ゲスト
(ka0000)
臆病男の葛藤
マスター:七瀬ことり

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/07/07 12:00
- リプレイ完成予定
- 2014/07/15 12:00
オープニング
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
村じゅうが騒然としている中で、青年――アレスは頭を抱えた。
「あの子一人では危険すぎる……無事にはもどって来られんぞ!」
「なんということじゃ……この村にはもう子供と年寄りしかおらん……ワシらが行っても逆に足でまといになるだけじゃ……」
村人たちが口々に悲鳴にも似た言葉を発する。
村に残る若者はアレス一人だったが、この状況になってもまだ彼は自分が行くとは言えなかった。
「ああ、クレア……一人で狼の群れに飛び込んでいくなんて……」
一向に良い解決策が見出されないまま、時間ばかりが過ぎていく。
アレスはこんな時にまで臆病な自分を呪った。
好きな女性が一人、村人を救うために危険を冒しているというのに、その手助けをする勇気すら彼にはなかった。もっと言えば、本当は彼女よりも男であるアレスが行くべきだったはずだ。
どうしてこんなことになってしまった。
もう二度と彼女に会えなくなるかもしれない。このまま彼女を失ったら、何もせずただ見殺しのと同じ。そうなれば、アレスは一生後悔することになるだろう。だけど、どうしても勇気は出なかった。
●
臆病男。
それが、アレスに付けられたあだ名だ。
幼い頃より異常に用心深かったアレスは、何をするにしてもまず心配ばかりをしていた。
山にいけば獣に襲われるかもしれない、川にいけば足を滑らせて溺れてしまうかもしれない。
誰もが出来るようなことも常にあれこれと危険だという理由をつけて避けてきた。
だから、彼は生まれてこの方山にも川にも行ったことがない。村から一歩も外に出たことがないのだ。
みんなができても自分に出来る気がしない。
それが彼の口癖だった。
そんな彼にもついに初恋が訪れる。
相手は村の人気者のクレアという娘だった。
薬草に詳しく、医学の知識もある彼女は、若者が皆出稼ぎに出てしまい年寄りと子供しかいない村では皆から頼りにされていた。
明るくて誰にでも分け隔てなく優しい彼女にアレスは惹かれたのだ。
クレアが一人、狼の群れに立ち向かうことになったのは、ある穏やかな日のことだった。
突然一人の村人が血相を変えて村に駆け込んだ。
「大変だ! 村はずれの小屋が狼の群れに囲まれている! しかも、立派な長い牙を持った奴らだ!」
その言葉に村人たちがざわついた。
なんでも、山に山菜を取りに入った帰りに遠くから見えたのだという。
小屋では食事の準備がされていたのか、煙突から煙が出ていた。狼たちはもしかすると肉の焼けるにおいに釣られたのかもしれないと村人は言う。
「長い牙? そんな狼がいるのか?」
「化け物じゃ……!」
「この村にたどり着くのも時間の問題……近くの村に逃げた方がいいんじゃないか!?」
村でもすでに食事の用意が始まっている。もし本当に匂いで釣られたのならば、まもなくここにも狼たちがやってくるのだろう。
皆がパニックに陥っていた。
小屋から村は半日もかからない距離で、獣の足ならばすぐにでも村に到達するだろう。
そんな狼たちに立ち向かえるような若者がいない村がどうなるかは容易に想像がつく。
「みんな、落ち着いて!」
混乱に陥ったその場に凛とした声が響いた。クレアだ。
「今からただ逃げてもすぐに追いつかれてしまうわ。それに、あの小屋には足の悪いおじいさんが住んでる。村が空っぽになってしまったら、おじいさんに食べ物を届ける人もいなくなってしまうのよ」
村人たちが、クレアの言葉に耳を傾けた。
「私が時間を稼ぐわ。その間に、誰か助けを呼んできて」
クレアがそう言うと、村人たちまた一斉にざわついた。
「クレア、正気か!? 相手は化け物じゃぞ!?」
「大丈夫。私が薬草に詳しいのはよく知ってるでしょ? 時間を稼ぐくらいならなんとかなるわ」
それよりも、と彼女は最初に異変を村に伝えた者に目をやった。村の老人の中でも比較的若く、山に入って山菜を取る体力のある男だ。
