ゲスト
(ka0000)
残念舌と猪狩り
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/01/26 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/02/04 12:00
オープニング
●
とある町の小さな酒場。まだ夕方前という事もあり客足は乏しい。
カウンターでは髭面の男、この店の店長――マスターが退屈そうに欠伸をしていた。昼間から酒を喰らう客を眺め、暇を持て余している。
「ちゃーす! マスター、いつものよろしくお願いしまーす」
そこへ明るい声と共に店の戸が押し開けられる。入ってきたのは酒臭い店に不似合いな、剣を下げた若い女の子。
慣れた様子で店内を歩いて、少女はカウンター席に腰を下ろす。目の前でにっ、と笑う彼女にマスターは溜息を吐きながら――こちらも慣れた手つきで――料理を始めた。
少女の名前はアゼット、新米ハンターである。若い女と古臭い安酒場、不釣合いだがここは彼女のお気に入りの店だった。
その理由は彼女好みの料理が出るからなのだが――しばらくして、店長が完成した食事を差し出す。
「わー! いっただきまーす!」
少女は喜んで出された物を食べ始める。甘ったるい匂いと生臭い匂いが混ぜこぜになった白いクリームパスタが少女の口に吸い込まれていく。
アゼット曰く、いくらのホイップクリーム和えスパゲッティ、らっきょう入り。以前メニューに加えるよう進言したら本気で怒られた。
見慣れた光景だが、店長はその様子を如何わしいものを見るように眺めて言う。
「こんなゲテモノ料理ばっか作ってたら俺の腕がおかしくなっちまう」
既にゲテモノ認定の料理の半分を胃に収めたアゼットがフォークを銜えながら唸る。
「確かに、マスターが料理してる所ってあんまり見ませんねぇ」
「うちは酒場だからな。簡単な酒のつまみしか本来作らねぇんだよ」
「やっぱ客入りが無いからですよね。こーんなにがらんとしちゃって」
話を聞かず、手を広げて店内を示すアゼット。
「何度も言うが、うちは酒場だ。飯食うのはおまけで、皆酒飲みにやってくんだ」
「あ! 私、アゼットが画期的な案を考えちゃいました!」
アゼットが両手を挙げ、麺を啜りながら立ち上がる。諦めたのか、店長は頬杖をつき話を聞く。
「そもそも、何故この店には客が来ないのか」
ずばり、時間帯である。この時間から店を開けているのは数少ない客への店長の厚意、利益は無視していた。事実、夜になれば相応の儲けが出る位には客は入る。
「ずばり、魅力が無いからですよ! 見てください、このきったねぇ店内!」
「……おい」
弁解しておくが、決して不衛生ではない。そこらの店と比べ飾り気が無いというだけである。
確かに今風な内装にすれば客も増えるかもしれないが、この不恰好さを好む者もいるので悪い事ばかりではない。何より、店長の趣味は今の店だ。
「でも、しょうがないと思うんです。マスターは良い人ですけどむさ苦しいおっさんですし、改善の余地が無い事もありますよね」
「おまえ、もしかして仕事先でもその喋りだったりするのか。だったら俺は心配だよ」
「大丈夫、私は元気いっぱいです!」
そうじゃない。食い気味に返すも、少女の耳には届かない。
アゼットは、完全にノっている。何にって、そりゃあ良くないものに。
「そこで今ある魅力を伸ばす方向で考えます。マスター、料理はかなりイケるじゃないですか」
そう言われ、店長は食事中の皿へ目を落とす。そこには自分でも目を覆いたくなる色物パスタが。
「……んなもん食ってる奴に言われても何も嬉しくねぇなぁ」
「そんな料理を作れるのに店はがらがら。さて、足りないものがわかりますか?」
「わからねぇ。おまえがさっぱりわからねぇ」
「インパクト! その一言に尽きます。要するに、目玉となる品が欠けているのです」
