ゲスト
(ka0000)
空渡る不吉
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/03/03 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/03/12 12:00
オープニング
●
どうしてこんな事に。
頭を過ぎる言葉はそれだけだ。何故、何故。ひたすらに自問するも答は無い。
当然だ。何故、どうして。それらの言葉は理由を尋ねるものだろう。それに対する解答など、ある筈は無いのだ。
――理由など、最初から在りはしないのだから。
「はぁ……っ……は、はっ……ぅ……うぅ」
少年が転がり込んだのは狭い物置小屋の中だった。
日が差し込まない暗い室内。埃が舞い散る中、少年は必死に息を押し殺す。
荒い呼吸、息切れの音は次第に嗚咽へと移り変わっていく。両手で口を押さえつけるも、涙と鼻水が代わりに漏れ出る。
いつの間にか、左足の靴が無くなっていた。此処へ逃げ込む途中、脱げて何処かへいってしまったのだろう。露になった左足には血が滲んでいた。
どうしてこんな事に。浮かぶ言葉は疑問であり、この状況に対する怒りでもあった。
少年は自身の駆け込んできた小屋の戸へ視線を向ける。扉は僅かも揺れる事は無く、押し開けられる予兆は見当たらない。
――それでも、この戸の向こうには数多くの死体が転がる事を少年は知っていた。
靴が脱げたのにも気づかない程に走る中で、多くの死体を見過ごしてきた。その中には顔見知りもいた筈だった。
助けなかったのではない。もう、助からないのだと分かっていた。
彼らの多くはもうこと切れていた。それにどのみち少年には助ける事など出来なかった。
仕方が無い事だ。少年が非力だという話ではない。
怪物に太刀打ちする事など覚醒者でもなければ到底適わないのだから。
そう、仕方が無い。仕方が無い。
いつまでも頭の中で同じ言葉を繰り返す。誰も救えなかった自分を慰めるように、少年は頭の中を埋め尽くす。
そうせざるを得なかった。慰めの為だけではない。油断すれば恐怖で自分がどうにかなってしまいそうだった。
この小屋の外で村人達を狩る奴ら――あの怪鳥の群れが村へ降り立った瞬間を思い出してしまう。
望まざる来訪者の訪れはきっと偶然だった。渡り鳥が行くように、ただ奴らはやって来ただけだ。
だから、この状況に理由を付けるのなら、運が悪かったから。
たまたま奴らの進路にこの村があった。それだけの理由で、この村は滅びたのだ。
――ふざけている。何の伏線も無く、村人達は死に絶えた。急転直下の死に納得できた者などただの一人もいないだろう。
少年は悔しさに奥歯を噛み締める。血の味が口内に広がっても構わず力を込め続ける。憎悪と恐怖とを合わせた感情が体を巡る。
奴らに、死を。村人達を死に至らしめた、自由気ままに空を舞い降り立った死の使いどもに報いを。
この身で復讐を為せないのなら他者の力を行使しよう。怪物の相手は怪物と相場が決まっている。
覚醒者。人の姿をしているからどうした。どうせ同じ怪物だ。
たまたま力に恵まれたというだけでこの地獄を平然と渡る奴らなど、認めたくない。
人間とは自分の様に無力を感じながらただただ呪う事しか出来ない者の事だ。不平等の下方へ落とされた弱者の事だ。
この村が何をした。自分達が何をした。力を得なかったというだけで、この結末を迎えるしかなかった人達が何をしたという……!
