ゲスト
(ka0000)
トレイターズ・インク
マスター:湖欄黒江

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/03/03 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/03/12 07:30
オープニング
●
青年ヨハン・フォン・ベルフは廃嫡された旧貴族の長男であった。
夜半、同じく旧貴族のグレゴールのサロンを訪ね、『活動報告』を行う。
「ビラ100枚と原版は、私が責任を持って保管しております。
しかし例のちんぴらどもには次の仕事を断られてしまい……」
そこでヨハンより年嵩のグレゴールはふん、と鼻を鳴らし、椅子に踏ん反りかえった。
「残りたった100枚、どうやって撒くかの目途もなし。話にならんよ。そんなことでは……」
グレゴールはテーブルの上に新聞を投げ出して、顎で指した。
「読んでみろ! 地方では志ある帝国臣民が反旗を翻し、
腐敗した現体制の犬どもへ果敢に立ち向かったというではないか。
残念ながら彼らは鎮圧されてしまったが、
その意志を受け継ぐ者たちを鼓舞することが、今の君の役目ではないかね。
そんなときにビラ貼りの仕事ひとつできませんとは、良く言えたものだな?」
ヨハンは新聞を見下ろしたままうなだれる。
グレゴールは彼をこの道に誘った『親方』であり、
爵位と領地を失い失意のまま亡くなった父の復讐を目論むヨハンにとっては、
その機会を得る為の唯一の伝手だった。グレゴールに認められなければ、
そして組織を登り詰め、力を得なければ、自分はいつまで経ってもただの人だ。
多少の財産を抱えただけの……。
●
ヨハンは、もっと有力なもぐりの印刷屋をひとり知っていた。
以前交渉したときは吹っかけられてしまい、やむなく断ったが、
このままではグレゴールに見捨てられてしまう。背に腹は代えられない。
「ビラの増刷については考えがあります。
ビラ貼りの人員も、改めて探しておきます。どうかこのままお任せを」
どうにかグレゴールから猶予をもらったヨハンは、辻馬車で――
自前の馬車を使わないだけの知恵は流石にあった――自宅の近くまで戻る。
帰りの間ずっと、今後の活動資金に考えを巡らしていた。
財産が尽きるのが先か、それとも皇帝ヴィルヘルミナの治世が終わりを告げるのが先か。
このまま金がなくなれば、やはり自分はただの人。
誇り高き帝国貴族の長子に生まれついておきながら、
平民どもに混じって惨めに老いさらばえるのは絶対に御免こうむる。何としても結果を出さねば。
●
「あの若造についてどう思う、フォルカー」
ヨハンが立ち去った後、グレゴールはサロンの片隅に座っていたひとりの男に呼びかけた。
男は服装こそ、旧貴族の従者然として小奇麗にしていたが、
その淀んだ眼と頬に走る古い太刀傷が、どうにも隠せないやくざ者の風情を漂わせていた。
ソファに寝転んで、手すりに組んだ脚を乗せたまま、ざらついた声で男は答える。
「危ういですな。ああいうお坊ちゃんを使うのは、どうにも……」
「だが、我々とて無尽蔵に資金がある訳ではない。
例え無能な人間でも、金さえ持っているなら使っていかねば」
「今に尻尾を掴まれますよ。そうなりゃ我々だってどうなりますか。
第一師団にしょっ引かれて締め上げられたら、奴さん喋るでしょ。旦那のことをぺらぺらとね」
グレゴールは椅子に深くもたれたまま、高価な調度の並ぶサロンを見渡した。
ヨハンがしくじれば一蓮托生、それは分かっているが、
彼自身これまでの活動にかなりの私財を注ぎ込んできた。
より大きな『作戦』へ参加できれば上層部からの資金提供もあると聞くが、
その資格を得る為には、独力で何らかの成果を出さなければならない。
(ヨハンの奴め。こっちはビラ貼り如きにかかずらわっている場合ではないのだ)
「ときに、例の仕事はどうなっておるかね」
「下手人の当ては見つかりました。値段が折り合えば、いつでもやれます。
野郎のほうも相変わらず太平楽でね。昼は商談、夜は女遊びでまぁお忙しいこって」
「お前自身は手空きなのだな? ならばヨハンを見張ってくれ、奴が何かしでかさんように……」
男がソファから身を起こし、
