ゲスト
(ka0000)
わた私
マスター:ゆくなが

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/06/30 19:00
- リプレイ完成予定
- 2019/07/14 19:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
誰も喋らないから、馬の蹄の音と車輪の音だけが聞こえている。
グリューエリン・ヴァルファー(kz0050)は馬車で、ぎゅっと両腕で立てた膝を抱えて座り込んで俯いていた。垂れ下がった炎色の髪が、馬車の振動に合わせて揺れていた。彼女は手にハンカチを握っている。
夕凪 藍の血を拭った白いハンカチだ。
ハンターと歌舞音曲隊の隊員は、SSSとこれに作製された配下歪虚討伐後、一応シャーフェ家の屋敷とSSSの書斎を調べた。何も出てこなかった。シャーフェ家の墓地にあったSSSの墓石には、
『Stille Schafe Schäferin』
『生没年 832-835』
『夢には触れられない 墓石が真実とは限らない』
などと、ふざけたことが書いてあった。
ブラウエブルームには何もなかった。
グリューエリンは、なるべく綺麗な場所に藍を埋めて、小さな墓を作った。もう誰も彼女に気がつくことはないだろうけど、それでも放っては置けなかったから。
藍と対峙した時、グリューエリンは彼女にかける言葉が見つからなかった。きっと、藍の言葉に共感していたからだ。
コウモリの自爆によって昏睡させられた日、グリューエリンはファンの言葉から逃げ出した。逃げてしまった理由を藍の言葉に見出したからだった。
だから何も言えなくて、彼女を埋める時すら気の利いた言葉さえかけてやれなかった。
現在、調査を終えた一行は帝都ではなく、ブラウエブルームの隣、旧ヴァルファー領であるロータファーベンに向かっていた。
SSSが残した『フリーセンの敵前逃亡には理由がある』という言葉を確かめに行くためだ。
あの本には『領民を流行病から救うために罪を被った』と書いてあった。
もし、それが真実ならグリューエリンが今まで信じてきたものはなんだったのだろう。
父親を軟弱者だと思っていた。家名を復興させるために軍に志願し、アイドルにだってなった。そのどれもが、勘違いの産物でしかなかったのか。
グリューエリンは、母から貰った水玉のワンピースを思い出していた。仕事と訓練が忙しくて、軍人が着るには可愛らしすぎて、結局一度も袖を通さなかった。13歳に似合っていたあの服を着る時期は過ぎてしまった。
もし、父親の真実を知っていたら、ワンピースを着る機会もあっただろうに。軍人にだってならなかったかもしれない。アイドルにだってならなかっただろう。
軍人でもアイドルでもないグリューエリンは、可愛い服を着て友達と恋の話でもしたのだろうか。恋人をつくって、愛を囁いたりキスをしたりしていたのだろうか。たらればでしかないのだけど、考えずにはいられない。今まで自分は一体、どれだけの可能性を真実から目を逸らすことで捨ててきたのだろう。
領地を没収された後の家で、母と兄が父親の話題に触れるたびにグリューエリンは耳を塞いで自分の部屋に籠って、ベッドの中で息を殺していた。
だって、そんな裏切り者の話なんて聞きたくない。軟弱な人の話なんて聞きたくない。
それを続けた結果がここにある。
グリューエリンはずっと、『逃げたくない』と思って行動してきた。なぜなら、フリーセンが逃げたからだ。
でも、今となってはどうだろう。
フリーセンとグリューエリン、逃げていたのはどちらの方か?
