• 無し

【偽夜】眠り姫

マスター:サトー

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在7人 / 4~7人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
プレイング締切
2015/04/06 19:00
リプレイ完成予定
2015/04/15 19:00

オープニング

※このシナリオは夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

「はぁ……はぁ……はぁ……」
 雲のような息を靡かせ、一人の少女が走りゆく。
 暗黒の世界、一切の光無く、一寸先も見えぬ闇の中を、少女はただただひた走る。
 足跡は波紋のように広がり、ぴちゃぴちゃと液体を弾く音だけが妙に響いている。
「止めて……来ないで!」
 少女は両手を振り乱して、長い黒髪を振り乱す。
 何も無い。少なくとも、何も見える者は無い。それでも、少女は何かに怯えるように、何かを振り払うかのように嫌嫌と首を振って、目を瞑って当てども無い道のりを彷徨い続ける。
「いや……もう嫌……誰か助けて」
 呟きが闇の中に木霊する。けれど、応じるものは何もない。
 恐怖が熱を帯び、願いは悲しみに沈み、足元の液体はヘドロのような泥状になり、脚に纏わりついてくる。
 振り払い、打ち捨てようとも、頑固さを失おうとはせず。へばりついてはこびりつき、瘡蓋のように身体を覆おうとする。
「誰か……誰か……」
 幾重にも絡みつく亡者の手が足並みを乱し、執拗に妨害を続ける。
 それは、少女を引きずり込むためか、はたまた引き止めるためか。善意なのか、悪意なのか。混乱している少女には、その判断はつかない。
 喘ぐ闇に望みは見いだせず、懇願する泥濘は虚しく耳を通り過ぎる。
 不意に、何か温かい風が頬を撫でて行った。
「え……?」
 遠くに見える明かり。何の明かりかは分からない。でも、温かい。何か、心が温かくなる風が、そこから吹いてきている気がした。
 少女は走る。
 闇の中、突如現れた明かりを目指して。遠く背後、そちらにも眩い光があるのも知らずに。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 背後から迫る足音。一つ、二つ、いやもっと沢山。
 無数の足音に追われ、少女の足は速まる。
「来ないで……お願いだから、もう」
 振り切れない。
 どんなに一生懸命走っても、足音は振り切れない。
 ぴちゃぴちゃと足を濡らす液体。
 早く、早く辿り着かなければ――。
 近づくにつれ、明かりの概要が分かった。
 家だ。
 一軒の民家。見覚えのある民家。……私の家。
 少女は走る。
 追って来る者を振り切りたくて。振り切れなくて。
 あと少し。もう少し。
 ドアノブへ伸びた手。けれど、戸は勝手に開いて――。少女を中へ誘った。
「どうしたんだ、ローザ。そんな息を切らして」
「あら、ローザさん。汗びっしょりよ」
「お父様……お母様……」
「何かあったのかい? ローザ」
「あぁ、ルシオさん……」
「どうしたの? お姉ちゃん。何か怖い事でもあった?」
「イーダちゃんも……」
「ルシオさんとは他人行儀だな。僕らは恋人なんだ。ルシオでいいよ」
「そうだとも、ローザ。ルシオ君は、直に私の息子にもなるんだからね」
「まあ、お父さんったら」
「早くお姉ちゃんと一緒に暮らしたいな」
 少女――ローザを出迎えたのは、よく見知った4人。ローザは安堵の息を吐く。
 ここは大丈夫だ。ここにいれば、もう何も怖くない。
「そうね。そう……。もう大丈夫です。もう……」
 ローザの背後で、ゆっくりと戸が閉まる――。


