• 戦闘

ちぎれ蜘蛛

マスター:湖欄黒江

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/03/20 09:00
リプレイ完成予定
2015/03/29 09:00

オープニング


 帝国軍兵士のエドガルとシュヴァルツヴェルトは、
 コートの襟をかき寄せて早朝の冷え込みに耐えつつ、駐屯地への帰り道を急いだ。
 まだ夜が明けたばかりで暗く、静まり返った街の中を行けば、
 すれ違うのは新聞配達の小僧と、食料市場へ向かう荷車くらい。
 エドガルが、分厚い手袋をした両手をすり合わせて温めながら、
「辻馬車も捉まらないたぁ、これだから田舎は嫌なんだ」
 相棒のシュヴァルツヴェルトは肩をすぼめ、
「無駄遣いせずに済んだ」
 エドガルが何かを言い返そうとするが、くしゃみで遮られた。
 そのまま男ふたり、無言で歩いていく。

 河岸から歩き出して、やがて街の中心部へ。
 建物の高さが目に見えて増し、通りの幅も広がる。だが、馬車は見当たらない。
「今、何時か分かるか?」
 エドガルが尋ねると、相棒は東の空を見上げて、
「出がけに時計を見たときは、4時だった」
「間に合いそうか?」
 1時間後の起床点呼に――間に合わなければ懲戒だ。
 最前線ほど軍紀が徹底していないとはいえ、上官の虫の居所次第ではひどい目に遭いかねない。
 真剣な顔で見つめるも、シュヴァルツヴェルトは答えない。
 ふんと白い息を吐いて、エドガルはせかせかと足を動かし始めた。相棒も歩調を合わせつつ、
「夜の内にさっさと出れば良かったんだ」
「女どもの手前、そんな貧乏臭い真似ができるかよ。大体どうして起こさない」
「起こそうとしたが、お前が起きなかったんだ。俺ひとりで先に帰っても良かったくらいだぜ?
 居残ってやった友情を感謝こそすれ、俺のせいにするのはお門違いだ」
「もし間に合わなかったら、営倉入りしてる間にツキが逃げちまう……」
 数か月振りに隊内の博打で大勝ちして、その上がりを一晩で使い切ってしまったエドガル。
 襟元に残る化粧の香りも、今は虚し。
 せめて起床ラッパには追いついて、給料――
 次の勝負の資金が貯まるまで、兵隊仕事をつつがなく続けたいところだった。


 とある通りを曲がると、面前にいきなり巨大な聖堂が現れた。
 工事中らしく、ぐるりを鳥避けらしき黒い網のかかった足場に囲われて、
 その足場も届かない高い尖塔が、白みだした空高く屹立する。
 足を止めないままに見上げて、
「でけぇな」
「ここらじゃサイズも歴史も1番の大聖堂だ。
 革命からこっち、中断してた外壁の修理が、最近ようやく再開されたとか」
「ははぁ、シュヴァルツヴェルトさんは博識でらっしゃる」
「昨日、店の子から聞いた。近頃は左官屋の客が大勢って……あれ」
 聖堂の脇を横切る途中、シュヴァルツヴェルトが立ち止って、頭上の足場を指差した。
 何やってんだとエドガルが振り返る、その鼻先をかすめて、路上にどす黒い液体がぶちまけられる。
 ぎゃっと飛び退くエドガル。液体は上から降ってきた。正体を確かめようと顔を上げれば、
「――何だありゃ!?」

 20メートルほど頭上、聖堂を囲う足場に1匹の巨大なクモが張りついている。
 大型犬ほどもあるそのクモは、小さな頭部から粘つく黒い液体を滴らせ、
 複数並んだ眼でふたりの兵士を睥睨する。
 8本の脚とくびれた身体は甲殻に覆われ、金属様の灰色の光沢を放つ。
 液体をすんででかわしたふたりは、通りを駆け抜けてその場を逃れた。
 聖堂の裏手まで来るとエドガルが、
「雑魔だ。こんな街中に何で――」
 聖堂の足場のあちらこちらから、クモがのそのそと這い出てきた。
 ざっと数えて12匹。今では、遠目には足場にかかった網と見えたものも、
 実際は黒い粘液の糸で張られたクモの『巣』であったことが分かる。
「なぁ、シュヴァルツヴェルトさんよ。俺たち昆虫に祟られるようなことしたかな」
「残念。カマキリと違ってクモは昆虫じゃない」


