ゲスト
(ka0000)
あの桜の木の下には
マスター:えーてる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/03/28 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/04/06 07:30
オープニング
●
「『桜の樹の下には屍体が埋まっている』……だっけか?」
とあるハンターの女性は、ある調査依頼を受けて、同盟の辺境にやってきていた。
ある森に入った人が、次々に消えているという。甘い香りと、小さな花びらが吹き込む、初春を迎えようとする頃の村である。
「花見にはまだちょっと早いと思うんだけどさ」
村の裏山を迂回すると、小さな丘がある。花びらの元はそこにあった。
黒髪をかき上げて、彼女はそれを見上げた。
「なるほどこれは、確かに魔性ね」
満開の桜であった。
いや、彼女は学者ではない。ないから、それが桜だと断定する事はできないし、種別を判定することもできない。今でこそハンター稼業になど身をやつしているが、リアルブルーにいた頃はただのOLでしかなかった。桜の下で酒を嗜むことはあったし、桜を遠目に「ああ綺麗だな」と思ったことはあるが、詳しく検分したことはない。
ただその、ほのかな桃色で出来たグラデーションの、人の心を揺さぶるためにあるような微細な色づきの変化は、桜のように見えた。
花びらを一枚拾い上げる限りでは、地球のそれと何か変わりがあるようには見えない。
別段おかしいことではない。向こうとこちらで植生が似通っている事例は幾つもある。これもまたそういったものの一つだ。
そして彼女の知るどんな桜よりも魔性を帯びていた。
泰然と咲き誇る花びらの散りゆく一瞬を見ていたくなる。見逃したくなくなる。
重量を感じさせない天使の羽の如き淡桃色の花弁を纏った、黒くごわついた幹の力強さに吸い込まれそうになる。
高く、雄大で、しかし虚ろで幽的なその佇まい。青空を押し返さねばならぬ、そうしなければ滅んでしまうと、鬼気迫るものを感じるほどに遠く広がる、巨大な花の天蓋。
魔性だ。
これはまだ春も迎えぬ頃に咲いていていいものではない。
まして、辺り一面をその花弁で塗り替えてしまうような桜など、彼女は寡聞にして知らなかった。
彼女の立つ世界は、桜化粧とでも言うべき一面の桃白に染まってしまっている。木々も、大地も。空ですら、舞い散る花弁と広がる枝葉が覆い隠そうと手を広げている。
踏み込んだ足が埋まっていくのを感じる。振り返れば、桜の花弁の上に足跡が出来ていた。
桜の雪である。
ここだけが、まだ冬の中にあって、既に春の中にあった。
季節というものはこの桜の前には意味を成さないのだろう。枯れることなく、ただ咲き続ける。散った先から咲いていく。散る為に咲き、咲くために散る、それは摂理から遠くはみ出した、執念すら感じる奇怪なサイクルであった。
この場に緑などはなく、青い空すら少数派で、桃と白で出来たグラデーションが、僅かな黒の隙間に詰まっているようだった。
思考を漂白するかのようだった。
見る者の心すらも奪う桜だった。
ここが本当に現実かどうか、過去の彼女ならば疑っていただろう。
今まさに尋常ならざる事態の可能性を知っている彼女であるから、ふと我に返ることが出来た。
その身は半ば花弁の雪に埋もれるように地に横たわり、どうやら桜の幹を目指していたらしい。
(ああ、しくじったな)
ぼんやり考える。桜に埋まった足はもう動かなくなっていた。
(そういう歪虚なんだ、こいつ――)
常時人の精神を汚染し、自分に惹きつける歪虚。そして人を食う怪物。
桜の花びらの下には、倒れ伏し動かない人々がいた。
ここにも、そこにも、あそこにも。
彼女はそれをようやく理解した。
桜の花びらは絨毯であり、祝福であり、棺であった。それは世界への侵食に他ならなかった。
大丈夫――対処しようはある。自分がこれを伝えれば。
彼女はまだ動く右手でペンを取り出し、手袋に走り書きを書きつけると、なけなしの力でフクロウを呼び寄せ、それを押し付けた。
それが限界だった。
ああ、桜の木の下には屍体が埋まっている。
(私がそれに加わるのは、いつかしらね――)
そうして彼女の世界は桜になった。
「『桜の樹の下には屍体が埋まっている』……だっけか?」
