ゲスト
(ka0000)
剣物語
マスター:硲銘介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/04/27 07:30
- リプレイ完成予定
- 2015/05/06 07:30
オープニング
●
これは一人の男の物語。
男は、生粋の戦士だった。
その生まれは平凡な農家で彼が握っていたのは剣ではなく鍬だったが、その手に剣を握る機会はすぐに訪れた。
領土争いからなる小規模な戦、成人前に徴兵された彼はそこで初めて武器を取った。
柄を握り、刃を振り抜く。初めての動作だというのにそれは洗練されていた。
まったくの素人だった男は幾多もの敵兵を打ち倒し、それが領主の目に止まる事となった。
戦功をあげた男は領主の下で一兵士としての仕事を得る。剣を振るう事を役割づけられたのだ。
――天才とは、彼にこそ相応しい言葉だった。
彼の才覚は戦う事に特化していた。一対一の果し合いで彼に適う者など敵にも味方にもいなかった。
無論、天下無敵などという驕りはない。己は小さな領の一兵士に過ぎず、未だ見ぬ大海には自身を優に超える強者がいる事だろう。
そもそも、男は驕る事など知らない。
それまで戦いと無縁の暮らしをしてきた男の体は未だ未熟で、身を守る鎧が重く窮屈に感じられた。
その不自由さが男の内面をも鍛えたのかもしれない。心まで戦士へ変えていく彼が日々の精進を忘れる事はなかった。
努力と研鑽のその日々を辛いとは思わなかった。むしろ、自分は幸福だとさえ思えた。
天才と讃えられる事より、農民から出世した事より、ただ剣を握れる誇らしさがあった。
初めて手にしたその時、その手の感触を忘れない。体中の、細胞の一片までが剣を求めていた。己の存在はこの為にあるのだと理由も無く確信できた。
剣を持ち、己を鍛え、主の為に戦う。その在り方に、男は充足していた。
ある時、彼は上官にあたる者から、とある山道の警備を一人任された。
領地へ侵入しようとする外敵から国を、民を、主を守るための仕事。
困難ではあるが、だからこそ託したい。上官の言葉に男は奮起した。
山道の途中に建てられた山小屋に待機し、男はその任を忠実に果たす。
あくる日もあくる日も、己を鍛え上げる事を忘れずに、来るべき時を待ち続けた。
敵はすぐには現れなかったが、それもまた良しと男は考えた。
自身はまだ未熟である、勤めの時まで鍛錬を幾ら重ねても足りる事はない。
そうしてあくる日もあくる日も懸命に励み――やがて、男は戦士として完成する。
鍛え上げた肉体には見せ掛けではない、剣を振るう為の実用的な筋肉が備わった。
一般に伝わるそれを自身の才にて磨き上げ昇格させた剣は、最早一つの流派と言えよう。
体を包む鎧へ覚えるのも以前の煩わしさではなく一体感だった。装備を含めての自分だと認識出来ていた。
そこへ至り男は確信する。これならば何者にも打ち負けることは無い、と。
それは驕りではない。鍛錬で得た技と肉体、力からくる絶対の自信というものであった。
どの様な敵が来ようとも破ってみせよう。男は、待ち続けた。
●
――待ち続けて待ち続けて、幾年経とうとも、それでも敵はやってこない。
何故。
男は戦士として完成している。剣を手に戦う一兵士としては究極に届いたとさえ思えた。
だというのに。何故。
それも敵がいなければ何の役にも立たない。鍛えた体を、技を、どこで使えばいい。
何故何故何故。
幾度も繰り返す自問。与える答など男は持ち得ない。ただ待ち続けた彼は、疑いすらも持たない。
何故何故何故何故何故――――!
