ゲスト
(ka0000)
無花の望樹
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/04/12 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/04/21 09:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
街道を見下ろす丘の上に立つ老桜。
高さもさることながら、枝ぶりがよく丘の天辺を覆うような広がり、幹に至っては自分の両手を5回使っても回り切れない太さであった。
春になったらきっと一面を桜吹雪にしてくれるのではないかとミネアは期待しつつ街道を往来していたものだが。
その樹は今になってもまだ葉も花も、それどころか蕾すらつけていなかった。
遠くに見える森の木々がもう新緑に覆われ、ぽつぽつと優しい色合いの花をつけているのにも関わらず。
「枯れてるのかな……」
今日は仕事を休み、のんびり花見でもして心安らかに過ごそうと決めていた商人のミネアだったが、老桜を見上げて胸を切るような気持ちにさせられた。一目見ただけの間柄なのに、涙が毀れそうになるのはどうしてなのか。
ミネアはただ一人、桜の根本に腰をおろし、その背を預けることしかできなかった。
「何とも立派な樹だ。加護に感謝する」
不意に背中から声がした。
振り返ってみてみると、一人の男が先頭に立ち、桜に対して直立すると、胸に手を当て深々と一礼していた。
その後ろでは同じように30人ほどの老若男女が同様に敬礼をしている姿が見える。彼らは一様にこの帝国では見られない獣皮と独特の紋様で彩られた衣装を纏っていたことから、辺境から来た人間であることはすぐ理解した。
ミネアは彼らと背にしていた大木を交互に見やった後、祈りの終えるのを見計らって、族長らしき先頭に立つ男に声をかけた。
「あの……この樹、枯れてると思うんですけど、精霊って宿っていらっしゃるんですか?」
「もちろんだ。死んでいるようみえたか?」
生きているの?
だが、春風に揺られる緑すらないと、そうは実感できない。
「樹はお前を呼んだろう?」
「いえ、わたしは……前から気になっててお花が咲くころに花見に来ようって思って。別に呼ばれたとかそういうわけじゃ」
「それを呼ばれた、という」
族長の男は無精ひげいっぱい顔をくしゃっとして満面の笑みを浮かべた。精悍で古傷だらけの身体は怖そうに見えたが、どことなしに愛嬌のある笑顔だった。
「精霊と直接話ができるのはごく一部。それ以外は『気になる』。この樹はお前に何かを果たしてもらいたい、と思っているのだろう」
何かって。
ミネアはどうにも困ってしまった。覚醒者でもないミネアには頼まれたってどうしようもできない。現に先ほどまでぼんやり座っていることしかできなかったのだから。
悩むミネアに赤子を背負った女が語り掛けてきた。
「この樹を、どう思った?」
「可哀想だな……ですかね。何かしてあげたいけれどわからないから、とりあえず座ってて……」
「それが答え。一緒にいて欲しい、見てててほしい、だと思うわ」
教えてくれる女の横で、巨漢の戦士が樹を見上げて言った。彼は覚醒者らしく身体を輝かせていた。
「まだマテリアルの流れを感じる。生きてるぞ。まだ生きている。だが枝も伸ばせぬ、葉も生やせぬ。だが生きてるが死んでると思われる。寂かろうな」
ああ、なるほどね。
なんとなくだが、『樹が呼んでいる』という意味がほんの少しだけわかった気がした。
この樹はもう新芽を生やすことすらできないほどに老いたけれど、まだ咲きたいと思っている。
共にあって喜びを分かちたいと願っている。
「娘よ。君には色んな人の匂いがする。樹もそれを感じたのだろう」
族長は教えてくれた。辺境に伝わる花見の言い伝え。
桜の下で花見をするのは古来から行われてきた。
それは桜がとてもマテリアルに敏感なのだからという。祭りの活気が正のマテリアルとなり、また来年美しく咲く力となる。
桜は知っている。だから人を呼ぶのだと。代わりに彼らは邪気を払い私達を守ってくれるのだと。
