ゲスト
(ka0000)
惜別の花
マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2019/09/12 19:00
- リプレイ完成予定
- 2019/09/26 19:00
オープニング
草木は緑。咲く花は色とりどり。
四季は巡りても風は変わらず。
口さがないものも、病めるものも、大人も、子供も、ここでは共に静謐を守っている。
「異常よ」
花屋のエリンは震えて言うしかない。
石碑の立ち並ぶ場所に立ち尽くす人々。死者を前にして静かに立ち会う人々。
「初めての光景が自分の道徳、価値観に合わせた時、許容できなければそれは異常と断ずるのかね」
人が向き合うことはおかしくはないはずだ。
死した人と無機質な石碑ではなくて、邂逅できるならどんなに良い事か。それはたくさんの人の望みだろう。
一言、謝りたい。
聞けなかった言葉を聞きたい。
もう一度その姿を見たい。
そう思うから、その夢をかなえて見せよう、という老人に自分の花を託したのだった。
それは確かに成就した。
目の前で人々が立ち尽くしていた。死した人達、碑の下で眠る人々はおぼろげな姿で立っている。それはただ立っている人もいれば、親を探すように辺りを見回す子供もいれば、武器を構える兵士もいる。
それに向き合う人は現実の人間たちだ。彼らに会いに来た縁故者であり、そして、一時驚きはしていたものの、いずれその驚きも忘れ、無声映画のように動く死者の幻影を眺め続けている。動きが派手なのは死者たちの方で少しは石碑から離れて動きはするが、それぞれ決められた場所から離れることでできないようだ。生きた人々はそれを静かに眺め続けるだけ。
音は一切ない。あるのは絶えず吹き続ける風の音色くらいなものだ。
そんな光景が墓場一杯に広がっているのだから、エリンがあってはならないことだと怒り、そして気味悪く感じ、そして恐怖することも仕方ない事だった。
だが、エリンの前にいる老人はむしろエリンの反応が理解できないようだった。
「何のために人は墓場に来るのかね。会いに来たのだろう。会えるものなら会えるようにしてあげればいいではないか。エリン。君が異常だと思うのは『禁忌』に踏み込んだからだ。死者を起こしてはならない、というね。今まで願っても叶わなかった事を人は『禁忌』として、問題のすげ替えを行っただけだよ。それが安寧につながるからだが、本当は会えるものなら会いたいと願うのではないかね。ここに来る人は」
咲き誇る花は全てエリンが届けたものだ。
その花に何かしらの力を込めたのがこの老人。そしてその花が墓場に届けられることによって、この奇妙な世界は生まれ始めた。
「花が死体のマテリアルを吸って、香りと共に吐き出す。これは星にマテリアルを還すことを促進する行為でもあるよ」
「ここに来た人の顔を見て。みんな呆けた顔になって、ひたすら死者の幻影を追い続けているわ。話しもしない、ご飯も食べに行かない。どっちが死者か分からない。異常なのよ」
死者の幻影は音を立てることは無いけれど、何かを話しかけたり、叫んだり、笑ったり、泣いたりしている。表情は豊かだと思う。それが末期の瞬間に思い描いていたものなのか、マテリアルの芯にまで思い描いていたことなのか。どちらなのかはわからないが、豊かであることは間違いない。
だが、生きている人間はそれこそ同じような様相だった。
ぼうとして眺める。ただ、それだけ。
立ち去る者もいないから、この場所は人が増え続ける。
その中にふと顔見知りがいることに気が付いたエリンは、無声映画の世界へ足を踏み込んだ。
「この放出されたマテリアルが何か影響しているのかもしれない。ふむ、親和性の問題があるかもしれないね。興味深い。では異常でない方法を考えよう。薬物の改良もある、マテリアルを集めて何かに込めてみるのはどうか、方法は色々あるさ」
「私も、ここに来た人たちも、心のどこかで望んでいたかもしれないけれど。それでも……私は受け入れられない」
「君がどう思おうが自由さ。花を提供してくれたことには感謝するがね」
はた目と違って、墓場の中は濃厚な花の香りでいっぱいだった。ひと呼吸するだけで頭が急激にぼんやりとしてくる。それでもエリンは自分を強く保って一人の女性の腕を引いた。
せめて自分の知った顔だけは助けてあげたい。
女性の前に立っているのは、羊と共に朗らかに笑う少女だった。
それからこの朧気な姿であっても幻想的なほど美しい少女と、屈強な老人が手を繋いで話をしている。
「幻です。気が付いて!!」
エリンは女性の耳元で叫んで、無理やりにでも動かそうと腕と身体を、その両腕に抱いて入り口まで押してゆこうとする。
「……いいの、ほうって、おいて……わたし、てみすの言葉を聞きたいの」
「よくない!!」
良い事なんてあるものか。
エリンは怒って叫んだ。
だが、その感情の発露でひらいた気道が、空気が、甘い甘い香りを胸いっぱいにしていく。
そうすると今まで聞こえなかったものが、風が草木を撫でる細やかな音がブレて、人の声に変わっていく。
ああ、ここは賑やかだ。
「死にたくなかった」
「ごめんなさい、お役に立てずに」
「ここに来てくれて嬉しい」
「何があっても守り続けるよ」
