ゲスト
(ka0000)
それでも尚、世界で成すことは
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/02/12 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/02/21 09:00
オープニング
その町に戻ってきたレイチェルの顔には少しばかり微笑みが生まれていた。生涯の伴侶と決めていた偉大なる吟遊詩人グインが逝去した時には、もう自分は心から笑うことも、何かに希望を見出すこともないだろうとそう思っていたのに。心とは本当に不思議なものだと感じていた。
自分の曲、正しくは大グインが遺していった曲に感銘を受け、その道に進みたいと言ってくれた少年は元気だろうか。凍てついた寒風の中で少ない人通りをゆっくりと歩みながら、レイチェルはもう一人のグイン、少年グインのことを考えていた。ひたすらに前向きな子。生きる力を全身に満ち溢れさせている子。心に虚無の風が吹き荒れる中で彼の言葉は行動は太陽のようだった。あまりに眩しすぎて受け入れられなかったことも多かったけれど。
彼は楽器の練習をしているだろうか。いや血気盛んな少年だ。もう他のことに興味を持っているかもしれない。どんな変化があっても今度は向き合わなければ。
もう一度会う。それは少年グインと交わした約束だから。そして自分を助けてくれたハンターとの約束だから。レイチェルは白が混じる前髪をかきあげ、しっかと前を向いて歩いた。
レイチェルはかつて自分が歌っていた酒場の前にやって来た。そこに少年グインがいるかどうかはわからないが、ここの人ならばその所在も明らかになるであろうと考えていた。扉に手をかけたその時、中から酔いどれた男の自慢げな声が自分の名前をあげたことに気付いた。
「それでよぅ、レイチェルはもうジジイのこと忘れてゾッコンさ。これも俺があの子供にハンターのこと教えてやったからだぜ。ははは、もしかしたらハンターに依頼すれば、あの美人を今度は俺に触り向かせることもできるかもしれねぇなぁ。お高くとまった吟遊詩人でも、エルフでも所詮は女ってワケよ」
その言葉に従って、同じ酔いどれ同士が喝さいの声を上げる。それにさらに気を良くしたのか酔っ払いはより上機嫌に、そして声を大きくする。
その声だけやたらクローズアップされて、ワンワンと響く。
「はっはっ。じゃあ、俺もグインって名前にして依頼しよう。それでレイチェルを惚れさせてな、俺はあのガキよりもっと幸せにしてやるぁ。あはは、あの美人の歌声でさ鳴かせてやりてぇなァ」
今、私は何を見ているんだろう。何を経験してきたんだろう?
レイチェルが見える世界が急激に薄べったくなった。何もかもが平面的な。舞台劇だってもう少し手の込んだ作りをしていると思えるくらいだ。
私が見てきた世界とは何だったんだろう?
私の葛藤とはなんだったんだろう?
全て虚構だったのか。少年グインの思いも、大グインの依頼も。救ってくれたハンターの肌の温かみも。
違う、違うと首を振った。だが、吸い込む空気すらも陳腐で。息ができなくなる。
レイチェルはそこに立っていられなくなり、扉の枠にズルズルともたれかかった。心の中も同様だった。何かが崩れていくのを必死にかき集めてとどめようとするが、雨に濡れた砂の城のように手の上から下から、ずるずると崩れ去っていくのがわかる。
先ほどまではなんともなかった冬の風が、心を刺し、切り刻んでいく。
怖いほどに寒い。
……痛い。
「レイチェルさん!」
明るい声が背中からかかった。それが喜びに満ちた少年グインのものであることはすぐわかった。その足音に混じって竪琴の弦が揺れて空気を揺らす音が微かに聞き取れた。彼は真面目に楽器を練習していたことは振り向くまでもなくわかった。
いや、まともに後ろを振り向くことはできないからこそ。この長い耳が眼の代わりに伝えてくれたのだ。
「俺、楽器ずっと練習してたんですよ……レイチェルさん? レイチェルさん!」
