• 戦闘

愛の亡骸

マスター:松尾京

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在7人 / 4~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/01/24 22:00
リプレイ完成予定
2015/02/02 22:00

オープニング

●その山奥で
 二人のハンターが、山道を歩いていた。
 一人は太刀使いの大男、マルク。もう一人は銃使いの優男、グレン。
「なあグレン。ここは、もうだいぶ前に雑魔退治が行われたんだろう? 何の依頼なのか、いい加減、教えてくれよ」
 マルクは、グレンに詳しい事情も告げられず、連れてこられていた。
 男二人、こんな山奥に。
「つけば、わかるさ」
 グレンは、かすかに鋭い目つきで、そんなことを言うばかりだった。
 口調は、何か楽しみなことがあるかのように。

 二人は、ハンター仲間である。
 ハンターになってからの仲だが、それなりに長いこと依頼も一緒にこなし、親友と言っていい。互いに、筋の通った好漢だと認め合っていた。
 そんな仲だから、ある日突然、グレンに山までついてきて欲しいと言われて……マルクは多少、困惑はした。
 実は、グレンの様子が少し変だとは、思っている。説明もなしにこんな場所に連れてくるような人間ではないのだ。
 マルクに心当たりがあるとすれば、それは一つだけだった。
「グレン。最近お前の様子が少し変だって、噂になってる。その……奥さんのことを思い出して、落ち込んでるんじゃないかとな」
「『奥さん』じゃない。式を挙げる前だったからね」
 それには、グレンはそう答えるだけだった。
 奥さんのこと、というのは……グレンの妻になる予定だったエメラダという女性が、グレンとの依頼の途中で雑魔に殺されてしまったことだ。
 若い頃に出会ってからずっと一緒だったというグレンとエメラダは、周囲もうらやむほどの仲で……当時は、式を挙げる直前で、幸せの絶頂だったということである。
 マルクはそのときのことは詳しくないが、仲間に聞くと、エメラダが死んだ直後のグレンは酷く落ち込んでいたらしい。
 最近でもたまにそんな陰りは見えるから言ったのだが――
 しかし……今のグレンを見ると、少し、明るい顔をしている。

●目的
 この山は、普段から立ち入るものもなく……それなりに前だが雑魔退治も行われたので、あえてハンターが入る理由もまた、思いつかなかった。
「おいグレン、いい加減に教えろ。どうして俺を連れてきた」
「雑魔退治がされたといっても、だいぶ前だ。雑魔が新たに出てたら、僕一人じゃ、たどり着けないかも知れなかった。だから、一番信頼しているマルクに頼んだんだ。悪かったと思ってるよ」
 急に饒舌に言うので、マルクは少し、訝った。
 そして過去に聞いた話の断片が、いくつか繋ぎ合わさる。
「……グレン。そういえば、お前の奥さんが死んだのって、こんな山奥の廃村の、雑魔退治の途中って話じゃなかったか」
「マルク。君なら、一人で帰れるよな」
「……何を考えてる。グレン」
 だが、その前に現れたのは、マルクには予想もしなかったものだった。
 突然に、剣線が走る。グレンとマルクはとっさによけて、その攻撃者の姿を見た。
 それは……一体のゾンビだ。
 体が朽ち、雑魔と化した人間の死体。
 しかも武器を持っている。マルクは、太刀を構えるが……。
 しかし、それをグレンが、止めていた。
「……エメラダ。やっぱり、君だったんだね」

