• 戦闘

あの味をもう一度

マスター:秋風落葉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/03/13 19:00
リプレイ完成予定
2015/03/22 19:00

オープニング

●一人の依頼人
 王都イルダーナのとあるハンターオフィスで。
 時間はまだ早朝だ。誰もいない施設の中で、カウンターにいる一人の受付嬢はあくびをかみころしていた。
 バタン!
 そんな彼女を一瞬で覚醒させるような音が響き、受付嬢は慌てて顔をそちらに向ける。
 入り口に立っていたのは一人の男。
 もうすぐしたら初老に達するか、といった風情であった。
 男はなぜかそそくさと掲示板へと近寄り、一枚の紙を勝手に貼り付ける。
 そこにでかでかと書かれていた文字は……。

【求む! 幻獣!】

「ってなにやってるんですか!?」
 あんまりといえばあんまりな内容に、受付嬢はカウンターを抜けて男の側にやってきた。
 いたずらを咎められた子供のように、男は舌打ちせんばかりの態度である。
「なんだね? ここはハンターに依頼をする場所なのだろう。ならば、わしがやっていることに何も問題はないはずだが?」
「大有りですよ! そもそも他の紙を隠すように貼っておいて何を言ってるんですか!?」
 受付嬢は顔をしかめて男が貼り付けた紙をはがし、それをそのまま突きつける。
「いったいこれはどういう意味ですか!? なんですか【求む! 幻獣!】って!?」
「そのままだよ、娘さん。わしは幻獣が欲しい。いや、正確に言えば幻獣の肉が欲しいのだ」
「肉!? いったい何に使うんです!?」
「決まっておろう。食べるのだ」
「食べるぅ!?」
 受付嬢はすっとんきょうな悲鳴をあげるが、幸いそれを耳にしたのは目の前の男だけだ。
「ええと、く、詳しい話をお聞きしても?」
「よかろう。あれは40年くらい前のことだ。わしの生まれはここから遥か北にある小さな村でな。わしはそこを出て、この王都イルダーナにやってくるところであった。その時のわしは希望に溢れておった。きっと前途には輝かしい未来が待っておると……」
「あの、すみません。できたら必要ない箇所は省略していただけると……」
 話の腰を折られ、一瞬男は不愉快そうな顔をしたものの、要点だけをまとめた説明をし始める。
「……まあ、かいつまんで言うとな。村からここへと来る時に大人しく街道を通ればよかったのに、何を考えたのか荒野を突っ切ろうと思ったのだ」
「なんでそんな無茶を!?」
 王都イルダーナの北に広がる荒野は危険な場所として知られている。男が口にした通り、南北に伸びる街道を通りさえすればその危険度も大きく低下するのだが。
「若気の至りだろう。ま、それはともかく、続けるぞ。そして情けない話だがわしは結局荒野で迷ってしまってな。何も食べるものはなく、飲むものはなく……疲れきって途方に暮れておった」
 受付嬢は何も言わず、話の続きを待っている。
「だが、そこでわしはあるハンターの一団と出会った。わしの窮状が分かったのだろう。食事中だった彼らはわしを招き入れ、水なども心良く分けてくれた。ハンター達は鍋を囲んでいたが、その中の肉をわしによそってくれたのだ。空腹だったわしはもちろんがつがつとかきこんだ。それは塩で味付けされた肉だったが、とても美味かった! ……その味が今でも忘れられず、もう一度食べたいと思ったのだ」
「なるほど、それはなんと言えばいいか、結構素敵な経験をされましたね」
 受付嬢の言葉にありがとうと答える男。
「そしてその時、元気になったわしは、これはいったい何の肉なのか、と彼らに尋ねたのだがな。彼らは小さく笑いながらはぐらかすばかりだった」
「それでは、なんのお肉なのか分からないじゃないですか」
「まだ続きがある。若い者はせっかちで困る」
 受付嬢は内心イラッとしながらも、男が再び話しだした物語に耳を傾けた。

●昔の話
『おっと、またお出ましだぜ』
 ――ハンターの一人が突然叫び、彼らは臨戦態勢になった。わしはもちろん戦いの心得なんぞない。ハンター達があわただしく立ち上がるのにならって、わしも立ち上がりはしたが、どうすればいいかも分からんかった。わしに出来たのは、おっかない気配がするほうに視線をやるくらいのものだ。そしてわしは見た。
 ――そこにおったのは、一体の大きな化け物だった。足がたくさんあってな、しかも大きな尻尾がある。体の前にははさみもついていた。そう……巨大なサソリだ。