「良いですよ。それで、えー、こいつぁまずいと私が判断したときは」
「任せる」
ヨハンが治安組織に目をつけられたと分かったときは、先回りして彼を消す。そういう意味だった。
●
ヨハンは翌日から早速、帝都を離れることになった。
最近雇ったばかりの執事に『しばらく家を空ける』と告げて、彼は出ていく。
新入りの執事は薄給の割りに良く働き、躾も行き届いている。
子供の頃はああいう人間が家中に置かれていて、何ひとつ不自由がなかった。
現体制打倒が叶った暁には、是が非でもそうした暮らしを取り戻したいものだとヨハンは思う。
主人を見送った後、執事に扮装した第一師団の密偵は、詰所宛てに報告書を送った。
ヨハン・フォン・ベルフ、先日帝都で起こった反体制ビラ事件の有力な容疑者。
髪や瞳の色、背格好や身分は、捜査に参加したハンターたちの報告とも一致する。
加えて彼の私室から、扮装用のみすぼらしい衣服が見つかった。
これで貧民街に出入りし、印刷やビラ貼りの人手を探していたのだろう。
今回の旅行も、ヨハンは馬車こそ家に置いていったものの、
代わりに近所で拾った辻馬車は第一師団の仕掛けた罠だった。
これでおよその行き先は分かる。後ははっきりとした証拠――
原版やビラ残部、反体制活動に従事している現場を押さえられれば文句なしだ。
数日後、ヨハンが旅先で、人気のない廃墟を何人もの男たちと頻繁に出入りしていることが分かった。
現場は数年来、魔法公害の影響で閉鎖されたままの工場跡地だ。
夜闇に紛れて、男たちが何かの機材を運び込む姿も確認できた。
恐らくは印刷機。街の印刷屋に当てがなくなった為、新しく工場を作るつもりか。
ヨハン摘発には絶好の機会だが、第一師団は帝都を離れたこの地方に有力な部隊を持たない。
ハンターによる襲撃作戦が企画された。
●
「――現時点では確証はありませんが、容疑者は単独犯ではなく背後に大がかりな反体制組織、
特に、昨今その過激な活動で注目されている『ヴルツァライヒ』なる一派との関係を疑われています。
ヴルツァライヒの組織形態や具体的活動方針については情報がなく、構成員の摘発例もなし。
今回の作戦でヨハンの身柄を押さえることができれば、
今後の反テロ活動における重要な足がかりとなるやも分かりません。
作戦の成果として求められるのは、決定的な証拠。
反体制ビラが印刷されている只中でヨハンを捕縛するか、
最低でも、彼とはっきり面識のあるような関係者の身柄が必要となります。
帝国領内には依然として旧貴族出身者が数多く暮らしており、
確実な証拠を提示することができないままヨハンを捕縛すれば、
彼らの強い反発を招き、かえって反体制活動の過激化を助長しかねません。
勇み足で失敗することのないよう、くれぐれも慎重を期して下さい」
青年ヨハン・フォン・ベルフは廃嫡された旧貴族の長男であった。
夜半、同じく旧貴族のグレゴールのサロンを訪ね、『活動報告』を行う。
「ビラ100枚と原版は、私が責任を持って保管しております。
しかし例のちんぴらどもには次の仕事を断られてしまい……」
そこでヨハンより年嵩のグレゴールはふん、と鼻を鳴らし、椅子に踏ん反りかえった。
「残りたった100枚、どうやって撒くかの目途もなし。話にならんよ。そんなことでは……」
グレゴールはテーブルの上に新聞を投げ出して、顎で指した。
「読んでみろ! 地方では志ある帝国臣民が反旗を翻し、
腐敗した現体制の犬どもへ果敢に立ち向かったというではないか。
残念ながら彼らは鎮圧されてしまったが、
その意志を受け継ぐ者たちを鼓舞することが、今の君の役目ではないかね。
そんなときにビラ貼りの仕事ひとつできませんとは、良く言えたものだな?」
ヨハンは新聞を見下ろしたままうなだれる。
グレゴールは彼をこの道に誘った『親方』であり、
爵位と領地を失い失意のまま亡くなった父の復讐を目論むヨハンにとっては、
その機会を得る為の唯一の伝手だった。グレゴールに認められなければ、
そして組織を登り詰め、力を得なければ、自分はいつまで経ってもただの人だ。
多少の財産を抱えただけの……。
●
ヨハンは、もっと有力なもぐりの印刷屋をひとり知っていた。
以前交渉したときは吹っかけられてしまい、やむなく断ったが、
このままではグレゴールに見捨てられてしまう。背に腹は代えられない。
