ゲスト
(ka0000)
【血断】昨日が消えようと夢は続く
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 3~4人
- ユニット参加人数
- 現在2 / 0~4
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/05/28 09:00
- リプレイ完成予定
- 2019/06/06 09:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
ノアーラ・クンタウで久しぶりに顔を合わせたあの後。
問いに、そして寝ている間に突き付けられた選択に、しっかり考えてから答えたいと一旦時間を置いて、そして今日、伊佐美 透とその相棒チィ=ズヴォーはハンターオフィスのロビーで改めて顔を合わせていた。
「……考えたけど、俺はやっぱり、封印を選ぼうと思ってる」
透はまず、静かにそう切り出した。落ち着いたその声音にはだが、苦しげなものも確かに感じ取れた。そうだろう、それは……別れを意味する選択なのだから。そうなるかもしれない、と覚悟してきたつもりでも、自らの手でそれを選べ、と言われるのは苦渋があった。
「そうですかい……」
ポツリとチィが答える、その声には。寂しさは間違いなくあったが、失望では無かった。そのまま、チィはただ向き合っている。また話し合おうと決めた相棒、それが出した答えがどのような想いによるのか、まずはキチンと向き合おうと。
「……お前からの問いは、よく考えたよ。俺にとってのこの世界。お前との時間が、何だったのか──勿論、かけがえのないものだったよ。無駄なんかじゃ、無い。この五年間、役者としては遠回りになったかもしれない。衰えた技術、出遅れた時間も間違いなくあるだろう……でも、今の俺だから表現できるものがある。今はそう、確信してる」
透の言葉に、チィはやはり寂しそうなまま、それでも安堵するように、納得するように微笑んで、頷いた。
「だから……俺は、伝えていきたい。俺がこの世界で何を貰ったのかを、役者としての人生を通して、人々に観せて、発信していきたい。そのためにはやっぱり……帰る世界が、平和じゃなきゃ、意味がない」
向き合ってくるチィに、透もまた、目を逸らさずに答えた。苦しさは、申し訳なさはある。この五年間は相棒と共に在った五年間で……それでも。戦ってきた目的は、リアルブルーへ帰ること、帰ってまた舞台に立つという夢を叶えることだった。……邪神を倒すことじゃない。『元の世界に』帰ることだ……傷付いた、故郷だった場所では無く。
「別れることは……辛いよ。ごめん、なんていくら言っても足りないことも、さ。……でも、だから俺のすべてを使って、伝えていく。おとぎ話なんかにさせない、昔話なんかにさせない。この世界は、お前をはじめとした、この世界の人たちは、間違いなく今も存在するんだって。忘れさせない……いつか俺の世界の人々が、神の力に依らずこの世界に会いに来るまで!」
大それたことを。根拠もない願望を口にしているとは分かっている。結局自分を納得させるための詭弁なのかもしれない……と。
それでも。
別れたくない、その為に巻き込めるのか、多くの人を。いや、おためごかしはやめよう。殲滅となればクリムゾンウェストでもリアルブルーでもその戦いは一層激しくなるのだろう。巻き込まれる。親、友人、ファンの人たち……──どうしようもなく、恐ろしい。
「……何にも聞かないのか」
静かにこちらを、眩しそうに見つめるだけのチィに、戸惑うように透は聞き返す。
「んー……透殿のことですから、手前どもが突っ込みそうなことなんて、とっくに考えた上での結論なんじゃねえですかねって」
「だからお前は何でそう……」
苦笑しながら。だが実際、考えてあることも有る。封印は一時しのぎに過ぎない、未来にすべてを丸投げするのか、精霊の力が失われるんだぞ……と。
だけど。
「人はずっと、大精霊の加護を越えられないのかな、って」
人間の持つ可能性を信じろというのならば。未来にそれを信じたっていいじゃないか。丸投げでは無く、責任をもって、伝えて、繋げていく。邪神の脅威を色褪せぬように。今大精霊によってもたらされる恩恵を、人の手で越えるまで。
無謀だろうか。
あまりにも浅はかなことを言っているだろうか。
でも……そう、その浅はかさこそを、自分は一度思い知っているかもしれない、と思ったのだ。
それは役者を目指したいと言って、上京した時の事──親元を離れて、自分の面倒はすべて自分で見ると決意して。
