• 冒険

クリスとマリー 『結婚式』狂騒曲

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加人数
現在8人 / 8~12人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2019/11/02 19:00
リプレイ完成予定
2019/11/11 19:00

オープニング

 堅苦しい貴族社会に見切りをつけて実家の伯爵家を飛び出したマリー・オードランは、友であるルーサー・ダフィールドら侯爵家の仇討ちを手伝った後、花の冒険者生活を謳歌していた。
 幼い頃に読んだ様々な物語の主人公の様に、気の向くままに世界のあちこちへ旅をした。そこに神秘があると聞けば仲間らと共にそれを目指し、怪異ありとの噂を知ればその謎を探求せずにはいられなかった。
 出先で人々を困らせている事件があれば、ハンターとして見過ごせず……というか、自分から積極的に首を突っ込んでは解決して回っていった。
 ありとあらゆる冒険を心から堪能し、様々な土地で様々な人たちと邂逅した。中にはマリーに純心を捧げる者もあったが、彼女の自覚の無さ故か、浮いた話は一つも無かった。

 様々な世界を見て回った。数多の文化を、人々の営みを、自然が作り上げた奇跡の様な風景の数々を。
 それでも、そんな彼女の冒険者人生──その原点は、王国巡礼の旅路であり続けた。
 まだハンターでもなく、何の力もなかった頃。領地と王都以外の『世界』を知った、彼女の人生における初めての、旅── その中でも、道なき道を踏み越えて進んだ侯爵領の逃避行は──親友のクリスを助ける為に仲間たちと乗り越えたあの日々は、今でも彼女の中で燦然と輝いていた。

 それ故か、マリーは定期的にダフィールド侯爵領を訪れた。
 旅先で見聞きし、体験した様々な出来事をマリーが侯爵家の面々に語って聞かせ、ルーサーがそれを筆記するのが毎年の恒例行事となった。
 後にそれは『マリー・オードランの冒険譚』として書籍化されることになるのだが、そこには語り手であるマリーが瞳を輝かせて自身の冒険を語る様子が書き手であるルーサーの視点で活き活きと描写されており、冒険譚であると同時にマリー本人の為人を伝える伝記的な書ともなった。


 その年も、マリーは異世界への旅を終えて侯爵領へと向かっていた。
 道中、ちょうど新たに発見されたという古代遺跡があったので、ぶらりと立ち寄って探索を行い、数日掛かりで踏破した後、侯爵館へと辿り着く。
 新たな侯爵館は、以前の侯爵館があった跡地に再び建てられた。『ダフィールド家当主は代々オーサンバラ村に居住すべし』とのしきたりは、800年経った今代でも継承されることになったらしい。
 館に勤める者たちも、先代の頃からと変わらず引き続き雇用されていて、門番もすっかり顔馴染になったマリーを顔パスで館の中へと案内してくれた。
「今回の新遺跡の探索において、各種の古代魔導道具と、手足をもいだゴーレム3体、それと魔法鉱石の鉱床を発見しましたぞ」
「浄化さえ済ませてしまえば、すぐにでも鉱山化できるでしょう。つきましては鉱脈の発見者の権利として、発生した利益の0.5%をアークエルスの遺跡考古学部へ『寄付』していただけましたら……」
 マリーの遺跡探索の師匠──遺跡考古学者のサー・ロック・ド・サクソンとサー・ポロット・ド・フランクと共に、先程、一緒に踏破したばかりの遺跡について、諸々の権利関係の申請を終わらせる。
 こうして得た報酬こそが、マリーが冒険者として活動していく資金を担っていた。……もっとも、今回の遺跡については利益が出るかは分からない。新たに発見した鉱脈も採算が取れないと判断されれば開発自体が始まらないし、運よく有望なものであっても黒字化はまだまだ先の話だ。
(ま、その辺りはギャンブルよねー。山師とはよく言ったものだわ…… 私としては、遺物の売却で当座の旅費くらいは稼げたし、寄り道にしては万々歳といったとこだけど)
 ……あこがれの冒険者稼業というのも、実際にやってみれば色々と経費の掛かる現実的なものだった。今回の様に危険な古代遺跡に潜って得た事物を売って活動資金に回す自転車操業── それでも何とかやっていけているのは、世界が『邪神』を倒した後の『開拓期』、『膨張期』であったことと、そして、何より『冒険が好きだ』というマリーの個人的資質によるところが大きかった。
(そんなわけで、クリス。私はどうにかこうにか冒険者稼業を続けています。貴女は健やかに、幸せに過ごしておられるでしょーか……?)
 窓の外の空を見上げ、故郷に残して来た親友に思いを巡らせるマリー。……ここ最近、彼女はクリスの近況について知ることができないでいた。以前は侯爵家を介して手紙のやり取りなどをしていたのだが、一度、その手紙を検閲したと思しき実家から追っ手を差し向けられて、その交流も途絶えていた。
「クリス……元気かな……?」
 少し寂しそうに俯いてから、マリーは慌ててブンブンと頭を振った。──今度、何としても一回、会おう。どうにか実家の干渉を振り切って……
「そうと決まれば、侯爵家の三兄弟に相談しよう。協力してもらう事もあるだろうし…… いや、いっそ久しぶりに皆で会うのもいいかもしれない」
 決断するや、マリーはすぐに行動を開始した。
 マリーはまず四男ルーサーの部屋を訊ねたが、留守だった。三男ソードは館を出てニューオーサンの街で一人暮らしをしているとのことだったので、長男カールの仕事が終わるのを待ち、彼の元を訊ねていった。
「マリー・オードラン?! どうしてこんな所に……ルーサーならもうオードラン伯爵領へと向かったぞ?」
 ひどく驚いた表情を浮かべて彼女を出迎えるカール。どういうことです? とマリーが事情を訊ねる。
「……? だって、来月には結婚式だろう? ……オードラン伯と、クリス嬢の」
 マリーは愕然とした。……誰が誰と結婚するって? ……親父殿が? 娘の様な齢の、クリスと?
 あまりに予想外の事態だった。しかし、すぐにその原因に思い至った。
「……私の、せいか……」
 一人娘に出奔されて、オードラン伯は新たな跡継ぎを作る必要に迫られた。様々な思惑が錯綜し、周囲に新たな嫁を取るように勧められ……若い女性に白羽の矢が立った。
「それが寄りにも寄ってクリスだなんて……! いや、あの子も美人なのになぜか浮いた話の一つもない娘だったけども……!」
 武門の家系の次男坊として生まれた父ハロルドは、常に戦場にあって晩婚だった。尊敬すべき父ではあるが、クリスの様な若い娘の嫁ぎ先としては余りに年嵩だ。
 ダンッ、とマリーは机を叩いた。……その机はカール唯一の贅沢と言える調度品で、瞬間、彼に鉄面皮が崩れる程の動揺を走らせたのだが、無論、マリーは気付かない。
「人手がいる……ルーサーは船便で? では、その船が川湊に着く日時を教えてください。それと……ソードさんはどこですか?」
 ギリッ、と奥歯を噛み締め、絞り出すようにマリーが訊ねた。
 いったい何をするつもりなのか──? 問われて、マリーはきっぱりと宣言した。
「勿論……結婚式に乗り込んでって、クリスを奪い取って来ます……!」