●幸福
 マルクの頭の中で全てが繋がった。
「……グレン。お前、それはまさか、死んだっていう奥さん……なのか」
「隠していてすまなかった。しゃべったら、協力してくれないと思った」
「当たり前だろ。相手は……雑魔だぞ」
 しかしグレンはマルクの言葉に構うことなく、ゾンビに近づいた。
 かろうじて女だったことがわかる程度の、それはただの魔物だった。
「僕も会うのははじめてだ。けど、目撃者の話を聞いて、もしかしたら、と思っていた。剣の柄のデザイン、特徴的だろ。エメラダだけの、特注品さ」
 マルクは少し、怖気に襲われる。グレンが言うならそうなのかも知れない。しかし――
「ただの偶然かも知れないだろ。そいつだって、ただのゾンビかも知れない」
「そうだったら……きっと、よかったのかもね」
 グレンは笑っていた。うめき声を上げて攻撃してくるゾンビの腕を、必死に取った。
 崩れた指にはまっているのは、さびた指輪。
「僕があげた婚約指輪だ。それに、ゾンビになっても、好きな人の顔って、わかるもんだな」
「……お前、まさか」
 何かを直感して、マルクはグレンを連れ戻そうとする。
 しかしグレンは、マルクを銃で近寄らせなかった。
「ごめん、マルク」
 グレンは懐から、指輪を二つ、取り出した。
「結婚指輪だよ。エメラダ。――式を、挙げよう」
「やめろ、グレン。そいつは、雑魔だ。殺さないと、殺されるぞ!」
「それでいいんだ。エメラダを殺すことなんて、僕にはできないから」
 グレンは哀しげに、笑っていた。
「少し、遅れたね」
 マルクは、ゾンビに太刀を浴びせようとした。でもその前に、ゾンビの攻撃が、グレンの胸を貫いていた。
 ゾンビが距離を取った隙に、マルクはグレンに駆け寄った。
 グレンは血みどろになりながら、少しだけ、幸福そうだった。
「ずっと、心残りだった。でもこれで、よかった。マルク。僕の死体は、ここに置き去りにしてくれないか。エメラダと、最後まで、一緒、に――」

●依頼
「俺は、あいつの願いをむげにできなかった。黙って、立ち去っちまったんだ。だから……きっと、こんなことに」
 マルクはどこか後悔したように言う。
 しばらくの後、新たな目撃証言をもとに、ハンターオフィスに届いた依頼。
 それは、二体のゾンビおよび周辺の雑魔の退治だった。
「俺は……あの二人を、殺せない。だから、代わりにあの二人を、眠らせてやってくれないか」

解説

●目的
山奥の雑魔退治。

●場所
廃村:森に浸食されかけているが、地面は平坦で障害物は少ない。40×40スクエア。
森:鬱蒼と茂っている。視界と足場が悪い。

●敵
『ゾンビ』×2
廃村周囲の森に神出鬼没する。
知能はないようだが、ときに連携して攻撃する。
一体は剣、一体は銃を使うようである。

『スライム』×6
廃村内外に出没。目撃情報以上の数がいる可能性有り。

『大蛇』×4
雑魔化した大蛇。噛みつくだけのようだが、麻痺性の毒を持つようである。身体は大きいがさほど強くはない。

マスターより

亡霊のように彷徨うことになった男女のお話です。
二人は、ある意味で幸福な状態にあるとも言えるでしょう。ですが、文字通り彷徨っているだけ、とも言えるわけで、たどり着くべき場所が他にあるならば、導いてあげた方がいいのかも知れません。

今回は敵の数も多く、一筋縄では行かないでしょう。ゾンビは見た目以上に動きも素速いので注意が必要です。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/01/31 10:09

参加者一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師

  • スペクター(ka2273
    人間(蒼)|18才|男性|猟撃士
  • 勝利の女神
    アニス・エリダヌス(ka2491
    エルフ|14才|女性|聖導士

  • イグレーヌ・ランスター(ka3299
    人間(紅)|18才|女性|猟撃士
  • 荷馬車輸送完遂者
    トマーゾ・ヴェント(ka3781
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人

  • ジェームズ=ベレスフォード(ka3943
    人間(蒼)|42才|男性|猟撃士
  • 春をもたらす者
    マリーナ・スゥ・シュナイダー(ka3966
    人間(紅)|16才|女性|魔術師

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談スレッド
トマーゾ・ヴェント(ka3781
人間(リアルブルー)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/01/24 19:53:34
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/20 19:17:15