不思議である。割と正論な気がするのに、ちっともありがたみがない。
「そこで私は凄いものを考えつきました」
「ほぉ、一応聞かせてくれよ。一応」
「雑魔の肉、使いましょう」
「うげ」
思わず顔を顰める店長。何度か目にした事があるが雑魔というのは怪物の類で、それを食べるという発想はまず出てこない。
歪虚――雑魔の肉など、目の前の麺類が霞む程のゲテモノ料理が出来上がる。
「これはキてます、ブレイクの予感がひしひし来てます!」
一応ハンターなのだから雑魔の姿を目にした事はある筈だが、それでも、彼女にはまるで忌避感が無い。
「おいお前、俺にそんなもん調理させる気か――」
「という訳で、早速採って来ます!」
言うや否や、アゼットは残った食事をかき込んで出入り口に向かい駆けて行く。
「あ!? ちょ、待て!」
「北の山に猪雑魔が出るらしいです! さぁ、今夜はボタン鍋ですよぉ!」
アゼットは最後まで元気に叫び、店から走り去っていった。
取り残された店長は見事に平らげられた皿を見ながら、
「……つーか、雑魔って消滅するんじゃなかったか」
などと、もう残念すぎる現実に気がつくのだった。
●
「――ってのが三日前の事。それ以降、アゼットは店にやって来ない」
店長は店に集まった者達に話を聞かせていた。
彼らはハンター。行方知れずのアゼットを捜索する為、店長が出した依頼を手に取った者達だった。
「家なんて知らねえし、確認はしてないんだが……あの性格からして、失敗でも成功でも構わず顔を見せる筈だ。だから、まぁ、何かあったんじゃねぇかと思う訳だ」
一度言葉が切られる。落ち着いて見えるが彼も心配しているらしい。
「アンタら、何とかしてやってくれねぇかな。見知った人間の安否が分からんってのは、どうにもいただけねぇ」
ハンター達が頷くのを見て、店長は数字が書き殴られた一枚の紙を差し出した。
「あの馬鹿見つけたらそれ渡しといてくれ。このままじゃ食い逃げだぞ、って」
●
「駄目、駄目ですってばぁ! そんな揺らしちゃ駄目なんですー!」
丁度ハンター達が依頼の説明を受けている時、山中に情けないアゼットの声が響いていた。
とある一本の木、その枝には網が結び付けられており――中にはアゼットが捕らわれている。
宙吊りになった下には猪の姿をした雑魔が無数におり、次々と体当たりをしては木を揺らしていた。
木は衝突の度大きく揺さぶられ、葉が散ると共に網がぶらんぶらん振り回され、アゼットが悲鳴を上げる。
彼女が何故こんな状態にあるかと問われれば、ぶっちゃけ、ドジった訳である。
「いっぱいいるなんて聞いてませんよー! 罠が足りないじゃないですかぁ!」
網の中から無力な叫びが続く。情けない事に、自分の罠に掛かった際に剣を落としてしまい、自力では脱出できずにいる。
とはいえ、下には十数の猪の群れ。降りた所で何も出来まい。
「見逃してくださーい! お腹空きましたよぉ!」
命乞いが雑魔に届く筈も無く、木はまた大きく揺れる。
アゼットの唯一の成功は選んだのが大木であった事か。ここまで突撃を受けても倒れずに立っている。
尤もそれもいつまでもつか。このままでは結末は変わらない。それを知ってか知らずかアゼットはわめき続けた――
とある町の小さな酒場。まだ夕方前という事もあり客足は乏しい。
カウンターでは髭面の男、この店の店長――マスターが退屈そうに欠伸をしていた。昼間から酒を喰らう客を眺め、暇を持て余している。
「ちゃーす! マスター、いつものよろしくお願いしまーす」
そこへ明るい声と共に店の戸が押し開けられる。入ってきたのは酒臭い店に不似合いな、剣を下げた若い女の子。
慣れた様子で店内を歩いて、少女はカウンター席に腰を下ろす。目の前でにっ、と笑う彼女にマスターは溜息を吐きながら――こちらも慣れた手つきで――料理を始めた。
少女の名前はアゼット、新米ハンターである。若い女と古臭い安酒場、不釣合いだがここは彼女のお気に入りの店だった。
