ゲスト
(ka0000)
p731 『深淵の瞳』
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/03/18 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/03/27 12:00
オープニング
『深淵の瞳』
ヴァリオスのとある商店街に、一人の大道芸人が訪れた。
旅芸人の彼は、行く先々でその芸を披露して、その日の生活費を稼いでいる。
最盛期にはそれなりの人気を馳せたものだが、どうもここ最近は客入りが悪い。そこで比較的羽振りの良さそうな、ヴァリオスへと訪れていたのだ。
到着から数日、日が暮れるまで人ので入りの頻繁な教会の前に立ってみたものの、成果は相変わらず。
酒場で知り合った旅の占い師に話を聞いてみたりもしたものだが、それで運気が変わるわけでもない。
興味を持って足を止めるのは近所の子供達や野良犬、野良猫。一銭の稼ぎにもならないまま今日も日が暮れ、通りから次第に人の気配が消えて行った。
今日もここまでか。
そう、ため息混じりに商売道具を片付け始めたとき――ふと、その鼻先を鉄のような嫌な臭いがくすぐった。
何の臭いだろう、周囲を軽く見回した時である……目が合ったのだ。
こんな夜半に何処の誰なのか。
その顔も、姿も伺う事ができない。
しかし、路地裏の暗がりからくっきりとした光る目が二つ、自分の姿を覗き込んでいたのだ。
無言の聴衆に、男はドキリとその心の臓が震えた。
「や、やぁ……すまないが今日は終わってしまったんだよ」
男は恐る恐る、その『瞳』へ向けて声を掛けていた。
しかし、その『瞳』は何も言わず、まるで何かを語りかけるように、ただ真っ直ぐに男の姿を見つめていた。
「な、なんだ……そんなに、私の芸が見たいのか?」
無言を肯定と取ってしまうのは、人間の悪い癖だろうか。
そう問いかけておきながらも尚も口一つきかない傍観者に対し、男は勝手にそう解釈すると、いそいそと片付けかけていた道具を取り出し始める。
怪しい人物に芸を見せるなど、自分もヤキが回ったのか……そう思いながらも、久しぶりのまともな聴衆に、どこか嬉しさのようなものも隠せない様子であった。
「これでもジャグリングは好評でね、こんな事もできるんだ」
そう言いながら、5~6本の棍棒を一気に取り回して見せたり、股の間を潜らせて見せたりと、得意の技を披露する。
そうしてひとしきりの芸を終えると、いつもそうしたように静かにお辞儀をして見せた。
再び顔を上げたとき――路地の『瞳』はその姿を消していた。
「なんだ……居なくなってしまったのか」
それは報酬を貰えなかった事に対する落胆か、それとも単純に観客を失ってしまった事に対する落胆か。
答えは、久しぶりに高鳴った胸の鼓動だけが知っていた。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も。
店じまいを始めるのを見計らうように、その『瞳』は現れた。
相変わらず謎の鉄臭が辺りを包むし、心遣いは貰えないしであったが、それでも久しぶりにファンを得たかのような気分に浸った男は、いつしかその観客が現れるのを楽しみにさえしたものだった。
そういえば、この道を歩み始めたのも誰かを驚かせたい、喜ばせたいという気持ちからだっただろうか。
無償の仕事を続けながら、そんな懐かしい初心さえも思い返していたものであった。
ある日、いつものように『瞳』へと芸を披露し終えた男は、不意の違和感に捕らわれていた。
今までであれば、締めのお辞儀をして見せた頃にはもう何処へか居なくなってしまうその『瞳』が、今日に限ってはまだこちらを覗きこんでいたのだ。
初めて出会った時のように、何かを求めるような視線を投げ続けながら。
「すまないが、今日は本当にもう終わりなんだ。この暗さではキミもよく見えないだろう。もしくは――」
そんな言葉をかけながら、男はかねてより疑問だった事を口にしていた。
「もう少し観たいのであれば、よければこちらまで来てくれないか。近くなら、薄暗い中でも楽しめると思うのだが」
毎日来てくれるお客を、一目、その顔を見てみたいと。男がひそかに、そして当然のように抱いていた気持ちであった。
しかし、『瞳』は何も答えない。ただその視線を向け続けるだけだ。
男はその様子を否定の意味と捉えたのか、諦めたように道具を仕舞い込んだ。
「それでは、また明日」
当たり前のように出た言葉に苦笑しながら、男は仕事場を後にした。
しばらく夜の街を歩いた後、ピタリとその足を止める。
……見られている?
