ゲスト
(ka0000)
天の歪を描く
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/04/14 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/04/23 22:00
オープニング
●
山道を単身歩く一人の男。旅人――というにはやや貧相な体つきだ。
装備からも旅慣れた感じはしない。いやに軽装で、護身に使えそうな武器の一つも持っていない。
いや、武器なら持っていた。筆だ。そう、絵描きにとって筆とは武器に他ならない。
己が魂の迸りを描画する為の絵筆は、蒼界東方の島国にいたとされる侍の刀と同じ類の物だ。
少なくともこの男は――シギニスという異端の絵描きはそう思っていた。
男の異常性はその美意識の歪さにある。
誰もが美しいと感じるもの。男はそれに魅力を感じない。
誰もが醜いと謗るものにこそ、男は焦がれる。
それは絵描きとしては致命的な欠陥だ。絵描きは美を描き、美を感じた客がその絵を買う事で生計を立てる。
であれば、彼の描く絵に買い手はいない。彼の絵描きとしての実力は確かなものであったが、全くといっていいほど評価はされなかった。
だが、シギニスはそれでかまわないと思っていた。他者に理解される為に迎合するくらいならば命を投げ捨てる――この男はそういう人間なのだ。
しかし、男の芸術性を奮わす対象はそういない。
彼は単純にグロテスクな物を好む訳ではない。常人には理解できない微妙な一線が彼の中にはあった。
その彼が今熱を上げているのは――歪虚。
人を殺し、命を奪い、無へ誘う虚無の化身。人とは決して相容れぬ異形をこそ、絵描きは愛した。
以前魅入られた馬の姿を模した歪虚は素晴らしかった。全てに恐れられる姿に、何も感じぬ心を宿すそれには心底惹かれた。
だが、それももういない。悠然と走り回る姿を描きたいが為に人外の力を行使する狩人の助力を得て――その際に、其れは失われた。
その結果には文句は無かった。だが、一度味わった絶対不可逆の美は、生半可な存在では筆を握らせない弊害を残した。
――そうして、男は旅立ち辺境の土地へとやってきた。
此処は歪虚と人間の覇権を問う戦いの最前線。おぞましい異形を見るなら、これ以上に適した場所は存在しないだろう。
そして、
「ハハ――ハハハハハハハハッ!!」
彼は目にする。
其れは天空を舞う異形の翼。
地上を這い回る愚かな人の子へ影を落とす空の怪物。
その羽ばたきに草木は揺らぎ、その眼光に畜生は怯え逃げ、その嘶きに空さえ震える。
翼を広げた姿は十メートルを超える巨大な鳥。大きさも当然ながら、体の細部に至るまでが異常を具現している。
嘴は野生のそれとは既に別次元の武装へと変貌しており、足の爪は能が在ろうが無かろうが隠し切れないほどに巨大化していた。
人の踏み入らぬ山に潜む空の主。それを目にしたシギニスは嗤いが堪えられなかった。
この声が聞きつけられれば自分は瞬く間に八つ裂きにされるだろう。男の戦闘能力ではそれこそ吹くだけで死に耐える。
だが、それでも構わない。アレを目に焼き付ける事が出来るのなら、刹那の後に訪れる死など何の問題も無い。
そうして、シギニスは嗤い続けた。怪鳥を目にして笑い続ける姿を他者が見たなら確実に狂っていると思われ――否、狂っている事など最初から分かっていた。
●
何の因果か、男は生きていた。
あの怪鳥に聴力が無いのか、ただ単に運が良い――いや、悪いのか。
どちらにせよ、生きている以上は次の欲を出すべきだ。人間の美徳など知った事ではないが、どこまで貪欲に己を全うする悪業だけは是と思っている。
あれを描きたい。かつて描いた馬の様に。かつて悠然と地を駆け――無様に果てた怪馬の様に。
――ここに来て、男は己の内なる欲求の一つに気づく。
己の求める醜の美、それは正常の破却から成るものなのかもしれない。
それが走るなら、足を圧し折り。それが泳ぐなら、水を抜き去り。それが飛ぶなら、翼を手折ろう。
己の普通正常常道平常絶対を、その悉くを蹂躙された生物はなんて醜く――なんて、美しい事か。
死にながら生きる欠損の動物、無でありながら有として他に影響する歪虚。大切なのはその矛盾。壊れているからこそ、こんなにも胸を打つ。
「――墜としてやる」
頭上の死角へ告げる。事も無げに陽を遮る空の帝王、その存在を落としてやる。
不自由が闊歩する地上へと墜落させる。アタリマエの飛行能力、それを完全に奪ってやる。
それがどれだけの屈辱を与える事か。それがどれだけの絶望を与える事か。
地を這う空の主。惨め。惨め。惨めにも程がある。