とあるハンターの女性は、ある調査依頼を受けて、同盟の辺境にやってきていた。
ある森に入った人が、次々に消えているという。甘い香りと、小さな花びらが吹き込む、初春を迎えようとする頃の村である。
「花見にはまだちょっと早いと思うんだけどさ」
村の裏山を迂回すると、小さな丘がある。花びらの元はそこにあった。
黒髪をかき上げて、彼女はそれを見上げた。
「なるほどこれは、確かに魔性ね」
満開の桜であった。
いや、彼女は学者ではない。ないから、それが桜だと断定する事はできないし、種別を判定することもできない。今でこそハンター稼業になど身をやつしているが、リアルブルーにいた頃はただのOLでしかなかった。桜の下で酒を嗜むことはあったし、桜を遠目に「ああ綺麗だな」と思ったことはあるが、詳しく検分したことはない。
ただその、ほのかな桃色で出来たグラデーションの、人の心を揺さぶるためにあるような微細な色づきの変化は、桜のように見えた。
花びらを一枚拾い上げる限りでは、地球のそれと何か変わりがあるようには見えない。
別段おかしいことではない。向こうとこちらで植生が似通っている事例は幾つもある。これもまたそういったものの一つだ。
そして彼女の知るどんな桜よりも魔性を帯びていた。
泰然と咲き誇る花びらの散りゆく一瞬を見ていたくなる。見逃したくなくなる。
重量を感じさせない天使の羽の如き淡桃色の花弁を纏った、黒くごわついた幹の力強さに吸い込まれそうになる。
高く、雄大で、しかし虚ろで幽的なその佇まい。青空を押し返さねばならぬ、そうしなければ滅んでしまうと、鬼気迫るものを感じるほどに遠く広がる、巨大な花の天蓋。
魔性だ。
これはまだ春も迎えぬ頃に咲いていていいものではない。
まして、辺り一面をその花弁で塗り替えてしまうような桜など、彼女は寡聞にして知らなかった。
彼女の立つ世界は、桜化粧とでも言うべき一面の桃白に染まってしまっている。木々も、大地も。空ですら、舞い散る花弁と広がる枝葉が覆い隠そうと手を広げている。
踏み込んだ足が埋まっていくのを感じる。振り返れば、桜の花弁の上に足跡が出来ていた。
桜の雪である。
ここだけが、まだ冬の中にあって、既に春の中にあった。
季節というものはこの桜の前には意味を成さないのだろう。枯れることなく、ただ咲き続ける。散った先から咲いていく。散る為に咲き、咲くために散る、それは摂理から遠くはみ出した、執念すら感じる奇怪なサイクルであった。
この場に緑などはなく、青い空すら少数派で、桃と白で出来たグラデーションが、僅かな黒の隙間に詰まっているようだった。
思考を漂白するかのようだった。
見る者の心すらも奪う桜だった。
ここが本当に現実かどうか、過去の彼女ならば疑っていただろう。
今まさに尋常ならざる事態の可能性を知っている彼女であるから、ふと我に返ることが出来た。
その身は半ば花弁の雪に埋もれるように地に横たわり、どうやら桜の幹を目指していたらしい。
(ああ、しくじったな)
ぼんやり考える。桜に埋まった足はもう動かなくなっていた。
(そういう歪虚なんだ、こいつ――)
常時人の精神を汚染し、自分に惹きつける歪虚。そして人を食う怪物。
桜の花びらの下には、倒れ伏し動かない人々がいた。
ここにも、そこにも、あそこにも。
彼女はそれをようやく理解した。
桜の花びらは絨毯であり、祝福であり、棺であった。それは世界への侵食に他ならなかった。
大丈夫――対処しようはある。自分がこれを伝えれば。
彼女はまだ動く右手でペンを取り出し、手袋に走り書きを書きつけると、なけなしの力でフクロウを呼び寄せ、それを押し付けた。
それが限界だった。
ああ、桜の木の下には屍体が埋まっている。
(私がそれに加わるのは、いつかしらね――)
そうして彼女の世界は桜になった。
解説
●目標
桜型歪虚の討伐
生存者の救助
●地形
小高く何もない丘の中央に桜歪虚が存在し、その周囲を森が取り囲みます。
南には山があり、その丁度裏に村があります。
降り積もった花弁は歩き辛く、注意力散漫な状態で踏み入った場合転倒の可能性があります。
●敵情報
桜の木を思わせる姿の歪虚です。
非常に大きく、巨人すらその傘に容易に収まるほどです。
花は散っては咲きを繰り返しており、花弁は雪のように地に積もり、周囲を薄桃色に染めています。
一定以上の桜の花弁を目にすることで行動操作の状態異常判定が発生し、「より近くで花弁を見る為」に行動するようになります。