(軟弱者なのは、私の方ではありませんか……)
真実に耳を塞ぎ目を瞑り、都合の良い敵を作り出して、自分はあいつとは違うと宣っていた。
(……私の方が、よっぽどズルいじゃありませんか)
そういえば、あのワンピースは赤地に白い水玉模様だった。
藍の白いウェディングドレスを濡らした彼女の血は、赤い水玉模様みたい。
俯いたグリューエリンが考えるのは、フリーセンのこと、あり得たかもしれない軍人でもアイドルでもない自分のこと。そして、藍のことだった。
「おまえもいつかこうなるんだ」
グリューエリンはその藍の瞳が訴えた言葉を、当たり前のこととして受け止めた。朝になったら太陽が昇るとか、夜は暗いとか、ナイフで体を切ったら痛いとか、人間の血は赤いとか、そういったもののひとつとして捉えていた。
センセーションでもなんでもない、食後のお茶のような言葉だった。
(私たち、きっと、よく似ていた)
長い髪も、スカウトでアイドルになった経緯も、年齢も。よく似ていて、それでいて絶対的に別の人間だった。
でも──、と、だから──、が交わって、グリューエリンの中でひとつの答えが出来上がる。
(私は、あなたのようにはなりません)
(何故なら、私はあなたを知ってしまったから)
(あなたが迎えた結末を見届けたからこそ、同じ道は歩まない。歩めない)
(それが餞になるなんて思わない。そんなの私の勝手な辻褄合わせだ)
(私は、あなたを消費したくない)
馬車が止まった。ロータファーベンの入り口について、諸々の手続きを行っているのだろう。
それらが終わりようやく、馬車から降りて外を見てみると、見知らぬ景色が広がっている。グリューエリンは幼少期をこの土地で過ごしたはずだが、幼過ぎて記憶はあまりない。だから懐かしいより、初めて訪れたという感覚の方が近い。
「頑張れ、頑張れ、私……」
グリューエリンは唱えた。ここで生活する人々の話を聞けばSSSの言っていたことが本当かどうかが判明する。
本当だったら、どうするんだろう。どうなるんだろう。
「あと少しだけ、頑張れ……」
虚構を暴いた先に、何があるんだろう。
(私は、ここで確かめる)
(私は『私』を確かめる)
(やらなくてはならない)
(『私』を確かめて、全てが終わった後)
(私は──)
(アイドル、やめる?)
誰も喋らないから、馬の蹄の音と車輪の音だけが聞こえている。
グリューエリン・ヴァルファー(kz0050)は馬車で、ぎゅっと両腕で立てた膝を抱えて座り込んで俯いていた。垂れ下がった炎色の髪が、馬車の振動に合わせて揺れていた。彼女は手にハンカチを握っている。
夕凪 藍の血を拭った白いハンカチだ。
ハンターと歌舞音曲隊の隊員は、SSSとこれに作製された配下歪虚討伐後、一応シャーフェ家の屋敷とSSSの書斎を調べた。何も出てこなかった。シャーフェ家の墓地にあったSSSの墓石には、
『Stille Schafe Schäferin』
『生没年 832-835』
『夢には触れられない 墓石が真実とは限らない』
などと、ふざけたことが書いてあった。
ブラウエブルームには何もなかった。
グリューエリンは、なるべく綺麗な場所に藍を埋めて、小さな墓を作った。もう誰も彼女に気がつくことはないだろうけど、それでも放っては置けなかったから。
藍と対峙した時、グリューエリンは彼女にかける言葉が見つからなかった。きっと、藍の言葉に共感していたからだ。
コウモリの自爆によって昏睡させられた日、グリューエリンはファンの言葉から逃げ出した。逃げてしまった理由を藍の言葉に見出したからだった。
だから何も言えなくて、彼女を埋める時すら気の利いた言葉さえかけてやれなかった。
現在、調査を終えた一行は帝都ではなく、ブラウエブルームの隣、旧ヴァルファー領であるロータファーベンに向かっていた。
SSSが残した『フリーセンの敵前逃亡には理由がある』という言葉を確かめに行くためだ。
あの本には『領民を流行病から救うために罪を被った』と書いてあった。
もし、それが真実ならグリューエリンが今まで信じてきたものはなんだったのだろう。
父親を軟弱者だと思っていた。家名を復興させるために軍に志願し、アイドルにだってなった。そのどれもが、勘違いの産物でしかなかったのか。
グリューエリンは、母から貰った水玉のワンピースを思い出していた。仕事と訓練が忙しくて、軍人が着るには可愛らしすぎて、結局一度も袖を通さなかった。13歳に似合っていたあの服を着る時期は過ぎてしまった。
もし、父親の真実を知っていたら、ワンピースを着る機会もあっただろうに。軍人にだってならなかったかもしれない。アイドルにだってならなかっただろう。
軍人でもアイドルでもないグリューエリンは、可愛い服を着て友達と恋の話でもしたのだろうか。恋人をつくって、愛を囁いたりキスをしたりしていたのだろうか。たらればでしかないのだけど、考えずにはいられない。今まで自分は一体、どれだけの可能性を真実から目を逸らすことで捨ててきたのだろう。
領地を没収された後の家で、母と兄が父親の話題に触れるたびにグリューエリンは耳を塞いで自分の部屋に籠って、ベッドの中で息を殺していた。
だって、そんな裏切り者の話なんて聞きたくない。軟弱な人の話なんて聞きたくない。
それを続けた結果がここにある。
グリューエリンはずっと、『逃げたくない』と思って行動してきた。なぜなら、フリーセンが逃げたからだ。
でも、今となってはどうだろう。
フリーセンとグリューエリン、逃げていたのはどちらの方か?