 クモたちは聖堂の足場や三角の屋根にわだかまったまま、ふたりを追跡しようとはしない。
 しばらく観察していると、嵌め殺しの大窓の内側から、
 僧服の男が必死の形相でガラスを叩いてこちらを呼ばわり始めた。
 クモたちがその窓へ殺到すると、僧侶が慌てて姿を消す。
 聖堂の内部に人が取り残されている、ということか。
 1匹のクモが、鉤爪のついた前脚でガラスを突いて割ったが、
 窓に縦に走った鉄製の格子で阻まれて、屋内へ侵入することができない。

 それを見たエドガルが、
「あの調子なら、まだ時間はありそうだな……、
 ひとまずハンターオフィスへ連絡だ。あれだけの雑魔、ウチの隊じゃ手に余る」
「起床点呼は良いのかい?」
 エドガルに得も言われぬ表情で見つめられると、シュヴァルツヴェルトは肩をすぼめた。
「冗談だ。武器はあるか?」
「生憎と」
「じゃ、この場は俺が見張ってよう。ひとっ走り頼むよ」
 拳銃を手にした相棒を置き去りに、エドガルが走り出す。
 聖堂内にも伝話はある筈で、ことによると既に通報済みかも知れないが、
 僧侶が窓を叩いて助けを呼ぶ辺り、何らかの事情で不通になっている場合もあり得た。
 まずは魔導伝話のありそうな、ギルドか何かの建物を探して――

 エドガルは考える。第一通報者ということで、朝帰りの件はチャラにしちゃもらえないか、と。 

解説

 今回の依頼の目的は、聖堂の改修工事現場に現れたクモ型雑魔を討伐し、
 屋内に取り残された僧侶たちを救出することです。

 雑魔は体長約2メートルの巨大なクモ型。
 全部で12体が、外壁工事用の足場が組まれた聖堂全周に、巣を張った上で取りついています。
 現在は足場に8体、屋根上に4体が屯しており、
 壁面や屋根に沿って這いながら、建物へ近づく者に口部から粘着質の糸を吐きかけます。
 糸は放出後、時間経過と共にその粘着力が弱まるようです。
 その他、詳しい能力や目的は不明ですが、何らかの理由で聖堂からは離れられないものと考えられます。

 聖堂は尖塔を含めて高さ約80メートル、
 木製の足場は地上から屋根の裾まで、約50メートルほどの高さに組まれています。
 雑魔へ接近するには足場をよじ登る他、屋内を経由することで、
 屋根の小窓、または尖塔の頂上に出ることができます。
 聖堂への出入りは工事期間中、金属製の正面大扉のみが使われており、
 扉を閉ざした状態であれば、雑魔が屋内へ侵入することはありません。
 雑魔討伐に当たっては、屋内に残された人々に危険が及ばないよう配慮すると共に、
 街の重要な施設である聖堂の建物をできるだけ損傷しないよう、注意して下さい。

マスターより

 高い建物の屋根の上、あるいは工事用の足場の上で戦う戦闘シナリオです。
 入り組んだ足場にはクモの巣までかかっていて、よじ登るにも一苦労でしょう。
 しかし現場は歴史的・宗教的価値のある大聖堂。射撃で傷をつけてしまうのも怖いところです。

 一体、どうやって戦うべきか? ハンターの知恵と勇気が試されます。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/03/28 22:44

参加者一覧

  • ノブリスオブリージュ
    リーリア・バックフィード(ka0873
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 電脳シューター
    榎本 かなえ(ka3567
    人間(蒼)|13才|女性|機導師
  • ラ・ピュセルの微笑み
    シャルロット=モンストルサクレ(ka3798
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人
  • わんぱく娘
    ロウザ・ヴィレッサーナ(ka3920
    ドワーフ|10才|女性|霊闘士
  • 開拓者
    ティルクゥ(ka4314
    エルフ|10才|男性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 虫駆除活動
シャルロット=モンストルサクレ(ka3798
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/03/20 00:51:38
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/16 05:50:22