• 不動
  • 戦闘

【不動】少年、艶やかに微笑む

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/04/08 12:00
リプレイ完成予定
2015/04/17 12:00

オープニング

●終焉
 背後は崖があり、谷や緑によって隠されている集落。
 こもっているから安全、とその部族は信じていた。
 そこで育つオルトもそう考える。
 部族を守るのは地形だけでなく、戦士たちもいる。
 年頃の少年ともなれば、戦う彼らにあこがれ、将来なりたいものは戦士と子らは言う。
 線が細く体力が劣るオルトは戦士になることは諦め、大人の勧めに従い薬草について学ぶことになった。
 残念だが仕方がない。勉強も嫌いではなかったので楽しかった。
 いつも変わらぬ生活。
 歪虚の侵攻があっても、ここは平穏だった。
 だから、CAMの話も聞いても現実味がない。オルトは、見てみたいという好奇心はあった。
 そこから商人がやってきた。グラズヘイム王国からやってきて、CAMの実験場を足掛かりに辺境を探索しているという。無謀であるというか、将来を見越した勇気と言うかは評価は割れよう。
 ただ、オルトの好奇心は商人に向かった。少しでも話したいと願う。
 話す機会はやってきた。商人が泊まるということで、オルトの家が選ばれたからだ。
 商人は若く、デリクと名乗った。オルトとは年の離れた兄と弟のように打ち解けた。
 王国の風土とここまでの道のりに、オルトは興味がそそられた。デリクは仕入れたい植物のことをあれこれ聞いてきた。
 夜が遅くなっても二人は話した。
 寝る頃には外からは、見張りが点けている松明や衣擦れの音しかしなかった。
 このまま眠りに落ちて朝が来る……はずだった。

「誰だ、お前たちは! ぎゃっ」
 オルトがうつらうつらしていると外から断末魔が聞こえた。
 オルトの父は武器を持つと、他の部族の男たちと同様、対処に向かうために外に出た。
 オルトとデリクは戸の隙間から外を見る。
 集落の中心に向かい悠然と歩く二つの影が見えた。
 二人が着ているのはグラズヘイム王国の貴族の平服であり、このようなときに妙に軽装で、デリクは違和感を覚えた。
 少年の澄んだよく通る声が届く。
「余の名はプエル。レチタティーヴォ様の元で……」
「……プエル様、そこでどうして黙るんですか」
「う、うん」
 少年は何かしっくりこないのか首を傾げている。
 オルトはすぐに解決すると楽観していたが、隣で聞いていたデリクは青くなっている。
「まさかと思うけど……雑魔? いや、歪虚?」
 デリクは知識を総動員し、分析する。彼らは人間にしては奇妙で、雑魔にしては意志がはっきりしている。
 無数の松明に照らされて赤く染まる少年の頬、妙にきらめく紫の瞳。丹精に作られた人形のような容姿、闇の息吹で動く人形。
「レチタティーヴォ様は君たちを所望だ。演目の小道具として……」
 プエルは背負っている大剣の柄に手を掛ける。
「その命を差し出せ」
 屈むように一気に大剣を引き抜き、一閃する。
 集まっていた者たちの幾人かは巻き込まれ血の華を咲かす。深紅の花びらを散らし倒れた。
 悲鳴が起こり、戦力を持たない者たちは散り散りに隠れる。
 一方で武器を持った戦士たちは怒号と共に踏み込んだ。
「私の大切なプエル様に触れさせることはしません。このエクエス、剣を手に盾となりましょう」
 二振りの剣を振るい、戦士たちを牽制する。鋭い突きに、巻き込まれ倒れる者もあった。
「母さんたちは隠れて」
 オルトは言うと武器を手に外に向おうとする。
「駄目だ、馬があるから、うまく外に行って助けを求めないと」
「何故!」
「あの二人が歪虚なら、もっと人がいる」
 デリクは「部族の戦士では太刀打ちできない」という言葉を飲み込んでいた。不意打ちの一閃だったとはいえ、確実に命を奪う。
「デリクだけ行けばいい」
「駄目だ、馬があるところまで行っても、見つからないように外に行くには、集落に詳しい人がいないと」
 妹を逃がすこともオルトは考えるが、母親を見ると「行きなさい」と小さく口を動かしている。
「分かった」
 二人はこっそり出る。短時間でこれほど血の匂いが漂うのかと恐怖に身がすくむ。
 デリクが乗ってきた馬は怯えているが、何とかなりそうだである。
 無事、集落の出口まで来た。
「僕はここに残る」
 オルトにデリクは声を掛けようとした瞬間、オルトの背中がぱっくりと口を開き血を吐き出した。
 デリクは倒れるオルトを抱きしめ、攻撃元を見る。エクエスの金色の瞳が見つめ返しており、口元は楽しそうに歪んでいる。
 攻撃はしてこず、別の者に剣を振う。
 逃げられるなら逃げてみろという風にとらえ、デリクは馬に乗った。意識がないオルトを抱きしめて。