ふと、傍らの店の陰に目を向けると――いた。
あの『瞳』が、全く同じような様子で、こちらを覗きこんでいた。
「な、なんだ……脅かさないでくれ」
仮にも夜の街だ。
強盗や、それに類する人間が居ないとも限らない。
「本当に今日は終わりなんだ。私も流石に疲れたしね……宿で休ませてくれ」
そう言い残して、再び歩みを進める。
が……その視線が消える事は無かった。
次の路地にも、その次の路地にも、決まって『瞳』が待ち構え、こちらを見ている。
あいも変わらず、感情も感じられない瞳を。
それを目にするたびに、男の足は次第に早くなって行き、いつしか息を切らせながら夜の街を駆け抜けていた。
一体何なんだ。
彼は駆け込むように拠点としている街外れの安宿に入ると、自らの部屋へと飛び込んだ。
全力で走ったせいか、息も絶え絶え。
上着を固いベッドに放り投げると、革袋の水を一気に煽る。
水分が体に染み渡るのを感じながら、次第にその息も落ち着いていった。
そうして一息ついてふと、窓辺に視線を移した時――
――窓の外の深淵から『瞳』が男を覗き込んでいた。
男は部屋を飛び出した。
見るな、私を見ないでくれ。
そう懇願するように口にしても、視線が消える事は無かった。
とにかく、どこか遠くへ。
ヤツも諦めるような場所へ。
必死の思いで街を抜け、墓地を通り、郊外の森へとその身を投じていた。
草木を掻き分け、落ち葉に足を取られながら、暗い森を駆け抜ける。
こんな所まで自分を負うような人間は居ないだろう。
そう思った事が、彼の最大の誤算であった。
そう、人間であるならば、と――
気づいたときには、周囲を取り囲むような視線の中に彼は立ち尽くしていた。
取り囲む『瞳』『瞳』『瞳』。
その視線から、もはや逃げる術は無い。
思わず、男の口から笑みが零れる。
それは敗北を悟った笑みであったのだろうか、男はその場に崩れ落ちた。
「私に……何を求めているんだ」
その時、コツリとその手に何かが触れた。
視線を向けるとそれは……ジャグリングに使う棍棒のように見えた。
何故こんな所に?
しかし、男は勝手に理解し、納得する。
「そうか……そんなに、私の芸が見たいのか」
男は棍棒を取り上げると、すくりとその場に立ち上がると、いつもそうするように恭しく一礼をしてみせる。
そうして、拍手すら起こらぬ森の中で、彼は自慢のジャグリングを披露するのだ。
いつもよりもやけに軽い、その棒を手に持ちながら。
その夜から、彼が商店街に現れる事は無かった。
ヴァリオスのとある商店街に、一人の大道芸人が訪れた。
旅芸人の彼は、行く先々でその芸を披露して、その日の生活費を稼いでいる。
最盛期にはそれなりの人気を馳せたものだが、どうもここ最近は客入りが悪い。そこで比較的羽振りの良さそうな、ヴァリオスへと訪れていたのだ。
到着から数日、日が暮れるまで人ので入りの頻繁な教会の前に立ってみたものの、成果は相変わらず。
酒場で知り合った旅の占い師に話を聞いてみたりもしたものだが、それで運気が変わるわけでもない。
興味を持って足を止めるのは近所の子供達や野良犬、野良猫。一銭の稼ぎにもならないまま今日も日が暮れ、通りから次第に人の気配が消えて行った。
今日もここまでか。
そう、ため息混じりに商売道具を片付け始めたとき――ふと、その鼻先を鉄のような嫌な臭いがくすぐった。
何の臭いだろう、周囲を軽く見回した時である……目が合ったのだ。
こんな夜半に何処の誰なのか。
その顔も、姿も伺う事ができない。
しかし、路地裏の暗がりからくっきりとした光る目が二つ、自分の姿を覗き込んでいたのだ。
無言の聴衆に、男はドキリとその心の臓が震えた。
「や、やぁ……すまないが今日は終わってしまったんだよ」
男は恐る恐る、その『瞳』へ向けて声を掛けていた。
しかし、その『瞳』は何も言わず、まるで何かを語りかけるように、ただ真っ直ぐに男の姿を見つめていた。
「な、なんだ……そんなに、私の芸が見たいのか?」
無言を肯定と取ってしまうのは、人間の悪い癖だろうか。
そう問いかけておきながらも尚も口一つきかない傍観者に対し、男は勝手にそう解釈すると、いそいそと片付けかけていた道具を取り出し始める。
怪しい人物に芸を見せるなど、自分もヤキが回ったのか……そう思いながらも、久しぶりのまともな聴衆に、どこか嬉しさのようなものも隠せない様子であった。
「これでもジャグリングは好評でね、こんな事もできるんだ」
