ゲスト
(ka0000)
寂寞の女
マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/08/31 19:00
- リプレイ完成予定
- 2019/09/14 19:00
オープニング
暑さをやわぐ木漏れ日の光をアミィは眺めていた。
「おーい、アミィ」
森の管理者たる一人、ギムレットの声が大きく響くも、アミィは身体ひとつ、表情一つだけ動かしギムレットの顔を見た。ただ、ただ。ぼんやり。包帯だらけの顔から覗く双眸で見つめるのみだ。呼ばれてうるさいとか、何かしらと期待するとか、思案するとか、そんな感情は見当たらない。
それを遠くから見て、ギムレットはため息をついて、横にたたずむアガスティア。彼女の受け入れを決めたもう一人の管理人の顔を見た。
「……森が癒しになるってのはさ。そりゃ事実だ。マテリアルの宝庫だからな。エルフに至っては数百年の存命も可能にする不老長寿の源泉だ。だがよ……無理あるんじゃねぇかなぁ。感情と意志を回復させるってのは」
「ギムレットは怖がりですね」
アミィの体は包帯だらけで、服と包帯で隠された以外の部分にも銃創などで作られた裂傷が見え隠れする。滑らかな肌、そこそこに引き締まった体つき、魅惑的な瞳はきっとそれらがなければとても輝いて、多くの人々を魅了していたに違いない。だが今は。
ぼんやりとしたまま動かないアミィの元に足を運んだアガスティアはそっと横に座り、それから顔を軽くのぞき込んだ。するとアミィも顔をこちらを向けた。
光のない顔。
表情は一つも動かさず、それは人形のようであった。
「アミィ。森での生活はどうですか」
「あ…… ……ぁ。あー」
彼女は音を垂れ流すようにして、アガスティアの言葉に反応した。言葉を理解しているのかすらわからないが、それでも名前を呼べば反応する認識と知性、相手に顔を向けるという注意力の指向性などはある。決してすべてが空っぽになったわけではない
アミィにそんなものを感じながら、アガスティアは穏やかに尋ね返すと、アミィは静かになった。
「光の森は今とても成長が豊かで、マテリアルの勢いも強い森です。一度失われた森なので今まで人の手をたくさんお借りすることがありました。成長した今はそのマテリアルを人々にお返しする番だと、感じています。ご不便をかけますが、きっと貴女に笑顔を取り戻せる一助になると考えています」
それについてはアミィは答えなかったが、アガスティアはそれも善しとして、軽く背中をさすると「お腹がすいたらお出で下さい」とだけ声をかけて立ち上がった。
アミィはそれについても応えず、またぼんやりとアガスティアを見送った。
自分がその後どうすればいいのかわからず、取り残される子供のように。または未来に進む人間に置き去りにされ過去に縛られる虜囚のように。
「……戦争ってのは本当にやだね。ちょっと昔の自分たちの顔、道筋を誤った自分のもう一つの未来にみえちまう」
「精神はどうあれ、肉体は生きようとする。何かを成し遂げたいと思う。そのための絞り出すマテリアルを彼女は感情という場所から取り出したでしょう」
絶対に。何があっても。守るものがあったからこそ。彼女が支払ったものが今の状態だ。
彼女は泣かない、笑わない。楽しいとも不快とも思わない。意味のある単語も浮かべる事ができない。
自分がそうまでして何を守りたかったのかも、感情という記憶の維持装置がない以上、時期に忘れてしまうだろう。生きている喜びも悲しみも、今の彼女にとっては対岸の火事の出来事。それが……人間の感情と欲望を駆使して生きてきた存在だったとしても。
「森はきっと助けてくれます。私達がそうであったように。この森に託された想いがそうであるように」
アガスティアの言葉に、ギムレットは頷いたあと、アミィにもう一度振り返った。
だが、きっかけがないと彼女の感情が戻ることは無いだろうし、この場所にそのきっかけを作るに至るにはまだまだ時間がかかることだろうとギムレットは考えていた。
●
何かできることはないだろうか。
「あるとも。可能性は常に探究すべきだ。人は積み重ねて歴史を作り、人は歩み続けて成長をする。人類が歴史を重ねて歩んだこの1000年の積み重ねの上にはあらゆる悩みと苦しみと、それに対抗する手段の模索がある」
森を訪れた老人はそんなアミィを見てそう言った。
老人は旅の錬金術師だと言っていたが、一滴の栄養剤で、一本の樹木を病気からすくったのを見せたところをみるに、口だけの詐欺師ではないことを示していた。
「具体的にどうやって?」
