• 調査

歪虚の娘、施療の娘

マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 3~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
プレイング締切
2019/06/01 12:00
リプレイ完成予定
2019/06/15 12:00

オープニング

「あの子がいるなら、私達はここを出ていきます。不幸に巻き込まれるのはごめんですよ」
 あの子。と暗に名指しされたルーフィが聞こえているだろうことをお構いなく、施療院の院長室からそんな声が響いてくる。
 ルーフィと言えば、そんな声をお構いなしに、自分のやるべき仕事、包帯の交換や検温、薬草の調合などを黙々と続けていたが、さすがに院長から呼び出しを受けるとその手を止めざるを得なかった。
 手を止める時は……仕事を失う瞬間だと知りながら。
「君には悪いが、今日限りで……」
「はい」
 彼女は憤ることも、悲しむことも、不満も愚痴も、何も言うことはなかった。
 引き継ぎを済ませて彼女は次の仕事場を探す。

 ブリュンヒルデという歪虚がいた。
 暴食の歪虚でも珍しく、戦闘を嫌った。歪虚でも珍しく人を襲うことを積極的にしなかった。彼女はただ人の願いを叶え続けようとする。
 研究がしたいと言えば本をかき集め、食事を差し入れた。人にアッと言わせたいと願ったなら何時間でもアイデアが浮かぶまで話を聞いた。そうして些事を全て彼女は引き受け、願望に人生を集約させる。願望が成就しても更なる成功を目指し続させ、心のブレーキを壊して。大きな破滅を引き起こした時、願望が成就されないことを嘆きつつそのマテリアルを食らう。
 彼女に『とりつかれ』て、無事でいた人間というのはほとんどいない。全てではなかったのは、例外があったから。それがルーフィだった。彼女の元にもブリュンヒルデは現れ、たくさんの人を助けたいという願いに応え、患者を呼び、薬を運んだ。
 そのせいでルーフィが従事していた施療院は彼女を残して全員が過労死したが。彼女は奇跡的にも生き延びた。生命力が強かった為か、精神力が強かった為か、はたまた、その場でブリュンヒルデは討ち果たされた為か。

「ルーフィと申します。薬草調合と看護の経験があります。ここで働かせてください。命を助ける仕事がしたいのです」
 彼女の願いは変わらない。
 今もまた。新たな病院の門を叩き、そうして志願した。
「とうとううちにも来たぞ」
 窓から患者や看護師が鈴なりになってルーフィの後ろ姿を見ながらそう囁き合っているのがわかりつつも、彼女は微動だにしなかった。
 一般人の彼女が行ける範囲などたかがしれている。
 ただでさえ、神霊樹ネットワークがより広がり覚醒者による活動は広がっているのだ。情報伝達速度は加速し、人の口づてにあらゆる情報が共有されていく。
 彼女の幼なじみがコボルドに殺されたことも。
 彼女が自滅を呼ぶブリュンヒルデに接触したことも。
 そして近づいた場所で次々不幸を呼び起こしたことも。それは単なる偶然であっても、彼女がいたからというだけで大きくピックアップされる。助けた命の数はカウントされず、失ったものだけ数え連ね上げられる。
 挙句、ついた渾名は『歪虚の娘』
「悪いね。歪虚の娘。この界隈ではもう、あんたの仕事はないと思った方がいい」
 とうとう門前払いされるようになってしまった。
 失礼しました。とルーフィは頭を下げて、来た道を戻ると後ろから喝さいの声が聞こえた。
 よくぞ言ってくれた。よくぞ歪虚の娘を追い払ってくれた。
 私は人間なのに。堕落者でもなんでもないのに。そんな愚痴も言わず、ルーフィは次の街へと歩くことを決めた。

