ゲスト
(ka0000)
沈黙の罪過
マスター:守崎志野

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在5人 / 3~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/06/19 22:00
- リプレイ完成予定
- 2019/06/28 22:00
オープニング
●
ガランとした部屋に置かれた粗末な椅子に座らされたケイカは天を仰いで何度目かの呆れた溜息をついた。目に映るのは空では無く、暗く冷たい天井だ。
「いい加減に認めたらどうだ?」
それでも目の前にいる男のドヤ顔に比べればマシだと言う気分になる。
「辺境の開拓、将来の経済振興など真っ赤な偽り。シャハラは負の力を借りて作った毒の作物を大量にばらまき、人間を始め全ての生き物を雑魔化するつもりだった、そうだろう?」
何回も繰り返された同じ言葉。そしてこう続くのだ。
「心配する事は無いぞ。お前は頼る者もない中で仕方なく働かされていたんだろう?事実が明らかになってもたいした罪には問われん。それどころか恐ろしい犯罪を明らかにした事で報償が出るかもしれんぞ。どちらが得か、考えるまでもないと思うがな」
「確かに毒性がある物を流出させたのはこちらの落ち度です。でも、意図的に毒物をばらまいて生き物を雑魔化なんて、事実無根もいいところですよ!勝手に話を作らないでください」
ケイカの方も引かない。男は不満そうに鼻を鳴らすとケイカが座っていた椅子を蹴り飛ばした。不意を突かれて床に肩や背中を打ち付けながら転倒したケイカに男がのしかかり、乱暴に胸を掴んだ。
「認める気になったか?」
痛みで悲鳴を上げたケイカに男が囁いた。目の前には嫌らしく笑う男の顔がある。その笑いが、過去の記憶と重なった。
「なめるな!」
伸ばした手に転がった椅子の脚が触れる。思わずそれを握りしめると渾身の力で振り回した。
手応え有り。鈍い音と共に男の手がケイカから離れる。
『お姉ちゃん』
不意に耳元で声が聞こえた。
『お姉ちゃん、そのまま目をつぶって。走って』
「燈火!?燈火なの!?」
だが、それに被さるように
「この……小娘が……」
呻くような男の怒声。
『お姉ちゃん、早く!』
迷う余裕はない。ケイカは声に導かれるように立ち上がり、目をつぶって走った。
●
それほどの怪我ではない筈だが、男の頭には仰々しく包帯が巻かれていた。
「あの小娘、歪虚との繋がりを問い詰めたら俺を殴り倒して逃げおったわ!言った通りだろうが!」
他の商人、関係者を前に男は勝ち誇ったように言い放った。自分が何をしたかはおくびにも出さず、事実を都合良くねじ曲げて高圧的に押しつける。それでも控えめにだが意見する声もあった。
「今まで素直に応じていたのに、急に逃げるなんて不自然では……?」
「ふん!」
皆をじろりと一瞥して威圧て黙らせつつ、男は内心で考えを巡らせていた。
(大人しく言いなりになっておれば可愛がってやったものを、貧弱な小娘の分際で!おまけに……)
シャハラは十数年前と同様、『事故』に遭い重傷を負いながら生き延びたという。
(とっととくたばれば良いものを、しぶとい女だ)
男にとってはどちらもとんだ計算違いだ。だが、取り返せない程ではない。ケイカの行方は追跡させてある。
「あの小娘が何処に逃げたと思う?人間が全滅して放棄されたままの開拓地だ。しかも、そこは今雑魔の巣になっている」
どうだ、と言わんばかりに男はその場を見回した。
「そんなところに逃げ込んだということは歪虚との繋がりを白状したも同然、そうだろう?この上は雑魔をハンターに退治させ、小娘を引きずり出して泥を吐かせ、シャハラに責任を取らせるのみではないか」
身柄を押さえてしまえばどうにでも出来る。用済みになったら始末すれば良い。それに、今ならシャハラは生き延びたと言っても重体で動ける状態ではなく、フリッツもシャハラの留守を守るので手一杯の筈だ。
不祥事が確定すればシャハラが生きていたとしても、彼女の信用で持っている商売はひとたまりもあるまい。