(軟弱者なのは、私の方ではありませんか……)
真実に耳を塞ぎ目を瞑り、都合の良い敵を作り出して、自分はあいつとは違うと宣っていた。
(……私の方が、よっぽどズルいじゃありませんか)
そういえば、あのワンピースは赤地に白い水玉模様だった。
藍の白いウェディングドレスを濡らした彼女の血は、赤い水玉模様みたい。
俯いたグリューエリンが考えるのは、フリーセンのこと、あり得たかもしれない軍人でもアイドルでもない自分のこと。そして、藍のことだった。
「おまえもいつかこうなるんだ」
グリューエリンはその藍の瞳が訴えた言葉を、当たり前のこととして受け止めた。朝になったら太陽が昇るとか、夜は暗いとか、ナイフで体を切ったら痛いとか、人間の血は赤いとか、そういったもののひとつとして捉えていた。
センセーションでもなんでもない、食後のお茶のような言葉だった。
(私たち、きっと、よく似ていた)
長い髪も、スカウトでアイドルになった経緯も、年齢も。よく似ていて、それでいて絶対的に別の人間だった。
でも──、と、だから──、が交わって、グリューエリンの中でひとつの答えが出来上がる。
(私は、あなたのようにはなりません)
(何故なら、私はあなたを知ってしまったから)
(あなたが迎えた結末を見届けたからこそ、同じ道は歩まない。歩めない)
(それが餞になるなんて思わない。そんなの私の勝手な辻褄合わせだ)
(私は、あなたを消費したくない)
馬車が止まった。ロータファーベンの入り口について、諸々の手続きを行っているのだろう。
それらが終わりようやく、馬車から降りて外を見てみると、見知らぬ景色が広がっている。グリューエリンは幼少期をこの土地で過ごしたはずだが、幼過ぎて記憶はあまりない。だから懐かしいより、初めて訪れたという感覚の方が近い。
「頑張れ、頑張れ、私……」
グリューエリンは唱えた。ここで生活する人々の話を聞けばSSSの言っていたことが本当かどうかが判明する。
本当だったら、どうするんだろう。どうなるんだろう。
「あと少しだけ、頑張れ……」
虚構を暴いた先に、何があるんだろう。
(私は、ここで確かめる)
(私は『私』を確かめる)
(やらなくてはならない)
(『私』を確かめて、全てが終わった後)
(私は──)
(アイドル、やめる?)
