ゲスト
(ka0000)
箱入り息子の忘れ物
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/07/03 19:00
- リプレイ完成予定
- 2014/07/12 19:00
オープニング
●
「ああもうああもうちくしょう! なんだよなんだよなんなんだよ!」
叫びながら、一人の青年が街道をひた走っていた。絹のような金の髪を振り回し、整った顔を汗と涙と鼻水で彩りながら、がむしゃらに手足を振り回す。
少し、休憩しようとしただけだった。ただ少し街道から外れた座りやすい岩を見つけただけで、青年は全てを失っていた。商売を始めるための資本金も、商売道具も、食料も飲料も衣料も何もかも。
ギーと幾つもの甲高い声が背後で響き、振り返った途端に固いもので殴り飛ばされ、恐怖のあまり脇目もふらずに逃げ出した。
しかし、しかしだ。
商売道具も生活用品も、大事だが、どうでもいい。そんなもの、親父がいくらでも用意してくれる。
だけど、だけどだ。
――ママが編んでくれたセーターだけは、何が何でも取り戻さなければ!
他はどうなってもいい。あれだけは、絶対にだ。手先が不器用で、それまで編み物などしたことのなかったママが、自分のために寸暇も惜しんで作ってくれたのだ。
ただそのためには、あいつらに頼らなければならない。
「くそ、ハンターなんかに……!」
自分を裏切った、あの憎らしい顔を思い出す。
屈辱だ。
だが、背に腹は変えられない。
「ちくしょう!」
青年は唇を噛んで、冒険都市リゼリオの門を走り抜けた。
●
太陽が真上を少し過ぎた午後。ハンターたちも大方出払い、ゆったりとした穏やかな時間にハンターズソサエティ本部の職員たちも息をつく。忙しい毎日の中の、ふとした隙間。
そんな空間を切り裂いて、どかどかと大股で一人の青年がハンターズソサエティの門を叩いた。
「街道で百匹くらいのジャイアントに襲われたんですけど!」
受付嬢が声をかける前に、叩きつけるような大声がホールに響いた。青年の剣幕に、受付嬢の肩がビクリと跳ねる。
年の頃は二十前後だろうか。肩で切り揃えられた金の髪は、どしどしと歩くごとにふわりと舞う。整った顔に透き通るような白い肌も相まった美形であったが、憤怒に歪んだその表情に面影はない。
「街道は安全って聞いたんだけどさ、管理どうなってんの!」
青年は受付まで早足に寄ると、強くカウンターに掌を叩きつける。
「ひゃ、百体のジャイアント……ですか?」
恐る恐る聞き返す受付嬢の表情には、困惑以外浮かんでいない。
「死ぬかと思うわ荷物は取られるわで散々だよ! あんたらがしっかりしてないから、あんなのが湧くんじゃないの?」
青年の態度は、限りなく尊大だった。天板を何度も叩き、唾を飛ばし、受付嬢が親の仇なのかと疑うほど高圧的で、他の職員も何だ何だと奥から顔を覗かせる始末。そしてそれに気づいているのかいないのか、青年
は更に言葉を重ねて喚き立てる。
よほど腹に据えかねているのだろう。持ち得る語彙の全てで以って殴りかかるような光景に、流石に周りが止めに入ろうとしたその時。
「お客様、ご依頼ですか?」
青年の後ろから、声をかけた人物がいた。
「ああ?」
自分の高説の最中に突然割りこまれ苛ついたのか、青年が唸りながら振り返り、
「――ひっ」
小さく悲鳴を上げて、ビクリと動きを止めた。
青年の視線の先に立っていたのは、歴戦の戦士を思わせる巨体の持ち主だった。服装から職員の一人なのだろうと推測はつくが、それ以上に顔面に刻まれた刀傷が目を引いてしまう。そんな大男が急に目の前に現れ
たのだから、青年が驚くのも無理は無いだろう。
「本日は、どのようなご用件でしょうか」
しかし、その風貌からは想像の付かないような丁寧な言葉は、優しささえ含まれるほどに穏やかだった。