「どうですか? 先生」
 グイーダの問いに、医師は目を伏せる。
「残念ながら、変わりはないね」
「そうですか……」
 グイーダの溜息が病室に響く。
 目の前のベッドに横たわる少女は、ただ熟睡しているだけのようで。すやすやと穏やかな眠りにつく少女を、グイーダは悄然として見つめた。
「……君も、あまり根を詰めすぎないようにね」
 そんなグイーダを置いて、医師と看護士はその場を離れる。居たたまれない気持ちが、そうさせたのだ。
 ベッドに眠る少女、名をローザと言う。
 彼女は、暫し前、スミレの花畑にてゴブリンらに襲われ重傷を負った。特に、顔と右腕の傷は深い。手術は成功したものの、未だ巻かれた包帯の下の顔には大きな傷跡が残り、右腕は動くようになるかも分からないのが現状だ。
 そして、何より意識が未だに戻っていない。もうじき一月が経とうというのに。
 一命は取りとめた。なのに、意識だけがどうしても回復しない。まるで、精神が肉体を拒んでいるかのように。
 医師は病室の入口で、もう一度ベッドを振り返る。
 それは、姉と慕い看病を続けるグイーダへの心配であり、眠り続けるローザの心の平安を祈ってだ。
 彼女はまだ15歳。にもかかわらず、女にとって大切な顔に大きな傷を残した。そんな彼女を支えてくれるはずの両親は、その時彼女を庇って既にこの世を去っている。もう彼女には身寄りが無いのだ。
 それはどれだけ過酷な道のりだろうか。
 この先の少女の人生を思えば、もしかしたら、このまま目を覚まさない方が良いのかもしれないと思いながら――。

解説

目的:
 ローザを連れ戻す事。

状況:
 ローザに怪我を負った時の記憶はありません。両親の死も、自身の怪我も知りません。
 皆さんはローザの精神世界の中で行動することになります。
 連れ戻す上で、場面は大きく3つに分かれます。

場面1:ローザの『理想』を具現化した家
 皆さんの役柄は何でも構いません。
(コップやぬいぐるみが喋っても、観葉植物が動いても、紅茶の水面が変形しても大丈夫です。無論PC自身でも。一人一つとも決まっていません)
 ただし、OPに登場する4人に成り代わった言動は、彼女の心に綻びが生まれてからでないと出来ません。
(当初4人は、彼女の『味方』だからです)
 彼女にとって、とても居心地の良い空間です。

場面2:ゴブリンの襲来
 負傷した原因となるゴブリンらが襲いかかってきます。
 戦闘は、道を切り開く側か、彼女を護衛する側か決める位で十分です。
 心奥に刻まれた恐怖が、彼女の足を竦ませるでしょう。

場面3:光へ
 光が近づくにつれ、彼女の全身に痛みが戻っていきます。
 近づけば近づくほど痛みは強くなり、更に接近すると記憶も戻り始めます。
 場合によっては、精神が崩壊する危険があります。

NPC:
 ルシオ・・・想い人。18歳。聡明で真面目で優しい青年。ローザの完全なる片思い。
 グイーダ・・ルシオの妹。10歳。お転婆でお節介焼き。ローザがよく遊んであげていた。
 ローザ・・・15歳。裕福な家庭の一人娘。お淑やかで慈愛溢れる少女。淡い恋心を胸に秘めている。


※ ご質問がございましたら、質問卓を立てて頂きますようお願い申し上げます。

マスターより

お疲れさまでございます。
ただ生きるというだけでも大変なことです。なぜなら、人は皆何らかのハンデを背負っているからです。
程度の差は大小あれど、当人にとっては、そのハンデは他人が思う以上に重かったりするものです。
その昔、姉が言いました。「私はねむねむ病だ。だから睡眠時間が一日10時間は必要だ。これは大きなハンデだ」と。
おやすみなさい。

関連NPC

  • にわとり
    アン・ビツィオーネ(kz0114
    人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/04/13 01:59

参加者一覧

  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • にゃんこはともだち
    ナツキ(ka2481
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 大飛燕草は風に乗り
    薛 夏湍(ka3721
    人間(紅)|28才|女性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談卓
夢路 まよい(ka1328
人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/04/05 19:52:46
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/04 21:17:51