ゲスト
(ka0000)
正しき安らぎを
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/02/03 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/02/12 19:00
オープニング
「――おや。ベルフラウ、祈りの最中でしたか?」
ワルプルギス錬魔院に祈りの場などない。だがそれはベルフラウにとって大した問題ではなかった。
彼女は別に敬虔なエクラ教徒というわけではなかったし、そもそもエクラ教に詳しくもなければ祈りは日課ですらない。
それでも時折胸から下げたアンクを握り神に祈るのだ。場所はどこでも構わない。こんな錬魔院の廊下だとしても。
「ナサニエル先生、こんにちは」
「ええ、こんにちは。今日は顔色も良さそうですねぇ」
「そう言う先生は疲れてます?」
明るく親しげな笑顔を向けるベルフラウ。ナサニエルは肩を竦め。
「CAMやら魔導アーマーやらの調整がありまして……その扱いやら何やらについても協議せねばなりません。嫉妬の歪虚は色々と私に問題を残して行きましたよ」
「でも少し楽しそうですね」
「ウフフ……それは勿論。面白い使いっ走りも手に入りそうですし、それなりに良い結果を皆さんに報告できそうですから」
ベルフラウはぎゅっとアンクを握り締める。それから目を伏せ。
「人を守る為の力が奪われ、人の命を奪う……あってはならない事です」
「そういう事もあります。力というのは常に自分自身に向けられる事も想定しておくべきです」
「……先生。私は聖機剣を扱うに相応しいのでしょうか?」
首を傾げるナサニエル。ベルフラウは壁に背を預け、肌身離さず持ち歩くその武器を手に取る。
「時折、自分でも理解出来ない行動を取りそうになる時があって……そう、まるでその、私が暴力を望んでいるかのような……」
「はあ」
「力を正しく扱えもしない人間が、試作兵器を運用するのは危険ではないでしょうか」
「ふむ」
「でも、この剣を持つようになってから、凄く落ち着くんです。だから手放すのが怖くもあって……」
「それで神頼みですか?」
恐る恐る頷くベルフラウ。ナサニエルはいかにもバカバカしいと言わんばかりに頭を掻く。
「先生は神様を信じていないんですよね?」
「え? いるんじゃないですか?」
「ええ!? い、意外です……信心とは無縁かと……」
「神なんて居ると思えばいるし、居ないと思えば居ませんし、そのどちらかを他人に押し付けるものではないでしょう。きみは……訊くまでもありませんか。本気で神を信じるのなら、そんな不安そうにはしないでしょう」
「わ、私は……」
「神が居ても居なくても、きみが見放されていようが愛されていようが、試作兵器のテスターとして適切かどうかさえ、どうでも良い事です。出来ると思うならやらせるし、そうでないなら私はきみに聖機剣を預けませんよ。私そこまで無能じゃありません」
心底どうでもよさそうなナサニエルだが、ベルフラウは瞳をきらきらさせていた。
この男にはどこまでも裏表がない。ベルフラウも大概アホだが、この男もかなりアホだ。頭はいいがアホである。
「ありがとうございます、先生!」
「はい?」
「そうですよね。自分を信じて頑張るしかないですよね!」
「そんなの改めて口に出して確認するまでもないのでは?」
「はい! それもこれも先生のお陰です。ちゃんと言いつけは守ってますし、お薬も飲んでます! あのっ、何かお手伝い出来る事はありませんか!?」
ズイズイと顔を寄せてくるベルフラウにナサニエルはきょとんとしたまま思案する。
「では、以前設置してもらったマテリアル観測装置の改良版があるので、その実験をお願いします。他国にも索敵技術は必要だと言って、開発を迫られてまして」
「わかりました!」
「詳細は追って連絡しますので」
「はい! それでは失礼しますっ!」
元気よく走り去る背中を眺め、ナサニエルは白衣の袖に両手を突っ込んだままかくりと首を傾ける。
「変な子ですねぇ。まあ、経歴が経歴なので当然ではありますが……薬さえちゃんと飲んでれば問題も起こさないし……」