生活費も自分で稼ぐ。家事も自分でやる。その上で夢を目指して行動もする。容易では無いと分かっていたつもりだった。でも安易に何とかなるというつもりでもなかった。一人分の生活費を稼ぎ、一人分の家事をすればいい……そう思って。
二週間ほどでぶっ倒れた。
別に身体を壊したわけじゃないが、布団からピクリとも這い出せなくなって、限界まで疲れると人間こうなるんだな、と妙な悟りを得た。
週三、四日の、時間もフルタイムではない程度のバイト。別に毎日はやらなくとも多少は何とかなる程度の家事。……の、合間にトレーニングやらオーディションやらは入っていたが。
一時間ほどかけて通勤して、フルタイム、残業も当たり前の仕事に顔色一つ変えずに毎日行っていた父の。パートをしながら一家四人分の家事をかかさず手を抜かずやっていた母の。普通の事だと、当たり前の事だと思っていた、その恩恵をどれほど受けていたのかを、しみじみと思い知って。
やっぱり無理だ、帰ろうとかなり本気で思って……それでも、流石にこんな短期で、という気持ちが辛うじて勝って、食いしばって。
……そうするうちに。やっぱり親に面倒を見てもらっていた時ほどの生活とは言えなくても、いつの間にかそれなりにはできるようになったじゃないか、と。
「それをふと思い出したらさ、思ったんだ。……ここで大精霊と、精霊たちの力と離れなきゃいけないなら。それってつまり、必要な『親離れ』の時が来たって事じゃないかって」
それは寂しいことだけど。
考えようによっては、前に進むための、いつかは訪れるべき道程なんじゃないかと。
そこまで聞いて、チィはふう、と息を吐いた。
透の話はここで終わりなのだろう。ならば……──
「手前どもは、ですね……──」
そうして、今度はチィが話し始める。
●
「どこか、ゆっくり、のんびり出かけてみたいんだけど、どこかいい場所知らないかな」
そうして、話しかけられそうなハンターに透はそう尋ねていた。
「自分の決断、決意を固めるために。この世界をもっとよく見てかなきゃいけない。大切なものだと、大好きな場所だと、しっかり自覚して、刻んでかなきゃいけない、そう思って」
自分が別れると決めようとしているもの。それに巻き込んで別れさせてしまうもの。景色、幻獣、思い出……──戦いの中でごまかさずに、ゆっくりとそれらの美しさに触れあって。己の残酷さに向き合って。
楽しめば楽しむほど、悲しくなるかもしれない。揺らぐかもしれない。でも、それは乗り越えなきゃいけない。
でも、信じたい。──……昨日までが消えてしまっても。今はその先に続く道程なんだと。
ノアーラ・クンタウで久しぶりに顔を合わせたあの後。
問いに、そして寝ている間に突き付けられた選択に、しっかり考えてから答えたいと一旦時間を置いて、そして今日、伊佐美 透とその相棒チィ=ズヴォーはハンターオフィスのロビーで改めて顔を合わせていた。
「……考えたけど、俺はやっぱり、封印を選ぼうと思ってる」
透はまず、静かにそう切り出した。落ち着いたその声音にはだが、苦しげなものも確かに感じ取れた。そうだろう、それは……別れを意味する選択なのだから。そうなるかもしれない、と覚悟してきたつもりでも、自らの手でそれを選べ、と言われるのは苦渋があった。
「そうですかい……」
ポツリとチィが答える、その声には。寂しさは間違いなくあったが、失望では無かった。そのまま、チィはただ向き合っている。また話し合おうと決めた相棒、それが出した答えがどのような想いによるのか、まずはキチンと向き合おうと。
「……お前からの問いは、よく考えたよ。俺にとってのこの世界。お前との時間が、何だったのか──勿論、かけがえのないものだったよ。無駄なんかじゃ、無い。この五年間、役者としては遠回りになったかもしれない。衰えた技術、出遅れた時間も間違いなくあるだろう……でも、今の俺だから表現できるものがある。今はそう、確信してる」
透の言葉に、チィはやはり寂しそうなまま、それでも安堵するように、納得するように微笑んで、頷いた。
「だから……俺は、伝えていきたい。俺がこの世界で何を貰ったのかを、役者としての人生を通して、人々に観せて、発信していきたい。そのためにはやっぱり……帰る世界が、平和じゃなきゃ、意味がない」
向き合ってくるチィに、透もまた、目を逸らさずに答えた。苦しさは、申し訳なさはある。この五年間は相棒と共に在った五年間で……それでも。戦ってきた目的は、リアルブルーへ帰ること、帰ってまた舞台に立つという夢を叶えることだった。……邪神を倒すことじゃない。『元の世界に』帰ることだ……傷付いた、故郷だった場所では無く。