男は、戦士だった――戦士で、在り過ぎた。
故に、人の抱く感情に無頓着だった。中でも才能に恵まれた彼は、とりわけ嫉妬の念とは無縁だった。
農民出の若造が剣を振るい、華々しく勝利する様を妬ましく思う者は大勢いた。
その働きも立身出世を掴む為のものですらない。ただ、己の在り方を実践しただけの事だった。
だが、いかに男の理念が真っ直ぐで穢れぬものとて、それが正しく理解されるとは限らない。
曲解――否。男をこの僻地へ追いやった者達には、理解など知った事ではなかったのだろう。
ただ、邪魔だったというだけの話。その結果、男は戦略上何の価値も無い山へ飛ばされた。
愚直に剣だけを求めた男はそこがどんな所であるかも知らず、上官の言葉を信じ、研鑽に励むだけだった。
げに恐ろしきは男の一途さ。彼は他者の思惑など知らず何十年も待ち続け、そして、死んだ。
●
――足音。人の、足音。
それを耳にした時、死んだように休む全身が活性化した。
立ち上がる。全てはこの時の為。勤めを果たす時がようやく来た。
霞む視界の中の複数の人影。悲鳴が上がる中で男は標的に注視する。
長い時間の果てに男は真実、一つの極北へ到達していた。百余年を過ごし人の肉体が朽ちようとも、そこに残った想いが未だ活動を続けていた。
鋼の様に鍛え上げた肉体は喪失したが、代わりに本物の鋼を肉と代えた。剣を握る指先の感覚など一切無い。だというのに、剣先にまで意識が及ぶ錯覚。
剣を追うばかりで他者に、時代に、悉くに置き去りにされた男には、己が変じた異形の名すらも知り得ないが――死した男はいつしか虚無に呑まれ、歪虚へと転じていた。
中身の無い虚ろの甲冑――名を、リビングアーマー。肉を失うも、鎧をその代替とし現世を闊歩す鋼鉄の亡者。その精神も最早、人のものでは在り得ない。
鎧が重く歩を刻み、迫る先には一人の若い少女。腰を抜かしてその場にへたり込む彼女は恐怖に表情を固めている。
異形を目にして逃げ去る仲間に置き去りにされた少女は、どう見ても戦いに無縁なか弱い娘だった。
それは男だったものにも分かった。自分が待っていた敵は、研鑽の先にて討ち果たすべき相手はもっと、違った筈だった。
――それでも、剣は振り下ろされる。
女の体が裂け、血を噴き断末魔が止む時には、僅かな逡巡も失せた。
敵を倒した。
けど、これで終わりじゃない。
誰も此処は通さない。
通してはいけない――理由は、――――。
だからもっと、もっと戦う。
戦って戦って戦う。
戦いたい。
戦いたい。
戦いたい。
●
――息を切らしてハンターオフィスへ駆け込んだ若者達。彼らは涙しながら一つの昔話を語った。
それは彼らの住む町に伝わる話。戦乱にて潰えた、かつて一つの小国だった土地の物語。
土地の領主に仕えた憐れな兵隊――戦いを望み、強さを追い、ついに報われる事なく、人知れず果てた一人の男の物語。
昔話を研究するサークルに属する彼らはその話を調べ、男が送られたという山を突き止めて調査に向かったのだという。
それは純粋な探究心ゆえ。真贋の分からぬ昔話の内容に迫る、浪漫を追う行為であった。
そこで、彼らは知る事となった。伝え聞いた話が紛れも無い真実であり、それが――まだ終わっていなかったという現実を。
彼らは仲間の一人を失った。逃げるしかなかった無力を呪い、その場に泣き崩れひたすらに懇願した。
誰一人報われない、この物語を終わらせて欲しい、と――――
これは一人の男の物語。
男は、生粋の戦士だった。
その生まれは平凡な農家で彼が握っていたのは剣ではなく鍬だったが、その手に剣を握る機会はすぐに訪れた。
領土争いからなる小規模な戦、成人前に徴兵された彼はそこで初めて武器を取った。
柄を握り、刃を振り抜く。初めての動作だというのにそれは洗練されていた。
まったくの素人だった男は幾多もの敵兵を打ち倒し、それが領主の目に止まる事となった。
戦功をあげた男は領主の下で一兵士としての仕事を得る。剣を振るう事を役割づけられたのだ。
――天才とは、彼にこそ相応しい言葉だった。
彼の才覚は戦う事に特化していた。一対一の果し合いで彼に適う者など敵にも味方にもいなかった。
無論、天下無敵などという驕りはない。己は小さな領の一兵士に過ぎず、未だ見ぬ大海には自身を優に超える強者がいる事だろう。
そもそも、男は驕る事など知らない。
それまで戦いと無縁の暮らしをしてきた男の体は未だ未熟で、身を守る鎧が重く窮屈に感じられた。