「感情も極微細なマテリアルの流れであり、それを処理する脳にマテリアルが反応して感情が想起されると仮定できる。戦災で感情が欠落したというのは、そこに使われるマテリアルを別の事に使った結果、回路が壊れたと考えたまえ。回路の異常によって不具合が起こる機器はどのようにして直すかね?」
「回路の修正、もしくは交換だよな。だがあいつの脳を交換しろってのは俺は御免だぞ」
「では森が癒してくれる可能性を信じるのは、今の仮説に合わせるとどのように考えるかね」
一度は難色を示したギムレットも続く言葉に、考えを改めた。
「潤沢なマテリアルを流し続けることで、脳の回復機能……新しい回路、道筋を作ってくれることを期待する、かな」
「正解だ。マテリアルを主に脳へと届ける薬、それからイベントで感情発露の機会を作る。二つの事ができれば、彼女は感情を取り戻すだろう」
その言葉にギムレットもアガスティアもしばらく言葉を反芻するしかなかった。
この男の物静かながら、自信に満ちた物言い、そしてそれを裏打ちするアイデア。
「あんた……何者だ?」
「旅の錬金術師だよ。もう長い事、こんな絶望と戦い続けている、卑小で、諦めの悪い、ね」
老人は微笑むと懐からカートリッジを渡した。中には黄金色の液体が入っているのが見え、潤沢なマテリアルがあることを感じさせた。
「薬だ。ただほんの少し、加減には気を付けた方がいい。足りなければ効果はなく、少しでもオーバーすれば、脳神経は今度こそ焼けちぎれる。頻度が足りなければすぐに戻り、過度に使用すれば人格が破綻する」
手渡されたギムレットはその一言に、受け取った手を震えさせた。
「その匙加減をやれというのか。劇薬もいいところだな」
「そうだ。それに至るまで、何人も廃人にしてきた。まだ完成でもない。その女に合うかどうかもわからない。だが、それは彼女を知っている人間でしか加減できないことだ」
震えるギムレットに、老人はまったく意に介した様子もなく言葉を続けた。
「救うとは、そういう事だ」
老人の言葉は重たく、そしてギムレットはそれを理解する程度の知識は持ち合わせていたが、覚悟はまだなかった。
「責任が持てないかね。それならハンターに声をかければいい。救済のボタン、または死刑執行のボタンを一緒に押してくれる。責任感は少し低減するだろう」
老人は静かにそう提案し、ギムレットはそれを受け入れた。
アミィはぼんやりとただ、それを見つめていた。
「あー……」
「おーい、アミィ」
森の管理者たる一人、ギムレットの声が大きく響くも、アミィは身体ひとつ、表情一つだけ動かしギムレットの顔を見た。ただ、ただ。ぼんやり。包帯だらけの顔から覗く双眸で見つめるのみだ。呼ばれてうるさいとか、何かしらと期待するとか、思案するとか、そんな感情は見当たらない。
それを遠くから見て、ギムレットはため息をついて、横にたたずむアガスティア。彼女の受け入れを決めたもう一人の管理人の顔を見た。
「……森が癒しになるってのはさ。そりゃ事実だ。マテリアルの宝庫だからな。エルフに至っては数百年の存命も可能にする不老長寿の源泉だ。だがよ……無理あるんじゃねぇかなぁ。感情と意志を回復させるってのは」
「ギムレットは怖がりですね」
アミィの体は包帯だらけで、服と包帯で隠された以外の部分にも銃創などで作られた裂傷が見え隠れする。滑らかな肌、そこそこに引き締まった体つき、魅惑的な瞳はきっとそれらがなければとても輝いて、多くの人々を魅了していたに違いない。だが今は。
ぼんやりとしたまま動かないアミィの元に足を運んだアガスティアはそっと横に座り、それから顔を軽くのぞき込んだ。するとアミィも顔をこちらを向けた。
光のない顔。
表情は一つも動かさず、それは人形のようであった。
「アミィ。森での生活はどうですか」
「あ…… ……ぁ。あー」
彼女は音を垂れ流すようにして、アガスティアの言葉に反応した。言葉を理解しているのかすらわからないが、それでも名前を呼べば反応する認識と知性、相手に顔を向けるという注意力の指向性などはある。決してすべてが空っぽになったわけではない
アミィにそんなものを感じながら、アガスティアは穏やかに尋ね返すと、アミィは静かになった。
「光の森は今とても成長が豊かで、マテリアルの勢いも強い森です。一度失われた森なので今まで人の手をたくさんお借りすることがありました。成長した今はそのマテリアルを人々にお返しする番だと、感じています。ご不便をかけますが、きっと貴女に笑顔を取り戻せる一助になると考えています」
それについてはアミィは答えなかったが、アガスティアはそれも善しとして、軽く背中をさすると「お腹がすいたらお出で下さい」とだけ声をかけて立ち上がった。
