ゲスト
(ka0000)
幻に消ゆ、炎の錬成
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/04/01 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/04/10 07:30
オープニング
ルビーを高熱で溶解し、再結晶を図ることによって大きな結晶を得る。
レイオニールの錬成は目的を果たしたのであったが、莫大な財を夢見て投資してきたパトロンにとって不満以外の何物でもない結果であったようだ。
「100個の原石を使ってできたのが、これか。はっきり言って失望したよ。君の研究には」
小石程の綺麗なルビーの球体は、錬金術師レイオニールに期待をかけて資金援助をしてきた男の手で投げ捨てられた。
「お前は算数もできないのか。これの原価はいくらだ? こんなちっぽけな作り物で償却できると思っているのか?」
パトロンはそう言い放ち、不満げに首を振った。
「全く……君に預けた資金はムダ金だった。悪いがこれ以上の資金援助はしないし、提供した分も可能な限り返してもらうことになる。君の研究所にある訳の分からない道具は売り払ってでも、だ。……覚悟しとけよ?」
レイオニールには弁明の余地さえ与えてもらえなかった。
●
「くそ、あの分からず屋め。この偉大な成果をなんでわかろうとしない……」
夜の公園でレイオニールは悲嘆に暮れていた。パトロンから得た莫大な資金などどうやっても償還できるはずがない。一生強制労働をさせられて返せるかどうか。そこにはこの成果を高める研究に費やせる時間も体力もないだろう。
要するに彼の人生にもう明るい未来はない。彼の目にはこの夜よりも深い、絶望の闇が覆いかぶさっていた。
「諦めるの?」
静かな、憂いを含んだ声が届いた。
声のする方向を振り向けば、そこにいたのは月明かりに照らされ、プラチナブロンドの髪が浮いて見えた。
「ブリュンヒルデ……」
彼の夢を、研究を支えてくれた少女だった。
「折角君が助けてくれたのに。あの一番の成果は……パトロンにはどうしようもないクズだって言われたよ。明日にも借金取りが来るだろう……」
食事の面倒もしてくれた。パンは身に染み入る温かさだった。
あちこちから文献を集める手伝いもしてくれた。気づかないことをそこから教えてくれた。
話もずっと聞いてくれた。一人の寂しさを、周囲の理解のなさによる孤独を癒してくれた。
できあがった合成ルビーを見て、彼女は諸手を挙げて喜んでくれた。
最後の錬成までこぎつけて理解あるハンターと共に偉大な結果を踏み出せたのも彼女のおかげだ。
「もうどうしようもない……ブリュンヒルデ……すまない」
「諦めるの? 明日の朝に借金取りが来るとしても。まだ夜はこんなに長いのよ? 希望は最後の一秒まで捨ててはなりません」
ブリュンヒルデは俯くレイオニールに近づき、悲しみに震える彼の両手をそっと握った。水晶のような透き通った青い瞳は言葉以上にレイオニールに語り掛けていた。
ああ、そうだ。すべての終わりは絶望した時だ。
絶望しない限り、道は……あるはずだ。
「そうだ……。俺と一緒に錬成したハンターが悩んでいたんだ。『俺にも、叶えるべき夢がある。障害が多いんだが、それでも追い続けるべきか』って。
俺は『このルビーの結晶を作るのに十数年かかった。夢は叶うものっていう証拠が目の前にあるのに、お前はそれを問い直すのか?」って言った。そうだ。
ここまでやれたんだ。俺は、俺は諦めない!」
ブリュンヒルデの目は言葉はいつだって勇気を与えてくれる。希望を与えてくれる。
リアルブルーの神話に出てくる彼女と同名の戦乙女も英雄に力を貸したという。本当に彼女は天からの使者なのかもしれない。
だが、今はそれがどうしてなのか、考えることではない。
「レイオニールさん。私も……手伝います。最後の最後まで!」
「ありがとう……ブリュンヒルデ!」
レイオニールの目に力が蘇った。
●
数カラットの宝石の原石が100個程度で、飴玉程度のルビーになった。錬成時の消失分、人工物だというマイナスを考えれば確かにこれでは得にならない。
だが、ありったけの原石をまとめて錬成すれば?