それでも目と鼻の先にいる青年には、ある種の恐怖を抱かせるのだろうか。男の一言一句に肩を震わせるその姿には、つい先程までの勇ましい姿はない。狼に追い詰められた兎のように儚げだった。ただし、青年に
その手の愛らしさは欠片もなかったが。
「なんでも……大量のジャイアントが現れたとか」
そう問われ、青年は顔色を悪くしながらも小さく頷いた。
「そうですか」
男は、顎に手を当てる。
「……それほどのジャイアントが発生したとなれば、直ちに近辺のハンターを呼び集め、派遣しなければならないでしょう。それも、数十人単位のベテランたちを。それから、近隣の住民たちの避難誘導に、避難民の
受け入れ先の確保、周辺の警邏もしなければならないとなれば、軍に出動要請もしなければならないでしょうな。さて……」
そしてギロリと、青年の体など一息でズタズタに切り刻んでしまえるような視線が、青年に向けられた。
「それが真実でなかった場合の責任を、きちんと取られるのでしょうな?」
●
しばらくぶりの静寂が、本部に訪れたようだった。青年は縮こまって応接用の椅子に座り、目の前に座る男の視線から逃げ出したいのかそわそわもじもじと不審な挙動を繰り返している。
「さて、ご依頼の内容を詳細にお願い致します」
「え、っと、その……じゃ、ジャイアントが」
「詳細を、正確に、お願い致します」
二度目は、厳しく強い口調で青年の言葉を叩き切る。
青年はしばらく視線を泳がせながら、
「……ご、ゴブリンが」
ようやく、小さい声でそう答えた。
「ふむ、ゴブリンですか。数は?」
「え、っと……ちっちゃいのが三、いや四匹はいた、かも……」
一度強気で言い放った言葉を撤回するのに凄まじい抵抗が働いているようで、言葉を区切り区切り、苦渋の響きで口の端から絞り出す。
「かも、とは?」
それに対し、男の対応は真摯だった。
「その、よく、見えなくて……。逃げるのに必死で……荷物も、そのときに置いてきちゃって……」
「護衛はつけていなかったので?」
「え……と……」
そこで改めて、青年は言葉を濁した。
「……支払う報酬をケチって、逃げられたといったところでしょうか」
「え」
業を煮やした男の言葉に、青年は呆気に取られた。図星だったのだろうか、驚愕に目を丸くし、情けなく口まで開いている。
「まあ、それはどうでもよろしいでしょう。依頼内容は、失くされた荷物の奪還、ということでよろしいでしょうか?」
青年が驚愕の表情のまま、頷く。
「かしこまりました、それでは直ちに――」
「あ、のう」
意外にも、立ち上がりかけた男を青年のか細い声が引き止める。
「どうかされましたか?」
「その……商品も大事なんだけど、できれば……できれば一緒に置いてあったセーターも、回収して欲しいなあ、って、その……」
「ふむ、分かりました。項目を追加しておきましょう」
男が改めて立ち上がり、カウンターの奥へと消えていく。その後姿を見て、青年はだらりと椅子にもたれかかった。
「ちくしょう、なんだよあいつ偉そうにしやがって……僕を誰だと思ってんだ……」
涙目で細かく震えながらでも、地方領主のお抱え商人を父親に持つ青年の、必死の抵抗の言葉だった。
「ああもうああもうちくしょう! なんだよなんだよなんなんだよ!」
叫びながら、一人の青年が街道をひた走っていた。絹のような金の髪を振り回し、整った顔を汗と涙と鼻水で彩りながら、がむしゃらに手足を振り回す。
少し、休憩しようとしただけだった。ただ少し街道から外れた座りやすい岩を見つけただけで、青年は全てを失っていた。商売を始めるための資本金も、商売道具も、食料も飲料も衣料も何もかも。
ギーと幾つもの甲高い声が背後で響き、振り返った途端に固いもので殴り飛ばされ、恐怖のあまり脇目もふらずに逃げ出した。
しかし、しかしだ。
商売道具も生活用品も、大事だが、どうでもいい。そんなもの、親父がいくらでも用意してくれる。
だけど、だけどだ。
――ママが編んでくれたセーターだけは、何が何でも取り戻さなければ!
