ゲスト
(ka0000)
氷の中の灯火
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/02/13 19:00
- リプレイ完成予定
- 2015/02/22 19:00
オープニング
●凍った心
ロコはいつものようにその雑木林で虐められていた。
この少年を足蹴にするのは、同じ村の少年達全員だ。
でも、その中でノエルだけは今日も、手を出さない。
逆に、止めもしない。凍り付いたように固まったまま、ロコを見ている。
ふと、ノエルはロコと目が合った。ノエルは、視線をそらすことしかできなかった。
ロコは元々、村の少年ノエルの一番の親友だった。
同じ九歳同士、冬は雪で遊んだり、夏は湖で泳いだり、どこに行くにも一緒だった。
そんなロコが虐められるようになったのは、最近だ。
原因という程明確なものがあるとは、ノエルには思えない。ただ、この山奥の寒村では、夏の飢饉に冬の吹雪と厳しい環境が続き、村全体の気が立っていた。
それがいつしか子どもにまで伝染する程に。
少年達は、正体不明の苛立ちの矛先を探した。そしてそれは、村の異分子――唯一の孤児院出身であるロコに向けられたのだ。
ロコが何か悪いことをしたわけではない。それは徐々に、自然発生的に起こった。悪口に暴力。行為は日々、段階を増していった。
大人達は概して、子どもがすることを重大なことと受け止めない。そして少年達は大人がいないところでロコを虐げる。止めるものはなかった。
その中でノエルも――ロコを虐める少年達を見ながら。
やめろと、言えなかった。
ロコを虐めるのは、気付けば子ども達の間で絶対的多数の決定事となっていた。
どういう噂が流れたか、親にまで「ロコの一家とは付き合うのは控えなさい」と言われた。
その流れに、ノエルは逆らえなかった。反逆になるからだ。逆らえば、今度は自分の身が危ない、と思ってしまった。
そうしてノエルはいつしか加害者となり――ロコの親友ではなくなった。
●二人
それでもノエルは――自分だけはと、どこかで思っていた。
だから、人目を忍んで、時々ロコと会った。
村を囲う森を抜けると、湖がある。いじめから逃げたロコは、たいていそこにいた。
ノエルは一週間ぶりにロコに近づいた。ロコは少し驚いていた。
「ノエル。……どうしたの」
「……いや。大丈夫か、と思って」
「心配してくれたんだ。そんなのいいのに。僕といると……きっと虐められるし、避けられるよ」
何言ってるんだよ、関係無い、親友だろ、とは。今のノエルの口からは、出なかった。
……だから結局、ロコとはこっそり会うだけなのだ。
ロコは優しくて、本当にいいやつだった。ロコがこの状況に文句も言わないのは、皆に遠慮しているから。痣の浮いた体で、自分が全てを受け止めればいいと思っている。
ノエルはそれを知っていながら、矛先が自分に向くのを恐れて、何も言えない。
自分だけはと思っていても、結局は皆と同じだ。
それでも、ロコは凍り付いた湖面を見て笑う。
「ノエルは優しいね」
ノエルはうつむいた。そんなことないと叫びたかった。
と、そのとき森から足音が聞こえた。現れたのは子ども達のリーダー格とも言える少年で、他の子ども達もいた。
「ノエル。いないと思ったら、そいつと会ってたのかよ」
少年は言うと、雪玉をつくって強くロコに投げあてた。
ロコはうめいて、凍った湖面に倒れ込む。子ども達は笑うだけだった。
ノエルは拳を握りしめつつも……何も言えない。
ただ、ロコを抱き起こそうと反射的に湖面に降りて歩いたのだが――
そのときだ。
凍った水面の下に、突如巨大な影が現れたのは。
●魔物
どおん、と爆発したような音が鳴った。湖の中から現れたそれが突然、氷を突き破ったのだ。
岸と湖面の境目に衝撃が生まれ、ノエルとロコは湖の中央の方へ吹き飛ばされる。
「な……何だぁ!」
少年達が陸から叫んで、見たそれは……ナマズの姿だった。
ただのナマズではなく、体に電気を走らせ、巨大化した、雑魔である。
それは水面から少年達を、ぎょろりとのぞいた。
「う、うわぁ! 逃げろ!」
少年達は、ノエルとロコのことなど放って、村へと走った。
ノエルは浮島のようになった氷の上でロコを起こしていた。
「ロコ、大丈夫か!」
「うん……僕は、平気、ノエルは?」
「平気だ。早く、戻ろう」
周囲や陸の近くは大部分、氷が壊れていたが……狭い氷の道が、かろうじて陸に一本だけ繋がっていた。水面下では影がちらついているが、道を走れば抜けられるだろう。