解説
●目的
ロータファーベンにて、SSSの言葉が真実か確かめる。
グリューエリンの心情に整理をつける。
●SSSの言葉
フリーセンは領地を襲った流行病に対処するために、敵前から逃亡した。
だが彼の尽力で、旧ヴァルファー領では病でほとんど死人を出すことはなかった。
●ロータファーベンについて
ヴァルファー家の領地だった場所。
非常にのどかな場所で、現在も管理が行き届いている。
本シナリオの舞台であり、ハンターたちの出発地点には役場や広場、酒場などの人の集まる場所があるので、ここで生活している人たちと交流するのは難しくない。
●フリーセンについて
グリューエリンの父親。
敵前逃亡の罪で、領地は没収されマスケンヴァルに投獄されている。
●グリューエリンについて
帝国軍人にしてアイドル。
フリーセンの罪状に伴い地に落ちた家名を復興しようと軍に志願し、その一環としてアイドル活動もしている。
父親フリーセンを逃げ出した臆病者だと思い、それに反発するように生きてきた。
が、それは自分の思い込みに過ぎなかったのではないかと判明し、現在精神的に憔悴している。
今まで自分が父の実像を知ろうとしなかったことを責め、同時にもし父の真実を知っていたらどんな風な人生を生きていただろう、と考えている。
シナリオ中、特にプレイングに指定がない場合は、いい感じにハンターの後をついていく。
●PL情報
SSSの言葉は真実。
これはフリーセン領主時代を生きている人間に聞けばすぐわかる。彼はこの土地で名君とされているので、ハンターが暴力沙汰などの不手際を起こさない限り、話を聞き出すのは容易だろう。
暴力沙汰や問題行動は厳禁だが、武具防具を装備している状態でロータファーベンを歩き回るのは問題ない。ハンターだからだと理解してくれる。何か思惑のない限り装備品にこだわる必要はないだろう。
また、フリーセンの真実をヴァルファー一家で知らなかったのはグリューエリンだけである。
ロータファーベンにて、SSSの言葉が真実か確かめる。
グリューエリンの心情に整理をつける。
●SSSの言葉
フリーセンは領地を襲った流行病に対処するために、敵前から逃亡した。
だが彼の尽力で、旧ヴァルファー領では病でほとんど死人を出すことはなかった。
●ロータファーベンについて
ヴァルファー家の領地だった場所。
非常にのどかな場所で、現在も管理が行き届いている。
本シナリオの舞台であり、ハンターたちの出発地点には役場や広場、酒場などの人の集まる場所があるので、ここで生活している人たちと交流するのは難しくない。
●フリーセンについて
グリューエリンの父親。
敵前逃亡の罪で、領地は没収されマスケンヴァルに投獄されている。
●グリューエリンについて
帝国軍人にしてアイドル。
フリーセンの罪状に伴い地に落ちた家名を復興しようと軍に志願し、その一環としてアイドル活動もしている。
父親フリーセンを逃げ出した臆病者だと思い、それに反発するように生きてきた。
が、それは自分の思い込みに過ぎなかったのではないかと判明し、現在精神的に憔悴している。
今まで自分が父の実像を知ろうとしなかったことを責め、同時にもし父の真実を知っていたらどんな風な人生を生きていただろう、と考えている。
シナリオ中、特にプレイングに指定がない場合は、いい感じにハンターの後をついていく。
●PL情報
SSSの言葉は真実。
これはフリーセン領主時代を生きている人間に聞けばすぐわかる。彼はこの土地で名君とされているので、ハンターが暴力沙汰などの不手際を起こさない限り、話を聞き出すのは容易だろう。
暴力沙汰や問題行動は厳禁だが、武具防具を装備している状態でロータファーベンを歩き回るのは問題ない。ハンターだからだと理解してくれる。何か思惑のない限り装備品にこだわる必要はないだろう。
また、フリーセンの真実をヴァルファー一家で知らなかったのはグリューエリンだけである。
マスターより
こんにちは、あるいはこんばんは。ゆくながです。
さて、グリューエリンの連作シナリオはこれで最終回です。彼女の話はもう少し続きますが、今回の過去にまつわる話はこれで区切りです。
余談ですが、前回『わた死』に参加せず、このシナリオ参加される方は、前回の戦闘中には馬車内で待機していたとか、そういう解釈になります。この辺りは重要なことではないので深く考える必要はありませんが、そういう対応になります、というお知らせです。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
さて、グリューエリンの連作シナリオはこれで最終回です。彼女の話はもう少し続きますが、今回の過去にまつわる話はこれで区切りです。
余談ですが、前回『わた死』に参加せず、このシナリオ参加される方は、前回の戦闘中には馬車内で待機していたとか、そういう解釈になります。この辺りは重要なことではないので深く考える必要はありませんが、そういう対応になります、というお知らせです。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/07/10 16:00
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013) 人間(リアルブルー)|34才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/06/27 22:05:50 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/06/26 21:16:02 |