もはや自分の力では立っていることすらできない。そんな異変に少年グインも気づいたのだろう。すかさず彼女に歩み寄ってくる音が聞こえる。
しかし、もう彼女は彼に振り向いて顔を見るようなことはしなかった。
「……近づかないで」
彼の名が本当にグインなのか、真意はどうだったのか、レイチェルにはもう分からなかった。
酔っ払った男の世迷言など信用してはならない。と叫ぶ心もあった。
だが、もう。耐えられなかった。
レイチェルはそのまま、少年グインの顔を見ることなく倒れこんだ。
●
「エルフにだって寿命がある。歳を経たエルフはね、周囲のマテリアルにとかく影響されやすくなる。だから100年前後過ぎればだいたい森に帰ってしまうんだ。彼女はかなり損耗している。もう長くはないとは思うが、このまま放っておくわけにもいかない。ハンターに依頼して対処してもらうよ」
遠く。遠く。暗闇の向こうからそんな声が聞こえた。
酒場のマスターの声だ。ぼやけた頭がそっと教えてくれた。
「ハンターオフィスにいってくるから、片付け頼む。ったくグインも阿呆なことしなければ、別れには立ち会えたのにな。しばらくブタ箱だろうからな」
マスターが歩く音が聞こえた。ガラスと木の破片の上を歩くひどく不安定な足音が響く。
それを聞き届けて、暗闇の中にガラスの破片が散らばる世界が浮かんだ。
破片の中に沈むペンダント。割れたティーカップからこぼれたお茶とお菓子。それから抱きしめられた肌の温かみ。
そして出会った人々の顔が。浮かんでは消えていく。
世界は、時計の針は止められぬ。
いいのだ。これで。ずっと愛してきたグインの元に逝けるのだから。
何もかも終わりにできると思うと、心が落ち着いた。
それでも尚、ちりりと心が痛んだ。
自分の曲、正しくは大グインが遺していった曲に感銘を受け、その道に進みたいと言ってくれた少年は元気だろうか。凍てついた寒風の中で少ない人通りをゆっくりと歩みながら、レイチェルはもう一人のグイン、少年グインのことを考えていた。ひたすらに前向きな子。生きる力を全身に満ち溢れさせている子。心に虚無の風が吹き荒れる中で彼の言葉は行動は太陽のようだった。あまりに眩しすぎて受け入れられなかったことも多かったけれど。
彼は楽器の練習をしているだろうか。いや血気盛んな少年だ。もう他のことに興味を持っているかもしれない。どんな変化があっても今度は向き合わなければ。
もう一度会う。それは少年グインと交わした約束だから。そして自分を助けてくれたハンターとの約束だから。レイチェルは白が混じる前髪をかきあげ、しっかと前を向いて歩いた。
レイチェルはかつて自分が歌っていた酒場の前にやって来た。そこに少年グインがいるかどうかはわからないが、ここの人ならばその所在も明らかになるであろうと考えていた。扉に手をかけたその時、中から酔いどれた男の自慢げな声が自分の名前をあげたことに気付いた。
「それでよぅ、レイチェルはもうジジイのこと忘れてゾッコンさ。これも俺があの子供にハンターのこと教えてやったからだぜ。ははは、もしかしたらハンターに依頼すれば、あの美人を今度は俺に触り向かせることもできるかもしれねぇなぁ。お高くとまった吟遊詩人でも、エルフでも所詮は女ってワケよ」
その言葉に従って、同じ酔いどれ同士が喝さいの声を上げる。それにさらに気を良くしたのか酔っ払いはより上機嫌に、そして声を大きくする。
その声だけやたらクローズアップされて、ワンワンと響く。
「はっはっ。じゃあ、俺もグインって名前にして依頼しよう。それでレイチェルを惚れさせてな、俺はあのガキよりもっと幸せにしてやるぁ。あはは、あの美人の歌声でさ鳴かせてやりてぇなァ」
今、私は何を見ているんだろう。何を経験してきたんだろう?
レイチェルが見える世界が急激に薄べったくなった。何もかもが平面的な。舞台劇だってもう少し手の込んだ作りをしていると思えるくらいだ。
私が見てきた世界とは何だったんだろう?
私の葛藤とはなんだったんだろう?