ノエルは、ロコを連れ、急いでそこを走り抜けようとした。
「わっ!」
だが、薄い氷はすぐに割れ……ノエルの半身を水に沈めた。
ノエルは這い上がろうとする。しかし、そこで気付いた。
今ので道が壊れた。完全に浮島となったロコの乗る氷は、背後に流れていた。自分が這い上がったら最後、ロコはもう、こちらに来られない。
ノエルは後ろに手を伸ばした。
「ロコ」
しかし、届かない。するとロコは、何かを決めたように陸を向いていた。
「ノエル、君だけ行って」
「……何言ってるんだよ」
「急がないと、氷が割れて、上がれなくなるよ。助けが来るかどうかもわからない。だからノエルは行った方がいいよ」
「ロコはどうするんだよ」
「僕は大丈夫。僕は、いらない子だから」
ノエルは二の句が継げなかった。
「最近では、お父さんもお母さんも、少し、僕に冷たいんだ。きっと、僕のせい。僕が、孤児だから……」
「そんな、こと……」
「ノエル……早く! 君だけは仲よくしてくれて嬉しかった。ありがとう」
ノエルに強い感情が走った。
ノエルは、思いきり氷から這い上がると、割れかけている氷を駆けて、陸に戻る。そのまま森を突っ切って走った。
●手をのばして
ノエルは、後悔していた。ロコに、親友に対して、今までしてきたことに。
お礼を言われる筋合いなんてない。
自分は、ロコに君だけ行って、と言われたとき、一瞬だけでも助かったと思ってしまった。
それのどこが、友達だ。
ノエルは涙を浮かべてがむしゃらに走った。
だからやり直そう、と思った。
もう、ロコと遊ぶのも一緒にいるのも、やめたりしない。僕らは親友だ。
誰に何を言われても、関係無い。親が何か言おうと、知ったことか。ずっと、仲よくやるんだ。
だから、その前に……ロコを助けなくちゃ。
ノエルは村で助けを求め叫んだ。でも、村人は対処に困るばかりだった。話もうまく伝わらず……何より、虐め一つ見過ごすような村人が、化け物が出たと聞いて何を出来ようか。
ノエルはそれでも諦めず駆け回った。
きっとそれは、最後の幸運だ。ノエルは走るうち、村人とは違う様相の人間たちとぶつかった。
それは、直前に他の依頼から帰って村にいた――ハンターであった。
ノエルは涙交じりに言った。
「ロコを……助けて……!」
ロコはいつものようにその雑木林で虐められていた。
この少年を足蹴にするのは、同じ村の少年達全員だ。
でも、その中でノエルだけは今日も、手を出さない。
逆に、止めもしない。凍り付いたように固まったまま、ロコを見ている。
ふと、ノエルはロコと目が合った。ノエルは、視線をそらすことしかできなかった。
ロコは元々、村の少年ノエルの一番の親友だった。
同じ九歳同士、冬は雪で遊んだり、夏は湖で泳いだり、どこに行くにも一緒だった。
そんなロコが虐められるようになったのは、最近だ。
原因という程明確なものがあるとは、ノエルには思えない。ただ、この山奥の寒村では、夏の飢饉に冬の吹雪と厳しい環境が続き、村全体の気が立っていた。
それがいつしか子どもにまで伝染する程に。
少年達は、正体不明の苛立ちの矛先を探した。そしてそれは、村の異分子――唯一の孤児院出身であるロコに向けられたのだ。
ロコが何か悪いことをしたわけではない。それは徐々に、自然発生的に起こった。悪口に暴力。行為は日々、段階を増していった。
大人達は概して、子どもがすることを重大なことと受け止めない。そして少年達は大人がいないところでロコを虐げる。止めるものはなかった。
その中でノエルも――ロコを虐める少年達を見ながら。
やめろと、言えなかった。
ロコを虐めるのは、気付けば子ども達の間で絶対的多数の決定事となっていた。
どういう噂が流れたか、親にまで「ロコの一家とは付き合うのは控えなさい」と言われた。
その流れに、ノエルは逆らえなかった。反逆になるからだ。逆らえば、今度は自分の身が危ない、と思ってしまった。
そうしてノエルはいつしか加害者となり――ロコの親友ではなくなった。
●二人
それでもノエルは――自分だけはと、どこかで思っていた。
だから、人目を忍んで、時々ロコと会った。
村を囲う森を抜けると、湖がある。いじめから逃げたロコは、たいていそこにいた。
ノエルは一週間ぶりにロコに近づいた。ロコは少し驚いていた。
「ノエル。……どうしたの」
「……いや。大丈夫か、と思って」