それを絵にされる。最高の恥辱。最低の侮辱。
想像するだけで気が狂う。
ならば、
実践しよう。
その果てを体感しよう。
山道を単身歩く一人の男。旅人――というにはやや貧相な体つきだ。
装備からも旅慣れた感じはしない。いやに軽装で、護身に使えそうな武器の一つも持っていない。
いや、武器なら持っていた。筆だ。そう、絵描きにとって筆とは武器に他ならない。
己が魂の迸りを描画する為の絵筆は、蒼界東方の島国にいたとされる侍の刀と同じ類の物だ。
少なくともこの男は――シギニスという異端の絵描きはそう思っていた。
男の異常性はその美意識の歪さにある。
誰もが美しいと感じるもの。男はそれに魅力を感じない。
誰もが醜いと謗るものにこそ、男は焦がれる。
それは絵描きとしては致命的な欠陥だ。絵描きは美を描き、美を感じた客がその絵を買う事で生計を立てる。
であれば、彼の描く絵に買い手はいない。彼の絵描きとしての実力は確かなものであったが、全くといっていいほど評価はされなかった。
だが、シギニスはそれでかまわないと思っていた。他者に理解される為に迎合するくらいならば命を投げ捨てる――この男はそういう人間なのだ。
しかし、男の芸術性を奮わす対象はそういない。
彼は単純にグロテスクな物を好む訳ではない。常人には理解できない微妙な一線が彼の中にはあった。
その彼が今熱を上げているのは――歪虚。
人を殺し、命を奪い、無へ誘う虚無の化身。人とは決して相容れぬ異形をこそ、絵描きは愛した。
以前魅入られた馬の姿を模した歪虚は素晴らしかった。全てに恐れられる姿に、何も感じぬ心を宿すそれには心底惹かれた。
だが、それももういない。悠然と走り回る姿を描きたいが為に人外の力を行使する狩人の助力を得て――その際に、其れは失われた。
その結果には文句は無かった。だが、一度味わった絶対不可逆の美は、生半可な存在では筆を握らせない弊害を残した。
――そうして、男は旅立ち辺境の土地へとやってきた。
此処は歪虚と人間の覇権を問う戦いの最前線。おぞましい異形を見るなら、これ以上に適した場所は存在しないだろう。
そして、
「ハハ――ハハハハハハハハッ!!」
彼は目にする。
其れは天空を舞う異形の翼。
地上を這い回る愚かな人の子へ影を落とす空の怪物。
その羽ばたきに草木は揺らぎ、その眼光に畜生は怯え逃げ、その嘶きに空さえ震える。
翼を広げた姿は十メートルを超える巨大な鳥。大きさも当然ながら、体の細部に至るまでが異常を具現している。
嘴は野生のそれとは既に別次元の武装へと変貌しており、足の爪は能が在ろうが無かろうが隠し切れないほどに巨大化していた。
人の踏み入らぬ山に潜む空の主。それを目にしたシギニスは嗤いが堪えられなかった。
この声が聞きつけられれば自分は瞬く間に八つ裂きにされるだろう。男の戦闘能力ではそれこそ吹くだけで死に耐える。
だが、それでも構わない。アレを目に焼き付ける事が出来るのなら、刹那の後に訪れる死など何の問題も無い。
そうして、シギニスは嗤い続けた。怪鳥を目にして笑い続ける姿を他者が見たなら確実に狂っていると思われ――否、狂っている事など最初から分かっていた。
●
何の因果か、男は生きていた。
あの怪鳥に聴力が無いのか、ただ単に運が良い――いや、悪いのか。
どちらにせよ、生きている以上は次の欲を出すべきだ。人間の美徳など知った事ではないが、どこまで貪欲に己を全うする悪業だけは是と思っている。
あれを描きたい。かつて描いた馬の様に。かつて悠然と地を駆け――無様に果てた怪馬の様に。
――ここに来て、男は己の内なる欲求の一つに気づく。
己の求める醜の美、それは正常の破却から成るものなのかもしれない。
それが走るなら、足を圧し折り。それが泳ぐなら、水を抜き去り。それが飛ぶなら、翼を手折ろう。
己の普通正常常道平常絶対を、その悉くを蹂躙された生物はなんて醜く――なんて、美しい事か。
死にながら生きる欠損の動物、無でありながら有として他に影響する歪虚。大切なのはその矛盾。壊れているからこそ、こんなにも胸を打つ。
「――墜としてやる」
頭上の死角へ告げる。事も無げに陽を遮る空の帝王、その存在を落としてやる。
不自由が闊歩する地上へと墜落させる。アタリマエの飛行能力、それを完全に奪ってやる。
それがどれだけの屈辱を与える事か。それがどれだけの絶望を与える事か。
地を這う空の主。惨め。惨め。惨めにも程がある。
それを絵にされる。最高の恥辱。最低の侮辱。
想像するだけで気が狂う。
ならば、
実践しよう。
その果てを体感しよう。
解説
『依頼内容』
絵描き、シギニスからの依頼になります。