巨大なルビーの結晶。一抱えもあるようなものを作れば? 天然モノでは絶対にできないものを作れば? 価値は何倍にも跳ね上がる。好事家は世の中に一つしかないと分かれば天井知らずの値をつけるだろう。魔術具だって、機導士の部品としても大きいものは非常に重宝がられる。利用余地が大きいからだ。
レイオニールは錬成魔法陣にありったけのルビーの原石を流し込んだ。
「レイオニール! 出てこい。この扉を開けろ!!」
外から借金取りの声が響き、扉を叩き潰さんとしているようだった。
それを内側で見ているレイオニールは不敵に笑った。
「大丈夫……ここは絶対に開けさせません」
ガラクタやもう不要になった机などを入り口に積み上げてバリケードにし、それを抑え込むようにして少女ブリュンヒルデは微笑んだ。
「ありがとう。ブリュンヒルデ」
弟子になりたい。そう言った少年の顔がふと浮かんだ。
こんな用法はどうだろうと調べてくれた顔が。
もっと効率の良い錬成法を一緒に考えた仲間。
前回の錬成を共にした顔ぶれは誰一人としていない。
ここは一人でやらなくてはならないのだ。
「錬成を開始する!」
効率の良いシステムが構築されたおかげで、蓄充したマテリアルはまだ十分な予備がある。
できる。
レイオニールは機械を操作し始めた。
マテリアルが魔法陣に流れ始める。今回の錬成は大量のルビーを溶かさなくてはならない。それに必要なマテリアルは膨大だ。前回は絞り気味だったマテリアルの流量を全開にした。
そして小型の竜巻のような風を巻き起こし、原石をまとめて巻き上げて熱を加え始める。
め……き
マテリアルによって作られる風と炎の轟音に混じって鈍い音が聞こえた。
「レイオニール! くそっ、あけねぇか! この詐欺師め!!」
借金取りが壁を蹴ったか?
レイオニールはマテリアルのコントロールに集中した。
が。
身体が震える。タンクから流れるマテリアルが乱れる。扱う量が膨大すぎるのだ。ギリリ、歯を食いしばってマテリアルの圧力に耐える。
め、めき、ゃ……べきんっ!
爆炎と暴風の中でルビーが踊る。
光で視界が焼けつく。それでもレイオニールはただ真っ直ぐに光の中にあるルビーから目を離さなかった。
その視界の果てでは流れ出すマテリアルの奔流に耐えきれずコードが焼き切れて踊っていたが、灼けた彼の眼では見えなかったし、どうすることもできなかった。
レイオニールは光り輝く世界の中で叫んだ。
「炎の出力、最大!」
次の瞬間。渦巻くマテリアルは大爆発を引き起こした。
レイオニールの錬成は目的を果たしたのであったが、莫大な財を夢見て投資してきたパトロンにとって不満以外の何物でもない結果であったようだ。
「100個の原石を使ってできたのが、これか。はっきり言って失望したよ。君の研究には」
小石程の綺麗なルビーの球体は、錬金術師レイオニールに期待をかけて資金援助をしてきた男の手で投げ捨てられた。
「お前は算数もできないのか。これの原価はいくらだ? こんなちっぽけな作り物で償却できると思っているのか?」
パトロンはそう言い放ち、不満げに首を振った。
「全く……君に預けた資金はムダ金だった。悪いがこれ以上の資金援助はしないし、提供した分も可能な限り返してもらうことになる。君の研究所にある訳の分からない道具は売り払ってでも、だ。……覚悟しとけよ?」
レイオニールには弁明の余地さえ与えてもらえなかった。
●
「くそ、あの分からず屋め。この偉大な成果をなんでわかろうとしない……」
夜の公園でレイオニールは悲嘆に暮れていた。パトロンから得た莫大な資金などどうやっても償還できるはずがない。一生強制労働をさせられて返せるかどうか。そこにはこの成果を高める研究に費やせる時間も体力もないだろう。
要するに彼の人生にもう明るい未来はない。彼の目にはこの夜よりも深い、絶望の闇が覆いかぶさっていた。
「諦めるの?」
静かな、憂いを含んだ声が届いた。
声のする方向を振り向けば、そこにいたのは月明かりに照らされ、プラチナブロンドの髪が浮いて見えた。
「ブリュンヒルデ……」
彼の夢を、研究を支えてくれた少女だった。