「心配してくれたんだ。そんなのいいのに。僕といると……きっと虐められるし、避けられるよ」
何言ってるんだよ、関係無い、親友だろ、とは。今のノエルの口からは、出なかった。
……だから結局、ロコとはこっそり会うだけなのだ。
ロコは優しくて、本当にいいやつだった。ロコがこの状況に文句も言わないのは、皆に遠慮しているから。痣の浮いた体で、自分が全てを受け止めればいいと思っている。
ノエルはそれを知っていながら、矛先が自分に向くのを恐れて、何も言えない。
自分だけはと思っていても、結局は皆と同じだ。
それでも、ロコは凍り付いた湖面を見て笑う。
「ノエルは優しいね」
ノエルはうつむいた。そんなことないと叫びたかった。
と、そのとき森から足音が聞こえた。現れたのは子ども達のリーダー格とも言える少年で、他の子ども達もいた。
「ノエル。いないと思ったら、そいつと会ってたのかよ」
少年は言うと、雪玉をつくって強くロコに投げあてた。
ロコはうめいて、凍った湖面に倒れ込む。子ども達は笑うだけだった。
ノエルは拳を握りしめつつも……何も言えない。
ただ、ロコを抱き起こそうと反射的に湖面に降りて歩いたのだが――
そのときだ。
凍った水面の下に、突如巨大な影が現れたのは。
●魔物
どおん、と爆発したような音が鳴った。湖の中から現れたそれが突然、氷を突き破ったのだ。
岸と湖面の境目に衝撃が生まれ、ノエルとロコは湖の中央の方へ吹き飛ばされる。
「な……何だぁ!」
少年達が陸から叫んで、見たそれは……ナマズの姿だった。
ただのナマズではなく、体に電気を走らせ、巨大化した、雑魔である。
それは水面から少年達を、ぎょろりとのぞいた。
「う、うわぁ! 逃げろ!」
少年達は、ノエルとロコのことなど放って、村へと走った。
ノエルは浮島のようになった氷の上でロコを起こしていた。
「ロコ、大丈夫か!」
「うん……僕は、平気、ノエルは?」
「平気だ。早く、戻ろう」
周囲や陸の近くは大部分、氷が壊れていたが……狭い氷の道が、かろうじて陸に一本だけ繋がっていた。水面下では影がちらついているが、道を走れば抜けられるだろう。
ノエルは、ロコを連れ、急いでそこを走り抜けようとした。
「わっ!」
だが、薄い氷はすぐに割れ……ノエルの半身を水に沈めた。
ノエルは這い上がろうとする。しかし、そこで気付いた。
今ので道が壊れた。完全に浮島となったロコの乗る氷は、背後に流れていた。自分が這い上がったら最後、ロコはもう、こちらに来られない。
ノエルは後ろに手を伸ばした。
「ロコ」
しかし、届かない。するとロコは、何かを決めたように陸を向いていた。
「ノエル、君だけ行って」
「……何言ってるんだよ」
「急がないと、氷が割れて、上がれなくなるよ。助けが来るかどうかもわからない。だからノエルは行った方がいいよ」
「ロコはどうするんだよ」
「僕は大丈夫。僕は、いらない子だから」
ノエルは二の句が継げなかった。
「最近では、お父さんもお母さんも、少し、僕に冷たいんだ。きっと、僕のせい。僕が、孤児だから……」
「そんな、こと……」
「ノエル……早く! 君だけは仲よくしてくれて嬉しかった。ありがとう」
ノエルに強い感情が走った。
ノエルは、思いきり氷から這い上がると、割れかけている氷を駆けて、陸に戻る。そのまま森を突っ切って走った。
●手をのばして
ノエルは、後悔していた。ロコに、親友に対して、今までしてきたことに。
お礼を言われる筋合いなんてない。
自分は、ロコに君だけ行って、と言われたとき、一瞬だけでも助かったと思ってしまった。
それのどこが、友達だ。
ノエルは涙を浮かべてがむしゃらに走った。
だからやり直そう、と思った。
もう、ロコと遊ぶのも一緒にいるのも、やめたりしない。僕らは親友だ。
誰に何を言われても、関係無い。親が何か言おうと、知ったことか。ずっと、仲よくやるんだ。
だから、その前に……ロコを助けなくちゃ。
ノエルは村で助けを求め叫んだ。でも、村人は対処に困るばかりだった。話もうまく伝わらず……何より、虐め一つ見過ごすような村人が、化け物が出たと聞いて何を出来ようか。
ノエルはそれでも諦めず駆け回った。
きっとそれは、最後の幸運だ。ノエルは走るうち、村人とは違う様相の人間たちとぶつかった。
それは、直前に他の依頼から帰って村にいた――ハンターであった。
ノエルは涙交じりに言った。
「ロコを……助けて……!」
解説
●目的
ロコ少年の救出。
●場所
