• 無し

風車は廻る

マスター:ユキ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2014/06/29 12:00
リプレイ完成予定
2014/07/08 12:00

オープニング

 6月。早い小麦はすでに収穫期。王国の南、肥沃な穀倉地帯のはずれにあって、その農家もすでに畑の収穫にとりかかっており、柵には数束の金色の尻尾が整列するように掛けられていた。だが、年老いた農夫は困っていた。父、祖父、その親と代々守ってきた麦畑。そこに立つ風車が今年になり、回らなくなってしまったのだ。

 王国歴1009年にあった歪虚の大挙侵攻の折、西岸から離れたこの辺りは直接の被害はなかった。しかし王国は国王と、そして優秀な騎士を多く失った。若い者は国のため、愛する家族のため、あるいは自身の名誉のためと勇んで騎士にならんと志願し、田舎を離れていった。リアルブルーでも聞かれたであろう、都市部と農村でよくある話だ。そしてこの農家の息子も、そのよくある話の一人だった。

 幸い彼は恵まれた体格と実直な性格もあって、無事に王国の騎士になることができた。今は妻も娶り、王国の東側に広がる大森林周辺の守護についているという。王国と同盟の都市を結ぶブリギッド大街道が貫くその森は交通の要所だが、魔獣も出没する険しく迷いやすい未開の地。これまでに何度か開拓計画も立ち上がったが、西方や帝国との睨み合い、国内の平定とそれどころではなく、あるいはその他の理由もあったのか定かではないが、結果的に計画は失敗に終わったというのが実情だ。それ故に現在は海上交易が主となっているが、王国にとっては他国との関所の1つであり、魔獣の侵入を防ぐためにも重要な拠点。そのような地の守護という任につけることは名誉なことだと、父親である農夫も喜んで息子を送り出した。なにより、息子の妻は永く生きたエルフらしく、森の近くの方がその身体に良いらしい。自分よりも年上の嫁をとるとはと最初は困惑したものだと、人間の老人は思い出しながら口元を緩める。

 だが、息子がいなければ農家はこの老人一人だ。老人の妻はすでにいない。それを寂しいと枕を濡らすことは、今の老人にはもうないだろう。とはいえ、自分一人ではこの小麦を収穫するだけでも大仕事。ましてや風車の動かない中、この小麦を挽くなど到底無茶な話だ。しかし風車を修理しようにも、老いた身体では慣れた農作業はなんとかこなせても、風車の点検作業などはとてもとても。



 そんな途方に暮れる老人たちの元をある日突然訪れるハンターたち。なぜ今ハンターがこんな、めったに雑魔も発生せず代わり映えのしない毎日が繰り返されるだけの片田舎を訪れたのか?

「貴方の息子、レオンさんの依頼ですよ。ブルーノ=クレメンティさん」

 そう話しながら、ある者は腕まくりをし、またある者は頭にタオルを巻き、ハンターたちは手分けして農作業を手伝おうと我先に金色の海に飛び込んでいった。

 ――僕の父親の畑仕事を手伝って欲しい。僕は任務で、ここを離れる訳にはいかないから……

 予想外の客人と、耳に飛び込んできた懐かしい名前。深い皺の刻まれた老人の顔が綻んだのは、見間違いではなかっただろう。

 …………

 はたして、ハンターたちの働きもあって農夫は麦穂の収穫を無事に終えることができた。目の前の柵に掛けられた金色のカーテンと、後ろに広がる見晴らしの良くなった畑の光景は毎年のものだが、やはりどこか達成感というか、眺めて気持ちのいいものがある。だが……

「どうしたものかな……」

 麦わら帽子のつばを持ち上げながら見上げた先には、静かに麦穂を揺らす風をその身に感じながらも、もはやそれを受け止めるだけの身体を持たないボロボロの羽。せっかく麦の収穫を終えても、もうこの麦を挽くことはできない。

「これもまた、大精霊の御加護がないからかもしれんな……」

 苦笑する老人の脳裏に浮かぶのは、王国歴1000年に行われた記念祝典『ソリス・イラ』での失意の光景。大精霊が降臨し、王国に先500年の守護を約束する儀式は失敗に終わった。それから目に見えた天災などの変化があったわけではない。しかしエクラ教の信徒が多い王国の民、ましてや日々自然に触れる者たちの中には、そう思うものがいても自然なことだろう。

