• 不動
  • 調査

【不動】無くしてはいけないものだから

マスター:稲田和夫

このシナリオは3日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2015/04/15 07:30
リプレイ完成予定
2015/04/27 07:30

オープニング

「『前略 愛しいハインリッヒ。遠い辺境の地で、あなたはご無事なのでしょうか。貴方のいない夜は余りに長く、貴方の事を想うと不安で、食事も喉を通りません。ああ、早く帰って来て私の愛しい人……』なーんて事が書いてあるのかナ~?」
 
 ゾンネンシュトラール帝国第五師団ヒンメルリッターの一人、小鷲は自身の駆るグリフォンの背で一人けらけらと笑い転げた。
 いや、本当に転がったら危ない。
 彼は今グリフォンに乗って、辺境の要塞ノアーラ・クンタウへ向かって飛んでいるのだから。
「もっとゆっくり飛んでいいヨ、イェンロン。重いデショ~」
 小鷲のグリフォンが吊り下げているのはコンテナであった。
 中身の重さを含めてギリギリグリフォンが運んで飛べるような重さに計算されたそれは、軽量ながらも堅固な素材で作られている。
「家族や恋人……良いよネ。確か、第五師団の家族宛のも何通かある筈だヨ」
 小鷲の口調は、単にリアルブルーに家族や知人が残っているから、というのとも違うニュアンスを含んでいた。
 それはさておき、彼がわざわざ空輸しているコンテナの中身は郵便物。
 現在の「最前線」である辺境で戦う兵士やハンターたちへの、家族や知人から手紙である。
 機導術が発達したクリムゾンウェストにも様々な通信手段が存在しているが、コストや設備と速さを天秤にかけた場合、これは有効な手段であった。
 まして、現在の帝国は他国の戦争である聖地奪還に数多くの兵士を送り出している。
 当然、実際最前線で命を危険に晒す兵士たちの家族や知人の心情は察するに余りある。そういった状況で、帝国の誇るグリフォンライダーに郵便屋をやらせるというのは、帝国は兵士の福利厚生を決してないがしろにしない、という良い宣伝にもなるのだ。
「ロマンのあるんだかないんだか解らない話だヨ~……」
 欠伸をする小鷲だったが、直後いきなり表情を変えて叫んだ。
「イェンロン、上!」
 グリフォンが鋭く鳴いて、身体を傾けた瞬間、その真横を頭上から放たれたガトリングの砲火が掠めた。
 攻撃して来た敵を見定めようとした小鷲は驚愕した、彼の頭上を巨大な黒い影が複数飛んでいるのだ。
「……量産型リンドヴルム?!」


「外したようであるな……むぐむぐ」
 その、高空を征く屍機竜の背にて、フードを目深に被った男が呟いた。
「フフ~ン♪ キルゼムオールすればノォプロブレム~♪」
 別の竜の背に乗った、何かのヘルメットを被った男が鼻歌交じりに呟く。
「けどさー、なーんかデッカイの大切そーに運んでんよね。 ジュウヨウキミツ、みたいな? ヤっちゃわね? きゃははは」
 真紅のドレスを纏った女が竜の背で笑う。とはいえ彼女も人の事は言えない。何故なら、彼女の乗る竜は巨大な鉄塊……アイアンメイデンを一緒に運ばされているのだから。
「いや、護衛もついていない以上、恐らく只の軍需物資だ。それも大した量ではあるまい」
 青白い顔に陰気な表情を浮かべた男はそう首を振ると、ひゅんっと手にした鞭を振るう。
 直後、編隊の一番下を飛んでいたリンドヴルムが編隊を離脱し眼下のグリフォンへと向かっていく。それを見てヘルメットの男も立ち上がった。
「急なビズィネスを思い出しマシタ~。グッバーイ、ミスター♪」
「あれ、飛び降りちゃった。きゃはははっ、キョーチョーセーとかなしかよ、マジウケるー。……つーか、シカトするようなことゆっといて、やっぱヤッちゃうワケ?」
「作戦行動中だ。目撃者は消した方が良い。……それに」
 相手はグリフォンライダーだからな、と男は聞こえないように付け足した。
「我らにもお互い事情がある、ということである」
 フードの男はそう言うと、齧り終えた林檎の芯を無造作に放るのであった。


 林檎の芯は、全くの偶然ながら降り注ぐ銃弾を必死に交わす小鷲のぶつかった。
「……」
 小鷲の唇がひくっと引きつる。
「今、四人くらいからコケにされたような気がして来たヨ……?」
 確認のために頭上を見上げれば、編隊は遥か彼方に飛び去ってしまっていた。
「撃墜も確認しないでいっちゃうんだ……? ふーん……解ったヨ」
 突如、自分の背中に発生した強烈な殺気にグリフォンは不安げな鳴き声を上げた。
 直後、ロープが切断され、コンテナは遥か眼下にひろがる森へと落下していった。
「運んだままじゃ逃げ切ることも出来ないヨ。でも、後で必ず……」
 みるみる小さくなっていくコンテナを眺める小鷲であったが、次の瞬間冷たい目で叫んだ。
「黒鳳凰公司の凶鸞を舐めやがって! 九族まで八裂きにしてやる! 殺(シャー)!」