「サ、サソリーっ!?」
 ハンターオフィスの受付嬢といえど、やはりそういう生物は生理的に受け付けないのか悲鳴をあげる彼女。しかし男の昔話は止まらない。

『君はここに隠れていなさい。危ないから出てきてはいけない』
 ――その言葉に従い、わしは素直にテントの中に隠れた。しばらく戦いの音が聞こえてくるが、やがてその音も止んだ。
『よし、これで数日分になったな』
『お前、こいつが大好きだからな』
『私はちょっと……やっぱ駄目だわ』
『そういえば、さっきも食べてなかったね』
 ――彼らの話し声がテント越しに聞こえてきた。わしは、去ったらしい脅威にほっとし、彼らの会話の意味を理解することもなく、ハンター達の無事な姿を見るためにテントから出て行った……。

●肉の正体
「これで昔話は終わりだ」
 長い話を終え、男はほっと一息ついた。受付嬢の顔は、なぜか真っ青になっている。
「……まさか……まさか……まさか……」
 男は、にやりと笑った。
「そう……その時は言葉の意味に気付かなかったのだがな、あの時わしが食べたのは巨大サソリの肉だったというわけだ」
「いやあああああああああああああああああ!!」
 喉も枯れんばかりの悲鳴をあげる受付嬢。しかし、初老の男の笑みはますます深くなるばかりだ。
「そのことに気付いたわしは、いろいろと調べてみたのだよ。幻獣の名も分かっている。ヒュージスコーピオンというらしい」
 受付嬢は聞きたくないとばかりに頭を左右に振っている。
「こいつの外殻は結構硬くてな。内部の肉だけを取り出してから、塩で味付けして油で揚げるのだ。そうすれば、あの時の味が再現できるはず……ああ、いかん! よだれが出てきおったわ!」
 受付嬢は男を見た。それこそ蛇蝎を見るような怯えた目で。
 男は一人興奮していたことに気付き、軽く咳払いをする。
「わしももうあまり長くはないだろう。死ぬ前にあの味をもう一度、というわけだ」
 改めて受付嬢に依頼の話をしはじめる男。
「ハンターに依頼するお金は工面してきた。もちろん依頼内容はヒュージスコーピオンを討伐すること。ちなみに結構強いらしいから、準備はしっかりとしてもらったほうがいいだろう。ああ、そうそう。サソリの調理はわしが引き受けるとハンターには伝えておいてくれ」

解説

・目的
ヒュージスコーピオンを一体討伐することです。
なお、解体作業も依頼の中に含まれています。

・目的地
目的地である荒野の近くの街までは転移門で行くことができます。
朝早くから行動することになり、荒野の中では徒歩が主な移動方法になるでしょう。
荒野をうろつくヒュージスコーピオンは姿が大きく、遠目にも存在が分かるため、敵の姿を求めて何日も荒野をさまようということはありませんが、とある理由で一旦荒野の中で休息することにはなります。

・ヒュージスコーピオンについて
全長4~6mの巨大サソリです。(全長には尻尾を含む)
尻尾には『行動不能』の効果を持つ麻痺針がついています。
尻尾による攻撃を受けた時、バッドステータスに対する抵抗を行う必要があります。
失敗すると、麻痺が回復するまで何の行動も取れなくなります。
失敗後も、毎ラウンド抵抗を行うことはできるので、それに成功すれば麻痺が治ります。
他の攻撃方法は主にはさみを使います。
また、外殻は中々の防御力を持ちます。

・補足
依頼人の男の名はガードナーといいます。
彼は転移門が使えないため、荒野の近くの街で一足先に待っています。
そしてハンター達の探索についてきます。馬を連れており、テントなどの野営道具、調理道具と調味料をその背に乗せています。
一般人ですが、それなりのタフさを持っており、移動中に足を引っ張ることはありません。
戦闘に入ったら、彼と馬は離れた場所にいますので、戦いの際に彼らのことを気にかける必要はありません。
ヒュージスコーピオンは一体だけ倒せば依頼解決ですが、解体作業はしていただく必要があります。
戦闘が終了すると、ガードナーがさっそく調理をし始めるため、その場所で休息と食事をすることになります。
なお、肉を食べるのも食べないのも、自由です。
ヒュージスコーピオンの毒は、食べることによっては何の効果も及ぼしませんのでご安心ください。

マスターより

こんにちは、こんばんは、秋風落葉(しゅうふうらくよう)です。
今回はとある男からの、一風変わった依頼となります。
ちょっとあれな内容ではありますが、彼の願いを叶えることはハンターにしかできません。
ご参加、お待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/03/18 02:23

参加者一覧

  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • 心の友(山猫団認定)
    天川 麗美(ka1355
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ピロクテテスの弓
    ニコラス・ディズレーリ(ka2572
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 無類の猫好き
    鹿島 雲雀(ka3706
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • たかし丸といっしょ
    メオ・C・ウィスタリア(ka3988
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン ヒュージスコーピオン調理相談卓
神楽(ka2032
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/03/13 01:39:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/12 22:55:43