そう言いながら、5~6本の棍棒を一気に取り回して見せたり、股の間を潜らせて見せたりと、得意の技を披露する。
そうしてひとしきりの芸を終えると、いつもそうしたように静かにお辞儀をして見せた。
再び顔を上げたとき――路地の『瞳』はその姿を消していた。
「なんだ……居なくなってしまったのか」
それは報酬を貰えなかった事に対する落胆か、それとも単純に観客を失ってしまった事に対する落胆か。
答えは、久しぶりに高鳴った胸の鼓動だけが知っていた。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も。
店じまいを始めるのを見計らうように、その『瞳』は現れた。
相変わらず謎の鉄臭が辺りを包むし、心遣いは貰えないしであったが、それでも久しぶりにファンを得たかのような気分に浸った男は、いつしかその観客が現れるのを楽しみにさえしたものだった。
そういえば、この道を歩み始めたのも誰かを驚かせたい、喜ばせたいという気持ちからだっただろうか。
無償の仕事を続けながら、そんな懐かしい初心さえも思い返していたものであった。
ある日、いつものように『瞳』へと芸を披露し終えた男は、不意の違和感に捕らわれていた。
今までであれば、締めのお辞儀をして見せた頃にはもう何処へか居なくなってしまうその『瞳』が、今日に限ってはまだこちらを覗きこんでいたのだ。
初めて出会った時のように、何かを求めるような視線を投げ続けながら。
「すまないが、今日は本当にもう終わりなんだ。この暗さではキミもよく見えないだろう。もしくは――」
そんな言葉をかけながら、男はかねてより疑問だった事を口にしていた。
「もう少し観たいのであれば、よければこちらまで来てくれないか。近くなら、薄暗い中でも楽しめると思うのだが」
毎日来てくれるお客を、一目、その顔を見てみたいと。男がひそかに、そして当然のように抱いていた気持ちであった。
しかし、『瞳』は何も答えない。ただその視線を向け続けるだけだ。
男はその様子を否定の意味と捉えたのか、諦めたように道具を仕舞い込んだ。
「それでは、また明日」
当たり前のように出た言葉に苦笑しながら、男は仕事場を後にした。
しばらく夜の街を歩いた後、ピタリとその足を止める。
……見られている?
ふと、傍らの店の陰に目を向けると――いた。
あの『瞳』が、全く同じような様子で、こちらを覗きこんでいた。
「な、なんだ……脅かさないでくれ」
仮にも夜の街だ。
強盗や、それに類する人間が居ないとも限らない。
「本当に今日は終わりなんだ。私も流石に疲れたしね……宿で休ませてくれ」
そう言い残して、再び歩みを進める。
が……その視線が消える事は無かった。
次の路地にも、その次の路地にも、決まって『瞳』が待ち構え、こちらを見ている。
あいも変わらず、感情も感じられない瞳を。
それを目にするたびに、男の足は次第に早くなって行き、いつしか息を切らせながら夜の街を駆け抜けていた。
一体何なんだ。
彼は駆け込むように拠点としている街外れの安宿に入ると、自らの部屋へと飛び込んだ。
全力で走ったせいか、息も絶え絶え。
上着を固いベッドに放り投げると、革袋の水を一気に煽る。
水分が体に染み渡るのを感じながら、次第にその息も落ち着いていった。
そうして一息ついてふと、窓辺に視線を移した時――
――窓の外の深淵から『瞳』が男を覗き込んでいた。
男は部屋を飛び出した。
見るな、私を見ないでくれ。
そう懇願するように口にしても、視線が消える事は無かった。
とにかく、どこか遠くへ。
ヤツも諦めるような場所へ。
必死の思いで街を抜け、墓地を通り、郊外の森へとその身を投じていた。
草木を掻き分け、落ち葉に足を取られながら、暗い森を駆け抜ける。
こんな所まで自分を負うような人間は居ないだろう。
そう思った事が、彼の最大の誤算であった。
そう、人間であるならば、と――
気づいたときには、周囲を取り囲むような視線の中に彼は立ち尽くしていた。
取り囲む『瞳』『瞳』『瞳』。
その視線から、もはや逃げる術は無い。
思わず、男の口から笑みが零れる。
それは敗北を悟った笑みであったのだろうか、男はその場に崩れ落ちた。
「私に……何を求めているんだ」
その時、コツリとその手に何かが触れた。
視線を向けるとそれは……ジャグリングに使う棍棒のように見えた。
何故こんな所に?