その不自由さが男の内面をも鍛えたのかもしれない。心まで戦士へ変えていく彼が日々の精進を忘れる事はなかった。
努力と研鑽のその日々を辛いとは思わなかった。むしろ、自分は幸福だとさえ思えた。
天才と讃えられる事より、農民から出世した事より、ただ剣を握れる誇らしさがあった。
初めて手にしたその時、その手の感触を忘れない。体中の、細胞の一片までが剣を求めていた。己の存在はこの為にあるのだと理由も無く確信できた。
剣を持ち、己を鍛え、主の為に戦う。その在り方に、男は充足していた。
ある時、彼は上官にあたる者から、とある山道の警備を一人任された。
領地へ侵入しようとする外敵から国を、民を、主を守るための仕事。
困難ではあるが、だからこそ託したい。上官の言葉に男は奮起した。
山道の途中に建てられた山小屋に待機し、男はその任を忠実に果たす。
あくる日もあくる日も、己を鍛え上げる事を忘れずに、来るべき時を待ち続けた。
敵はすぐには現れなかったが、それもまた良しと男は考えた。
自身はまだ未熟である、勤めの時まで鍛錬を幾ら重ねても足りる事はない。
そうしてあくる日もあくる日も懸命に励み――やがて、男は戦士として完成する。
鍛え上げた肉体には見せ掛けではない、剣を振るう為の実用的な筋肉が備わった。
一般に伝わるそれを自身の才にて磨き上げ昇格させた剣は、最早一つの流派と言えよう。
体を包む鎧へ覚えるのも以前の煩わしさではなく一体感だった。装備を含めての自分だと認識出来ていた。
そこへ至り男は確信する。これならば何者にも打ち負けることは無い、と。
それは驕りではない。鍛錬で得た技と肉体、力からくる絶対の自信というものであった。
どの様な敵が来ようとも破ってみせよう。男は、待ち続けた。
●
――待ち続けて待ち続けて、幾年経とうとも、それでも敵はやってこない。
何故。
男は戦士として完成している。剣を手に戦う一兵士としては究極に届いたとさえ思えた。
だというのに。何故。
それも敵がいなければ何の役にも立たない。鍛えた体を、技を、どこで使えばいい。
何故何故何故。
幾度も繰り返す自問。与える答など男は持ち得ない。ただ待ち続けた彼は、疑いすらも持たない。
何故何故何故何故何故――――!
男は、戦士だった――戦士で、在り過ぎた。
故に、人の抱く感情に無頓着だった。中でも才能に恵まれた彼は、とりわけ嫉妬の念とは無縁だった。
農民出の若造が剣を振るい、華々しく勝利する様を妬ましく思う者は大勢いた。
その働きも立身出世を掴む為のものですらない。ただ、己の在り方を実践しただけの事だった。
だが、いかに男の理念が真っ直ぐで穢れぬものとて、それが正しく理解されるとは限らない。
曲解――否。男をこの僻地へ追いやった者達には、理解など知った事ではなかったのだろう。
ただ、邪魔だったというだけの話。その結果、男は戦略上何の価値も無い山へ飛ばされた。
愚直に剣だけを求めた男はそこがどんな所であるかも知らず、上官の言葉を信じ、研鑽に励むだけだった。
げに恐ろしきは男の一途さ。彼は他者の思惑など知らず何十年も待ち続け、そして、死んだ。
●
――足音。人の、足音。
それを耳にした時、死んだように休む全身が活性化した。
立ち上がる。全てはこの時の為。勤めを果たす時がようやく来た。
霞む視界の中の複数の人影。悲鳴が上がる中で男は標的に注視する。
長い時間の果てに男は真実、一つの極北へ到達していた。百余年を過ごし人の肉体が朽ちようとも、そこに残った想いが未だ活動を続けていた。
鋼の様に鍛え上げた肉体は喪失したが、代わりに本物の鋼を肉と代えた。剣を握る指先の感覚など一切無い。だというのに、剣先にまで意識が及ぶ錯覚。
剣を追うばかりで他者に、時代に、悉くに置き去りにされた男には、己が変じた異形の名すらも知り得ないが――死した男はいつしか虚無に呑まれ、歪虚へと転じていた。
中身の無い虚ろの甲冑――名を、リビングアーマー。肉を失うも、鎧をその代替とし現世を闊歩す鋼鉄の亡者。その精神も最早、人のものでは在り得ない。
鎧が重く歩を刻み、迫る先には一人の若い少女。腰を抜かしてその場にへたり込む彼女は恐怖に表情を固めている。
異形を目にして逃げ去る仲間に置き去りにされた少女は、どう見ても戦いに無縁なか弱い娘だった。
それは男だったものにも分かった。自分が待っていた敵は、研鑽の先にて討ち果たすべき相手はもっと、違った筈だった。
――それでも、剣は振り下ろされる。
