• 日常

イルムさん、大事な眼鏡を紛失するの巻

マスター:えーてる

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
プレイング締切
2015/03/19 09:00
リプレイ完成予定
2015/03/28 09:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。


「……ということがありまして、困っているんです」
 イルムトラウト・イトゥリツァガ(kz0067)は浮かない声でそう締めくくった。向かいでそれを聞いていたモア・プリマクラッセ(kz0066)は心得たとばかりに頷いた。
 二人がいるのはバロテッリ商会の商店である。イルムが何かものを必要としている時は、大体モアの務めるバロテッリ商会にやってくる。
「成程。一つ聞きますが、日常生活に支障が出るほどに悪いのですか?」
「それは勿論……ないと生きていけないくらいに」
 彼女は明らかに焦っていた。モアもどれだけ不便なのかはよく分かるし、明らかに仕事に悪影響でもある。
 ないと生きていけないというのは恐らく嘘でもなんでもないのだろう。彼女の状態はモアも把握している。同じ状況なら自分も苦しいだろうという思いはあった。
 彼女はどこか憔悴した様子でカウンターに手をついた。
 ちなみに眼鏡の話である。
「しかし、普通の物では足りないと?」
「はい……もっと強いものでないと常用に耐えなくて」
 という言葉にモアは(二人の間でしか分からないほど微細な変化で)難しい顔を作った。
 彼女が要求する程に効果の高いものなど、早々無い。眼鏡の話だ。
 というより、ここまで重篤な人間を見たのがモアは初めてだった。依存症と言っても過言ではない。眼鏡の話だ。
「モアさん以外に頼れる人がいないんです」
 という彼女の要望に答えたくはあったが無理なものは無理だ。モアは首を横に振った。
「それほど強いものとなると……そもそも市場に出回りませんし」
「……そうですよね」
「ただ、宛はあります」
「本当ですか!」
 珍しく(少しだけ)声を弾ませた彼女に、モアは「少し待っていてください」と断りを入れて、紹介状とメモをこさえた。
「そこでなら、イルムさんの要望にも答えてくれると思います」
「モアさん……流石です。ありがとうございます」
「ああ、それと」
「商会の宣伝ですよね! 分かってます勿論です! では!」
 モアが言い切る前に彼女は駆け出していた。珍しいものを見たなと思いつつ、モアは行き場をなくした続きを、一応とばかりに口にした。
「……フマーレの中でも特に迷いやすい所なので、一人では行かないようにしてくださいね」
 ここに来るまでに随分迷ったらしいイルムは、既に店先を飛び出してしまっていた。

 ――翌日、ついぞ辿り着かなかったイルムが(モア主観で)泣きそうな顔をしてやってきたという。


「ということがあったそうでー」
 ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)はそう締めくくった。

 眼鏡と言えば、イルムのトレードマークだ。
 ルミも「よっ、同盟の眼鏡美人!」とか「眼鏡が似合うと仕事もできるんですねぇ」などと雑な煽て方をするくらいには、イルムと眼鏡は密接な関係にある。というよりイルムがほぼ一方的に依存している。
 彼女、キツい乱視と近視を患っているのだ。
 視力の話になった時の「裸眼ですか? 0.03以下ですね……」という答えはルミどころか職場を騒然とさせた。どれぐらい酷いかと言うと、街を歩いていても看板の字が読めない、人の顔が分からない、拳一つほどの距離まで近づかないと本が読めない、そういうレベルで視力が悪い。
 ――そのイルムが、なんと眼鏡をなくしてしまったのだという。
「たいっへんなんですよぉ」
 とルミはハンターたちに愚痴っていた。
「ほら、辺境のCAMの街、ホープとですね、ナナミ川でのごたごたがありましたよねぇ? イルムさん、その時東奔西走駆けずり回ってオフィスの仕事とかやってたんですけど、その帰りに、海に眼鏡を落っことしちゃったらしくて」
 それがハンターの支給品で賄える普通の眼鏡であればよかったのだが、生憎イルムのそれはかなり度がきついオーダーメイドであった。
 というか、そこらの軽い眼鏡では掛けたところであまり効果が無いのだ。結局乱視のせいで書類が読みづらいとか。
 リアルブルーにいた頃であれば簡単に手に入ったのだが、クリムゾンウェストでは技術的にも機材的にも一朝一夕に作れるものではない。
「イルムさん、机にうつ伏せになるくらい目を近づけないと書類が読めない有り様で……仕事効率ガタ落ちなんですよねー……」
 顔が分からないので受付にも立てないし、事務作業も恐ろしいほどに効率が悪くなっている。
「なにせイルムさん、普段の仕事量が頭おかしいですからー……普段彼女が抱えてたタスクが全部溢れだしてて」
 その辺りのリスクヘッジを欠かしていないイルムの気配りが功を奏して業務停止とは行かないが、それでもドがつくほどの激務になっているらしい。
 それもこれも時機が悪かった。
「え、私ですか? やー私は受付嬢ですからぁ、事務のことはわかんないなぁ~ってぇ」
 そしてこの娘も大概要領が良かった。
「あ、それで本題です本題。皆さんにお願いしたいことは二つありましてー。フマーレまで行ってイルムさんを目的地に案内してもらって、折角なのでそのまま休暇を取らせて欲しいんですー」
 休暇を「取らせる」という表現が使われるような人間もそうはいまい。
「何を言ってるか分からないって? 私もよく分かりません……」
 ……当たり前だが、店の看板どころか地図を読むのに多大な苦労を伴う視力である。裸眼で生活など最早介護が必要なレベルだとルミは言う。
 というのも、乱視がひどすぎてマグカップの取っ手を掴むのに失敗したりちょっとした段差に躓いたりしていたらしい。
 明らかにヤバいと判断したルミがついさっき無理矢理休暇を取らせた。英断である。
 明日にはひとまずの代用品として乱視矯正眼鏡が届くので(それでも仕事に多大な影響があるようだが)、ひとまず今日一日を乗り切れば何とかなる。
「実際イルムさんここ最近働き詰めでちょっと危なそうなので、いい機会ではあるんですよぉ。ただ、あのワーカーホリックがちゃんと休むかどうかは怪しい所なので……ってか前例がありましてぇ……」
 一応イルムは出来ないことはしない性分なのだが、外に出れば目が悪いなりに色々人助けを始めるだろうし、一方で家に篭もらせたら机にへばりつく姿勢で仕事し始めるに違いない、とルミは言った。
「夜は私がイルムさん家に押しかけるので、とりあえず日中です! 観光のついでで構わないので、イルムさんを介護しつつ休暇を取らせてあげてください! なんならご飯の美味しいお店とか紹介しますよ!」
 ちなみにイルムを無理矢理帰すので午後の受付はルミ一人になるのだが、ルミはそこには触れなかった。
 と言った所で、件のイルムがやってきた。
 彼女は目を細めて受付をじーっと眺め、受付嬢の顔を暫くチェックし、ルミの方を暫く見て、それから控えめに手を上げた。この間一分近くだ。
「お待たせしました、ルミさん」
「……見ての通りなので、マジでお願いします」
 ルミは深々頭を下げた。