解説

1.状況と目的
 状況:OP本文の通り
 目的:立場によって異なる

 今回、PCたちは二つの立場に分かれます。
 一つはマリーと共に、オードラン伯とクリスの結婚式に乗り込んでいって花嫁を奪って逃げること。
 一つはクリスや伯と共に、結婚式の噂に釣られてやって来たマリーを捕えることです。

 マリーと伯爵の目的はそのまんま。クリスはちょっと異なり、家出同然に出てったマリーにきちんと父親と話し合って欲しいと思っています。

 二つの立場に分かれたPCさんたちは互いに連絡を取ることができません。
 また、クリスの思惑も伯爵方にバレるのを防ぐ為、マリーと伯が顔を合わせるまで誰にも開示できません(クリス方のPCが事前に知っておくのは良いです)

 今回、NPCたちの未来として、幾つかの展開を用意しています。

 伯とクリスの結婚はあくまで狂言か、或いは相思相愛か。
 ソードの恋は成就するのか、しないのか(
 マリーは女伯爵となるのか、和解して送り出されるのか、それとも決別して脱出か。
 大人になったルーサーがそれらにどう絡むのか──

 皆様で話し合って結末を決めて上げてください。
 決まっていなかった場合、プレイングを見た印象でぼんやりと柏木が決めます(


2.ガジェット

2a.ソード
 クリスの結婚話を聞いて、ニューオーサンの自室に閉じこもっている
 説得することで行動を決意する……が、それが報われるかはPCさんたち次第(

2b.ルーサー
 オードラン伯爵領の川湊で、転移門で先回りしたマリーたちと合流
 結婚式が狂言の場合は『実はクリスの協力者』、相思相愛の場合は『マリーの協力者』と、皆さんの決定次第で立場が変わる。

2c.クリス
 上記参照。

2d.伯爵
 強硬策は親族たちの意見。本人は娘との和解を望んでいる(表には出せないかも)。部下たちは心情的には伯とマリーの板挟み。

マスターより

 到頭この時がやって来ました。巡礼の旅に端を発したクリスとマリーの物語。その最終話。柏木がFnbで出す最後のシナリオとなります。
 思えば、当初はElyとの兼業ということもあり、多くの柏木NPCたちが申し訳ないことになった中、このクリスとマリーに関しては、最初から最後まで通してシナリオを出し続けられたキャラたちでありました。
 途中、シリーズが長引いてしまってご迷惑をお掛けしました。終盤、駆け足になってしまった感も否めません。
 それでも、ここまでやってこれたのは、参加してくださった皆様方のお陰です。本当にありがとうございました。
 彼らの物語はここで終わりますが、最後までよろしくお願いします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2019/11/11 10:10

参加者一覧

  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/11/02 17:28:10
アイコン 結婚行進曲?
ディーナ・フェルミ(ka5843
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/11/02 15:39:39