(待った甲斐があったというものだ)
シャハラが蓄えてきた財と成果を乗っ取るのに今程の好機があるだろうか。
世界は今、大きな動きの前に揺れている。明日が来るのかさえもわからないという不安に満ちた世界の中で、辺境の小さな事件など誰が気にするだろう。
いい時代だ、と男はほくそ笑んだ。
●
そこは確かに、ケイカがかつて暮らし、人の手によって一夜で全滅した土地だった。
だが、以前と違うのは見た事もない低木の茂みがある事だ。
「燈火ちゃん、これは……どういうこと?」
ケイカの問いに、目の前に佇んだ燈火は儚い微笑みを見せた。
「この子達は雑魔だよ。でもね、ただここで静かに生きているだけ」
燈火は愛おしそうに近くの低木の幹を撫でた。
「みんな、何も悪い事はしていないのにいろんなものを奪い取られて、野垂れ死ぬしかなかった。それでも、ただ生きたかったの」
「まさか……だから、その人達を雑魔に変えたの!?」
「そうだよ。どうしてそんな目で見るの?雑魔になって静かに生きるのは、そんなに悪い事なの?」
自分達に酷い仕打ちをしたのはいつでもヒトではなかったのか。リアルブルーでもクリムゾンウエストでも、ヒトが自分に与えたのは侮蔑と無視、暴力と痛みだけだった。
「たとえ気紛れでも、それ以外のものをあたしにくれたのは歪虚だけだったんだよ。お姉ちゃん以外には」
「燈火ちゃん……」
わからない訳ではない。何かが少し違っていたら、その言葉はケイカ自身のものだったかもしれないのだ。
「あたしの寿命はもうすぐ終わり……だから、お姉ちゃん、ここにいて」
自分の生きた証は今となってはケイカだけだから。
「お姉ちゃんは生きてね……どんな形でも」
●
ハンター達の後を十人ばかり、斧や短剣、槍を持った男達が続く。
「いいか、お前らは雑魔を掃除すればいい。余計な事は一切するな」
男は傲慢な態度でハンターに言い放った。
ガランとした部屋に置かれた粗末な椅子に座らされたケイカは天を仰いで何度目かの呆れた溜息をついた。目に映るのは空では無く、暗く冷たい天井だ。
「いい加減に認めたらどうだ?」
それでも目の前にいる男のドヤ顔に比べればマシだと言う気分になる。
「辺境の開拓、将来の経済振興など真っ赤な偽り。シャハラは負の力を借りて作った毒の作物を大量にばらまき、人間を始め全ての生き物を雑魔化するつもりだった、そうだろう?」
何回も繰り返された同じ言葉。そしてこう続くのだ。
「心配する事は無いぞ。お前は頼る者もない中で仕方なく働かされていたんだろう?事実が明らかになってもたいした罪には問われん。それどころか恐ろしい犯罪を明らかにした事で報償が出るかもしれんぞ。どちらが得か、考えるまでもないと思うがな」
「確かに毒性がある物を流出させたのはこちらの落ち度です。でも、意図的に毒物をばらまいて生き物を雑魔化なんて、事実無根もいいところですよ!勝手に話を作らないでください」
ケイカの方も引かない。男は不満そうに鼻を鳴らすとケイカが座っていた椅子を蹴り飛ばした。不意を突かれて床に肩や背中を打ち付けながら転倒したケイカに男がのしかかり、乱暴に胸を掴んだ。
「認める気になったか?」
痛みで悲鳴を上げたケイカに男が囁いた。目の前には嫌らしく笑う男の顔がある。その笑いが、過去の記憶と重なった。
「なめるな!」
伸ばした手に転がった椅子の脚が触れる。思わずそれを握りしめると渾身の力で振り回した。
手応え有り。鈍い音と共に男の手がケイカから離れる。
『お姉ちゃん』
不意に耳元で声が聞こえた。
『お姉ちゃん、そのまま目をつぶって。走って』
「燈火!?燈火なの!?」
だが、それに被さるように
「この……小娘が……」
呻くような男の怒声。
『お姉ちゃん、早く!』
迷う余裕はない。ケイカは声に導かれるように立ち上がり、目をつぶって走った。
●
それほどの怪我ではない筈だが、男の頭には仰々しく包帯が巻かれていた。
「あの小娘、歪虚との繋がりを問い詰めたら俺を殴り倒して逃げおったわ!言った通りだろうが!」