「別れることは……辛いよ。ごめん、なんていくら言っても足りないことも、さ。……でも、だから俺のすべてを使って、伝えていく。おとぎ話なんかにさせない、昔話なんかにさせない。この世界は、お前をはじめとした、この世界の人たちは、間違いなく今も存在するんだって。忘れさせない……いつか俺の世界の人々が、神の力に依らずこの世界に会いに来るまで!」
大それたことを。根拠もない願望を口にしているとは分かっている。結局自分を納得させるための詭弁なのかもしれない……と。
それでも。
別れたくない、その為に巻き込めるのか、多くの人を。いや、おためごかしはやめよう。殲滅となればクリムゾンウェストでもリアルブルーでもその戦いは一層激しくなるのだろう。巻き込まれる。親、友人、ファンの人たち……──どうしようもなく、恐ろしい。
「……何にも聞かないのか」
静かにこちらを、眩しそうに見つめるだけのチィに、戸惑うように透は聞き返す。
「んー……透殿のことですから、手前どもが突っ込みそうなことなんて、とっくに考えた上での結論なんじゃねえですかねって」
「だからお前は何でそう……」
苦笑しながら。だが実際、考えてあることも有る。封印は一時しのぎに過ぎない、未来にすべてを丸投げするのか、精霊の力が失われるんだぞ……と。
だけど。
「人はずっと、大精霊の加護を越えられないのかな、って」
人間の持つ可能性を信じろというのならば。未来にそれを信じたっていいじゃないか。丸投げでは無く、責任をもって、伝えて、繋げていく。邪神の脅威を色褪せぬように。今大精霊によってもたらされる恩恵を、人の手で越えるまで。
無謀だろうか。
あまりにも浅はかなことを言っているだろうか。
でも……そう、その浅はかさこそを、自分は一度思い知っているかもしれない、と思ったのだ。
それは役者を目指したいと言って、上京した時の事──親元を離れて、自分の面倒はすべて自分で見ると決意して。
生活費も自分で稼ぐ。家事も自分でやる。その上で夢を目指して行動もする。容易では無いと分かっていたつもりだった。でも安易に何とかなるというつもりでもなかった。一人分の生活費を稼ぎ、一人分の家事をすればいい……そう思って。
二週間ほどでぶっ倒れた。
別に身体を壊したわけじゃないが、布団からピクリとも這い出せなくなって、限界まで疲れると人間こうなるんだな、と妙な悟りを得た。
週三、四日の、時間もフルタイムではない程度のバイト。別に毎日はやらなくとも多少は何とかなる程度の家事。……の、合間にトレーニングやらオーディションやらは入っていたが。
一時間ほどかけて通勤して、フルタイム、残業も当たり前の仕事に顔色一つ変えずに毎日行っていた父の。パートをしながら一家四人分の家事をかかさず手を抜かずやっていた母の。普通の事だと、当たり前の事だと思っていた、その恩恵をどれほど受けていたのかを、しみじみと思い知って。
やっぱり無理だ、帰ろうとかなり本気で思って……それでも、流石にこんな短期で、という気持ちが辛うじて勝って、食いしばって。
……そうするうちに。やっぱり親に面倒を見てもらっていた時ほどの生活とは言えなくても、いつの間にかそれなりにはできるようになったじゃないか、と。
「それをふと思い出したらさ、思ったんだ。……ここで大精霊と、精霊たちの力と離れなきゃいけないなら。それってつまり、必要な『親離れ』の時が来たって事じゃないかって」
それは寂しいことだけど。
考えようによっては、前に進むための、いつかは訪れるべき道程なんじゃないかと。
そこまで聞いて、チィはふう、と息を吐いた。
透の話はここで終わりなのだろう。ならば……──
「手前どもは、ですね……──」
そうして、今度はチィが話し始める。
●
「どこか、ゆっくり、のんびり出かけてみたいんだけど、どこかいい場所知らないかな」
そうして、話しかけられそうなハンターに透はそう尋ねていた。
「自分の決断、決意を固めるために。この世界をもっとよく見てかなきゃいけない。大切なものだと、大好きな場所だと、しっかり自覚して、刻んでかなきゃいけない、そう思って」
自分が別れると決めようとしているもの。それに巻き込んで別れさせてしまうもの。景色、幻獣、思い出……──戦いの中でごまかさずに、ゆっくりとそれらの美しさに触れあって。己の残酷さに向き合って。
楽しめば楽しむほど、悲しくなるかもしれない。揺らぐかもしれない。でも、それは乗り越えなきゃいけない。
でも、信じたい。──……昨日までが消えてしまっても。今はその先に続く道程なんだと。
解説
前振りがあまりにも長いですが依頼内容としては透とチィと、フリーでゆっくり過ごそうというものになります。