他はどうなってもいい。あれだけは、絶対にだ。手先が不器用で、それまで編み物などしたことのなかったママが、自分のために寸暇も惜しんで作ってくれたのだ。
ただそのためには、あいつらに頼らなければならない。
「くそ、ハンターなんかに……!」
自分を裏切った、あの憎らしい顔を思い出す。
屈辱だ。
だが、背に腹は変えられない。
「ちくしょう!」
青年は唇を噛んで、冒険都市リゼリオの門を走り抜けた。
●
太陽が真上を少し過ぎた午後。ハンターたちも大方出払い、ゆったりとした穏やかな時間にハンターズソサエティ本部の職員たちも息をつく。忙しい毎日の中の、ふとした隙間。
そんな空間を切り裂いて、どかどかと大股で一人の青年がハンターズソサエティの門を叩いた。
「街道で百匹くらいのジャイアントに襲われたんですけど!」
受付嬢が声をかける前に、叩きつけるような大声がホールに響いた。青年の剣幕に、受付嬢の肩がビクリと跳ねる。
年の頃は二十前後だろうか。肩で切り揃えられた金の髪は、どしどしと歩くごとにふわりと舞う。整った顔に透き通るような白い肌も相まった美形であったが、憤怒に歪んだその表情に面影はない。
「街道は安全って聞いたんだけどさ、管理どうなってんの!」
青年は受付まで早足に寄ると、強くカウンターに掌を叩きつける。
「ひゃ、百体のジャイアント……ですか?」
恐る恐る聞き返す受付嬢の表情には、困惑以外浮かんでいない。
「死ぬかと思うわ荷物は取られるわで散々だよ! あんたらがしっかりしてないから、あんなのが湧くんじゃないの?」
青年の態度は、限りなく尊大だった。天板を何度も叩き、唾を飛ばし、受付嬢が親の仇なのかと疑うほど高圧的で、他の職員も何だ何だと奥から顔を覗かせる始末。そしてそれに気づいているのかいないのか、青年
は更に言葉を重ねて喚き立てる。
よほど腹に据えかねているのだろう。持ち得る語彙の全てで以って殴りかかるような光景に、流石に周りが止めに入ろうとしたその時。
「お客様、ご依頼ですか?」
青年の後ろから、声をかけた人物がいた。
「ああ?」
自分の高説の最中に突然割りこまれ苛ついたのか、青年が唸りながら振り返り、
「――ひっ」
小さく悲鳴を上げて、ビクリと動きを止めた。
青年の視線の先に立っていたのは、歴戦の戦士を思わせる巨体の持ち主だった。服装から職員の一人なのだろうと推測はつくが、それ以上に顔面に刻まれた刀傷が目を引いてしまう。そんな大男が急に目の前に現れ
たのだから、青年が驚くのも無理は無いだろう。
「本日は、どのようなご用件でしょうか」
しかし、その風貌からは想像の付かないような丁寧な言葉は、優しささえ含まれるほどに穏やかだった。
それでも目と鼻の先にいる青年には、ある種の恐怖を抱かせるのだろうか。男の一言一句に肩を震わせるその姿には、つい先程までの勇ましい姿はない。狼に追い詰められた兎のように儚げだった。ただし、青年に
その手の愛らしさは欠片もなかったが。
「なんでも……大量のジャイアントが現れたとか」
そう問われ、青年は顔色を悪くしながらも小さく頷いた。
「そうですか」
男は、顎に手を当てる。
「……それほどのジャイアントが発生したとなれば、直ちに近辺のハンターを呼び集め、派遣しなければならないでしょう。それも、数十人単位のベテランたちを。それから、近隣の住民たちの避難誘導に、避難民の
受け入れ先の確保、周辺の警邏もしなければならないとなれば、軍に出動要請もしなければならないでしょうな。さて……」
そしてギロリと、青年の体など一息でズタズタに切り刻んでしまえるような視線が、青年に向けられた。
「それが真実でなかった場合の責任を、きちんと取られるのでしょうな?」
●
しばらくぶりの静寂が、本部に訪れたようだった。青年は縮こまって応接用の椅子に座り、目の前に座る男の視線から逃げ出したいのかそわそわもじもじと不審な挙動を繰り返している。
「さて、ご依頼の内容を詳細にお願い致します」
「え、っと、その……じゃ、ジャイアントが」
「詳細を、正確に、お願い致します」
二度目は、厳しく強い口調で青年の言葉を叩き切る。
青年はしばらく視線を泳がせながら、
「……ご、ゴブリンが」
ようやく、小さい声でそう答えた。
「ふむ、ゴブリンですか。数は?」
「え、っと……ちっちゃいのが三、いや四匹はいた、かも……」
一度強気で言い放った言葉を撤回するのに凄まじい抵抗が働いているようで、言葉を区切り区切り、苦渋の響きで口の端から絞り出す。
「かも、とは?」
それに対し、男の対応は真摯だった。
「その、よく、見えなくて……。逃げるのに必死で……荷物も、そのときに置いてきちゃって……」
