• 調査

アイリス・レポート:再会編

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
APV

難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/04/28 12:00
リプレイ完成予定
2015/05/07 12:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

 ――あの日の事は、今でもはっきりと覚えている。
 燃える森の中を走った事。靴底の枯れ葉の感触。焼ける肉と血の匂い。
 エルフハイム警備隊の隊長であった妹は、自らの部下の亡骸に囲まれて背を向けていた。
「アイリスッ!」
 呼び声に振り返った妹はその両腕に息絶えた少女を抱えていた。
 白い巫女装束の胸に夥しい量の血が滲み、ぽたぽたと妹の身体を伝う。
「ジエルデ姉さん……」
「その子は誰? 何が起きているの? 周りの人達は!? 何故森に人間が居るのっ!?」
 何もわからず混乱する姉。妹はそれを憐れむように……そして蔑むように眉を潜める。
「可哀想な姉さん。あなたはあまりにも優しすぎた」
「何を言っているの……?」
「ここでお別れです。この子はどうか丁重に弔ってあげて。何とか守ってあげたかったけど……私が弱かったから」
 歩み寄り、そっと少女を血に下ろす。そんな妹に背後から矢が放たれた。
「居たぞ! 裏切り者のアイリスだ!」
「器を持ちだした挙句手にかけるとは……貴様!」
 腕に刺さった矢を抜き、アイリスは双剣を構える。襲いかかる兵をいなし、姉を一瞥すると闇の中へ姿を消した。
「待って! 私の妹なんです!」
「ジエルデ殿はこちらへ。長老会より保護の命令を承っています」
「あの子は……あの子は何もしてない! あの子が裏切りなんて何かの間違いなんです! お願いだから……助けて下さい!」
 左右から男に掴まれ、強引に引きずり戻される。
 戦場と化したその地にはもう、女の声を聞き入れる者は一人も居なかった。

「違うんです。あの子は何も……だって優しい子なんです」
 人間とエルフの諍いで家を失った少女を家族として受け入れ、今日まで本当の妹として接してきた。
 森を守って恩返しすると、毎日武術の鍛錬に打ち込んでいた。余所者と陰口を言われても決して諦めなかった。
「だが、アイリスは人間と通じ、秘宝である器を持ち出そうと画策した。結果何人の同胞が命を落とした事か」
「アレは何年も前から人間と密通していたのだ。ジエルデ、貴様にもその監督責任を問わねばならぬ」
 すっかりやつれた顔を挙げると、自らを囲む老人達の険しい顔が見えた。
「略式ではあるが、この会議を以って貴様の長老会入りを命じる。貴様には妹の後始末を手伝ってもらうぞ」
「父は……どうなったのですか?」
「貴様の父は自ら責任を取ると言い残し自害した。貴様が座るのはその後釜だ」
 目を見開き、その場に崩れ落ちる。妹は咎人として命を狙われ、父も死んだ。もう自分は一人ぼっちだ。
「あの子は悪くないんです。悪かったのは……愚かだったのは……。本当に裁かれるべきだったのは……っ!!」
 人間を信じようと笑いかけると、妹は決まって拗ねて言う。「そんな事は不可能だ」と。
 理想を信じ行動した。愛を信じ続けた。自分以外の誰かの為の正義……それが自分の家族を皆殺しにした。
 泣いても叫んでも時は戻らない。
 死ぬまで続く、逃れられない罰が始まった。



 冒険都市リゼリオに足を踏み入れたのは人生初だった。
 活気ある町を作る種族も年齢も関係のない人々。その笑顔を見ると、少し心が癒やされた。
「……うーん。さっきからずっと地図を見ているのに、全くたどり着けない」
 冷や汗を流し見下ろす地図は、執行者ハジャが託した物だった。

「ジエルデ、あんたに頼みがあるんだが」
「治療なら手伝ったでしょう?」
 包帯グルグル巻きのミイラになったハジャはよろつきながら近づいてくる。
「業務外でその辺散歩していたら死にかけるとは、何なのです……」
「色々あって……つかあんた不器用すぎだろなにこれ。術での治療以外てんでダメな……」
 頬を赤らめ目を逸らすジエルデ。不器用は事実だが、これでも真面目にやってるんです。
「それより黙ってて悪かったが、実はアイリス・エルフハイムを見つけたんだよ」
 思わず立ち上がる。ハジャは手描きの地図と偽装した身分証を手渡し。
「でも本物かどうか俺にはわからんので、顔見知りであるあんたに見てきて欲しい」
「何が目的です?」
「アイリス発見なんて大事だろ? 長老会に報告してやっぱり違いましたじゃ俺の首が跳ぶ」
 つまり、本物かどうかの判断を自分に委ねるという。冷や汗を流し、ジエルデは逡巡する。
「引き受けてくれるよな? 器ちゃんは俺が面倒見とくから、安心しな」