「……みんな、死んじまえ」
少年の口から、感情の失せた死んだ声が漏れると同時に――光が差し込んだ。
明るく温かい、人の日常を照らす陽の光。しかし今、光の先には希望など無かった。
「――――――」
少年の視線が上を向く。小屋の屋根が――否、小屋そのものが崩壊していた。
堰を切ったように、鳥の声が耳朶を突き刺す。四方八方、頭の沸いた様な鳴き声が聞こえる。
その群れの一部、上空から少年を見下ろす怪鳥が叫ぶ。一層大きな奇声が耳を劈く。
次の瞬間――少年は彼らの餌となった。
成す術など無い。空の狩人が村を訪れた時から、住民は餌としての存在価値以外は失っていたのだから。
怪鳥が鳴く。鋭い嘴が、爪が、少年の肉体を引き裂いていく。一掻き二掻き、演出過剰に血が噴き出る。
もうとっくに感覚など喪ったのか。少年は体を裂かれる痛みにも一切叫ぶ事は無かった。
自らが人の形を保てなくなっていく中、残された神経が眼球を動かす。瞳に映るのは禍々しき鳥の姿。
他に生存者はいるだろうか――いや、それももうどうでもいい。村がどうとか、人がどうとか、もうわからない。
最後に残ったのは一つの言葉。悲しみも喜びも憎しみも、そういうよく分からない感情とはもう関係ない。ただ一言、意味の無い言葉を残す。
声は出ない。咽などとっくに機能を停止している。指先一つも動かない。それでも、口を動かした。
光を喪う視界。全ての感覚が死に絶えていく。それでも尚、その言葉を吐き続ける。自身の最期を、ただの一言に託して。
死んじまえ。
どうしてこんな事に。
頭を過ぎる言葉はそれだけだ。何故、何故。ひたすらに自問するも答は無い。
当然だ。何故、どうして。それらの言葉は理由を尋ねるものだろう。それに対する解答など、ある筈は無いのだ。
――理由など、最初から在りはしないのだから。
「はぁ……っ……は、はっ……ぅ……うぅ」
少年が転がり込んだのは狭い物置小屋の中だった。
日が差し込まない暗い室内。埃が舞い散る中、少年は必死に息を押し殺す。
荒い呼吸、息切れの音は次第に嗚咽へと移り変わっていく。両手で口を押さえつけるも、涙と鼻水が代わりに漏れ出る。
いつの間にか、左足の靴が無くなっていた。此処へ逃げ込む途中、脱げて何処かへいってしまったのだろう。露になった左足には血が滲んでいた。
どうしてこんな事に。浮かぶ言葉は疑問であり、この状況に対する怒りでもあった。
少年は自身の駆け込んできた小屋の戸へ視線を向ける。扉は僅かも揺れる事は無く、押し開けられる予兆は見当たらない。
――それでも、この戸の向こうには数多くの死体が転がる事を少年は知っていた。
靴が脱げたのにも気づかない程に走る中で、多くの死体を見過ごしてきた。その中には顔見知りもいた筈だった。
助けなかったのではない。もう、助からないのだと分かっていた。
彼らの多くはもうこと切れていた。それにどのみち少年には助ける事など出来なかった。
仕方が無い事だ。少年が非力だという話ではない。
怪物に太刀打ちする事など覚醒者でもなければ到底適わないのだから。
そう、仕方が無い。仕方が無い。
いつまでも頭の中で同じ言葉を繰り返す。誰も救えなかった自分を慰めるように、少年は頭の中を埋め尽くす。
そうせざるを得なかった。慰めの為だけではない。油断すれば恐怖で自分がどうにかなってしまいそうだった。
この小屋の外で村人達を狩る奴ら――あの怪鳥の群れが村へ降り立った瞬間を思い出してしまう。
望まざる来訪者の訪れはきっと偶然だった。渡り鳥が行くように、ただ奴らはやって来ただけだ。
だから、この状況に理由を付けるのなら、運が悪かったから。
たまたま奴らの進路にこの村があった。それだけの理由で、この村は滅びたのだ。
――ふざけている。何の伏線も無く、村人達は死に絶えた。急転直下の死に納得できた者などただの一人もいないだろう。
少年は悔しさに奥歯を噛み締める。血の味が口内に広がっても構わず力を込め続ける。憎悪と恐怖とを合わせた感情が体を巡る。
奴らに、死を。村人達を死に至らしめた、自由気ままに空を舞い降り立った死の使いどもに報いを。
この身で復讐を為せないのなら他者の力を行使しよう。怪物の相手は怪物と相場が決まっている。
覚醒者。人の姿をしているからどうした。どうせ同じ怪物だ。
たまたま力に恵まれたというだけでこの地獄を平然と渡る奴らなど、認めたくない。
人間とは自分の様に無力を感じながらただただ呪う事しか出来ない者の事だ。不平等の下方へ落とされた弱者の事だ。
この村が何をした。自分達が何をした。力を得なかったというだけで、この結末を迎えるしかなかった人達が何をしたという……!