「花見をすればいいわけ、かな?」
花のないところで花見をする。変な話だ。
だが、雲に隠れた月を想って月見を楽しむのが風流だとか言った人もいたな。
ミネアはそんなことを想いだすと、立ち上がった。
「ハンターさんに声かけてみます。依頼として出したら樹の好きな人とか、何はなくとも祭り好きな人とか、少しは集まってくれるかも!」
「それがいい。我々も少しばかりここで花見を楽しむとしよう」
族長はそう言って手を差し出してくれた。ゴワゴワの硬い手だったが、ほんのりと土と草の優しい香りがした。
街道を見下ろす丘の上に立つ老桜。
高さもさることながら、枝ぶりがよく丘の天辺を覆うような広がり、幹に至っては自分の両手を5回使っても回り切れない太さであった。
春になったらきっと一面を桜吹雪にしてくれるのではないかとミネアは期待しつつ街道を往来していたものだが。
その樹は今になってもまだ葉も花も、それどころか蕾すらつけていなかった。
遠くに見える森の木々がもう新緑に覆われ、ぽつぽつと優しい色合いの花をつけているのにも関わらず。
「枯れてるのかな……」
今日は仕事を休み、のんびり花見でもして心安らかに過ごそうと決めていた商人のミネアだったが、老桜を見上げて胸を切るような気持ちにさせられた。一目見ただけの間柄なのに、涙が毀れそうになるのはどうしてなのか。
ミネアはただ一人、桜の根本に腰をおろし、その背を預けることしかできなかった。
「何とも立派な樹だ。加護に感謝する」
不意に背中から声がした。
振り返ってみてみると、一人の男が先頭に立ち、桜に対して直立すると、胸に手を当て深々と一礼していた。
その後ろでは同じように30人ほどの老若男女が同様に敬礼をしている姿が見える。彼らは一様にこの帝国では見られない獣皮と独特の紋様で彩られた衣装を纏っていたことから、辺境から来た人間であることはすぐ理解した。
ミネアは彼らと背にしていた大木を交互に見やった後、祈りの終えるのを見計らって、族長らしき先頭に立つ男に声をかけた。
「あの……この樹、枯れてると思うんですけど、精霊って宿っていらっしゃるんですか?」
「もちろんだ。死んでいるようみえたか?」
生きているの?
だが、春風に揺られる緑すらないと、そうは実感できない。
「樹はお前を呼んだろう?」
「いえ、わたしは……前から気になっててお花が咲くころに花見に来ようって思って。別に呼ばれたとかそういうわけじゃ」
「それを呼ばれた、という」
族長の男は無精ひげいっぱい顔をくしゃっとして満面の笑みを浮かべた。精悍で古傷だらけの身体は怖そうに見えたが、どことなしに愛嬌のある笑顔だった。
「精霊と直接話ができるのはごく一部。それ以外は『気になる』。この樹はお前に何かを果たしてもらいたい、と思っているのだろう」
何かって。
ミネアはどうにも困ってしまった。覚醒者でもないミネアには頼まれたってどうしようもできない。現に先ほどまでぼんやり座っていることしかできなかったのだから。
悩むミネアに赤子を背負った女が語り掛けてきた。
「この樹を、どう思った?」
「可哀想だな……ですかね。何かしてあげたいけれどわからないから、とりあえず座ってて……」
「それが答え。一緒にいて欲しい、見てててほしい、だと思うわ」
教えてくれる女の横で、巨漢の戦士が樹を見上げて言った。彼は覚醒者らしく身体を輝かせていた。
「まだマテリアルの流れを感じる。生きてるぞ。まだ生きている。だが枝も伸ばせぬ、葉も生やせぬ。だが生きてるが死んでると思われる。寂かろうな」
ああ、なるほどね。
なんとなくだが、『樹が呼んでいる』という意味がほんの少しだけわかった気がした。
この樹はもう新芽を生やすことすらできないほどに老いたけれど、まだ咲きたいと思っている。
共にあって喜びを分かちたいと願っている。
「娘よ。君には色んな人の匂いがする。樹もそれを感じたのだろう」
族長は教えてくれた。辺境に伝わる花見の言い伝え。
桜の下で花見をするのは古来から行われてきた。
それは桜がとてもマテリアルに敏感なのだからという。祭りの活気が正のマテリアルとなり、また来年美しく咲く力となる。