「隣の村に助けを呼びに行って欲しいの。あなただけなら、半日以内に着けるでしょう?」
「……わかった!」
男はすぐに用意して出かけた。
その後ろ姿を見て、クレアが歩き出す。
「あ、あの!」
アレスは思わず彼女を引き止めた。
「……大丈夫よ。食べ物の匂いに釣られて来たのならばきっとその発生源である家の中に入ろうとするわ。みんなには言わなかったけど……あの大きな牙を持っているというなら、扉を破ることも出来るかもしれない。おじいさんを安全な場所まで避難させる必要があるだろうし、それは若くて体力のある私が一番適任なのよ」
クレアの手が震えていた。それを隠しながら彼女は微笑んで、踵を返す。
アレスは止めることができなかった。ただ、その場に呆然と立ち尽くし、その背中が小さくなっていくのを見ているだけで。
そして、話は冒頭に戻る。
村じゅうが騒然としている中で、青年――アレスは頭を抱えた。
「あの子一人では危険すぎる……無事にはもどって来られんぞ!」
「なんということじゃ……この村にはもう子供と年寄りしかおらん……ワシらが行っても逆に足でまといになるだけじゃ……」
村人たちが口々に悲鳴にも似た言葉を発する。
村に残る若者はアレス一人だったが、この状況になってもまだ彼は自分が行くとは言えなかった。
「ああ、クレア……一人で狼の群れに飛び込んでいくなんて……」
一向に良い解決策が見出されないまま、時間ばかりが過ぎていく。
アレスはこんな時にまで臆病な自分を呪った。
好きな女性が一人、村人を救うために危険を冒しているというのに、その手助けをする勇気すら彼にはなかった。もっと言えば、本当は彼女よりも男であるアレスが行くべきだったはずだ。
どうしてこんなことになってしまった。
もう二度と彼女に会えなくなるかもしれない。このまま彼女を失ったら、何もせずただ見殺しのと同じ。そうなれば、アレスは一生後悔することになるだろう。だけど、どうしても勇気は出なかった。
●
臆病男。
それが、アレスに付けられたあだ名だ。
幼い頃より異常に用心深かったアレスは、何をするにしてもまず心配ばかりをしていた。
山にいけば獣に襲われるかもしれない、川にいけば足を滑らせて溺れてしまうかもしれない。
誰もが出来るようなことも常にあれこれと危険だという理由をつけて避けてきた。
だから、彼は生まれてこの方山にも川にも行ったことがない。村から一歩も外に出たことがないのだ。
みんなができても自分に出来る気がしない。
それが彼の口癖だった。
そんな彼にもついに初恋が訪れる。
相手は村の人気者のクレアという娘だった。
薬草に詳しく、医学の知識もある彼女は、若者が皆出稼ぎに出てしまい年寄りと子供しかいない村では皆から頼りにされていた。
明るくて誰にでも分け隔てなく優しい彼女にアレスは惹かれたのだ。
クレアが一人、狼の群れに立ち向かうことになったのは、ある穏やかな日のことだった。
突然一人の村人が血相を変えて村に駆け込んだ。
「大変だ! 村はずれの小屋が狼の群れに囲まれている! しかも、立派な長い牙を持った奴らだ!」
その言葉に村人たちがざわついた。
なんでも、山に山菜を取りに入った帰りに遠くから見えたのだという。
小屋では食事の準備がされていたのか、煙突から煙が出ていた。狼たちはもしかすると肉の焼けるにおいに釣られたのかもしれないと村人は言う。
「長い牙? そんな狼がいるのか?」
「化け物じゃ……!」
「この村にたどり着くのも時間の問題……近くの村に逃げた方がいいんじゃないか!?」
村でもすでに食事の用意が始まっている。もし本当に匂いで釣られたのならば、まもなくここにも狼たちがやってくるのだろう。
皆がパニックに陥っていた。
小屋から村は半日もかからない距離で、獣の足ならばすぐにでも村に到達するだろう。
そんな狼たちに立ち向かえるような若者がいない村がどうなるかは容易に想像がつく。
「みんな、落ち着いて!」
混乱に陥ったその場に凛とした声が響いた。クレアだ。
「今からただ逃げてもすぐに追いつかれてしまうわ。それに、あの小屋には足の悪いおじいさんが住んでる。村が空っぽになってしまったら、おじいさんに食べ物を届ける人もいなくなってしまうのよ」