何処か景色のいいところにでも行って。幻獣やペットと触れ合って。温泉いったりキャンプしてアウトドアクッキングをしてみたり。
そうやってしみじみとこの世界と触れ合いながら決断を考えたり、あるいはリフレッシュに振り切ったり。そんな感じでご利用ください。
道中を楽しむのも良いですね。チィはグリフォン連れてきます。透は魔導バイクでそれについてきたりします。
透の結論にいろいろ意見はあるでしょうが、ぶっちゃけるとあまり彼を翻意させようとしても意味は無いかと。結局のところNPCは希望を意思表明はしても有効票にはなりませんので。
別に違う結論だろうが彼は彼で他の人が真剣に考えた結論ならそっかー、って思うだけなので、納得しないならしないでそれをそのまま投票すればいいだけです。
なので今回は議論は目的では無く、ほのぼの、そしてちょっぴりしんみりなレジャー系心情シナリオを推奨です。
透の、それから昼に出るシナリオの会話の前半部分は、ハンターオフィスでやっているので聞いたことにして構いません。
最後に、本日昼に出すシナリオとは時間軸は全然別の話となりますので、重複は問題ありませんし向こうで何が起きてるか、向こうの結果がどうなるかは完全に切り離して考えてください。
時間軸としてはこちらが先です。
何処か景色のいいところにでも行って。幻獣やペットと触れ合って。温泉いったりキャンプしてアウトドアクッキングをしてみたり。
そうやってしみじみとこの世界と触れ合いながら決断を考えたり、あるいはリフレッシュに振り切ったり。そんな感じでご利用ください。
道中を楽しむのも良いですね。チィはグリフォン連れてきます。透は魔導バイクでそれについてきたりします。
透の結論にいろいろ意見はあるでしょうが、ぶっちゃけるとあまり彼を翻意させようとしても意味は無いかと。結局のところNPCは希望を意思表明はしても有効票にはなりませんので。
別に違う結論だろうが彼は彼で他の人が真剣に考えた結論ならそっかー、って思うだけなので、納得しないならしないでそれをそのまま投票すればいいだけです。
なので今回は議論は目的では無く、ほのぼの、そしてちょっぴりしんみりなレジャー系心情シナリオを推奨です。
透の、それから昼に出るシナリオの会話の前半部分は、ハンターオフィスでやっているので聞いたことにして構いません。
最後に、本日昼に出すシナリオとは時間軸は全然別の話となりますので、重複は問題ありませんし向こうで何が起きてるか、向こうの結果がどうなるかは完全に切り離して考えてください。
時間軸としてはこちらが先です。
マスターより
凪池です。
そう言えば今まで、ほのぼの系シナリオに呼ばれれば出す、という形でゆっくりさせてやったことはあっても、初めからこいつらと遊ぶ目的のシナリオってそんなに出してやったことないかなあって……。
いや、それでもなんだかんだ交流してもらってきたことに感謝すべきなのでしょうが。
まあ終盤ですし。決断に向けての一つの見解を示しつつ、ここらで一度思い出作りがあっても良いかなと。
というわけで昼に出るシナリオの事がどうなるかは一旦置いといてですね。向こうとは気持ちを切り替えて、こっちはただ楽しめたらなって!
せめて、楽しい時もあったなあって、そんな風に出来たらなって……ふう。(何
そう言えば今まで、ほのぼの系シナリオに呼ばれれば出す、という形でゆっくりさせてやったことはあっても、初めからこいつらと遊ぶ目的のシナリオってそんなに出してやったことないかなあって……。
いや、それでもなんだかんだ交流してもらってきたことに感謝すべきなのでしょうが。
まあ終盤ですし。決断に向けての一つの見解を示しつつ、ここらで一度思い出作りがあっても良いかなと。
というわけで昼に出るシナリオの事がどうなるかは一旦置いといてですね。向こうとは気持ちを切り替えて、こっちはただ楽しめたらなって!
せめて、楽しい時もあったなあって、そんな風に出来たらなって……ふう。(何
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/05/29 22:09
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/05/25 20:34:46 |
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相談卓 神代 誠一(ka2086) 人間(リアルブルー)|32才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/05/28 01:45:20 |