解説

●目標
 イルムを職人の工房まで案内する
 イルムの休暇を手伝う(?)
 同盟を観光する

●情報
・職人
 偏屈ですが、紹介状もあるので辿り着きさえすれば問題なく仕事を請け負ってくれます。
 ただフマーレの西南西奥深く、かなり入り組んだ立地にあるので、今の地図を満足に読めない彼女一人には荷が重いでしょう。

・イルムについて
 他人の不幸を看過できない性格であり、転じて人助けが趣味です。
 何かしていないと落ち着かない性格で、働いている時が一番落ち着くとのたまう程度には仕事狂です。
 人といること自体を楽しむ性向で、誘われれば運動もゲームも楽しむ一方、個人的な趣味は買い物、散歩、酒といった程度です。
 自主性に欠けるきらいがあります。

 多くの休日は人助けで一日を終えます。
 何もない時は散歩か買い物に出かけますが、大体町中の困っている人を見つけては人助けを始めます。

 現状、慣れた場所の歩行や家で寝ている分には問題ありませんが、外に出るには色々問題があります。
 看板やメニューの判別が難しく、特に文字の判別は難しいでしょう。

・フマーレ
 自由都市同盟における第二次産業を担う蒸気工業都市です。
 煉瓦造りの町並みが美しい都市でもあります。
 最北部に広い自然公園、北部から中央にかけて居住区と商業区、南半分と港を含む工業区と区分けされています。
 重工業から銀細工まで様々です。重工業は比較的南に多い傾向にあります。

・ヴァリオス
 極彩色の街と呼ばれる同盟の実質的首都であり、有名な観光都市です。
 商人の町でもあり、数多くの商会が店を構えています。観光者向けの娯楽施設や歓楽街も存在します。
 西方世界の中でも生活水準が高く、自然も多い都市であり、イルムは気に入っているようです。
 彼女はここ在住ですが、移り住んで半年程度であり、あまり街に慣れているわけではありません。

マスターより

 視力0.03+強い乱視持ちのえーてるです。眼鏡が手放せませんが、最近眼鏡が壊れて大変な思いをしました。
 なのでイルムさんにも大変な思いをしてもらいます。

 要は案内+観光+監視です。とりあえずフマーレまで行った後、困っている人を見過ごせないイルムが暴走しないようになだめつつ同盟領を観光しましょう。
 港町ポルトワールは今ちょっと(CAMとかで)忙しいので、観光には適さないかも。

 何か質問があったら遠慮なくイルムに聞くといいと思います。

 では、皆さんの知力と活力の限りを尽くしたプレイングをお待ちしています。

関連NPC


  • イルムトラウト・イトゥリツァガ(kz0067
    人間(リアルブルー)|25才|女性|機導師(アルケミスト)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/03/27 06:52

参加者一覧

  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • ティーマイスター
    カティス・フィルム(ka2486
    人間(紅)|12才|女性|魔術師

  • 扼城(ka2836
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 麗しきストーリーテラー
    セレス・カルム・プルウィア(ka3145
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 冬の使者
    シア(ka3197
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 冒険者
    アレス=マキナ(ka3724
    エルフ|15才|男性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談
カティス・フィルム(ka2486
人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/03/19 07:58:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/18 21:27:40