――ベルフラウにはファミリーネームがない。そして本当の名前さえ彼女は知らない。
革命戦争の時代には珍しくない孤児で、帝国では少ないエクラ教会で一時保護されたという。それ自体は特殊でもなんでもないのだが。
「聖機剣を持ってると落ち着くんじゃなくて、戦っていると落ち着くだけでしょうに」
“死にたがり”は今に始まった事ではない。
ずっとずっと、死ぬ為に生きてきた。拙い祈りで自らを誤魔化しながら、綺麗なままで終わる瞬間を待っているのだ。
薬を飲まなければまともではいられない。だからナサニエルに依存する。彼女にしてみればナサニエルは恩師であり、さしずめ救いの天使と言ったところか。
「――くだらない」
廊下の角を曲がった所で、吐き捨てるようなナサニエルの呟きを少女は聞いていた。
知っている。彼が自分をどう思っているのか。だが救われたのは事実であり、そして彼が居なければ文字通り自分は生きていけない。
ふと両手に目を落とす。白く、たくさんの傷跡がある両手。人の命を奪った手。沢山の血に染まった手……。
毎晩の様にうなされた悪夢をナサニエルは取り除いてくれた。人としての生活を取り戻してくれた。
「私は悪い子じゃない。もう改心したんだから。懺悔したんだから。神様もきっと許してくれる。だって私は……悪くない」
不安になるなら笑おう。もっと良い事をしよう。悪者を倒し、正義の味方として。
祈りが足りないのならば幾らでも祈ろう。悪を倒すという祈り。悲劇に涙するという祈り。誰かの代わりに傷つくという祈り。
呆れ返る程の祈りを、信じるという祈りを重ね、いつか許される日を夢見る。もう覚えていない自らの罪から解き放たれるその時を。
「だから私は――悪くない」
冷たいアンクが体温に染まるまで握り締め、深呼吸と共に少女は歩き出した。
ワルプルギス錬魔院に祈りの場などない。だがそれはベルフラウにとって大した問題ではなかった。
彼女は別に敬虔なエクラ教徒というわけではなかったし、そもそもエクラ教に詳しくもなければ祈りは日課ですらない。
それでも時折胸から下げたアンクを握り神に祈るのだ。場所はどこでも構わない。こんな錬魔院の廊下だとしても。
「ナサニエル先生、こんにちは」
「ええ、こんにちは。今日は顔色も良さそうですねぇ」
「そう言う先生は疲れてます?」
明るく親しげな笑顔を向けるベルフラウ。ナサニエルは肩を竦め。
「CAMやら魔導アーマーやらの調整がありまして……その扱いやら何やらについても協議せねばなりません。嫉妬の歪虚は色々と私に問題を残して行きましたよ」
「でも少し楽しそうですね」
「ウフフ……それは勿論。面白い使いっ走りも手に入りそうですし、それなりに良い結果を皆さんに報告できそうですから」
ベルフラウはぎゅっとアンクを握り締める。それから目を伏せ。
「人を守る為の力が奪われ、人の命を奪う……あってはならない事です」
「そういう事もあります。力というのは常に自分自身に向けられる事も想定しておくべきです」
「……先生。私は聖機剣を扱うに相応しいのでしょうか?」
首を傾げるナサニエル。ベルフラウは壁に背を預け、肌身離さず持ち歩くその武器を手に取る。
「時折、自分でも理解出来ない行動を取りそうになる時があって……そう、まるでその、私が暴力を望んでいるかのような……」
「はあ」
「力を正しく扱えもしない人間が、試作兵器を運用するのは危険ではないでしょうか」
「ふむ」
「でも、この剣を持つようになってから、凄く落ち着くんです。だから手放すのが怖くもあって……」
「それで神頼みですか?」
恐る恐る頷くベルフラウ。ナサニエルはいかにもバカバカしいと言わんばかりに頭を掻く。
「先生は神様を信じていないんですよね?」
「え? いるんじゃないですか?」
「ええ!? い、意外です……信心とは無縁かと……」
「神なんて居ると思えばいるし、居ないと思えば居ませんし、そのどちらかを他人に押し付けるものではないでしょう。きみは……訊くまでもありませんか。本気で神を信じるのなら、そんな不安そうにはしないでしょう」
