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ブラストエッジ鉱山攻略戦:突入編2

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/04/07 07:30
リプレイ完成予定
2015/04/16 07:30

オープニング

「コボルドと人間が分かり合う事は出来るのか、かい?」
 シュシュの言葉を反芻するようにカルガナは繰り返す。そして苦笑を浮かべ。
「難しい問題だね。僕には何とも言えない」
「ブラストエッジのコボルド達の中には、ホロンの他にも同じように分かり合う事の出来る者がいるんじゃないかって、そう思うんだべよ」
 先の突入作戦の際、シュシュ達は出会ったコボルドとほんの少しだけだが通じ合う事が出来た。
 その時シュシュは思ったのだ。人間とコボルドが、侵略者と復讐者という括りを超えて、相互理解を果たすことも可能なのではないか、と。
「実際、ホロンは帝国軍に協力的だ。もう仲間と認めてあげてもいいべ?」
 カルガナは難しい表情を浮かべ、コーヒーを淹れながら語る。
「シュシュ君は帝国の歴史について勉強しているかな?」
 きょとんとした後、シュシュは首を横にふる。そもそも帝国の事は嫌いだったので勉強しようなんて発想自体なかった。
「それだよ。人と人との争いの歴史は不理解の歴史だ。相手を知ろうとしないから、相手を知らないから簡単に殺戮が出来る」
 例えば……そう前置きして、カルガナが取り出したのは一つのマグカップだ。それはシュシュも何度かコーヒーを淹れてもらったので覚えている。
「このマグカップはもう古くていつ壊れてもおかしくない。だからここで割ろうと思う」
「えっ!?」
「なんで今、自分が驚いたのかわかる?」
 首をかしげるシュシュ。もう全然何を言われているのかわからない。
「じゃあ、こっちのカップはどう? 全く君の見覚えのないこのマグカップが、道端に捨てられていたらどう思う?」
「え……? 別に、どうもこうも……」
「ではどうしてこのカップが割れると思ったら、君は“えっ?”って思ったのかな?」
 カルガナはニッコリと笑い、それからカップにコーヒーを注いでシュシュへ差し出した。
「それは君が、このカップを知っていたからだ」
 ――それは、どんなモノにでも言える。
 全くその本質が同じであったとしても、「知っているかどうか」で感情は変わる。
 見ず知らずの野良猫が道端で死んでいるのと、何年も生活を共にしたペットが死んでいるのとでは話が違う。
 全くどこの誰かわからない他人が事故で死んでも人は悲しまない。けれど、知り合いや友人、家族であれば話が変わる。
「君は帝国は嫌いだと言って知ろうともしなかった。その不理解が人を殺すんだ」
 何も言い返せなかった。ホロンだってそうだ。今は殺したくないし彼を救いたいと考えているが、それも彼を知ったからこそ。
 彼のことを何も知らずただ戦場で出会ったなら、迷いなく斧を振り下ろしていたに違いない。
「コボルドは人間をよく知らないし、人間はコボルドをよく知らない。だからお互いにとってただの敵でしかないんだ。そこを行くと、ホロンは確かに違う。彼は人間とコボルド両方を理解し、両方と共に時を過ごした。だから彼にとってはもう同族も、そして人間さえも、“見ず知らずの生き物”じゃない」
「だからホロンは……。でも、そうでないコボルドや人間達は……」
「帝国の歴史はね。そもそも侵略の歴史なんだ。領地として荒れ果てた土地を与えられたかつての王国騎士は、自らの生存圏を勝ち取る為、当時は亜人の楽園だったこの場所に侵略を行った」
 国はなくとも大小様々な集落があったという。後の帝国皇帝となる騎士は、自らの騎士団を率い、王国の脅威となる、そして自らの繁栄の邪魔になる亜人を狩り続けた。
「沢山の集落が滅んで、帝国に吸収された。コボルド族も例外じゃない。コボルドにとって帝国は、もうずっとずっと昔から侵略者なんだよ」
 この戦いは確かに最近始まった事だ。だがその二つの種族の憎みあう構図は、何百年も続いている。
「それを止めて、お互いを理解して、戦いを止める。それがどれだけ難しい事か、君にもわかるだろう?」
「だとしても、分かり合う努力をすれば……」
「コボルドと分かり合えたと言ったけれど、それも本当かどうかわからない」
「だけど……」
「本当だったとしても、そのコボルドは今目の前の命の危機と人間を天秤に乗せ比べ、どっちがマシか判断しただけだ。目の前の脅威を失えば、また人間と敵対するかもしれない」
 そう、分かり合えた保障などないのだ。そしてそのふれあいが真実だったとしても、それが永遠とは限らない。
「いつ裏切るかわからない隣人と、どうやって平穏な未来を作ればいいのかな?」
 共通の敵がいるから、人は分かり合える。身を守る為手を取り合うのは、生存本能だ。
 けれど本能は残酷で、平和が訪れればまた自らの欲望から争いを求めてしまう。
 世界には限りがあるから、今より幸せになりたかったらどここから切り取るしかない。
 この鉱山での戦いはまるで人の業そのものだ。開拓村の人達を守る為? 帝国の、そして自分の未来の為?
 そんな綺麗事の言い訳がコボルドに通じるものか。これまで死んでいった者達の無念が、そんな正義で癒されるものか。
「だけど君は知っている筈だよ。生きるという事は、何かを奪うという事だと」
 部族として辺境で育った時、まだシュシュは幼かった。狩りをして動物の命を奪い、肉を得る事。それに罪悪感を抱いた事など無かった。
 当たり前だったからだ。当たり前。人は何かの命を奪って当たり前。
「それが、少し大きな規模になっている。ただ、それだけの事なんだよ――」