色んな声が、胸に響く。鼓膜を動かすのではなくて、脳裏に響く分だけ、抵抗は難しかった。
ああ、ダメだ。一度はくじけたあの時の想いが、優しくしてもらった時の喜びにも似た感動のように、心が揺さぶられる。
振り返ってはならないとわかりながらも、エリンはあまりにも響くその声に反応してしまった。
エリンもまた他の人と同じように身動きしなくなったの姿をじっかり10分は見つめて、もう元には戻らないだろうと確信した後、老人はゆっくりと立ち上がった。
「少し人間には効果があり過ぎたようだ。今度は少し加減しよう。ありがとう、貴重な経験だったよ。未来はもう少したくさんの人を癒せるようにしよう」
四季は巡りても風は変わらず。
口さがないものも、病めるものも、大人も、子供も、ここでは共に静謐を守っている。
「異常よ」
花屋のエリンは震えて言うしかない。
石碑の立ち並ぶ場所に立ち尽くす人々。死者を前にして静かに立ち会う人々。
「初めての光景が自分の道徳、価値観に合わせた時、許容できなければそれは異常と断ずるのかね」
人が向き合うことはおかしくはないはずだ。
死した人と無機質な石碑ではなくて、邂逅できるならどんなに良い事か。それはたくさんの人の望みだろう。
一言、謝りたい。
聞けなかった言葉を聞きたい。
もう一度その姿を見たい。
そう思うから、その夢をかなえて見せよう、という老人に自分の花を託したのだった。
それは確かに成就した。
目の前で人々が立ち尽くしていた。死した人達、碑の下で眠る人々はおぼろげな姿で立っている。それはただ立っている人もいれば、親を探すように辺りを見回す子供もいれば、武器を構える兵士もいる。
それに向き合う人は現実の人間たちだ。彼らに会いに来た縁故者であり、そして、一時驚きはしていたものの、いずれその驚きも忘れ、無声映画のように動く死者の幻影を眺め続けている。動きが派手なのは死者たちの方で少しは石碑から離れて動きはするが、それぞれ決められた場所から離れることでできないようだ。生きた人々はそれを静かに眺め続けるだけ。
音は一切ない。あるのは絶えず吹き続ける風の音色くらいなものだ。
そんな光景が墓場一杯に広がっているのだから、エリンがあってはならないことだと怒り、そして気味悪く感じ、そして恐怖することも仕方ない事だった。
だが、エリンの前にいる老人はむしろエリンの反応が理解できないようだった。
「何のために人は墓場に来るのかね。会いに来たのだろう。会えるものなら会えるようにしてあげればいいではないか。エリン。君が異常だと思うのは『禁忌』に踏み込んだからだ。死者を起こしてはならない、というね。今まで願っても叶わなかった事を人は『禁忌』として、問題のすげ替えを行っただけだよ。それが安寧につながるからだが、本当は会えるものなら会いたいと願うのではないかね。ここに来る人は」
咲き誇る花は全てエリンが届けたものだ。
その花に何かしらの力を込めたのがこの老人。そしてその花が墓場に届けられることによって、この奇妙な世界は生まれ始めた。
「花が死体のマテリアルを吸って、香りと共に吐き出す。これは星にマテリアルを還すことを促進する行為でもあるよ」
「ここに来た人の顔を見て。みんな呆けた顔になって、ひたすら死者の幻影を追い続けているわ。話しもしない、ご飯も食べに行かない。どっちが死者か分からない。異常なのよ」
死者の幻影は音を立てることは無いけれど、何かを話しかけたり、叫んだり、笑ったり、泣いたりしている。表情は豊かだと思う。それが末期の瞬間に思い描いていたものなのか、マテリアルの芯にまで思い描いていたことなのか。どちらなのかはわからないが、豊かであることは間違いない。
だが、生きている人間はそれこそ同じような様相だった。
ぼうとして眺める。ただ、それだけ。
立ち去る者もいないから、この場所は人が増え続ける。
その中にふと顔見知りがいることに気が付いたエリンは、無声映画の世界へ足を踏み込んだ。
「この放出されたマテリアルが何か影響しているのかもしれない。ふむ、親和性の問題があるかもしれないね。興味深い。では異常でない方法を考えよう。薬物の改良もある、マテリアルを集めて何かに込めてみるのはどうか、方法は色々あるさ」
「私も、ここに来た人たちも、心のどこかで望んでいたかもしれないけれど。それでも……私は受け入れられない」
「君がどう思おうが自由さ。花を提供してくれたことには感謝するがね」
はた目と違って、墓場の中は濃厚な花の香りでいっぱいだった。ひと呼吸するだけで頭が急激にぼんやりとしてくる。それでもエリンは自分を強く保って一人の女性の腕を引いた。
せめて自分の知った顔だけは助けてあげたい。
女性の前に立っているのは、羊と共に朗らかに笑う少女だった。
それからこの朧気な姿であっても幻想的なほど美しい少女と、屈強な老人が手を繋いで話をしている。
「幻です。気が付いて!!」
エリンは女性の耳元で叫んで、無理やりにでも動かそうと腕と身体を、その両腕に抱いて入り口まで押してゆこうとする。
「……いいの、ほうって、おいて……わたし、てみすの言葉を聞きたいの」
「よくない!!」
良い事なんてあるものか。
エリンは怒って叫んだ。
だが、その感情の発露でひらいた気道が、空気が、甘い甘い香りを胸いっぱいにしていく。