「わ、私は……」
「神が居ても居なくても、きみが見放されていようが愛されていようが、試作兵器のテスターとして適切かどうかさえ、どうでも良い事です。出来ると思うならやらせるし、そうでないなら私はきみに聖機剣を預けませんよ。私そこまで無能じゃありません」
心底どうでもよさそうなナサニエルだが、ベルフラウは瞳をきらきらさせていた。
この男にはどこまでも裏表がない。ベルフラウも大概アホだが、この男もかなりアホだ。頭はいいがアホである。
「ありがとうございます、先生!」
「はい?」
「そうですよね。自分を信じて頑張るしかないですよね!」
「そんなの改めて口に出して確認するまでもないのでは?」
「はい! それもこれも先生のお陰です。ちゃんと言いつけは守ってますし、お薬も飲んでます! あのっ、何かお手伝い出来る事はありませんか!?」
ズイズイと顔を寄せてくるベルフラウにナサニエルはきょとんとしたまま思案する。
「では、以前設置してもらったマテリアル観測装置の改良版があるので、その実験をお願いします。他国にも索敵技術は必要だと言って、開発を迫られてまして」
「わかりました!」
「詳細は追って連絡しますので」
「はい! それでは失礼しますっ!」
元気よく走り去る背中を眺め、ナサニエルは白衣の袖に両手を突っ込んだままかくりと首を傾ける。
「変な子ですねぇ。まあ、経歴が経歴なので当然ではありますが……薬さえちゃんと飲んでれば問題も起こさないし……」
――ベルフラウにはファミリーネームがない。そして本当の名前さえ彼女は知らない。
革命戦争の時代には珍しくない孤児で、帝国では少ないエクラ教会で一時保護されたという。それ自体は特殊でもなんでもないのだが。
「聖機剣を持ってると落ち着くんじゃなくて、戦っていると落ち着くだけでしょうに」
“死にたがり”は今に始まった事ではない。
ずっとずっと、死ぬ為に生きてきた。拙い祈りで自らを誤魔化しながら、綺麗なままで終わる瞬間を待っているのだ。
薬を飲まなければまともではいられない。だからナサニエルに依存する。彼女にしてみればナサニエルは恩師であり、さしずめ救いの天使と言ったところか。
「――くだらない」
廊下の角を曲がった所で、吐き捨てるようなナサニエルの呟きを少女は聞いていた。
知っている。彼が自分をどう思っているのか。だが救われたのは事実であり、そして彼が居なければ文字通り自分は生きていけない。
ふと両手に目を落とす。白く、たくさんの傷跡がある両手。人の命を奪った手。沢山の血に染まった手……。
毎晩の様にうなされた悪夢をナサニエルは取り除いてくれた。人としての生活を取り戻してくれた。
「私は悪い子じゃない。もう改心したんだから。懺悔したんだから。神様もきっと許してくれる。だって私は……悪くない」
不安になるなら笑おう。もっと良い事をしよう。悪者を倒し、正義の味方として。
祈りが足りないのならば幾らでも祈ろう。悪を倒すという祈り。悲劇に涙するという祈り。誰かの代わりに傷つくという祈り。
呆れ返る程の祈りを、信じるという祈りを重ね、いつか許される日を夢見る。もう覚えていない自らの罪から解き放たれるその時を。
「だから私は――悪くない」
冷たいアンクが体温に染まるまで握り締め、深呼吸と共に少女は歩き出した。
解説
●目的
マテリアル観測装置の改良テスト。
●概要
錬魔院からの依頼でマテリアル観測装置のテストを行う。
マテリアル観測装置は以前から存在しているが、その精度は悪くサイズにも問題を抱えていた。
今回はとりあえず持ち運びを重視し、リサイズを行った装置を元に歪虚を探索するのが依頼となる。
新型装置は人間が背負って持ち運べる程度の大きさで、重量も30kgほどと劇的な軽量化に成功している。
通信兵用の装備を流用し、背負って運べるようになっているぞ。
索敵能力に関しては、精度は大幅に向上。付近に歪虚が存在すれば力の大小、その数くらいは把握出来るだろう。
ただし有効範囲がむしろ狭くなり、装置を中心に300m圏内しか探知できない。しかも遠いと数まではわからない。