辺境地域のとある山に生息する大型の鳥雑魔を相手にしていただきます。
依頼主から特殊な要求があり、それに従い依頼をこなしていただく事になります。
・条件1 敵雑魔の飛行能力の完全な抹消。
・条件2 飛行能力の排除後から依頼人が雑魔の絵を描き終えるまでの間、対象の雑魔を逃がしてはいけない。
・条件3 絵の完成まで敵を倒してはいけない。
・条件4 依頼人の護衛。
以上になります。が。
依頼人からは雑魔の討伐は依頼されていませんが、歪虚の存在は見逃す事は出来ません。
こちらも対応していただきたいと思います。
『大型鳥雑魔』
全長十メートルを超える巨体が自由に空を舞う強敵です。
その体から繰り出される攻撃の威力は推して知るべしですが、それ以上に脅威なのはその移動能力です。
早急に地に落としたいところですが、相応の工夫が必要とされるでしょう。
生息場所は山。としかわかっていません。
巣のような場所は見つかっていませんが、時間問わず大抵の場合山の上空を旋回しているので発見は極めて容易です。
『依頼人・シギニス』
相当な奇人です。が、真っ当な思考は出来るので敵に突撃したりはしません。
たまに奇声を上げます。注意しても止まらない、病気のようなものです。
また相当頑固な人物でもあり、やりたくない事は絶対にやりません。
非常に面倒くさい依頼人です。
絵描き、シギニスからの依頼になります。
辺境地域のとある山に生息する大型の鳥雑魔を相手にしていただきます。
依頼主から特殊な要求があり、それに従い依頼をこなしていただく事になります。
・条件1 敵雑魔の飛行能力の完全な抹消。
・条件2 飛行能力の排除後から依頼人が雑魔の絵を描き終えるまでの間、対象の雑魔を逃がしてはいけない。
・条件3 絵の完成まで敵を倒してはいけない。
・条件4 依頼人の護衛。
以上になります。が。
依頼人からは雑魔の討伐は依頼されていませんが、歪虚の存在は見逃す事は出来ません。
こちらも対応していただきたいと思います。
『大型鳥雑魔』
全長十メートルを超える巨体が自由に空を舞う強敵です。
その体から繰り出される攻撃の威力は推して知るべしですが、それ以上に脅威なのはその移動能力です。
早急に地に落としたいところですが、相応の工夫が必要とされるでしょう。
生息場所は山。としかわかっていません。
巣のような場所は見つかっていませんが、時間問わず大抵の場合山の上空を旋回しているので発見は極めて容易です。
『依頼人・シギニス』
相当な奇人です。が、真っ当な思考は出来るので敵に突撃したりはしません。
たまに奇声を上げます。注意しても止まらない、病気のようなものです。
また相当頑固な人物でもあり、やりたくない事は絶対にやりません。
非常に面倒くさい依頼人です。
マスターより
こんにちは、硲銘介です。
今回の依頼は変態絵描きシギニスさんからの無茶振りです。
自分の以前のシナリオ、【歪を描く】でもシギニスは登場していますが、特に確認する必要性はありませんのでご安心ください。
どうでもいいことですが、暫く触らない内にシギニスさんの変人具合に磨きがかかりまくっています。
大丈夫かこの人。いや、駄目でしょうけど。
戦闘そのものに縛りがある系統の依頼。
面倒でしょうが頑張っていただきたいと思います。
自分も面倒ですが頑張ります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
今回の依頼は変態絵描きシギニスさんからの無茶振りです。
自分の以前のシナリオ、【歪を描く】でもシギニスは登場していますが、特に確認する必要性はありませんのでご安心ください。
どうでもいいことですが、暫く触らない内にシギニスさんの変人具合に磨きがかかりまくっています。
大丈夫かこの人。いや、駄目でしょうけど。
戦闘そのものに縛りがある系統の依頼。
面倒でしょうが頑張っていただきたいと思います。
自分も面倒ですが頑張ります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/04/22 06:30
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 レイオス・アクアウォーカー(ka1990) 人間(リアルブルー)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/04/14 17:39:22 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/14 02:30:43 |