詳しい発生条件は不明で、強度は目にした花弁の量で変化します。
身体部位が花弁に包まれた場合、筋弛緩と共に様々な状態異常が発生します。
腕部・胴ならば行動阻害、脚部ならば移動不能、頭部の場合行動不能です。足部だけであれば移動しづらい程度です。
全身を桜に包まれた場合、継続ダメージの状態異常を受けます。このダメージで受けた点数分を歪虚は回復することが出来ます。
効果は併発し、強度は部位を包む桜の量に比例します。
全ての状態異常は条件を満たす限り毎ターン判定を行います。
花びらは遠くに散ったそれ一枚をとってみても非常に美しく、見た人の心を惹きつけるでしょう。
状態異常ではないので、そう感じる以上の効果はありません。
汚染力は高くないですが、犠牲者の出現に合わせて成長しており、早急な討伐が必要です。
特異な能力を持つ反面戦闘力には乏しいでしょう。植物歪虚の傾向上耐久性に優れると推察されます。
しかし詳細不明です。予想外の反応があるかもしれません。万全を期してください。
●生存者
状態不明です。人数は二十に届かない程度と思われます。
全滅しているかもしれませんし、数名生きているかもしれません。
覚醒者であれば二週間は生存しているかと思われます。
桜型歪虚の討伐
生存者の救助
●地形
小高く何もない丘の中央に桜歪虚が存在し、その周囲を森が取り囲みます。
南には山があり、その丁度裏に村があります。
降り積もった花弁は歩き辛く、注意力散漫な状態で踏み入った場合転倒の可能性があります。
●敵情報
桜の木を思わせる姿の歪虚です。
非常に大きく、巨人すらその傘に容易に収まるほどです。
花は散っては咲きを繰り返しており、花弁は雪のように地に積もり、周囲を薄桃色に染めています。
一定以上の桜の花弁を目にすることで行動操作の状態異常判定が発生し、「より近くで花弁を見る為」に行動するようになります。
詳しい発生条件は不明で、強度は目にした花弁の量で変化します。
身体部位が花弁に包まれた場合、筋弛緩と共に様々な状態異常が発生します。
腕部・胴ならば行動阻害、脚部ならば移動不能、頭部の場合行動不能です。足部だけであれば移動しづらい程度です。
全身を桜に包まれた場合、継続ダメージの状態異常を受けます。このダメージで受けた点数分を歪虚は回復することが出来ます。
効果は併発し、強度は部位を包む桜の量に比例します。
全ての状態異常は条件を満たす限り毎ターン判定を行います。
花びらは遠くに散ったそれ一枚をとってみても非常に美しく、見た人の心を惹きつけるでしょう。
状態異常ではないので、そう感じる以上の効果はありません。
汚染力は高くないですが、犠牲者の出現に合わせて成長しており、早急な討伐が必要です。
特異な能力を持つ反面戦闘力には乏しいでしょう。植物歪虚の傾向上耐久性に優れると推察されます。
しかし詳細不明です。予想外の反応があるかもしれません。万全を期してください。
●生存者
状態不明です。人数は二十に届かない程度と思われます。
全滅しているかもしれませんし、数名生きているかもしれません。
覚醒者であれば二週間は生存しているかと思われます。
マスターより
えーてるです。厄介な依頼ですね。花見にはまだ早いのでとっとと伐採してしまいましょう。
字数的に省きましたが解説を語っているのはイルムさん(kz0067)です。質疑応答用にお使いください。
皆様の知力と武力の限りを尽くしたプレイングをお待ちしています。
字数的に省きましたが解説を語っているのはイルムさん(kz0067)です。質疑応答用にお使いください。
皆様の知力と武力の限りを尽くしたプレイングをお待ちしています。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/04/06 14:27
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/23 22:55:32 |
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サクラを折りに 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/03/28 00:51:20 |