「ビラの増刷については考えがあります。
ビラ貼りの人員も、改めて探しておきます。どうかこのままお任せを」
どうにかグレゴールから猶予をもらったヨハンは、辻馬車で――
自前の馬車を使わないだけの知恵は流石にあった――自宅の近くまで戻る。
帰りの間ずっと、今後の活動資金に考えを巡らしていた。
財産が尽きるのが先か、それとも皇帝ヴィルヘルミナの治世が終わりを告げるのが先か。
このまま金がなくなれば、やはり自分はただの人。
誇り高き帝国貴族の長子に生まれついておきながら、
平民どもに混じって惨めに老いさらばえるのは絶対に御免こうむる。何としても結果を出さねば。
●
「あの若造についてどう思う、フォルカー」
ヨハンが立ち去った後、グレゴールはサロンの片隅に座っていたひとりの男に呼びかけた。
男は服装こそ、旧貴族の従者然として小奇麗にしていたが、
その淀んだ眼と頬に走る古い太刀傷が、どうにも隠せないやくざ者の風情を漂わせていた。
ソファに寝転んで、手すりに組んだ脚を乗せたまま、ざらついた声で男は答える。
「危ういですな。ああいうお坊ちゃんを使うのは、どうにも……」
「だが、我々とて無尽蔵に資金がある訳ではない。
例え無能な人間でも、金さえ持っているなら使っていかねば」
「今に尻尾を掴まれますよ。そうなりゃ我々だってどうなりますか。
第一師団にしょっ引かれて締め上げられたら、奴さん喋るでしょ。旦那のことをぺらぺらとね」
グレゴールは椅子に深くもたれたまま、高価な調度の並ぶサロンを見渡した。
ヨハンがしくじれば一蓮托生、それは分かっているが、
彼自身これまでの活動にかなりの私財を注ぎ込んできた。
より大きな『作戦』へ参加できれば上層部からの資金提供もあると聞くが、
その資格を得る為には、独力で何らかの成果を出さなければならない。
(ヨハンの奴め。こっちはビラ貼り如きにかかずらわっている場合ではないのだ)
「ときに、例の仕事はどうなっておるかね」
「下手人の当ては見つかりました。値段が折り合えば、いつでもやれます。
野郎のほうも相変わらず太平楽でね。昼は商談、夜は女遊びでまぁお忙しいこって」
「お前自身は手空きなのだな? ならばヨハンを見張ってくれ、奴が何かしでかさんように……」
男がソファから身を起こし、
「良いですよ。それで、えー、こいつぁまずいと私が判断したときは」
「任せる」
ヨハンが治安組織に目をつけられたと分かったときは、先回りして彼を消す。そういう意味だった。
●
ヨハンは翌日から早速、帝都を離れることになった。
最近雇ったばかりの執事に『しばらく家を空ける』と告げて、彼は出ていく。
新入りの執事は薄給の割りに良く働き、躾も行き届いている。
子供の頃はああいう人間が家中に置かれていて、何ひとつ不自由がなかった。
現体制打倒が叶った暁には、是が非でもそうした暮らしを取り戻したいものだとヨハンは思う。
主人を見送った後、執事に扮装した第一師団の密偵は、詰所宛てに報告書を送った。
ヨハン・フォン・ベルフ、先日帝都で起こった反体制ビラ事件の有力な容疑者。
髪や瞳の色、背格好や身分は、捜査に参加したハンターたちの報告とも一致する。
加えて彼の私室から、扮装用のみすぼらしい衣服が見つかった。
これで貧民街に出入りし、印刷やビラ貼りの人手を探していたのだろう。
今回の旅行も、ヨハンは馬車こそ家に置いていったものの、
代わりに近所で拾った辻馬車は第一師団の仕掛けた罠だった。
これでおよその行き先は分かる。後ははっきりとした証拠――
原版やビラ残部、反体制活動に従事している現場を押さえられれば文句なしだ。
数日後、ヨハンが旅先で、人気のない廃墟を何人もの男たちと頻繁に出入りしていることが分かった。
現場は数年来、魔法公害の影響で閉鎖されたままの工場跡地だ。
夜闇に紛れて、男たちが何かの機材を運び込む姿も確認できた。
恐らくは印刷機。街の印刷屋に当てがなくなった為、新しく工場を作るつもりか。
ヨハン摘発には絶好の機会だが、第一師団は帝都を離れたこの地方に有力な部隊を持たない。
ハンターによる襲撃作戦が企画された。
●
「――現時点では確証はありませんが、容疑者は単独犯ではなく背後に大がかりな反体制組織、