女の体が裂け、血を噴き断末魔が止む時には、僅かな逡巡も失せた。
敵を倒した。
けど、これで終わりじゃない。
誰も此処は通さない。
通してはいけない――理由は、――――。
だからもっと、もっと戦う。
戦って戦って戦う。
戦いたい。
戦いたい。
戦いたい。
●
――息を切らしてハンターオフィスへ駆け込んだ若者達。彼らは涙しながら一つの昔話を語った。
それは彼らの住む町に伝わる話。戦乱にて潰えた、かつて一つの小国だった土地の物語。
土地の領主に仕えた憐れな兵隊――戦いを望み、強さを追い、ついに報われる事なく、人知れず果てた一人の男の物語。
昔話を研究するサークルに属する彼らはその話を調べ、男が送られたという山を突き止めて調査に向かったのだという。
それは純粋な探究心ゆえ。真贋の分からぬ昔話の内容に迫る、浪漫を追う行為であった。
そこで、彼らは知る事となった。伝え聞いた話が紛れも無い真実であり、それが――まだ終わっていなかったという現実を。
彼らは仲間の一人を失った。逃げるしかなかった無力を呪い、その場に泣き崩れひたすらに懇願した。
誰一人報われない、この物語を終わらせて欲しい、と――――
解説
『依頼内容』
とある町で昔話を研究する者達からの依頼です。
遥か昔から山道で敵を待ち続けた兵士――その慣れの果て、動く鎧リビングアーマーの討伐をお願い致します。
『敵』
歪虚、リビングアーマーが一体だけです。
これまで交戦記録が存在しない為詳しい戦闘力は不明です。
しかし、昔話の記述から察するにこと剣技に関しては相当の腕前を持っていると推測されます。
一般的なリビングアーマーと混同して考えるのは危険かもしれません。
装備は一般兵士が持つ剣と盾、それと全身を包む鎧になります。
『地形』
対象は山道の途中、古い山小屋の近くにある岩に腰掛けて来訪者を待ち構えているようです。
おそらく、その場所から大きく移動する事は無いでしょう。
問題の山は基本的に人が訪れる事はありません。
山小屋へ向かう山道も古くから使われておらず荒れています。
しかし、元は道として利用されていた事から、それほど無茶な地形では無いので戦闘には差し支えないと思われます。
とある町で昔話を研究する者達からの依頼です。
遥か昔から山道で敵を待ち続けた兵士――その慣れの果て、動く鎧リビングアーマーの討伐をお願い致します。
『敵』
歪虚、リビングアーマーが一体だけです。
これまで交戦記録が存在しない為詳しい戦闘力は不明です。
しかし、昔話の記述から察するにこと剣技に関しては相当の腕前を持っていると推測されます。
一般的なリビングアーマーと混同して考えるのは危険かもしれません。
装備は一般兵士が持つ剣と盾、それと全身を包む鎧になります。
『地形』
対象は山道の途中、古い山小屋の近くにある岩に腰掛けて来訪者を待ち構えているようです。
おそらく、その場所から大きく移動する事は無いでしょう。
問題の山は基本的に人が訪れる事はありません。
山小屋へ向かう山道も古くから使われておらず荒れています。
しかし、元は道として利用されていた事から、それほど無茶な地形では無いので戦闘には差し支えないと思われます。
マスターより
こんにちは、硲銘介です。
今回は動く鎧が相手となる依頼です。
生前は中々の使い手だったようですが、所詮は剣士。
能力的には強いですが得手不得手はハッキリしています。
更には相手はたった一体ですよ。
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
今回は動く鎧が相手となる依頼です。
生前は中々の使い手だったようですが、所詮は剣士。
能力的には強いですが得手不得手はハッキリしています。
更には相手はたった一体ですよ。
それでは、皆様の参加をお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/05/04 22:56
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談卓 夕鶴(ka3204) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/04/27 00:00:44 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/24 01:53:27 |