• 調査

【陽光】ジャンヌとアメリア

マスター:のどか

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 3~6人
サポート
現在0人 / 0~6人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
プレイング締切
2019/07/06 07:30
リプレイ完成予定
2019/07/20 07:30

オープニング


「――陛下。城のすべてが我が手中となりました。これにより、契約は確かに履行されたものと判断いたします」
 恭しくお辞儀をした赤い燕尾服の執事――ダンテリオに、ジャンヌ・ポワソン(kz0154)は艶やかな瞳で答える。
「そう……それじゃあ、さっそく“掃除”をしてちょうだい」
「かしこまりました」
 彼女の命にダンテリオは大きく手を振り上げる。
 そのまま滑らかに腕を振ると、ボロボロに破壊・劣化していた城の壁・床・天井・柱・その他が、細かい格子状に分断されそれぞれに回転しながら動き始める。
 まるでルービックキューブを解くかのように素早く、滑らかに。
 その中でリズミカルに腕を振るダンテリオはオーケストラの指揮者のようであり、ジャンヌはそのたったひとりの観客であった。
 パズルはしかして、少しずつ「新たな城」へと組み上がっていく。
 エキゾチックな夢幻城――タラクサクムのイメージはそのままに、より壮麗、より絢爛に。
 円形に組み替えられた広い謁見室は、囲む高い壁に4階分のバルコニーが覗く。
 その光景はまるで、最奥のジャンヌを囲むオペラホールのようでもある。
 壁が塞がったことで室内は薄暗くなっていたが、王座に目掛けて光を取り込む天窓が開けられていて、ジャンヌの姿を照らし出していた。
「いかがでしょうか」
「いいわ」
 ジャンヌは喜ぶでもなく、気が沈むでもなく、あまり興味はないといった様子だった。
「とはいえ、ここまででございますね。家具装飾や調度品は新調しませんことには……そうですね、回収してまいりましょうか。お気に入りも残っていればよいのですが」
 自ら出した問題に自ら解を得て、1人で勝手に納得する。
 そんな彼をジャンヌがふと呼んだ。
「ダンテリオ……私のアイは間違っているのかしら?」
「……なんと?」
 質問の内容を心得ず、ダンテリオは笑顔のまま首をかしげる。
「この世界にとって私のアイは妨げらしいわ」
「ですが、受け入れる者はいるのでしょう? でしたら間違えているということはないでしょう。妨げだと感じた者にとって、それは忌むべきことであったというだけの話です」
「……それでは、すべてにアイを送ることはできないわ」
「それは素敵な夢でございますね」
 ダンテリオが称えるように手を鳴らす。
 こだまする拍子の中で、ジャンヌは天窓から差し込む光を見上げた。
「ここから東へいくつもいくつも山を越えた先に、ジェオルジという小村の集まりがございます。ためしに、村ひとつへアイをお与えに行かれてみてはどうでしょう。街や村というものは世界の縮図。そこで知りうることもあるでしょう」
「……そうね。ここで思案しても仕方がないことはこの数千年で知っているわ」
 ジャンヌは立ち上がり、ドレスの裾を広げた。
「ダンテリオ」
「街の方へ城を彩るためのものを回収しに行ってまいろうと考えておりましたが……ご用命とあらば」
「そう……なら私ひとりで十分よ。あなたはあなたの成すべきことを全力で成しなさい」
「かしこまりました」
 ジャンヌはひとり歩み出す。
 その陽だまりを世界へそそぐために。
 