●妬心
 プエルが剣を振るった分だけ、命は消え、死体が積み重なった。
 一息ついて、これでいいのかなと思案するように首をかしげた。
 家屋の中にはまだ生きている人間がいるし、それに用があるのは死体だから。
 頬につく血に気付いて、プエルは袖でぬぐった。
「駄目です」
 エクエスがハンカチを取り出してしゃがむと、プエルの頬をかいがいしくぬぐう。
 プエルは思い出したことがあり、乱暴にエクエスの手を払いのける。
「お前、逃がしただろう」
「逃がしたわけではありません」
 エクエスはいけしゃあしゃあと言いながら、プエルを見つめる。
 プエルは唇をとがらせて睨み付けているが、エクエスにとってみれば可愛らしくて怯える要素は全くない。
 溜息をついてプエルは背中の鞘に剣を戻す。
「レチタティーヴォ様のために僕はやらないと。こいつら滅ぼすなら、ちゃんとやらないと。人間なんていても仕方がないもの。すぐに僕の大切なものを奪うから」
 エクエスはプエルが震えているのが分かった。
「わたくしが参りましょうか?」
 エクエスは肩を抱いて耳元でささやく。
 プエルは微笑をエクエスに向けるが、エクエスは苛立ちをおぼえずにはいられない。
「余が行く。すぐに戻ってくるよ。馬があっても遠くまでは行ってはおらぬだろう? お前は生き残っている奴らを全て狩れ」
「並行して、死体に関しては進めておきます」
 プエルは軽やかに集落の外に向かった。

●絶叫
 背中から流れる血は止まらない。
 きちんと手当するには馬を止めないとならない。
「デリク……僕はいい」
「駄目だ、早く、行けば聖導士もいるんだ、確実に治る」
 ずり落ちる彼を支える為、馬は遅々として進まない。
「追いかけてくるよ」
 呼吸は荒く、しゃべるのが辛いはずだ。
「部族の戦士が倒しているさ」
 デリクの言葉に、オルトは小さく笑った。
「うん、そうだね。だから、置いて行って」
 このままだと助けを求めに出た意味がない。
 デリクは馬を止めると、上着を脱ぎオルトの傷を隠すように着せ、茂みに彼を隠した。
「すぐに迎えに来るから」
「うん、待ってる」
 デリクは必死に馬を駆った。
 馬の足の遅さに、いらだちが募る。
 実験場が見えた。
 デリクは叫ばずにいられなかった。
「助けてくれ! 早く! 集落が消える! オルトが死んでしまう!」

解説

 移動に関して、ハンターオフィスで乗馬用ですが必要な人には馬貸出します。
 オルトへの対応、歪虚の情報・集落の状況確認が挙げられます。

●道のり
 馬を使えば、二時間以内には到着します。
 道で迷うことはありません。途中は荒野ですが、オルトが隠れているあたりから木が増えます。
 オルトの隠れているところは、集落から徒歩で三十分ほどの茂みです。
 オルトは背中に深い傷を負っています。デリクは暗いしあまりはっきり見ていませんが、骨まで達しているかもしれないと危惧しています。
 デリクはオルト救出に戻ることを申し出ます……。遅れてでもオルトのところに戻ろうとします。

●集落の状況
 オルトとデリクの脱出時の様子では、火の手は上がっていませんでした。
 死体の山が築かれ、部族まるごと殺されそうな勢いでした。
 (PL情報、集落に到着時)タイミングによっては生存者、死体残っていません。

●襲撃者
 ・プエル
 【嫉妬】の歪虚のようです。
 14歳くらいの整った顔立ちの華奢な少年に見えます。茶髪に紫の目をしています。
 武器は大剣で、攻撃範囲は彼中心の周囲に限られているように見えます。

 ・エクエス
 同じく【嫉妬】の歪虚のようです。
 20歳くらいで、長身、銀髪に金の瞳をしています。
 二刀流のようです。

マスターより

 こんにちは。笑いを取ってバランスとろうとする狐野がいるので黙ります。
 プエルはレチタティーヴォの役に立ちたいからと頑張って活動しています。
 なお、頑張って撤退します。
 あ、黙ってないでぽろぽろしゃべってる……。
 では、よろしくお願いします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/04/11 21:27

参加者一覧

  • 歴戦の教官
    君島 防人(ka0181
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士
  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人
  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人

  • メル・ミストラル(ka1512
    人間(蒼)|21才|女性|聖導士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 黒の懐刀
    誠堂 匠(ka2876
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
  • 荷馬車輸送完遂者
    トマーゾ・ヴェント(ka3781
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 王国騎士団非常勤救護班
    クルス(ka3922
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 【相談】ピグマリオ襲撃
君島 防人(ka0181
人間(リアルブルー)|25才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/04/08 06:35:16
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/04 19:17:58