複数の装置を小隊単位に配布し、隊列を組んで運用するような完成形を目指しているという。
あくまで観測装置がちゃんと動くのかを確認するのが目的になるが、歪虚と遭遇したらほったらかさずに一応倒そう。
●敵情報
『スケルトン』
帝国領を歩いていると結構そのへんで出くわしてしまう奴。
『ゾンビ』
帝国領では珍しくないが、死体のある所にしかいないぞ。
『植物歪虚』
森に入らなければ出てきません。毒のあるやつもいます。
『盗賊』
人間なので探知できません。
●特筆
実際に探知に行く場所については帝国領内であればどこでもOKで、ハンターが決められる。
特に要望がない場合は適当にベルフラウが決める。
場所によっては歪虚と遭遇できない可能性もあるが、全く実験にならないと依頼は失敗となる。
向かう場所によっては敵情報に書いていない個体が出現する可能性もある。
依頼には聖導士のベルフラウが同行。装置を背負うと足がプルプルする。
マテリアル観測装置の改良テスト。
●概要
錬魔院からの依頼でマテリアル観測装置のテストを行う。
マテリアル観測装置は以前から存在しているが、その精度は悪くサイズにも問題を抱えていた。
今回はとりあえず持ち運びを重視し、リサイズを行った装置を元に歪虚を探索するのが依頼となる。
新型装置は人間が背負って持ち運べる程度の大きさで、重量も30kgほどと劇的な軽量化に成功している。
通信兵用の装備を流用し、背負って運べるようになっているぞ。
索敵能力に関しては、精度は大幅に向上。付近に歪虚が存在すれば力の大小、その数くらいは把握出来るだろう。
ただし有効範囲がむしろ狭くなり、装置を中心に300m圏内しか探知できない。しかも遠いと数まではわからない。
複数の装置を小隊単位に配布し、隊列を組んで運用するような完成形を目指しているという。
あくまで観測装置がちゃんと動くのかを確認するのが目的になるが、歪虚と遭遇したらほったらかさずに一応倒そう。
●敵情報
『スケルトン』
帝国領を歩いていると結構そのへんで出くわしてしまう奴。
『ゾンビ』
帝国領では珍しくないが、死体のある所にしかいないぞ。
『植物歪虚』
森に入らなければ出てきません。毒のあるやつもいます。
『盗賊』
人間なので探知できません。
●特筆
実際に探知に行く場所については帝国領内であればどこでもOKで、ハンターが決められる。
特に要望がない場合は適当にベルフラウが決める。
場所によっては歪虚と遭遇できない可能性もあるが、全く実験にならないと依頼は失敗となる。
向かう場所によっては敵情報に書いていない個体が出現する可能性もある。
依頼には聖導士のベルフラウが同行。装置を背負うと足がプルプルする。
マスターより
お世話になっております、神宮寺でございます。
君達は真面目に調査してもいいし、しなくてもいい……いやしないと失敗ですが。
どんな場所に調査に向かうのか、誰が装置を背負うのか、あたりを考えておいてください。
勿論装置がぶっ壊れたら失敗ですが、特に頭の悪い雑魔とかがあえて狙ってくる事はないでしょう。
正義の味方……懐かしい響き。
それではよろしくお願い致します。
君達は真面目に調査してもいいし、しなくてもいい……いやしないと失敗ですが。
どんな場所に調査に向かうのか、誰が装置を背負うのか、あたりを考えておいてください。
勿論装置がぶっ壊れたら失敗ですが、特に頭の悪い雑魔とかがあえて狙ってくる事はないでしょう。
正義の味方……懐かしい響き。
それではよろしくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/02/10 13:37
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/29 23:07:18 |
|
![]() |
作戦相談所 ヒース・R・ウォーカー(ka0145) 人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/02/03 12:30:14 |