 村長祭の余韻残る村に騎竜が降り立ったのは、太陽がさんさんと輝く昼下がりのことだった。
 竜の広い背に備えられた王座風の鞍から、1人の女性が舞い降りる。
 その瞬間、傍にいた村人たちは不意に激しい動悸に襲われた。
 ひどい風邪にでもかかったような感覚。
 幾人かは立つことすらもままならず、その場にへたり込んでしまっていた。
「――私は“陽だまりの女王”ジャンヌ・ポワソン。この村にアイを与えに来たわ」
「ジャンヌ……?」
 ぽつりと、1人の少女がその名前を反芻する。
 1本にまとめたプラチナブロンドの長髪が肩口から零れた。
「さ……さぞ、高名なお方であると心得ます……差し出せるものであれば、どのようなものでも差し出します……どうか……村の者の命だけは……」
 村長らしきご老人が、地べたを這いずるようにしながら朦朧とする意識の中で言葉を絞る。
「……私は私のアイを受け取って欲しいだけ」
「受け取ったら……どうなるんだ?」
 1人の男性が尋ねる。
 具合は悪そうだが何とか耐えられるのか、立ったままジャンヌへと1歩踏み出した。
「……歪虚になるわ」
 ゾクリと人々の背が凍り付いた。
 中には小さな悲鳴をあげながら、転がるように後退るものさえいた。
 その様子を見て、ジャンヌは目を伏せる。
「……それは、誰でもなれるのかい?」
 また誰かが声をあげた。
 身体をおこすこともできず、地面に横たわる線の細い青年だった。
「アイを受け止めてくれるのなら」
「じゃあ……与えてくれないか?」
「ハロルド……!?」
 傍にいた壮年の女性が狼狽えた様子で彼を見る。
「知ってるんだ母さん……自分の病気の事……先が長くないことも。それに、この先世界が滅びてしまうとも分からない……そこで噂に聞く成れの果てみたいな歪虚になるくらいなら……最期くらい僕は僕の意志で……」
 ジャンヌが青年へと歩み寄る。
 しゃがみ込み、そっと頬に触れて顔を自分の方へ向かせると、瞳をみつめながら語り掛けた。
「貴方たちにとって歪虚になることは死と同じ意味なのね……だけど貴方は死なないわ。私たちが行きつく先は虚無――そこには死も絶望もない。望めば人の感覚では永遠にも近い時を生きることだってできる」
「ありがとう……僕ははじめて自分の意思で未来を決めるよ」
 ジャンヌの正中に刻まれた傷跡にじわりと血が滲む。
 そのまま彼を抱き起すと、子供をあやすように優しく抱きしめた。
 ぶくりと彼の身体が肥大化し、白い肌の巨人――プエル=プルスが生まれる。
 人々は恐れおののき、先ほどよりも明確な悲鳴が響き渡った。
 プエル=プルスは大人しくジャンヌの姿を見下ろしている。
 彼女も見上げて視線を交わすと、再び村人を見渡した。
「……あなたたちにアイを」
 すぐに次の声が上がることはなかった。
 ジャンヌは村長へ目を向けた。
「しばらくこの村にいるわ。アイを受け取ってくれる人はいつでも訪ねていらっしゃい。そうね……あなた」
 ジャンヌが1人の姿を射止める。
 あのプラチナブロンドの髪の少女だった。
「あなたは平気なのね……ここにいる間の付き人になってくれるかしら」
「わ、わたしは……」
 戸惑う少女は助けを求めるように辺りを見渡す。
 だが誰もが彼女から目を背けると、表情を曇らせた後に、わずかな間を置いて頷いた。
「分かったわ。わたしでよければ」
「そう……名前は?」
 少女はジャンヌの瞳をまっすぐに見つめ返して答えた。
「――アメリア」
 巨人が騎竜の脚を掴み、西の空へと飛んでいく。
 ジャンヌはアメリアを連れて、ゆるりと村を歩きはじめる。
(もしかしてこの人が……)
 アメリアがジャンヌの横顔を盗み見た。
 あの日、忘却の騎士が求めた面影を思い描き、重ねるように。

解説

▼目的
・村の現状調査
・ジャンヌの村からの追放

▼概要
災厄の十三魔「ジャンヌ・ポワソン」がジェオルジの村の1つを占拠しているとの情報が入りました。
村へ潜入し、状況と事実関係の把握を行ってください。
またジャンヌは村の少女1人を世話人として傍に置いているようです。
彼女の安否とジャンヌの状況も獲得すべき情報となっています。

また可能であればジャンヌの村からの追放を目指しても構いません。
実力行使、交渉、その他、手段は潜入するハンターの手に委ねます。
しかし何にせよ直接接触することになるため十分に注意をしてください。

▼村の状況
ジャンヌは村はずれのゲストハウスに滞在している。
村人はジャンヌの存在に怯えながらも生活を送っている。
ゲストハウスと村の中心とは多少距離があるため、村人への負のマテリアルの影響も薄い。

▼NPC
「ジャンヌ」
“陽だまりの女王”を名乗る災厄の十三魔。
村人にアイを受け入れて貰うのが目的であり、長期的に滞在をするつもり。
今回はダンテリオを連れていないが、プエル=プルスを生み出している。
己の力の使い方を理解してきており、日々戦闘力が向上の傾向にある。

「プエル=プルス」
白くのっぺりとした怠惰の歪虚。
外見はそれぞれ個性があるが個体としては同等のもの。
ジャンヌの騎竜が都度城へ運んでいる。
でも一度には運べないので数体がゲストハウスの外に放し飼いの状態となっている。
ジャンヌに言いつけられているのかいきなり襲ってくることはない。

「アメリア」
村に住む明るく気立ての良い少女。16歳。
プラチナブロンドの長い髪を持ち、どことなくジャンヌに似た面影がある。
かつてこの村で忘却の騎士アルバートを匿っていた。
覚醒者の素質があるのかジャンヌを前にしても比較的平気でいられるため、滞在中の世話係を務めることに。
彼女に対しては人並みの畏怖を抱きつつ、アルバートが言葉の端に覗かせたていた女性として興味を抱いている。

マスターより

おはようございます、のどかです。

今さらですがジャンヌ関連のシナリオに共通タグを用意いたしました。
残りそう何度も使うことはないかと思います……たぶん。
シナリオ「【陽光】ドールハウス・ワンダーランド」が時期を同じくして出ておりますが、同日の事件ではないので参加に制約などはございません。

アメリアはシナリオ「忘却の面影」に登場したキャラクターとなります。
解説の情報でおそらく十分かなと思いますが、より詳細に当時の状況を知りたい方はご覧になってみてくださいね。

質問は別途卓を立ててルミちゃんまでどうぞ。
ご参加をお待ちしております。

関連NPC

  • 陽だまりの女王
    ジャンヌ・ポワソン(kz0154
    歪虚|22才|女性|歪虚(ヴォイド)
  • HEAVENS DOOR
    朱鷺戸るみ(kz0060
    人間(リアルブルー)|17才|女性|魔術師(マギステル)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/07/21 01:57

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/07/06 07:38:24
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/07/02 04:24:18