池です。
さあ、いよいよ示されましたね。物語の重大なターニングポイントです。
ここからは全力で、皆さまに様々な方向からの決断への考え方を示したいと思います。
……イイ趣味でも悪趣味でもね?
しんどいですがそれでも最後まで皆さまと共に歩めるよう、頑張ってみます。
さあ、いよいよ示されましたね。物語の重大なターニングポイントです。
ここからは全力で、皆さまに様々な方向からの決断への考え方を示したいと思います。
……イイ趣味でも悪趣味でもね?
しんどいですがそれでも最後まで皆さまと共に歩めるよう、頑張ってみます。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/05/24 06:46