直径60スクエアの円形の湖。
南側に氷を張っていたが、雑魔が破壊し、壊れた氷が浮いている。
以下、開始時点の状況。1マス6スクエア。
――――――――――――
陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸
陸陸////////陸陸
陸/////□□///陸
陸/////□□///陸
陸//////////陸
陸//□□//////陸
陸//□□//□□//陸
陸■/////□□/■陸
陸■■//////■■陸
陸■■■■■■■■■■陸
陸陸■■■■■■■■陸陸
陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸
――――――――――――
/:水。
■:砕けた氷交じりの水。通常の水より身動きが取りにくい。
□:人が乗れる氷。中央左の固まりにロコがいる。
依頼を受ける場合、ハンターは南側に連れてこられるとする。
●敵
『巨大ナマズ』×1
基本は水中にいるようで、攻撃時などはたまに顔を出す。
電気攻撃:射程30。水上、水中を直進する。氷や人は貫通しないが、到達地点のスクエアに麻痺効果のある電流を発散する。
体当たり:射程1。行った場合、周囲(ナマズを中心に3×3スクエア)に氷があれば、その分を崩す。
『小型ナマズ』×2
湖内を周遊するが、敵と見ればすぐに追ってくる模様。
攻撃法は電気攻撃(射程5)と、体当たり(射程1)。両方とも威力は巨大ナマズに劣る。
●その他
少年達の事情は、現場に向かうまでにノエルがハンターたちに吐露している。
ロコ少年の救出。
●場所
直径60スクエアの円形の湖。
南側に氷を張っていたが、雑魔が破壊し、壊れた氷が浮いている。
以下、開始時点の状況。1マス6スクエア。
――――――――――――
陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸
陸陸////////陸陸
陸/////□□///陸
陸/////□□///陸
陸//////////陸
陸//□□//////陸
陸//□□//□□//陸
陸■/////□□/■陸
陸■■//////■■陸
陸■■■■■■■■■■陸
陸陸■■■■■■■■陸陸
陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸陸
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/:水。
■:砕けた氷交じりの水。通常の水より身動きが取りにくい。
□:人が乗れる氷。中央左の固まりにロコがいる。
依頼を受ける場合、ハンターは南側に連れてこられるとする。
●敵
『巨大ナマズ』×1
基本は水中にいるようで、攻撃時などはたまに顔を出す。
電気攻撃:射程30。水上、水中を直進する。氷や人は貫通しないが、到達地点のスクエアに麻痺効果のある電流を発散する。
体当たり:射程1。行った場合、周囲(ナマズを中心に3×3スクエア)に氷があれば、その分を崩す。
『小型ナマズ』×2
湖内を周遊するが、敵と見ればすぐに追ってくる模様。
攻撃法は電気攻撃(射程5)と、体当たり(射程1)。両方とも威力は巨大ナマズに劣る。
●その他
少年達の事情は、現場に向かうまでにノエルがハンターたちに吐露している。
マスターより
不毛の村に、少年達。そこに何かの問題があるとするならば、一朝一夕に解決するものではないのかも知れません。ただ、一人の少年が決心をしたことで……あとは彼の親友を救ってあげることが出来れば、何かが変わりはじめるのは遠いことではないんじゃないか、という気がします。
今回の戦場は冷たい湖です。水中での移動や敵の攻撃に注意して、挑んでみてください。
今回の戦場は冷たい湖です。水中での移動や敵の攻撃に注意して、挑んでみてください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/02/21 02:19
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/08 10:08:59 |
|
![]() |
子供の救助など 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/02/12 21:28:32 |