• 戦闘

風樹の嘆

マスター:サトー

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在7人 / 4~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/02/03 19:00
リプレイ完成予定
2015/02/12 19:00

オープニング

 親孝行をしたいと思っても、その頃には既に親はいない、という話はよく聞く。
 なら、僕は、どうしたらいいのだろう――。



「ようこそ、プレアルバ村へ」
 依頼を受けてジェオルジのとある村にやってきたハンター達は昼過ぎに到着すると、そのまま村長宅へ案内され説明が始まった。
 ――モグラ退治。一言で済ませれば、それが依頼である。
 最近村の畑に出没するモグラが農作物を荒らして困っているという。とはいえ、単なるモグラならば、わざわざハンターが出張る必要はない。
 村長は、一人の青年をハンター達に紹介した。
 藍色がかった黒髪に、若干垂れ気味な目は穏やかな光を湛え、広い額は知性の輝きを放つ。鼻筋の通った細い面立ちは、きりっとした口元で引締められ、優男の印象を程よく染める。
「私はルチオ・スペランツァと言います。よろしくお願いします」
「ルチオは実に優秀な若者でしてな。我が村期待の逸材なのです。早いところヴァリオスへ学びに――」
「村長。その話は……」
 眉を顰めたルチオに、村長は残念そうに話を戻す。
「詳しい依頼内容に関しては、ルチオの方から説明させて頂きますので。私はこれで」
 村長が退席すると、ルチオは目にかかりそうな前髪をいじり、ため息を一つ吐いた。
「今回のモグラ、これは事前にお話ししてある通り雑魔なのですが、事の経緯からお話しましょう」


 夜間に畑から物音がするのを不審に思った村人が、作物を荒らしているモグラを見たのがきっかけ。村人は追い払おうとモグラに近づいたところ、腕を思い切り噛み付かれ重傷を負った。
 負傷した村人の情報から、モグラが見たことも無いほど大きかったということで、早々に危険を取り除こうと村をあげて巣の捜索を行った。モグラの巣は特有のキノコの真下にあると知られていたので、捜索自体に手間はそうかからなかった。
 村の北の雑木林の中でモグラの巣を見つけて埋めてはみたが、その日の晩も変わらず姿を現した。
「巣が他にもあるのか、埋めてもまた修復されてしまったのかは分かりません」
 そのときはまだ、雑魔と知れていなかったので、とルチオは言う。
 已む無く、ルチオを含む村人が夜間の畑の監視を行うこととなった。
 畑は村の東西南の3か所に集中している。内1つをじっと陰から監視していたルチオは、突如畑に現れたモグラ塚をじっと目で追った。土の固い平地では、地中深くを潜行していたのだろうか。
 少しして、土から突き出た鼻がひくひくと動き、のっそりと地上に姿を現す。体長は30cmほどか。ルチオは静かに魔導銃を構えて撃った。
「こう見えて、私は機導師なんです」
 本業ではありませんし、駆け出しなんですが、とルチオは自嘲する。
 ルチオの弾丸は、しかしモグラに当らなかった。モグラにはあり得ないほどの機敏な動きで弾丸を躱し、地中と地上をいったりきたり。その後地表に現れたところを狙って何発か撃ってはみたものの、一発もかすりもせず。
「情けないことに、そのまま逃がしてしまいました」
 そこでようやく雑魔と判断したらしい。
 残りの畑でも同じタイミングで襲われていたことから、少なくとも雑魔モグラは2匹以上いると見られる。
「モグラが雑魔化したとあっては、巣に汚染の元があるのかもしれません。前回はよく確認していなかったので……。
 それと、モグラは目はほとんど見えないのですが、嗅覚と聴覚が鋭いんです。雑魔が同様とは限りませんが、参考までに」
 と、そこへ、ノックと共に勢いよく扉が開かれた。
「お兄ちゃん!」
「これ、グイーダ」
 村長に押し留められるように出てきたのは、藍色の髪の少女。
「イーダ、今は仕事中だ。待っていなさい」
 ルチオは村長に目配せする。村長はすまなそうに一同に頭を下げた。
「早く済ませてね! 話はまだ終わってないんだから!」
 ルチオとは似ても似つかぬ勝気な少女――グイーダは、短く切り揃えられた髪を振って、村長の制止も厭わず外へ戻る。
 ルチオは謝罪し、一同を外に誘った。