全て虚構だったのか。少年グインの思いも、大グインの依頼も。救ってくれたハンターの肌の温かみも。
違う、違うと首を振った。だが、吸い込む空気すらも陳腐で。息ができなくなる。
レイチェルはそこに立っていられなくなり、扉の枠にズルズルともたれかかった。心の中も同様だった。何かが崩れていくのを必死にかき集めてとどめようとするが、雨に濡れた砂の城のように手の上から下から、ずるずると崩れ去っていくのがわかる。
先ほどまではなんともなかった冬の風が、心を刺し、切り刻んでいく。
怖いほどに寒い。
……痛い。
「レイチェルさん!」
明るい声が背中からかかった。それが喜びに満ちた少年グインのものであることはすぐわかった。その足音に混じって竪琴の弦が揺れて空気を揺らす音が微かに聞き取れた。彼は真面目に楽器を練習していたことは振り向くまでもなくわかった。
いや、まともに後ろを振り向くことはできないからこそ。この長い耳が眼の代わりに伝えてくれたのだ。
「俺、楽器ずっと練習してたんですよ……レイチェルさん? レイチェルさん!」
もはや自分の力では立っていることすらできない。そんな異変に少年グインも気づいたのだろう。すかさず彼女に歩み寄ってくる音が聞こえる。
しかし、もう彼女は彼に振り向いて顔を見るようなことはしなかった。
「……近づかないで」
彼の名が本当にグインなのか、真意はどうだったのか、レイチェルにはもう分からなかった。
酔っ払った男の世迷言など信用してはならない。と叫ぶ心もあった。
だが、もう。耐えられなかった。
レイチェルはそのまま、少年グインの顔を見ることなく倒れこんだ。
●
「エルフにだって寿命がある。歳を経たエルフはね、周囲のマテリアルにとかく影響されやすくなる。だから100年前後過ぎればだいたい森に帰ってしまうんだ。彼女はかなり損耗している。もう長くはないとは思うが、このまま放っておくわけにもいかない。ハンターに依頼して対処してもらうよ」
遠く。遠く。暗闇の向こうからそんな声が聞こえた。
酒場のマスターの声だ。ぼやけた頭がそっと教えてくれた。
「ハンターオフィスにいってくるから、片付け頼む。ったくグインも阿呆なことしなければ、別れには立ち会えたのにな。しばらくブタ箱だろうからな」
マスターが歩く音が聞こえた。ガラスと木の破片の上を歩くひどく不安定な足音が響く。
それを聞き届けて、暗闇の中にガラスの破片が散らばる世界が浮かんだ。
破片の中に沈むペンダント。割れたティーカップからこぼれたお茶とお菓子。それから抱きしめられた肌の温かみ。
そして出会った人々の顔が。浮かんでは消えていく。
世界は、時計の針は止められぬ。
いいのだ。これで。ずっと愛してきたグインの元に逝けるのだから。
何もかも終わりにできると思うと、心が落ち着いた。
それでも尚、ちりりと心が痛んだ。
解説
●状況解説
町に戻ってきたレイチェルが倒れました。エルフ特有の加齢によるマテリアルの変調が原因です。
彼女は酒場の二階にある宿で昏睡しています。時々意識は取り戻していますが、歩くのは困難なほど衰弱しています。
元は20台後半くらいの外見ですが、白髪も増え、やつれた顔は一気に老化したような印象を受けます。
少年グインは酔っ払いに対する傷害と酒場を数日営業不能にするほどに荒らしたことによって留置場送りになっています。
酔っ払いは今後まともな生活は送れないほどの傷を負っています。
●目的
依頼主である酒場のマスターは「何ができるかわからないが、とりあえずレイチェルをどうにかしてあげ欲しい」ということで依頼しています。
具体的な目標は設定していませんので、各自でやりたいことをしてください。
町に戻ってきたレイチェルが倒れました。エルフ特有の加齢によるマテリアルの変調が原因です。
彼女は酒場の二階にある宿で昏睡しています。時々意識は取り戻していますが、歩くのは困難なほど衰弱しています。
元は20台後半くらいの外見ですが、白髪も増え、やつれた顔は一気に老化したような印象を受けます。
少年グインは酔っ払いに対する傷害と酒場を数日営業不能にするほどに荒らしたことによって留置場送りになっています。
酔っ払いは今後まともな生活は送れないほどの傷を負っています。
●目的
依頼主である酒場のマスターは「何ができるかわからないが、とりあえずレイチェルをどうにかしてあげ欲しい」ということで依頼しています。
具体的な目標は設定していませんので、各自でやりたいことをしてください。
マスターより
「世界はそれでも尚、美しい」「それでも尚、世界は巡る」の続き物でありもそして最後のお話です。
幸せとはとかく絶妙なバランスの上に成り立っていますね。一つ崩れるとすべてが崩れ去ることもあります。
それでも尚、とは変えられぬものに対しての気持ちがこめられています。
大グインは自らの死に、レイチェルは望んでもなかった少年グインとの出会いに。
此度は皆様に。レイチェルのマテリアルが変調していく様子は大グインの死から緩やかに始まり、今に至りました。
それでも尚、成したい事はありますか?
幸せとはとかく絶妙なバランスの上に成り立っていますね。一つ崩れるとすべてが崩れ去ることもあります。
それでも尚、とは変えられぬものに対しての気持ちがこめられています。
大グインは自らの死に、レイチェルは望んでもなかった少年グインとの出会いに。
此度は皆様に。レイチェルのマテリアルが変調していく様子は大グインの死から緩やかに始まり、今に至りました。
それでも尚、成したい事はありますか?
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/02/19 19:28
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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レイチェルの為に エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/02/12 00:46:14 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/10 07:51:50 |