アミィはそれについても応えず、またぼんやりとアガスティアを見送った。
自分がその後どうすればいいのかわからず、取り残される子供のように。または未来に進む人間に置き去りにされ過去に縛られる虜囚のように。
「……戦争ってのは本当にやだね。ちょっと昔の自分たちの顔、道筋を誤った自分のもう一つの未来にみえちまう」
「精神はどうあれ、肉体は生きようとする。何かを成し遂げたいと思う。そのための絞り出すマテリアルを彼女は感情という場所から取り出したでしょう」
絶対に。何があっても。守るものがあったからこそ。彼女が支払ったものが今の状態だ。
彼女は泣かない、笑わない。楽しいとも不快とも思わない。意味のある単語も浮かべる事ができない。
自分がそうまでして何を守りたかったのかも、感情という記憶の維持装置がない以上、時期に忘れてしまうだろう。生きている喜びも悲しみも、今の彼女にとっては対岸の火事の出来事。それが……人間の感情と欲望を駆使して生きてきた存在だったとしても。
「森はきっと助けてくれます。私達がそうであったように。この森に託された想いがそうであるように」
アガスティアの言葉に、ギムレットは頷いたあと、アミィにもう一度振り返った。
だが、きっかけがないと彼女の感情が戻ることは無いだろうし、この場所にそのきっかけを作るに至るにはまだまだ時間がかかることだろうとギムレットは考えていた。
●
何かできることはないだろうか。
「あるとも。可能性は常に探究すべきだ。人は積み重ねて歴史を作り、人は歩み続けて成長をする。人類が歴史を重ねて歩んだこの1000年の積み重ねの上にはあらゆる悩みと苦しみと、それに対抗する手段の模索がある」
森を訪れた老人はそんなアミィを見てそう言った。
老人は旅の錬金術師だと言っていたが、一滴の栄養剤で、一本の樹木を病気からすくったのを見せたところをみるに、口だけの詐欺師ではないことを示していた。
「具体的にどうやって?」
「感情も極微細なマテリアルの流れであり、それを処理する脳にマテリアルが反応して感情が想起されると仮定できる。戦災で感情が欠落したというのは、そこに使われるマテリアルを別の事に使った結果、回路が壊れたと考えたまえ。回路の異常によって不具合が起こる機器はどのようにして直すかね?」
「回路の修正、もしくは交換だよな。だがあいつの脳を交換しろってのは俺は御免だぞ」
「では森が癒してくれる可能性を信じるのは、今の仮説に合わせるとどのように考えるかね」
一度は難色を示したギムレットも続く言葉に、考えを改めた。
「潤沢なマテリアルを流し続けることで、脳の回復機能……新しい回路、道筋を作ってくれることを期待する、かな」
「正解だ。マテリアルを主に脳へと届ける薬、それからイベントで感情発露の機会を作る。二つの事ができれば、彼女は感情を取り戻すだろう」
その言葉にギムレットもアガスティアもしばらく言葉を反芻するしかなかった。
この男の物静かながら、自信に満ちた物言い、そしてそれを裏打ちするアイデア。
「あんた……何者だ?」
「旅の錬金術師だよ。もう長い事、こんな絶望と戦い続けている、卑小で、諦めの悪い、ね」
老人は微笑むと懐からカートリッジを渡した。中には黄金色の液体が入っているのが見え、潤沢なマテリアルがあることを感じさせた。
「薬だ。ただほんの少し、加減には気を付けた方がいい。足りなければ効果はなく、少しでもオーバーすれば、脳神経は今度こそ焼けちぎれる。頻度が足りなければすぐに戻り、過度に使用すれば人格が破綻する」
手渡されたギムレットはその一言に、受け取った手を震えさせた。
「その匙加減をやれというのか。劇薬もいいところだな」
「そうだ。それに至るまで、何人も廃人にしてきた。まだ完成でもない。その女に合うかどうかもわからない。だが、それは彼女を知っている人間でしか加減できないことだ」
震えるギムレットに、老人はまったく意に介した様子もなく言葉を続けた。
「救うとは、そういう事だ」
老人の言葉は重たく、そしてギムレットはそれを理解する程度の知識は持ち合わせていたが、覚悟はまだなかった。
「責任が持てないかね。それならハンターに声をかければいい。救済のボタン、または死刑執行のボタンを一緒に押してくれる。責任感は少し低減するだろう」
老人は静かにそう提案し、ギムレットはそれを受け入れた。
アミィはぼんやりとただ、それを見つめていた。
「あー……」
解説
先の大戦で大きな傷を負ったアミィは、精霊の加護を受けられなくなった再起不能状態となり、あわせて、脳への傷を受けたことで、感情表現と言語に著しい減退がみられるようになりました。