 ブラストエッジ鉱山内、イヲの集落。
 その中心にある溶鉱炉では今日もせっせとイヲ族達が掘り出した鉱石を溶かし、鉄を作っていた。
「もっともっと働くのよぉ~ん。ノルマ分を納品するまで食事も抜きよぉ~ん」
 そこへ巨大な鉱山獣に跨った大型のコボルドがやってくる。コボルドは鞭を振るい、小さなイヲ族達を打ち付ける。
「ぴぃ! お腹ぺこぺこでもう動けねぇ!」
「ぺこぺこ! ぺこぺこ!」
「うるさいのよぉ~ん。文句言う奴は溶鉱炉に放り投げちゃうのよぉ~ん」
 鞭の音に怯えて逃げ惑うコボルド達。
「ぴぃぴぃ! ポポル様、お許しを!」
「許してー! 許してー!」
 大型のコボルドは甲冑を鳴らしながら大地へ降り立つ。その巨体を支える程大きな鉱山獣を撫でまわし、頬ずりしながら叫ぶ。
「あたちの可愛いゲジゲジちゃ~ん。ご飯をあげるから待ってなさぁ~い」
 しかし普段は餌が置かれている祭壇のような場所には何もない。
「ちょっと~エサ係はどうしたのぉ~ん?」
 見ればそこには二匹のコボルドが倒れていた。既に息はない。
 連日続く過剰な労働と空腹が二人を殺したのだ。その亡骸の傍には人間からもらった小さな食べ物の袋が残っていた。
「ゴミはかたずけてよねぇ~ん」
 合図と共に鉱山獣はその長い身体を振るい、死体を隅っこに吹き飛ばす。
 その死体を片付ける為に集まってきたコボルド達は、ぴぃぴぃと泣きながら溶鉱炉を後にした。

解説

●目的
石集めのポポルの撃破。或いは、その代替案による解決。


●概要
ブラストエッジ鉱山北西部にあるコボルド族、イヲの集落に突入する。
先の突入によって開示されたルートは迷うこと無く最短時間で突破する事が出来る。
石集めのポポルと呼ばれるイヲの集落の族長を撃破し、この集落を解散させる事が目的となる。
しかし族長を撃破せずとも、この集落を戦闘から開放する事ができれば、作戦は成功とする。
イヲの集落は、結局の所最大勢力であるマハに支配された奴隷階級にある。
戦意はさして高くない。それをどのように利用するかは君達次第だ。


●情報開示率
80%


●敵情報
「石集めのポポル」
鉱石採掘を担当とするイヲ族の集落を纏める大型コボルド。サイズ2。
鉄製の鞭を持ち、身体の要所を上質な鉄鎧で覆っている。
鉱山獣をこよなく愛している。

「ゲジゲジちゃん」
ポポルのペット。大型の鉱山獣。サイズ3。
普通の鉱山獣よりも圧倒的に強い。

「鉱山獣」
風属性攻撃を無効化する、毛虫のような何か。
鋭い牙と雷撃を放出する事で戦う。コボルドより強い。

「コボルド」
普通のコボルド。
イヲのコボルドは戦闘員というよりは作業員であり、戦闘に向かない。


●ギミック
「癒しの泉」 わずかに生命力を回復
「コボルド鍵扉」 シーブスツールで解錠可能
「クズ石」 鉱山獣のエサになる石
「溶鉱炉」 鉄を作る為の溶鉱炉。またはマテリアルを抽出する為の装置


●同行者
シュシュ・アルミラとホロンが強制同行。
シュシュは霊闘士。ホロンはコボルド。覚醒者程ではありませんが、一般兵よりは強いです。種族的に。

マスターより

お世話になっております、神宮寺でございます。

ダンジョンアタック依頼については、前回である「ブラストエッジ鉱山攻略戦:突入編」をご覧下さい。
イヲの領域はお試しみたいなものなので、十分今回で解決できる難度です。
尚、族長を討つ以外の方法や、自分たち独自の策でこの問題を解決出来るなら、それで成功とします。
余談ですが、OPではコボルド達が日本語喋ってますが、実際は会話はホロンを介さない限り不可能です。

それでは宜しくお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/04/15 05:01

参加者一覧

  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 天に届く刃
    クリスティン・ガフ(ka1090
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 絆の雷撃
    ヒースクリフ(ka1686
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • →Alchemist
    イェルバート(ka1772
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 飴玉お姉さん
    テトラ・ティーニストラ(ka3565
    エルフ|14才|女性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 鉱山攻略戦:突入編相談卓2
神楽(ka2032
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/04/07 02:20:10
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/02 19:45:52