その理由は彼女好みの料理が出るからなのだが――しばらくして、店長が完成した食事を差し出す。
「わー! いっただきまーす!」
少女は喜んで出された物を食べ始める。甘ったるい匂いと生臭い匂いが混ぜこぜになった白いクリームパスタが少女の口に吸い込まれていく。
アゼット曰く、いくらのホイップクリーム和えスパゲッティ、らっきょう入り。以前メニューに加えるよう進言したら本気で怒られた。
見慣れた光景だが、店長はその様子を如何わしいものを見るように眺めて言う。
「こんなゲテモノ料理ばっか作ってたら俺の腕がおかしくなっちまう」
既にゲテモノ認定の料理の半分を胃に収めたアゼットがフォークを銜えながら唸る。
「確かに、マスターが料理してる所ってあんまり見ませんねぇ」
「うちは酒場だからな。簡単な酒のつまみしか本来作らねぇんだよ」
「やっぱ客入りが無いからですよね。こーんなにがらんとしちゃって」
話を聞かず、手を広げて店内を示すアゼット。
「何度も言うが、うちは酒場だ。飯食うのはおまけで、皆酒飲みにやってくんだ」
「あ! 私、アゼットが画期的な案を考えちゃいました!」
アゼットが両手を挙げ、麺を啜りながら立ち上がる。諦めたのか、店長は頬杖をつき話を聞く。
「そもそも、何故この店には客が来ないのか」
ずばり、時間帯である。この時間から店を開けているのは数少ない客への店長の厚意、利益は無視していた。事実、夜になれば相応の儲けが出る位には客は入る。
「ずばり、魅力が無いからですよ! 見てください、このきったねぇ店内!」
「……おい」
弁解しておくが、決して不衛生ではない。そこらの店と比べ飾り気が無いというだけである。
確かに今風な内装にすれば客も増えるかもしれないが、この不恰好さを好む者もいるので悪い事ばかりではない。何より、店長の趣味は今の店だ。
「でも、しょうがないと思うんです。マスターは良い人ですけどむさ苦しいおっさんですし、改善の余地が無い事もありますよね」
「おまえ、もしかして仕事先でもその喋りだったりするのか。だったら俺は心配だよ」
「大丈夫、私は元気いっぱいです!」
そうじゃない。食い気味に返すも、少女の耳には届かない。
アゼットは、完全にノっている。何にって、そりゃあ良くないものに。
「そこで今ある魅力を伸ばす方向で考えます。マスター、料理はかなりイケるじゃないですか」
そう言われ、店長は食事中の皿へ目を落とす。そこには自分でも目を覆いたくなる色物パスタが。
「……んなもん食ってる奴に言われても何も嬉しくねぇなぁ」
「そんな料理を作れるのに店はがらがら。さて、足りないものがわかりますか?」
「わからねぇ。おまえがさっぱりわからねぇ」
「インパクト! その一言に尽きます。要するに、目玉となる品が欠けているのです」
不思議である。割と正論な気がするのに、ちっともありがたみがない。
「そこで私は凄いものを考えつきました」
「ほぉ、一応聞かせてくれよ。一応」
「雑魔の肉、使いましょう」
「うげ」
思わず顔を顰める店長。何度か目にした事があるが雑魔というのは怪物の類で、それを食べるという発想はまず出てこない。
歪虚――雑魔の肉など、目の前の麺類が霞む程のゲテモノ料理が出来上がる。
「これはキてます、ブレイクの予感がひしひし来てます!」
一応ハンターなのだから雑魔の姿を目にした事はある筈だが、それでも、彼女にはまるで忌避感が無い。
「おいお前、俺にそんなもん調理させる気か――」
「という訳で、早速採って来ます!」
言うや否や、アゼットは残った食事をかき込んで出入り口に向かい駆けて行く。
「あ!? ちょ、待て!」
「北の山に猪雑魔が出るらしいです! さぁ、今夜はボタン鍋ですよぉ!」
アゼットは最後まで元気に叫び、店から走り去っていった。
取り残された店長は見事に平らげられた皿を見ながら、