「護衛はつけていなかったので?」
「え……と……」
そこで改めて、青年は言葉を濁した。
「……支払う報酬をケチって、逃げられたといったところでしょうか」
「え」
業を煮やした男の言葉に、青年は呆気に取られた。図星だったのだろうか、驚愕に目を丸くし、情けなく口まで開いている。
「まあ、それはどうでもよろしいでしょう。依頼内容は、失くされた荷物の奪還、ということでよろしいでしょうか?」
青年が驚愕の表情のまま、頷く。
「かしこまりました、それでは直ちに――」
「あ、のう」
意外にも、立ち上がりかけた男を青年のか細い声が引き止める。
「どうかされましたか?」
「その……商品も大事なんだけど、できれば……できれば一緒に置いてあったセーターも、回収して欲しいなあ、って、その……」
「ふむ、分かりました。項目を追加しておきましょう」
男が改めて立ち上がり、カウンターの奥へと消えていく。その後姿を見て、青年はだらりと椅子にもたれかかった。
「ちくしょう、なんだよあいつ偉そうにしやがって……僕を誰だと思ってんだ……」
涙目で細かく震えながらでも、地方領主のお抱え商人を父親に持つ青年の、必死の抵抗の言葉だった。
解説
●目的
ゴブリンが現れたということで、依頼主の荷物が奪われている可能性が大です。奪われていた場合は、速やかにそれらを取り返してください。
また、セーターも回収して欲しいとのことですが、あえて依頼に加えた以上、依頼主にとってそれは大事なものなのでしょう。衣服の類はゴブリンが装着している恐れもあるため、それも考慮する必要があるかもしれません。
●場所
近くに小さな森の広がる、平坦な街道です。特に変わった場所ではないですが、ゴブリンが森に潜んでいるかもしれません。
目的地までは依頼主が同行し、案内してくれます。ですが、戦闘に参加することはありません。安全な場所に隠れています。
●補足
小さいゴブリン、ということなので、ゴブリンの幼体の可能性があります。構わずぶちのめしても構いませんが、幼体だった場合、親のゴブリンがどこかにいるかもしれません。親に褒められたいがために張り切る子供はどこにでもいます。奪った荷物を親のところへ持っていったとしても、おかしくありません。あえて子供を逃がすことで開ける道もある、かもです。
ゴブリンが現れたということで、依頼主の荷物が奪われている可能性が大です。奪われていた場合は、速やかにそれらを取り返してください。
また、セーターも回収して欲しいとのことですが、あえて依頼に加えた以上、依頼主にとってそれは大事なものなのでしょう。衣服の類はゴブリンが装着している恐れもあるため、それも考慮する必要があるかもしれません。
●場所
近くに小さな森の広がる、平坦な街道です。特に変わった場所ではないですが、ゴブリンが森に潜んでいるかもしれません。
目的地までは依頼主が同行し、案内してくれます。ですが、戦闘に参加することはありません。安全な場所に隠れています。
●補足
小さいゴブリン、ということなので、ゴブリンの幼体の可能性があります。構わずぶちのめしても構いませんが、幼体だった場合、親のゴブリンがどこかにいるかもしれません。親に褒められたいがために張り切る子供はどこにでもいます。奪った荷物を親のところへ持っていったとしても、おかしくありません。あえて子供を逃がすことで開ける道もある、かもです。
マスターより
初めまして、T谷と申します。
MS経験なしのど新人ヒヨコ野郎ですが、これから頑張って行きたいと思いますのでよろしくお願いします。
初回はシンプルに、何の変哲もない戦闘シナリオです。ゆるやかにまったり行きましょう。
MS経験なしのど新人ヒヨコ野郎ですが、これから頑張って行きたいと思いますのでよろしくお願いします。
初回はシンプルに、何の変哲もない戦闘シナリオです。ゆるやかにまったり行きましょう。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/07/09 00:37
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談用スレッド ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458) 人間(リアルブルー)|19才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/02 23:51:25 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/30 01:28:48 |