同盟領内のとある集落には、こんな言い伝えがあった。

「大口叩けりゃ一人前」

　それは、身の丈に合わない偉そうな事を堂々と言ってのける様になれば、大人として認めてやる……という意味ではない。
　文字通り、大口を叩くのだ——物理的に。

　解説しよう。
　大口（ビッグマウス）というのは、この地方に現れるモンスターの名前なのだ。
　それは遠目には普通のカエルの様にも見える。
　だが、カエルとは明らかに違う点がひとつあった。
　その身体の殆ど全てが口なのだ。
　リアルブルー出身者には「がま口にカエルの足が付いた様な形」と言えば、わかりやすいだろうか。
　そう、あのパカッと開く財布のガマグチだ。

　大口はタテヨコ５０ｃｍ程度の、ほぼ丸い形をしている。
　一見したところ、身体には目も鼻も耳もない。
　それでどうやって周囲の様子を探っているのかは不明だが、獲物を見付けた大口はその丸い身体に付いた短い足でぴょんぴょんと跳ねて近付き、襲いかかる。
　その時には開きすぎて裏返しになるんじゃないか、という位に口が上下に開かれ——そして丸呑み。
　身長１ｍくらいの子供なら、軽く呑み込まれてしまう。
　大口は主に川や池などの水辺、しかも水深が浅い場所に現れる。
　これから暑くなるこの時期、子供達が水辺で遊ぶ機会も増えるが、それだけに大口と遭遇する危険も増える事になるだろう。

　だが、大人なら呑み込まれる心配はないし、覚醒者でなくとも物理で殴れば退治出来る程の弱さだった。

　というわけで。

　集落では夏を目前にしたこの時期に、若者の成人式を兼ねた大口退治を行うのが毎年の決まり事になっていた。
　大口を物理的に叩き、斬り、或いは……まあ、何でも良いからとにかく退治する事が出来れば成人と認められる。
　退治の際に自身も大きな口を叩いて、その胸に抱いた夢や希望、野望、大望などを周囲にアピール出来れば尚良し。

　しかし今年は、水辺に現れる大口の数がやけに多かった。
「こりゃあ、村の若い衆だけに任せんのは、危ねぇかもしんねぇな」
　集落の大人達は考えた。
「だども、これは成人の儀式だでなぁ」
「んだ、集落の大人が関わるわけにはいかねぇべ」
　しかし、外部の人間なら大人でも構わないだろう。
　大口の数も多いことだし、どうせならハンターに頼んだ方が安全ではないだろうか。


————


　かくして、ハンターオフィスに大口退治の依頼が貼り出される事となった。

　大口を叩きながら、大口を叩こう。
　仕事は簡単、何か大きな事を叫びながら大口を退治するだけだ。
　物理でも魔法でも、至近距離でも遠く離れた所からでも。
　大人も子供もお姉さんも、勿論お兄さんでもジサマもバサマも。
　年齢性別種族出身、一切不問。

「さあ、キミも大口を叩いて大人になろう！」

　元から大人でも、きっと更に良い感じの渋い大人になれるんじゃないかな！
　多分きっと！

集落の若者達（一般人）に混じって大口を叩きながら、大口を叩いて下さい（何

普通に戦っても構いませんが、集落の成人式にお邪魔するという状況につき、それなりに大きな口を叩いてみたり、夢や希望を語り（叫び）ながら戦うのが吉です。
（集落の老若男女がギャラリーとして見守っています）


敵：
・大口×いっぱい
直径５０ｃｍ程度のまん丸いがま口に、カエルの足が付いた様なモンスター。ヴォイドではない。
大きな口で呑み込み攻撃をして来るが、身長が１ｍを越える相手は大きすぎて呑み込めない。
万が一呑まれた時は、大口の背後から叩けばＯＫ。
一般人でも何人かでかかれば退治が可能なほど弱く、ハンターならほぼ一撃。
ただし今回はやたらと数が多いので、それなりに厄介。

※あまり調子に乗って大口を叩きすぎると、怒ったボスの超大口（スーパービッグマウス）が現れます（ＰＬ情報）
※ＰＣは超大口が現れる事は知りませんので、それなりのリアクション後にこれを攻撃する事になるでしょう。
※超大口の出現後、普通の大口は先に逃げて行きます。追う必要はありません。

・超大口×１
大口のボス。タテヨコ３ｍ超という、超大型。
ただ、身体が大きい分だけ動きは鈍いので、皆で叩けば怖くない。
一掃大きな口を叩きながら全員で攻撃すれば、皆が叩き終わる頃には逃げて行く。
（倒す必要はありません、追い払えばＯＫ）


現場：
集落の外れを流れる小川。
水深は深い場所でも大人の膝下程度。


※ＯＰ及び解説に明記された情報は、全てＰＣが知っているものとして構いません。

※情報として明示されていない事に関してはお任せします。
　ルール的に問題のない範囲において、ご自由にお楽しみ下さい。

お世話になっております、STANZAです。

某未完の大河ＦＴ小説に大口モンスターがいたっけな、と思いつつ。
……あれは魚でしたが。

とにかく、戦いながら途方もなくデカい事を思う存分に叫んで下さい。
コメディ寄りのノリでＯＫ、叫ぶだけなら何でも自由です（ただし蔵倫や公序良俗に反しない範囲で）
それが面白く、かつ「言うだけの事はある」とギャラリーを唸らせた参加者は、何かしらの称号を得られるかもしれません。
口だけでもなく、腕だけでもなく、バランスが大事。

何も気にせず、ただ大きな事を言って暴れるだけでも構いません。
結果的に「大口」達を追い払う事が出来れば成功です。

では、よろしくお願いいたします。