 リゼリオまでは帝国領の転移門を使えば拍子抜けするほどすぐだった。
「ハジャ、ハンターの身分を偽装していたとは……」
 町を何周かして辿り着いた帝国ユニオン、APV。その窓辺に張り付いて中を覗きこむと、その少女は居た。
 普段している仮面も今は壊れてつけていない。だからすぐにわかった。それがアイリス・エルフハイム……自分の妹であると。
 妹はハンター達に囲まれ、何かを話しているようだった。その横顔は朗らかで、ある意味以前とは別人に思える。
「そうよね。あれから何十年経ったかな……」
 人見知りでいつも自分の後ろをついてきていた幼い少女の姿を思い出す。
 別れ際の彼女は、涙は流さずとも泣いていたように思う。
 その涙をこの町が癒してくれたというのなら、感謝してもし足りない。
「生きていてくれたのなら、私は……それだけで……」
 戻ってハジャに言おう。アレは人違いだと。
 アイリスを自分以上に良く知る者はもう森にはいない。疑う余地はないはずだ。
 早く帰ろうと考えているのに足が動かない。笑っている妹から視線を動かせない。
 今すぐ駆け寄って抱きしめられたならどんなにいいだろう。「ごめんね」と言えたなら、どんなに楽になれるだろう。
 APVの窓辺にひっついて、なんでか知らないが泣いている女がいる。そこに往来のハンターが声をかけないはずもなく……。
「え? あ、これは違うんです……ごめんなさい。もう……もう、帰りますから」
 困り事かと尋ねると女は涙を拭いて走り出し……途中で足を止め戻ってくる。
「あなた……ここにはよく出入りしているの?」
 よくかどうかはわからないが、とりあえず頷く。
「お願いがあるのだけれど……」
 そう言って女は窓越しにユニオンリーダーを指差すのであった。

解説

●目的
タングラムの素行調査?


●概要
APVのユニオンリーダー、タングラムについて調査する。
と言っても、大した事をする必要はない。タングラムについて知っている事を話してあげよう。
場合によっては尾行したり、彼女の私生活を暴く必要があるかもしれないが……。
そんな依頼ばっかりだって? いや、そうなんですけど……。
依頼人は昔行方不明になった家族を探しているというエルフの女であり、タングラムがそうかもしれないとの事。
勘違いならそれで納得して帰るというので、手伝ってあげよう。


●???
「ジエルデ」
エルフハイム長老会の一員。器付きの巫女。
今日は変装しているので普通のお姉さん風の格好をしており、杖も持っていない。
嘗てエルフハイムを裏切った咎人、アイリスの姉。世間知らずなポンコツ。
薄幸。呪われてるんじゃないかってくらい。

「タングラム」
APVのユニオンリーダー。仮面を剣妃にぶっ壊されて修理中。
アイリスではないかと目下疑われているが、本人は否定も肯定もしていない。
自称姉にまでストーキングされる。ストーキングされることに関しては他を寄せ付けない才能を持つ。
深い傷を負っているので、あんまり動き回れない。激しいツッコミもできない。


●特筆
ジエルデは過去の依頼での顔見知りが相手でない限りは身分を偽装する。
顔見知りがいたとしても、素性を暴露されるのは嫌う。その段階で依頼は失敗とする。
「素性がバレなければ大体のことはなんとかなる」。
特に関係はないが、関連付けられているタングラムを質問が襲うかもしれない。

マスターより

お世話になっております。神宮寺です。

ガッツリした戦闘が続いてるので、日常系っぽいのを挟ませて下さい……。
ジエルデはタングラムが妹だと確信しているようですが、果たして本当にそうなのか。
二人の距離は今、初めて物理的に極限まで近づきます。
これは果たして再会なのか、それとも……。

それでは宜しくお願い致します。

関連NPC

  • 帝国ユニオンリーダー
    タングラム(kz0016
    エルフ|15才|女性|疾影士(ストライダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/05/01 03:59

参加者一覧

  • 帰還への一歩
    ルオ(ka1272
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 大いなる導き
    ジェールトヴァ(ka3098
    エルフ|70才|男性|聖導士
  • 境界を紡ぐ者
    キサ・I・アイオライト(ka4355
    エルフ|17才|女性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 【質問卓】おしえやがれ仮面女
ジャック・J・グリーヴ(ka1305
人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/04/27 23:06:35
アイコン 【相談卓】再会への備え
キサ・I・アイオライト(ka4355
エルフ|17才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/04/28 09:52:21
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/24 23:59:51