「折角君が助けてくれたのに。あの一番の成果は……パトロンにはどうしようもないクズだって言われたよ。明日にも借金取りが来るだろう……」
食事の面倒もしてくれた。パンは身に染み入る温かさだった。
あちこちから文献を集める手伝いもしてくれた。気づかないことをそこから教えてくれた。
話もずっと聞いてくれた。一人の寂しさを、周囲の理解のなさによる孤独を癒してくれた。
できあがった合成ルビーを見て、彼女は諸手を挙げて喜んでくれた。
最後の錬成までこぎつけて理解あるハンターと共に偉大な結果を踏み出せたのも彼女のおかげだ。
「もうどうしようもない……ブリュンヒルデ……すまない」
「諦めるの? 明日の朝に借金取りが来るとしても。まだ夜はこんなに長いのよ? 希望は最後の一秒まで捨ててはなりません」
ブリュンヒルデは俯くレイオニールに近づき、悲しみに震える彼の両手をそっと握った。水晶のような透き通った青い瞳は言葉以上にレイオニールに語り掛けていた。
ああ、そうだ。すべての終わりは絶望した時だ。
絶望しない限り、道は……あるはずだ。
「そうだ……。俺と一緒に錬成したハンターが悩んでいたんだ。『俺にも、叶えるべき夢がある。障害が多いんだが、それでも追い続けるべきか』って。
俺は『このルビーの結晶を作るのに十数年かかった。夢は叶うものっていう証拠が目の前にあるのに、お前はそれを問い直すのか?」って言った。そうだ。
ここまでやれたんだ。俺は、俺は諦めない!」
ブリュンヒルデの目は言葉はいつだって勇気を与えてくれる。希望を与えてくれる。
リアルブルーの神話に出てくる彼女と同名の戦乙女も英雄に力を貸したという。本当に彼女は天からの使者なのかもしれない。
だが、今はそれがどうしてなのか、考えることではない。
「レイオニールさん。私も……手伝います。最後の最後まで!」
「ありがとう……ブリュンヒルデ!」
レイオニールの目に力が蘇った。
●
数カラットの宝石の原石が100個程度で、飴玉程度のルビーになった。錬成時の消失分、人工物だというマイナスを考えれば確かにこれでは得にならない。
だが、ありったけの原石をまとめて錬成すれば?
巨大なルビーの結晶。一抱えもあるようなものを作れば? 天然モノでは絶対にできないものを作れば? 価値は何倍にも跳ね上がる。好事家は世の中に一つしかないと分かれば天井知らずの値をつけるだろう。魔術具だって、機導士の部品としても大きいものは非常に重宝がられる。利用余地が大きいからだ。
レイオニールは錬成魔法陣にありったけのルビーの原石を流し込んだ。
「レイオニール! 出てこい。この扉を開けろ!!」
外から借金取りの声が響き、扉を叩き潰さんとしているようだった。
それを内側で見ているレイオニールは不敵に笑った。
「大丈夫……ここは絶対に開けさせません」
ガラクタやもう不要になった机などを入り口に積み上げてバリケードにし、それを抑え込むようにして少女ブリュンヒルデは微笑んだ。
「ありがとう。ブリュンヒルデ」
弟子になりたい。そう言った少年の顔がふと浮かんだ。
こんな用法はどうだろうと調べてくれた顔が。
もっと効率の良い錬成法を一緒に考えた仲間。
前回の錬成を共にした顔ぶれは誰一人としていない。
ここは一人でやらなくてはならないのだ。
「錬成を開始する!」
効率の良いシステムが構築されたおかげで、蓄充したマテリアルはまだ十分な予備がある。
できる。
レイオニールは機械を操作し始めた。
マテリアルが魔法陣に流れ始める。今回の錬成は大量のルビーを溶かさなくてはならない。それに必要なマテリアルは膨大だ。前回は絞り気味だったマテリアルの流量を全開にした。
そして小型の竜巻のような風を巻き起こし、原石をまとめて巻き上げて熱を加え始める。
め……き
マテリアルによって作られる風と炎の轟音に混じって鈍い音が聞こえた。
「レイオニール! くそっ、あけねぇか! この詐欺師め!!」
借金取りが壁を蹴ったか?
レイオニールはマテリアルのコントロールに集中した。
が。
身体が震える。タンクから流れるマテリアルが乱れる。扱う量が膨大すぎるのだ。ギリリ、歯を食いしばってマテリアルの圧力に耐える。
め、めき、ゃ……べきんっ!