「……つーか、雑魔って消滅するんじゃなかったか」
などと、もう残念すぎる現実に気がつくのだった。
●
「――ってのが三日前の事。それ以降、アゼットは店にやって来ない」
店長は店に集まった者達に話を聞かせていた。
彼らはハンター。行方知れずのアゼットを捜索する為、店長が出した依頼を手に取った者達だった。
「家なんて知らねえし、確認はしてないんだが……あの性格からして、失敗でも成功でも構わず顔を見せる筈だ。だから、まぁ、何かあったんじゃねぇかと思う訳だ」
一度言葉が切られる。落ち着いて見えるが彼も心配しているらしい。
「アンタら、何とかしてやってくれねぇかな。見知った人間の安否が分からんってのは、どうにもいただけねぇ」
ハンター達が頷くのを見て、店長は数字が書き殴られた一枚の紙を差し出した。
「あの馬鹿見つけたらそれ渡しといてくれ。このままじゃ食い逃げだぞ、って」
●
「駄目、駄目ですってばぁ! そんな揺らしちゃ駄目なんですー!」
丁度ハンター達が依頼の説明を受けている時、山中に情けないアゼットの声が響いていた。
とある一本の木、その枝には網が結び付けられており――中にはアゼットが捕らわれている。
宙吊りになった下には猪の姿をした雑魔が無数におり、次々と体当たりをしては木を揺らしていた。
木は衝突の度大きく揺さぶられ、葉が散ると共に網がぶらんぶらん振り回され、アゼットが悲鳴を上げる。
彼女が何故こんな状態にあるかと問われれば、ぶっちゃけ、ドジった訳である。
「いっぱいいるなんて聞いてませんよー! 罠が足りないじゃないですかぁ!」
網の中から無力な叫びが続く。情けない事に、自分の罠に掛かった際に剣を落としてしまい、自力では脱出できずにいる。
とはいえ、下には十数の猪の群れ。降りた所で何も出来まい。
「見逃してくださーい! お腹空きましたよぉ!」
命乞いが雑魔に届く筈も無く、木はまた大きく揺れる。
アゼットの唯一の成功は選んだのが大木であった事か。ここまで突撃を受けても倒れずに立っている。
尤もそれもいつまでもつか。このままでは結末は変わらない。それを知ってか知らずかアゼットはわめき続けた――
解説
今回の依頼は酒場の店長さんから。馴染みの客、アゼットさんを捜索してくれというものです。
行方不明の彼女を見つけ出してあげてください。
山に入る場合、近頃猪の姿をした雑魔が出るという噂があります。
低級の歪虚には違いありませんが、十分に注意してください。
行方不明の彼女を見つけ出してあげてください。
山に入る場合、近頃猪の姿をした雑魔が出るという噂があります。
低級の歪虚には違いありませんが、十分に注意してください。
マスターより
こんにちは。硲銘介です。
シリアス以外だとお前はアホしか書けないのか、とか思わないこともない。
キャラクターがアレなんでいまいち緊張感がありませんが、割とピンチなアゼットを助けてやっていただければ幸いです。
皆様、どうぞよろしくお願い致します。
シリアス以外だとお前はアホしか書けないのか、とか思わないこともない。
キャラクターがアレなんでいまいち緊張感がありませんが、割とピンチなアゼットを助けてやっていただければ幸いです。
皆様、どうぞよろしくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/01/31 11:16
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
さぁ、相談だ ディディ=ロハドトゥ(ka3695) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/01/26 00:27:31 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/23 01:28:07 |