 施療院もダメ、病院もダメ。孤児院からは孤児からゴミを投げつけられ、教会からは水をかけられた。
 それでもルーフィは彷徨った。
 無念の想いを秘めたままの亡くなった人々が脳裏から離れないからか。それとも本当にブリュンヒルデの呪いがまだ生きているのだろうか。
「私ができること、私ができることは」
 誰かを死の淵から救う手伝いをする事。
 言葉では簡単だが、苦悶の顔、血臭、砕けた骨で変に曲がる腕。それと向き合うとき背筋が凍る。自分の記憶が何度でも蘇る。
 それを他の人に見せるというのか、放っておくというのか。
「私にできることは、命を助けるお手伝いしか、ないんです……私は、約束したんです」
 祈るように、心の澱を吐き出すように、彼女はそういった。
 それが何かに届いたのかはわからない。一陣の風が吹いて、彼女の足に紙が絡みついた。そこには「名もなき医療団」と銘打たれた医療団の募集が書いてあった。邪神との戦いを前に各地で起こる歪虚との戦いに、被害を受けている地域も多いが、医療施設というものは町がないと安定しない。だから移動医療施設の発足を目指すというものだった。
 これなら。
 ルーフィは早速立ち上がった。


「名もなき医療団は人手はずっと不足していますので、もちろん彼女を受け入れてあげたいのですが」
 チームリーダーの男は頭をかきかき、ハンターオフィスの受付員にそう告げた。
「『歪虚の娘』は随分広まった噂ですし、人の口に戸は立てられませんしねぇ。それにやっぱり不安がるメンバーもいる。でも彼女はそんなに悪い子には見えない」
 名声のマイナス分を差し引いても、彼女の献身姿勢は医療団には大きくプラスに働いていると告げた。旅も苦にしないし、幅広い薬草知識と山菜摘みの経験は各地での医療活動の補助としても大きい。うってつけなのだ。
「だから、彼女にまとわりついている悪い噂を一時的にも取り払えばと思いまして。後は彼女の姿勢が全て決めてくれるでしょうから」
「なるほどわかりました……ところで、念のために聞きますが、歪虚でも歪虚と契約した人間でも、堕落者でも、ないんですね?」
 受付員の確認に、チームリーダーは苦笑した。
 確認は大切だ。もし間違えれば歪虚の手助けをしたなどとなったらハンターズソサエティ全体の問題にもなるからだ。
「私も聖導士ですが、見る限りそんな感じは受けませんね。歪虚と契約関係にあるだけなら感知できないかもしれませんが……それなら彼女はもっと短絡的な手段を取っていたと思いますよ」
 そう言いつつ、チームリーダーの男はルーフィのひたむきな顔を思い出して、ため息をついた。
「ハンターの皆様なら、一緒に治療を続けていたら、きっと何か見えてくるものもあるでしょう。そうして、彼女を救ってあげてくれませんかね」
 悪評を払しょくできる意見をくれたらそれでいい。
 もし可能なら。彼女が幸せに生きられるように『呪い』を解いてあげたい。

解説

名もなき医療団という移動治療団に所属することになったルーフィという少女の悪評を払しょくしてください。

具体的には山村での治療行動に同行し、彼女と共に治療行動を行います。
スキルでの回復でも構いませんし、医者や薬草士、看護師としての治療行動など問いません。
その中でルーフィとつながり、彼女が噂されるような存在ではないと報告することが目的となります。

●場所
とある山村とします。
病気や怪我などはプレイングで希望する状態の人々がいるとします。
1泊2日の旅を予定しています。

●NPC
ルーフィ 10代後半 女 一般人
関わった施療院や病院などで不幸が度々起きて、彼女が関わると不幸を呼ぶと噂されています。
行きすぎなくらいに、人を救うということに心血を注いでいる節があります。
薬草知識、看護知識は同年代においては優秀な部類です。

マスターより

安倍晴明は呪いとは何かと聞かれて、「あの花に『藤』と名付て、みながそう呼ぶようになる。すると、それは『藤』になるのだ。それが最も身近な『呪』だ」と言ったそうです。
風評というのは最も身近で、恐ろしい呪いだと思います。
どのように呪いに対抗するか、皆さまのお力をお願いします。
ちなみに浄化スキルで回復するようなものでもありません。念のため。

なお、執筆スケジュールの都合により、相談期間が3日しかありません。
短いので白紙だけはご注意ください。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/06/07 10:10

参加者一覧

  • 母のように
    都(ka1140
    人間(紅)|24才|女性|聖導士
  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン 風評被害対策室【相談卓】
エアルドフリス(ka1856
人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2019/06/01 10:12:27
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/06/01 10:08:28