爆炎と暴風の中でルビーが踊る。
光で視界が焼けつく。それでもレイオニールはただ真っ直ぐに光の中にあるルビーから目を離さなかった。
その視界の果てでは流れ出すマテリアルの奔流に耐えきれずコードが焼き切れて踊っていたが、灼けた彼の眼では見えなかったし、どうすることもできなかった。
レイオニールは光り輝く世界の中で叫んだ。
「炎の出力、最大!」
次の瞬間。渦巻くマテリアルは大爆発を引き起こした。
解説
概況
錬金術レイオニールが錬成に失敗しマテリアル爆発を起こしました。現在小規模な爆発と炎上が続いています。
しかしまだ、マテリアルタンクがいくつか残されており、これらがすべて爆発した場合、周囲にとても大きな被害を与えると予測されます。
目的
災害を収める。
もしくは二次災害が起きないようマテリアルタンクの移動。
外の状況
帝国にある小さな街です。研究所は民家のど真ん中にあります。現在は研究所の窓と天井が、周囲には破砕された天井が落ちてきた程度で被害は軽微ですが、マテリアルタンク全てが引火した場合、周囲2,3件はまとめて吹き飛ぶことになります。どの建物も石造りです。
中の状況
入り口があり、小さなエントランスを挟んで、錬成施設があります。いずれの部屋も10m四方程度の部屋とします。
エントランスから2階にあがる階段があり、レイオニールの私室がありましたが崩落しており行き来することはできません。
借金取り対策の為にガラクタを積み上げていたこともあり、非常に足場が悪いです。
マテリアルタンク
4つありました。それぞれ鉄の大樽のような形をしています。重さは約200kg
場所は錬成魔法陣の上(1階の天井を二重構造にして設置していました)、魔法陣の真下、壁に2箇所です。
うち、真上のものは引火して吹き飛びました。残る3つはまだそのまま残っています。
被害者
借金取り 数名いますが、衝撃で吹き飛んだのと吹き飛んだ天井の一部にあたって怪我した程度です。探して話すこともできます。
レイオニール 消し飛んでます。探したら身体の一部くらいは見つかるかもしれません。
ブリュンヒルデ 行方不明です。探しても見つかりません。
注意点
貯められたマテリアルの扱いは便宜上気化したガソリンと同じ扱いをします。ただしこれは他のシナリオでも同様ではないことをご了承ください。
錬金術レイオニールが錬成に失敗しマテリアル爆発を起こしました。現在小規模な爆発と炎上が続いています。
しかしまだ、マテリアルタンクがいくつか残されており、これらがすべて爆発した場合、周囲にとても大きな被害を与えると予測されます。
目的
災害を収める。
もしくは二次災害が起きないようマテリアルタンクの移動。
外の状況
帝国にある小さな街です。研究所は民家のど真ん中にあります。現在は研究所の窓と天井が、周囲には破砕された天井が落ちてきた程度で被害は軽微ですが、マテリアルタンク全てが引火した場合、周囲2,3件はまとめて吹き飛ぶことになります。どの建物も石造りです。
中の状況
入り口があり、小さなエントランスを挟んで、錬成施設があります。いずれの部屋も10m四方程度の部屋とします。
エントランスから2階にあがる階段があり、レイオニールの私室がありましたが崩落しており行き来することはできません。
借金取り対策の為にガラクタを積み上げていたこともあり、非常に足場が悪いです。
マテリアルタンク
4つありました。それぞれ鉄の大樽のような形をしています。重さは約200kg
場所は錬成魔法陣の上(1階の天井を二重構造にして設置していました)、魔法陣の真下、壁に2箇所です。
うち、真上のものは引火して吹き飛びました。残る3つはまだそのまま残っています。
被害者
借金取り 数名いますが、衝撃で吹き飛んだのと吹き飛んだ天井の一部にあたって怪我した程度です。探して話すこともできます。
レイオニール 消し飛んでます。探したら身体の一部くらいは見つかるかもしれません。
ブリュンヒルデ 行方不明です。探しても見つかりません。
注意点
貯められたマテリアルの扱いは便宜上気化したガソリンと同じ扱いをします。ただしこれは他のシナリオでも同様ではないことをご了承ください。
マスターより
錬成に失敗はつきものですね。そんなわけでアルケミストハザードです。
コンビナート火災などの災害現場をイメージしてください。今回決死の鎮火に挑むのは消防隊員ではなく皆様です。
レイオニールが生きていればいいんですけどね。残念ながら。決死の救出劇をする対象は彼ではなく、爆発するかもしれないタンクなんです……。
コンビナート火災などの災害現場をイメージしてください。今回決死の鎮火に挑むのは消防隊員ではなく皆様です。
レイオニールが生きていればいいんですけどね。残念ながら。決死の救出劇をする対象は彼ではなく、爆発するかもしれないタンクなんです……。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/04/10 01:08
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【相談卓】 鬼百合(ka3667) エルフ|12才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/03/30 23:53:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/29 20:34:26 |