彼女を助ける為に光の森と呼ばれる場所で、ギムレット、アガスティアが介護を行っています。
参加者はそこに赴き、アミィの治療の協力を行います。
●人物
アミィ 一般人・女
前は溌剌としていて、言葉巧みに人を操る能力に長けた人間でしたが、今は自立生活はほぼ不可能になっています。
歩くように命令して手を引っ張れば歩きますし、食べるように物を運べば食べますが、自分から何かすることはありません。応答もオープニングのような状態です。
放っておけば緩やかに衰弱死していきます。
ギムレット・アガスティア
森の管理人です。必要な身の回りの世話や、道具の提供、案内などは一通り行ってくれます。
老人
戦後からところどころで姿を見せるようになった旅の錬金術師。
名前を聞かれればオードルフと名乗ります。
薬や治療に関して、提案をしてくれます。基本は観察しているだけです。
●目的と行動
アミィに感情などを復活させるための行為全般とします。
特効薬として老人からマテリアルの薬を渡されていますが、劇薬のようで、これのみに頼るのは大変危険ですが(プレイングで過度な使用が認められればアミィが精神破綻の上、死亡します)、全く使わずに治療するのも難しいようです。
その匙加減を行いつつ、他の治療行為を行う事です。
達成度はそのままアミィの回復状況を反映します。
●質問
質問用にクリームヒルトを関連付けます。
アミィ・ギムレット・アガスティア・老人それぞれへの質問も受け付けます。
不定期になりますが、お答えできるよう頑張ります。
彼女を助ける為に光の森と呼ばれる場所で、ギムレット、アガスティアが介護を行っています。
参加者はそこに赴き、アミィの治療の協力を行います。
●人物
アミィ 一般人・女
前は溌剌としていて、言葉巧みに人を操る能力に長けた人間でしたが、今は自立生活はほぼ不可能になっています。
歩くように命令して手を引っ張れば歩きますし、食べるように物を運べば食べますが、自分から何かすることはありません。応答もオープニングのような状態です。
放っておけば緩やかに衰弱死していきます。
ギムレット・アガスティア
森の管理人です。必要な身の回りの世話や、道具の提供、案内などは一通り行ってくれます。
老人
戦後からところどころで姿を見せるようになった旅の錬金術師。
名前を聞かれればオードルフと名乗ります。
薬や治療に関して、提案をしてくれます。基本は観察しているだけです。
●目的と行動
アミィに感情などを復活させるための行為全般とします。
特効薬として老人からマテリアルの薬を渡されていますが、劇薬のようで、これのみに頼るのは大変危険ですが(プレイングで過度な使用が認められればアミィが精神破綻の上、死亡します)、全く使わずに治療するのも難しいようです。
その匙加減を行いつつ、他の治療行為を行う事です。
達成度はそのままアミィの回復状況を反映します。
●質問
質問用にクリームヒルトを関連付けます。
アミィ・ギムレット・アガスティア・老人それぞれへの質問も受け付けます。
不定期になりますが、お答えできるよう頑張ります。
マスターより
歪虚を殺す手で、人を助ける手となす。
見えもしない場所で他人が殺した命は厭わず、自分の手で命を奪う事には責任を感じるのも。
不思議なものですね。
命の重さは客観ではなく、主観であるようです。
さて、あなたの手は何するものぞ。
見えもしない場所で他人が殺した命は厭わず、自分の手で命を奪う事には責任を感じるのも。
不思議なものですね。
命の重さは客観ではなく、主観であるようです。
さて、あなたの手は何するものぞ。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/09/13 10:33
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【質問卓】治療方針検討卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/08/31 11:32:11 |
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![]() |
【相談卓】アミィを治療せよ 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/08/31 11:43:12 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/08/29 02:46:42 |