桜は知っている。だから人を呼ぶのだと。代わりに彼らは邪気を払い私達を守ってくれるのだと。
「花見をすればいいわけ、かな?」
花のないところで花見をする。変な話だ。
だが、雲に隠れた月を想って月見を楽しむのが風流だとか言った人もいたな。
ミネアはそんなことを想いだすと、立ち上がった。
「ハンターさんに声かけてみます。依頼として出したら樹の好きな人とか、何はなくとも祭り好きな人とか、少しは集まってくれるかも!」
「それがいい。我々も少しばかりここで花見を楽しむとしよう」
族長はそう言って手を差し出してくれた。ゴワゴワの硬い手だったが、ほんのりと土と草の優しい香りがした。
解説
●目的
花の咲かない桜の元で花見をします。楽しむことで老桜に元気をわけてあげましょう。
●場所
帝国の街道沿いのどこか。ピースホライズンから徒歩半日程度。街道は乗合馬車なども通ってます。
ゆるやかな丘に老桜が生えています。周りにはそれ以外、木々はありません。
丘を下れば小川があり、その向こうにはちょっとした雑木林があります。
●桜
樹齢推定200年程度。桜の平均寿命は100年程度なので十分長生きしています。
しかし、ここ十年近くは葉も花も咲かせられてはいません。
皆さんが目にする時も立ち枯れた桜の大木の状態です。
まだ精霊として昇華するほどには至っていませんので、普通の植物と変わりません。
●登場人物
ミネア 依頼主である商人の女の子。NPCなので受け答えも可能です。
辺境の民? ボラ族という帝国に移住してきた一族です。皆さんが到着する前から桜の下で宴会やってます。30人くらいいます。
何かするなら手伝ってくれますし、逆に特に触れなければ登場もしません。
花の咲かない桜の元で花見をします。楽しむことで老桜に元気をわけてあげましょう。
●場所
帝国の街道沿いのどこか。ピースホライズンから徒歩半日程度。街道は乗合馬車なども通ってます。
ゆるやかな丘に老桜が生えています。周りにはそれ以外、木々はありません。
丘を下れば小川があり、その向こうにはちょっとした雑木林があります。
●桜
樹齢推定200年程度。桜の平均寿命は100年程度なので十分長生きしています。
しかし、ここ十年近くは葉も花も咲かせられてはいません。
皆さんが目にする時も立ち枯れた桜の大木の状態です。
まだ精霊として昇華するほどには至っていませんので、普通の植物と変わりません。
●登場人物
ミネア 依頼主である商人の女の子。NPCなので受け答えも可能です。
辺境の民? ボラ族という帝国に移住してきた一族です。皆さんが到着する前から桜の下で宴会やってます。30人くらいいます。
何かするなら手伝ってくれますし、逆に特に触れなければ登場もしません。
マスターより
桜が咲くと花見。とまるでお決まりのようにテレビでも紹介されますね。
でも不思議ですよね。なぜ花見をしたくなるんでしょう。
実は桜が私達を酔わせてくれるからかもしれません。
此度の花は、皆様の笑顔と真心の花でございます。それが老桜にも嬉しいはず。
どうぞごゆるりお楽しみくださいませ。
でも不思議ですよね。なぜ花見をしたくなるんでしょう。
実は桜が私達を酔わせてくれるからかもしれません。
此度の花は、皆様の笑顔と真心の花でございます。それが老桜にも嬉しいはず。
どうぞごゆるりお楽しみくださいませ。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/04/20 18:28
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/09 07:50:09 |
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お花見のしおり 椿姫・T・ノーチェ(ka1225) 人間(リアルブルー)|30才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/04/12 01:24:07 |