「この村では、大根や株、小麦やほうれん草、にんにくなどを現在育てています」
 縦10m横20m程の畑が4つ並んでいる。これが東西南にそれぞれあるらしい。畑の一部には、盛り上がった土の生々しい跡が残されている。
「本来、モグラは作物自体は食さないはずなんですが、雑魔だからでしょうか。作物も狙われてしまっていて」
 できるだけ早急に退治したいとルチオは懇願する。
 最悪撃退だけでも良い、とのことだが、その場合、周辺の村々への被害が懸念される為、新たにハンターへ依頼を出さなければならなくなるだろう。
「はぁ、やれやれ」
 グイーダを家に帰した村長が、一同の前に歩いて来る。
「すみません、イーダがお手数をおかけして」
 10歳になったばかりの妹のグイーダは、何かと世話を焼きたがるお転婆なお年頃。口を挟むのが大好きなのだろう。だから、今も、ルチオは困ってしまう。
「いや、構わんさ」
 村長はルチオに気にしないように言うが、その実、何か言いたそうにもごもごとしていた。
「ルチオ、お主の家族もああ言っているのだし、もうそろそろ――」
「村長……」
 ルチオの強めの諌めに、むぐぅと村長は口を閉じた。
 訝しむハンター達に、ルチオは困ったように笑う。
「この辺りでは、優秀な子供が出ると、後学のために都会に送り出して様々な知識を習得させるという習いがあるのです」
 多くの事を学び戻って来た彼らの意見を取り入れ、村はより発展する、というのが、一般的な流れなのだそうだが、ルチオは渋い顔のままだ。
「それでは、私はこれで。
 駆け出しですが、私もハンターですので、私の手が必要でしたら遠慮なくお声かけ下さい。畑は極力荒らしたくないので、頭の片隅に入れておいて頂ければ幸いです。
 それと、何かご入用がある際も、私に言っていただければ、村の中にあるものでしたら、極力ご用意いたします」
 言って、ルチオは去る。村長は弱ったように頬を掻いていた。
「ルチオは幼い頃から頭のいい子でして、10になる頃には、ヴァリオスに送り出そうという計画があったのです」
 けれど、その計画は8年たった今でも実行されていない。
 理由は簡単。ルチオは家族と離れるのを嫌がった。
 ルチオの父は、妹のグイーダが一歳になる前に、ゴブリンに襲われ亡くなった。
 残された一家三人。ルチオは身体の弱い母と幼い妹が心配で、村を離れることを断った。
 当時ルチオと仲の良かった子供の話では、言葉には出さないが、都会へ行って色んな勉強をしたいという風ではあったらしい。勉強を教えていた村人から見ても、ルチオは大層知識欲が高かったそうだ。
「事情は理解できるのですが……。ルチオの家族も、ヴァリオス行きには賛成してくれているのです。後はルチオが頷いてくれるだけとはいえ……」
 村長は荒らされた畑を眺めつつ、大きなため息を吐いた。

解説

目的:
 モグラ型雑魔の退治(もしくは、撃退)

モグラ:
 数は2匹以上。体長30cmほど。
 噛み付きと、短い手足でひっかく。
 動きはかなり敏捷。警戒心が強く、無闇に地上に姿を見せない。

畑:
 縦10m横20mが4つ並んでいる。それが東西南にそれぞれある。
 周辺は特に何もない平地。

ルチオ・スペランツァ:
 18歳。男。機導師。駆け出しのハンター(本業ではない)。
 使用可能スキルは機導砲と機導剣。
 10歳の妹・病弱な母と暮らしている。

グイーダ・スペランツァ:
 ルチオの妹。愛称イーダ。10歳。お転婆でお節介焼きの少女。

マスターより

 お疲れさまでございます。
 自身のやりたいことと家族のこと、どちらを重視すべきなのか。
 それは背負うものの重さによっても変わって来るでしょう。
 ルチオの道を決めるのはルチオ自身ですが、他者の影響というものは、存外大きかったりすることもあるかと思います。
 おやすみなさい。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/02/10 09:57

参加者一覧


  • カグラ・シュヴァルツ(ka0105
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • THE SAMURAI
    シオン・アガホ(ka0117
    エルフ|15才|女性|魔術師
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士

  • 奄文 錬司(ka2722
    人間(紅)|31才|男性|聖導士
  • 冒険者
    ベラ・ハックウッド(ka3727
    エルフ|24才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談用
ベラ・ハックウッド(ka3727
エルフ|24才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/02/03 20:09:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/01 00:44:53