他の商人、関係者を前に男は勝ち誇ったように言い放った。自分が何をしたかはおくびにも出さず、事実を都合良くねじ曲げて高圧的に押しつける。それでも控えめにだが意見する声もあった。
「今まで素直に応じていたのに、急に逃げるなんて不自然では……?」
「ふん!」
皆をじろりと一瞥して威圧て黙らせつつ、男は内心で考えを巡らせていた。
(大人しく言いなりになっておれば可愛がってやったものを、貧弱な小娘の分際で!おまけに……)
シャハラは十数年前と同様、『事故』に遭い重傷を負いながら生き延びたという。
(とっととくたばれば良いものを、しぶとい女だ)
男にとってはどちらもとんだ計算違いだ。だが、取り返せない程ではない。ケイカの行方は追跡させてある。
「あの小娘が何処に逃げたと思う?人間が全滅して放棄されたままの開拓地だ。しかも、そこは今雑魔の巣になっている」
どうだ、と言わんばかりに男はその場を見回した。
「そんなところに逃げ込んだということは歪虚との繋がりを白状したも同然、そうだろう?この上は雑魔をハンターに退治させ、小娘を引きずり出して泥を吐かせ、シャハラに責任を取らせるのみではないか」
身柄を押さえてしまえばどうにでも出来る。用済みになったら始末すれば良い。それに、今ならシャハラは生き延びたと言っても重体で動ける状態ではなく、フリッツもシャハラの留守を守るので手一杯の筈だ。
不祥事が確定すればシャハラが生きていたとしても、彼女の信用で持っている商売はひとたまりもあるまい。
(待った甲斐があったというものだ)
シャハラが蓄えてきた財と成果を乗っ取るのに今程の好機があるだろうか。
世界は今、大きな動きの前に揺れている。明日が来るのかさえもわからないという不安に満ちた世界の中で、辺境の小さな事件など誰が気にするだろう。
いい時代だ、と男はほくそ笑んだ。
●
そこは確かに、ケイカがかつて暮らし、人の手によって一夜で全滅した土地だった。
だが、以前と違うのは見た事もない低木の茂みがある事だ。
「燈火ちゃん、これは……どういうこと?」
ケイカの問いに、目の前に佇んだ燈火は儚い微笑みを見せた。
「この子達は雑魔だよ。でもね、ただここで静かに生きているだけ」
燈火は愛おしそうに近くの低木の幹を撫でた。
「みんな、何も悪い事はしていないのにいろんなものを奪い取られて、野垂れ死ぬしかなかった。それでも、ただ生きたかったの」
「まさか……だから、その人達を雑魔に変えたの!?」
「そうだよ。どうしてそんな目で見るの?雑魔になって静かに生きるのは、そんなに悪い事なの?」
自分達に酷い仕打ちをしたのはいつでもヒトではなかったのか。リアルブルーでもクリムゾンウエストでも、ヒトが自分に与えたのは侮蔑と無視、暴力と痛みだけだった。
「たとえ気紛れでも、それ以外のものをあたしにくれたのは歪虚だけだったんだよ。お姉ちゃん以外には」
「燈火ちゃん……」
わからない訳ではない。何かが少し違っていたら、その言葉はケイカ自身のものだったかもしれないのだ。
「あたしの寿命はもうすぐ終わり……だから、お姉ちゃん、ここにいて」
自分の生きた証は今となってはケイカだけだから。
「お姉ちゃんは生きてね……どんな形でも」
●
ハンター達の後を十人ばかり、斧や短剣、槍を持った男達が続く。
「いいか、お前らは雑魔を掃除すればいい。余計な事は一切するな」
男は傲慢な態度でハンターに言い放った。
解説
・表向きの目的
ケイカを捕縛する為に編成された十人の護衛・雑魔の排除を行い男達にケイカを捕縛させる
・裏の目的
男達に知られないように先にケイカに接触、事情を聞き出す
以上二点の内、どちらか一方の達成
・状況
OP中にケイカを追い詰めている男は辺境の商人内でかなりの力を持っている
高圧的・強引なやり方に不信を持つ者も多いが表だってそれを口にしたり異を唱えたのはシャハラくらい
裏の目的は男に不信を持つ者からこっそりと耳打ちされた
現場はかつて辺境部族に襲撃されて全滅し放棄された開拓地で焼け残った小屋など廃墟になっており
(シナリオ「誰も知らない」の舞台)
かつては見られなかった低木の茂みが見られる
(シナリオ「祈りの遺伝子」のものに酷似)