「遅いな……」
 ノアーラ・クンタウに臨時に設けられた仮設陣地にて、師団長のロルフ以下、今回の遠征に参加していた第五師団のメンバーは、心配そうに顔を寄せ合っていた。
 既に、予定の時刻はとっくに過ぎていた。
「師団長、誰かを捜索に出すべきでは?」
 堪り兼ねたように団員の一人が言い出す。
「随分とお困りのようですわね?」
 と、そこに第十師団長ゼナイドが割って入る。
「わたくしの第十師団から兵士をお貸しても良くてよ? 地上からも捜索した方が効率は良いでしょう」
「ゼナイドさん。お気持ちは嬉しいですが、今回彼が運んでいたのは軍の書類ではなく、民間人からの手紙です。そこまで師団の兵力を割くわけには……」
 ロルフがそう応じた時、ずっと空を眺めていた兵士の一人が叫んだ。
「戻って来ました!」

「グリフォンだけ……? しかも、この傷……」
 ロルフは考え込んだ。戻って来たのは乗り手を載せておらず、更に手紙を収めたコンテナも持っていないグリフォンだけであった。
 ふと、ロルフはグリフォンの鞍に紙片が挟まれていることに気付く。
「これは……彼の字か」
 血で書かれた読みにくい字を見ていたロルフの表情が険しくなる。
「リンドヴルム型……!」
 それを聞いていたシュタークが口を挟んだ。
「新手か? ……あたしたちがここを動くより、ハンターに頼んだ方が良いかもな」


 暗い森の中、断末魔の悲鳴が上がった。
 リンドヴルムは、翼は勿論、全身をバラバラにされ胴体だけで蠢いていた。
 その頭に無造作に戟を振り下ろして止めを刺した小鷲は、ようやく気が済んだのか大きく息を吐いた。
「もう死にやがった……つまんない……」
 量産型リンドヴルムは、用途に応じて強化の度合いが異なるようで、今回のものは、輸送に特化した戦闘能力の低い個体だったようだ。
 また、小鷲がリアルブルー時代の経緯からか、年齢不相応に戦闘慣れしていたことも、彼が勝利できた要因だろう。
「……なんて、こんな事やってる場合じゃないヨ!? 早く手紙を探さないとだヨ~!」
 慌てて駆けだした小鷲は、近づくハンターたちに気付かなかった。

解説

★目的
切り離された手紙類の捜索と回収

★場所
ノアーラ・クンタウ周辺の森林地帯。既に周囲は暗くなり始めている。

★コンテナ
グリフォンが抱えていた箱……というかコンテナは万が一の落下に備えて丈夫な素材で作られた1立方メートルほどの大きさの箱。
かなり頑丈だが、今回は戦闘に巻き込まれてもいるので壊れていないとは言い切れない。
落下地点周囲には深い沼や川などは無いので沈んでいる心配はないと思われる。

※PL情報
発見時、箱は少し破損して手紙が零れている。手紙は全て無事。この時、うっかり他人の手紙を読んでしまったり、自分宛の手紙を見つけたり……というのも可能。

★敵
エルトヌス型
全身を機械的な甲冑で固めた改造ゾンビ。機導の補助によりパワーと頑健さは増しているが、動きは鈍い。
小鷲を襲った量産型リンドヴルムが空輸していたコンテナに詰まっていた。
今回のものは“野戦型”。銃身の短い機銃の他、両腕の拳に山刀を装備している。
総数は不明だがそこまで多くは無いと思われる。

★小鷲(シャオシュウ)
第五師団のグリフォンライダー。ショタ。戟や弩などを得意とする。
【剣機】血は対価、贖うは凱歌
【黒祀】緑の狂気は地獄で無邪気に踊る
グライフに乗って青空を行こう!
などに登場。
リプレイ開始時点で自動的に合流する。
戦闘による負傷はあるが重体というほどではない。
OPの通り、相手が戦闘能力の低いタイプであったことを考慮しても、不自然に高い戦闘能力を持ち、戦闘において不安はないと思われる。

★状況の補足
また、OPに登場した謎の集団は既に遠くに飛び去っているのでこの依頼で接触することはない

マスターより

お世話になっております。稲田です。
まず、注意点として解説にも明記してあります通りOPに登場したどこかで見たことあるような無いような変態×編隊〇……に騎乗していた方々はこの依頼には登場しません。彼らに直接ご用のある方は、近日公開される石田MS、朝臣MS、植田MS、T谷MSの……おっと! これ以上は秘密です。
まして、そこに神宮寺SDや湖欄MS……ゲフンゲフン!
ともあれ、通信手段の発達した現代でも手紙は特別な意味を持っています。まして、戦場で戦う兵士たちにとってのそれはかけがえのないもの。
どうか無事に前線の兵士たちに届けてあげてください。
それでは、興味を持っていただければ幸いです。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/04/27 01:15

参加者一覧

  • 缶ビールマイスター
    鈴木悠司(ka0176
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 理由のその先へ
    レホス・エテルノ・リベルター(ka0498
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 戦場に咲く白い花
    コーネリア・デュラン(ka0504
    エルフ|16才|女性|疾影士
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • ヒーローを目指す者
    鳴神 真吾(ka2626
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓です
メトロノーム・ソングライト(ka1267
エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/04/15 05:20:01
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/15 05:16:38