特に、昨今その過激な活動で注目されている『ヴルツァライヒ』なる一派との関係を疑われています。
ヴルツァライヒの組織形態や具体的活動方針については情報がなく、構成員の摘発例もなし。
今回の作戦でヨハンの身柄を押さえることができれば、
今後の反テロ活動における重要な足がかりとなるやも分かりません。
作戦の成果として求められるのは、決定的な証拠。
反体制ビラが印刷されている只中でヨハンを捕縛するか、
最低でも、彼とはっきり面識のあるような関係者の身柄が必要となります。
帝国領内には依然として旧貴族出身者が数多く暮らしており、
確実な証拠を提示することができないままヨハンを捕縛すれば、
彼らの強い反発を招き、かえって反体制活動の過激化を助長しかねません。
勇み足で失敗することのないよう、くれぐれも慎重を期して下さい」
解説
今回の依頼の目的は、反体制ビラを印刷するもぐりの印刷所へ潜入、
首謀者であるヨハン・フォン・ベルフとその他の関係者を摘発することです。
印刷所は町外れの工場の廃墟に設置され、工員15人ほどが働いているものと思われます。
屋内は広い作業場と、それを窓から見渡すことのできる2階建ての事務所の2フロアに大きく分かれ、
出入口は窓の他に作業場の大扉2つと、事務所裏手に幅の狭いドアがひとつ。
どの扉も、人の行き来がないときは常に閉め切られています。
周囲は雑草の生い茂った広い空地で、更にその外側を雑木林に囲まれています。
この空地や雑木林では、鳴子笛を持ち、魔導銃で武装した見張りが最低3人、
一定のシフトで昼夜巡回を行っているようです。
依頼主である第一師団は、ヨハンないしは印刷所の経営者、作業監督者の身柄を求めています。
彼らが現れるタイミングを狙って突入する為には、事前の監視が必要となるでしょう。
摘発を察知された場合、関係者が証拠隠滅を図る恐れもありますので、
現場への突入後は迅速な行動を心がけて下さい。
首謀者であるヨハン・フォン・ベルフとその他の関係者を摘発することです。
印刷所は町外れの工場の廃墟に設置され、工員15人ほどが働いているものと思われます。
屋内は広い作業場と、それを窓から見渡すことのできる2階建ての事務所の2フロアに大きく分かれ、
出入口は窓の他に作業場の大扉2つと、事務所裏手に幅の狭いドアがひとつ。
どの扉も、人の行き来がないときは常に閉め切られています。
周囲は雑草の生い茂った広い空地で、更にその外側を雑木林に囲まれています。
この空地や雑木林では、鳴子笛を持ち、魔導銃で武装した見張りが最低3人、
一定のシフトで昼夜巡回を行っているようです。
依頼主である第一師団は、ヨハンないしは印刷所の経営者、作業監督者の身柄を求めています。
彼らが現れるタイミングを狙って突入する為には、事前の監視が必要となるでしょう。
摘発を察知された場合、関係者が証拠隠滅を図る恐れもありますので、
現場への突入後は迅速な行動を心がけて下さい。
マスターより
歪虚との戦いが激化する一方、帝国は頻発する反体制活動にも悩まされてもいます。
今回の容疑者ヨハンは、先日とある中傷ビラ事件
(詳しくは2月03日公開シナリオ『帝国軍兵士諸君』参照)に関わったとされる人物。
彼を捕まえることができれば、帝国反体制派の闇の奥に近づける……かも知れません。
今回の容疑者ヨハンは、先日とある中傷ビラ事件
(詳しくは2月03日公開シナリオ『帝国軍兵士諸君』参照)に関わったとされる人物。
彼を捕まえることができれば、帝国反体制派の闇の奥に近づける……かも知れません。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/03/11 05:32
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
それでは、相談すると致そう ダリオ・パステリ(ka2363) 人間(クリムゾンウェスト)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/03/03 07:45:42 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/26 21:03:34 |