ケイカの姿は見えず、何処かに隠れていると思われる
男達はハンターが雑魔を倒す、又は雑魔がいないと確認した位置から自ら捜索を始める
男達は皆屈強な男性だが一般人ばかり
ハンターがケイカの捜索に加わろうとすると遮られる
男達を力ずくで排除しようとした場合は廃墟に火を放つなど強硬手段に出る事がある
十人の中には男に不信を持つ者もいて、話によっては男の注意を逸らすなど影ながらハンターの裏目的に協力する可能性もあり
※OPと以下はPL情報
ハンターより先に男達がケイカを発見する、或いはケイカを男達に引き渡した場合燈火が登場する
燈火は寿命の限界が来ており、ハンターと交戦するだけの力は残っていない
また、燈火に力を分け与えた歪虚は既に消えているらしい
雑魔は一見するとただの木に見える
非覚醒者が長時間近くにいるとゆっくりと同化していく性質を持っているが数日程度なら無害
攻撃・反撃してくる事もなく、ただ存在しているだけ
ケイカの無実を証明できれば男ではなく身元引受人のシャハラ(代理人のフリッツ)の元へ返す事が出来る
ケイカを捕縛する為に編成された十人の護衛・雑魔の排除を行い男達にケイカを捕縛させる
・裏の目的
男達に知られないように先にケイカに接触、事情を聞き出す
以上二点の内、どちらか一方の達成
・状況
OP中にケイカを追い詰めている男は辺境の商人内でかなりの力を持っている
高圧的・強引なやり方に不信を持つ者も多いが表だってそれを口にしたり異を唱えたのはシャハラくらい
裏の目的は男に不信を持つ者からこっそりと耳打ちされた
現場はかつて辺境部族に襲撃されて全滅し放棄された開拓地で焼け残った小屋など廃墟になっており
(シナリオ「誰も知らない」の舞台)
かつては見られなかった低木の茂みが見られる
(シナリオ「祈りの遺伝子」のものに酷似)
ケイカの姿は見えず、何処かに隠れていると思われる
男達はハンターが雑魔を倒す、又は雑魔がいないと確認した位置から自ら捜索を始める
男達は皆屈強な男性だが一般人ばかり
ハンターがケイカの捜索に加わろうとすると遮られる
男達を力ずくで排除しようとした場合は廃墟に火を放つなど強硬手段に出る事がある
十人の中には男に不信を持つ者もいて、話によっては男の注意を逸らすなど影ながらハンターの裏目的に協力する可能性もあり
※OPと以下はPL情報
ハンターより先に男達がケイカを発見する、或いはケイカを男達に引き渡した場合燈火が登場する
燈火は寿命の限界が来ており、ハンターと交戦するだけの力は残っていない
また、燈火に力を分け与えた歪虚は既に消えているらしい
雑魔は一見するとただの木に見える
非覚醒者が長時間近くにいるとゆっくりと同化していく性質を持っているが数日程度なら無害
攻撃・反撃してくる事もなく、ただ存在しているだけ
ケイカの無実を証明できれば男ではなく身元引受人のシャハラ(代理人のフリッツ)の元へ返す事が出来る
マスターより
この世で最大の悲劇は悪人の残酷さよりも善人の沈黙、という言葉があるそうです。
今回、戦闘はほぼ起こらないと思われますが
成功以上の条件がやや複雑である為に難易度はやや難しいとなっています。
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
今回、戦闘はほぼ起こらないと思われますが
成功以上の条件がやや複雑である為に難易度はやや難しいとなっています。
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/06/27 06:12
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談場所 メアリ・ロイド(ka6633) 人間(リアルブルー)|24才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/06/19 21:13:26 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/06/17 02:38:16 |