そうすると今まで聞こえなかったものが、風が草木を撫でる細やかな音がブレて、人の声に変わっていく。
ああ、ここは賑やかだ。
「死にたくなかった」
「ごめんなさい、お役に立てずに」
「ここに来てくれて嬉しい」
「何があっても守り続けるよ」
色んな声が、胸に響く。鼓膜を動かすのではなくて、脳裏に響く分だけ、抵抗は難しかった。
ああ、ダメだ。一度はくじけたあの時の想いが、優しくしてもらった時の喜びにも似た感動のように、心が揺さぶられる。
振り返ってはならないとわかりながらも、エリンはあまりにも響くその声に反応してしまった。
エリンもまた他の人と同じように身動きしなくなったの姿をじっかり10分は見つめて、もう元には戻らないだろうと確信した後、老人はゆっくりと立ち上がった。
「少し人間には効果があり過ぎたようだ。今度は少し加減しよう。ありがとう、貴重な経験だったよ。未来はもう少したくさんの人を癒せるようにしよう」
解説
帝国にある、とある教会併設の墓場にて、多数の死者の幻影が現れたという報告があります。
またそれを見て、死人同然に生きている人達も寝食を忘れて立ち尽くしているとのことです。
これについての対応をお願いします。
ちなみに原因はその墓場に咲き乱れる花が原因であると、墓場に入れば間違いないとすぐ確信が持てます。
生きている人達も彼らの言葉をもっと聞きたいという理由(一部幻覚によって意志が朦朧としていますが)で自発的に居残っています。
目的は
・生きている人だけ助ける
・花を燃やして幻影を断ち切る
・生者も幻影もそのままにする
などが考えられます。参加者の意志によって結末が決まりますので、最低限どうしたいかは全員で決めておいてください。
皆さんが設定した目的に対して、全員が正しい対応ができていれば大成功です。
●登場人物
エリン 一般人
花を提供した花屋さんです。
クリームヒルト 一般人
エリンが助けようとしていた女性の事です。
老人 ???
もう現場にはいません。会う事もできません。
●花について
死骸のマテリアルを吸って香りと共に拡散させて幻影を生み出します。
覚醒者なら覚醒状態になれば、すぐに抵抗し、幻影や束縛を受けないようにすることは可能です。
特殊な薬液によって作られており、抽出しての再現は不可能。
燃やせばすぐに、刈って捨てれば1日程度でその力を消すことができます。
●死者について
この教会に埋骨されているという設定にできるのなら、どなたでも構いません。
当NPCで死亡した人はここに埋骨されているとします。
●質問について
今回はお受けしかねます。
またそれを見て、死人同然に生きている人達も寝食を忘れて立ち尽くしているとのことです。
これについての対応をお願いします。
ちなみに原因はその墓場に咲き乱れる花が原因であると、墓場に入れば間違いないとすぐ確信が持てます。
生きている人達も彼らの言葉をもっと聞きたいという理由(一部幻覚によって意志が朦朧としていますが)で自発的に居残っています。
目的は
・生きている人だけ助ける
・花を燃やして幻影を断ち切る
・生者も幻影もそのままにする
などが考えられます。参加者の意志によって結末が決まりますので、最低限どうしたいかは全員で決めておいてください。
皆さんが設定した目的に対して、全員が正しい対応ができていれば大成功です。
●登場人物
エリン 一般人
花を提供した花屋さんです。
クリームヒルト 一般人
エリンが助けようとしていた女性の事です。
老人 ???
もう現場にはいません。会う事もできません。
●花について
死骸のマテリアルを吸って香りと共に拡散させて幻影を生み出します。
覚醒者なら覚醒状態になれば、すぐに抵抗し、幻影や束縛を受けないようにすることは可能です。
特殊な薬液によって作られており、抽出しての再現は不可能。
燃やせばすぐに、刈って捨てれば1日程度でその力を消すことができます。
●死者について
この教会に埋骨されているという設定にできるのなら、どなたでも構いません。
当NPCで死亡した人はここに埋骨されているとします。
●質問について
今回はお受けしかねます。
マスターより
戦後処理のお話。最終話です。
戦いの後ですから死者は必ずそこにいます。それとどう向き合うのかがこのシナリオのテーマです。
死者と出会って自分なりの対話をして、そしてまた自分の道を歩めますように。
戦いの後ですから死者は必ずそこにいます。それとどう向き合うのかがこのシナリオのテーマです。
死者と出会って自分なりの対話をして、そしてまた自分の道を歩めますように。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2019/09/25 10:05
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
【相談卓】死者を幻視させる花 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/09/12 06:40:30 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/09/08 22:30:59 |