 王国で、クリムゾンウェストで永く生きる老人には、リアルブルーの人間や覚醒者たちのような豊富なマテリアルはない。魔法技術で風車を直したり回したりするなんてことはできない。そして機導術に劣る王国の片田舎の農家は、もはやリアルブルーの原始的な農家と大差なかった。周りの農家も、どこも同じような状況だ。そんな過疎化の進む農村の老人にはもう、風車を治す術など……。老人が思い浮かべるのは、生前愛する妻が作ってくれたパンやクッキーの薫り。見よう見まねで作る素朴な、けれど毎年の楽しみだったそれも、今年でもうおしまいなのかもしれない。

「おじいさん、次は何を手伝えばいい?」

 諦め、もはや口元に淋しげな笑みすら浮かべていた老人に声をかけたのは、やはりハンターたちだった。

解説

●依頼概要
農夫の畑仕事を手伝うこと。

●農夫の主な仕事
小麦の出荷準備(脱穀、選別)
※製粉作業は風車が動かない状況では困難だろう

現在小麦は天日乾燥されている。天気は数日は雨の様子はなさそうだ。

農夫が仕事をできるように食料・物資調達や害獣駆除など雑務をこなす。農夫が休めるように畑仕事をする等、特にどのように手伝うかという指定はない。

●期間
3日間。初日は麦の収穫に追われ、皆さんが行動できるのは2日目と3日目です。(初日の夜になにか準備や相談をしたとすることは可能です)

泊まるのは農夫の納屋ですが、4人~6人で泊まるには十分すぎる広さでしょう。滞在中の食費は依頼主である農夫の息子から支払われています。(その分報酬は控えめとなっております)
竃などを借りることも可能でしょう。

●麦を挽く場合の方法(例)
・1つだけある使い込まれた小さな石臼(手動)で頑張る。
・手でなんとか頑張る。
・他所の風車を借りる。
・老人の風車を回す。
・その他
 様々な方法があるかもしれません。

●風車の状況
どうやら回らなくなって久しいようです。外から見てわかるのは、羽がボロボロで風を受けられなくなっているようだということ。中の構造については上層へ登るためのはしごも朽ちかけており、老人が登って確認はできていない状況です。どこかが壊れていたり、何かの生き物が住み着いていておかしくないでしょう。周辺のマテリアルへの影響から見ても、雑魔がいることはないでしょう。

●周辺状況
静かな農村。常に良い風が吹く、田舎ながら麦の名産地として昔から知られる地。当たりは老人の麦畑が広がっているが、少しいけば(視界で見える範囲に)他の農夫の家や畑がある。村のはずれにいけば川や林など、自然は豊富にある。野生の生き物もいることでしょう。反対に都市のように魔法の灯りが灯る公道や魔導自動車などの代物は全くないと言っていいだろう。

マスターより

ユキです。豊かな穀倉地帯を持つ王国。せっかくですから牧歌的な雰囲気をお楽しみ頂ければと思って出させて頂きました。

できることは色々あると思いますが、農村には全てがあるわけではありません。そして、農村にはそこに生きる人々や生き物がいます。そこでの生き方があります。皆さんはどのような農村の暮らしをイメージされたでしょうか?

色んな仕事があると思います。よほど周囲に迷惑をかけるものでなければ、老人も止めることはないでしょう。

麦を挽くだけならば、がんばれば覚醒者の皆さんなら力ずくでも少しはこなせるかもしれません。どのようにするか。何をするか。皆様の素敵なアイデアをお待ちしています。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/07/09 17:05

参加者一覧

  • 鎮魂の刃
    イヴァン・レオーノフ(ka0557
    人間(蒼)|29才|男性|闘狩人
  • 韋駄天
    ロイ・J・ラコリエス(ka0620
    人間(紅)|12才|男性|疾影士
  • 尽き果てぬ商人魂
    ラズリー・クレエステル(ka1349
    人間(紅)|10才|女性|機導師
  • 林檎農園を護りし者
    ダイ・ベルグロース(ka1769
    人間(紅)|36才|男性|霊闘士
  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士
  • お菓子な仲間
    ユミル(ka2174
    エルフ|10才|女性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談の場所、なのですっ!
ラズリー・クレエステル(ka1349
人間(クリムゾンウェスト)|10才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/06/28 23:51:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/24 04:34:44