「……みんな、死んじまえ」
少年の口から、感情の失せた死んだ声が漏れると同時に――光が差し込んだ。
明るく温かい、人の日常を照らす陽の光。しかし今、光の先には希望など無かった。
「――――――」
少年の視線が上を向く。小屋の屋根が――否、小屋そのものが崩壊していた。
堰を切ったように、鳥の声が耳朶を突き刺す。四方八方、頭の沸いた様な鳴き声が聞こえる。
その群れの一部、上空から少年を見下ろす怪鳥が叫ぶ。一層大きな奇声が耳を劈く。
次の瞬間――少年は彼らの餌となった。
成す術など無い。空の狩人が村を訪れた時から、住民は餌としての存在価値以外は失っていたのだから。
怪鳥が鳴く。鋭い嘴が、爪が、少年の肉体を引き裂いていく。一掻き二掻き、演出過剰に血が噴き出る。
もうとっくに感覚など喪ったのか。少年は体を裂かれる痛みにも一切叫ぶ事は無かった。
自らが人の形を保てなくなっていく中、残された神経が眼球を動かす。瞳に映るのは禍々しき鳥の姿。
他に生存者はいるだろうか――いや、それももうどうでもいい。村がどうとか、人がどうとか、もうわからない。
最後に残ったのは一つの言葉。悲しみも喜びも憎しみも、そういうよく分からない感情とはもう関係ない。ただ一言、意味の無い言葉を残す。
声は出ない。咽などとっくに機能を停止している。指先一つも動かない。それでも、口を動かした。
光を喪う視界。全ての感覚が死に絶えていく。それでも尚、その言葉を吐き続ける。自身の最期を、ただの一言に託して。
死んじまえ。
解説
『依頼内容』
今回の依頼は鳥型雑魔の群れの討伐になります。
数は約四十、一体一体は一般的な鷹と同じくらいの大きさ。
嘴や爪が大きく禍々しく変質しており攻撃能力は高めですが、耐久は野性のそれと大差ありません。
気性は荒く攻撃的、知性はそう高くはありません。
『地形』
何処かより飛来した群れは既に一つの村を滅ぼし、そこに留まっています。
いつまでも移動をしない保障はありません。次の犠牲を生まない内に速やかに撃破して下さい。
村は小規模なうえ、怪鳥の攻撃で民家の多くが損壊しています。
足元に多くの瓦礫が散らばる開けた場所になります。
自由に空を飛びまわる鳥の機動力に注意してください。
『戦闘後』
生存者がいないか確認をお願いします。
……絶望的だとは思われますが。
今回の依頼は鳥型雑魔の群れの討伐になります。
数は約四十、一体一体は一般的な鷹と同じくらいの大きさ。
嘴や爪が大きく禍々しく変質しており攻撃能力は高めですが、耐久は野性のそれと大差ありません。
気性は荒く攻撃的、知性はそう高くはありません。
『地形』
何処かより飛来した群れは既に一つの村を滅ぼし、そこに留まっています。
いつまでも移動をしない保障はありません。次の犠牲を生まない内に速やかに撃破して下さい。
村は小規模なうえ、怪鳥の攻撃で民家の多くが損壊しています。
足元に多くの瓦礫が散らばる開けた場所になります。
自由に空を飛びまわる鳥の機動力に注意してください。
『戦闘後』
生存者がいないか確認をお願いします。
……絶望的だとは思われますが。
マスターより
こんにちは、硲銘介です。
久しぶりにシリアスなものを書いてみようかなぁ……と思ったらこんなになりました。
真面目な話を書こうとすると人死必須みたいなこの思考、大いに問題があると思います。
今回は群れ、との戦いです。
基本、ただただ戦っていただく感じで救いとかまるで見当たりませんが……危険な敵を放置は出来ません。
皆さんの力をお貸しいただければ幸いでございます。
それでは、よろしくお願いします。
久しぶりにシリアスなものを書いてみようかなぁ……と思ったらこんなになりました。
真面目な話を書こうとすると人死必須みたいなこの思考、大いに問題があると思います。
今回は群れ、との戦いです。
基本、ただただ戦っていただく感じで救いとかまるで見当たりませんが……危険な敵を放置は出来ません。
皆さんの力をお貸しいただければ幸いでございます。
それでは、よろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/03/10 11:01
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談用に! アメリア・フォーサイス(ka4111) 人間(リアルブルー)|22才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/03/03 12:27:19 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/28 13:44:33 |