しかし、男は勝手に理解し、納得する。
「そうか……そんなに、私の芸が見たいのか」
男は棍棒を取り上げると、すくりとその場に立ち上がると、いつもそうするように恭しく一礼をしてみせる。
そうして、拍手すら起こらぬ森の中で、彼は自慢のジャグリングを披露するのだ。
いつもよりもやけに軽い、その棒を手に持ちながら。
その夜から、彼が商店街に現れる事は無かった。
解説
▼目的
消えた大道芸人を探せ
▼概要
宿屋の主人からの依頼です。
数日前の夜中、突然宿を飛び出した宿泊客の大道芸人を探して欲しいとのこと。
荷物はすべて部屋に置きっぱなしのため、無銭宿泊で夜逃げした可能性は低い。
何か事件に巻き込まれたのではないかと、主人は不安に思っております。
部屋に残された持ち物は、大道芸の小道具が詰まった大きな鞄。
最低限の衣類や、その他生活用品が詰まった小さな鞄。
それと、ベッドに投げっぱなしにされた上着だけです。
場所はヴァリオスのとある商店街の一角で、街の裏は郊外の森へと繋がっております。
多くの店がひしめき合っているせいか、路地はかなり狭く、子供が横になってやっと通れる程度です。
大人が通ることはできないでしょう。
情報の少ない中ですが、何とか消息を追ってください。
▼PL情報
大道芸人の居場所はOPから明らかです。
しかし、当然ながら内容はすべてPL情報で、PC様の知る所ではありません。
そのため、皆様にはいかに行動で持ってPC情報に落とし込むかを考えていただく事となります。
情報はすべてOPに記されておりますので、それを上手く踏まえて調査を行う事ができれば、きっと彼の所へたどり着く事ができるでしょう。
なお、情報を落とし込むにあたって『勘』は認めない事とします。
加えまして、言うまでも無く今回の事件は歪虚の仕業です。
その点も重々、ご留意くださいませ。
消えた大道芸人を探せ
▼概要
宿屋の主人からの依頼です。
数日前の夜中、突然宿を飛び出した宿泊客の大道芸人を探して欲しいとのこと。
荷物はすべて部屋に置きっぱなしのため、無銭宿泊で夜逃げした可能性は低い。
何か事件に巻き込まれたのではないかと、主人は不安に思っております。
部屋に残された持ち物は、大道芸の小道具が詰まった大きな鞄。
最低限の衣類や、その他生活用品が詰まった小さな鞄。
それと、ベッドに投げっぱなしにされた上着だけです。
場所はヴァリオスのとある商店街の一角で、街の裏は郊外の森へと繋がっております。
多くの店がひしめき合っているせいか、路地はかなり狭く、子供が横になってやっと通れる程度です。
大人が通ることはできないでしょう。
情報の少ない中ですが、何とか消息を追ってください。
▼PL情報
大道芸人の居場所はOPから明らかです。
しかし、当然ながら内容はすべてPL情報で、PC様の知る所ではありません。
そのため、皆様にはいかに行動で持ってPC情報に落とし込むかを考えていただく事となります。
情報はすべてOPに記されておりますので、それを上手く踏まえて調査を行う事ができれば、きっと彼の所へたどり着く事ができるでしょう。
なお、情報を落とし込むにあたって『勘』は認めない事とします。
加えまして、言うまでも無く今回の事件は歪虚の仕業です。
その点も重々、ご留意くださいませ。
マスターより
おはようございます、のどかです。
今回は少々頭を使って頂くような依頼をご紹介させて頂きたいと思います。
大道芸人の居る場所はOPから明らかですが、どうやってそこへたどり着くのかが皆さんの腕の見せ所です。
彼が『瞳』から救われる事ができるかどうか。
それは皆様の知恵と閃きに掛かっております。
奮ってのご参加をお待ちしております。
今回は少々頭を使って頂くような依頼をご紹介させて頂きたいと思います。
大道芸人の居る場所はOPから明らかですが、どうやってそこへたどり着くのかが皆さんの腕の見せ所です。
彼が『瞳』から救われる事ができるかどうか。
それは皆様の知恵と閃きに掛かっております。
奮ってのご参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/04/07 19:07
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/13 20:41:56 |
|
![]() |
相談卓 マキナ・バベッジ(ka4302) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/03/18 01:06:04 |