村人たちが、クレアの言葉に耳を傾けた。
「私が時間を稼ぐわ。その間に、誰か助けを呼んできて」
クレアがそう言うと、村人たちまた一斉にざわついた。
「クレア、正気か!? 相手は化け物じゃぞ!?」
「大丈夫。私が薬草に詳しいのはよく知ってるでしょ? 時間を稼ぐくらいならなんとかなるわ」
それよりも、と彼女は最初に異変を村に伝えた者に目をやった。村の老人の中でも比較的若く、山に入って山菜を取る体力のある男だ。
「隣の村に助けを呼びに行って欲しいの。あなただけなら、半日以内に着けるでしょう?」
「……わかった!」
男はすぐに用意して出かけた。
その後ろ姿を見て、クレアが歩き出す。
「あ、あの!」
アレスは思わず彼女を引き止めた。
「……大丈夫よ。食べ物の匂いに釣られて来たのならばきっとその発生源である家の中に入ろうとするわ。みんなには言わなかったけど……あの大きな牙を持っているというなら、扉を破ることも出来るかもしれない。おじいさんを安全な場所まで避難させる必要があるだろうし、それは若くて体力のある私が一番適任なのよ」
クレアの手が震えていた。それを隠しながら彼女は微笑んで、踵を返す。
アレスは止めることができなかった。ただ、その場に呆然と立ち尽くし、その背中が小さくなっていくのを見ているだけで。
そして、話は冒頭に戻る。
解説
●依頼について
覚醒者の皆様はとなり村に助けを求めに行く男と道中で偶然出会い、助けを求められます。
基本的な内容は村はずれの小屋を囲む狼の群れの討伐。それに加え、クレアが時間稼ぎのためにそこへ向かっているので彼女の保護・護衛、それから小屋に侵入されていた場合は老人の保護も必要だと予測されます。
●敵について
口からはみ出すような大きな牙を持った狼雑魔の群れ。約十から二十匹いると思われます。
嗅覚が非常に発達しているようです。
攻撃手段は体当たりと噛み付き。牙が長く鋭いので噛み付かれてしまうと大きなダメージを負ってしまいますが、口を開ききり牙使うまでに時間がかかるので気をつけていれば避けるのもそう難しくはないでしょう。
●小屋周辺について
小屋の周りは広い庭となっていて、戦うには十分なスペースがあります。
山の麓の小屋なので、周りは木に囲まれていますが、狼たちは比較的体が大きいので奇襲を受ける可能性は低いと考えられます。
小屋は少々古いので場合によっては敵に破られていて、早急に足の悪い老人を保護する必要があるかもしれません。
●クレアについて
薬草に詳しい娘。薬草採取のためによく山の中を歩き回っているので体力はありますが、やはり非力な女性です。
正義感と責任感が強いので、薬草があるから大丈夫と皆の前で言いましたが、半分くらいはハッタリで、村人たちを安心させるために言っています。
実際にクレアはちょっとした怪我に使うものや、病気の症状を少し和らげるもの、リラックス効果のあるポプリに使うもの、お風呂に入れると疲れが取れやすくなるもののような、あまり効果の強くない薬草しか持っていません。
ただ、頭のいい女性でもありますので、持ち合わせの薬草で工夫したり罠を作ったりと時間を稼げる勝算もあるようです。
しかし、敵を前に彼女がどこまで持ちこたえられるかは不明ですので、一刻も早く保護する必要があるでしょう。
覚醒者の皆様はとなり村に助けを求めに行く男と道中で偶然出会い、助けを求められます。
基本的な内容は村はずれの小屋を囲む狼の群れの討伐。それに加え、クレアが時間稼ぎのためにそこへ向かっているので彼女の保護・護衛、それから小屋に侵入されていた場合は老人の保護も必要だと予測されます。
●敵について
口からはみ出すような大きな牙を持った狼雑魔の群れ。約十から二十匹いると思われます。
嗅覚が非常に発達しているようです。
攻撃手段は体当たりと噛み付き。牙が長く鋭いので噛み付かれてしまうと大きなダメージを負ってしまいますが、口を開ききり牙使うまでに時間がかかるので気をつけていれば避けるのもそう難しくはないでしょう。
●小屋周辺について
小屋の周りは広い庭となっていて、戦うには十分なスペースがあります。
山の麓の小屋なので、周りは木に囲まれていますが、狼たちは比較的体が大きいので奇襲を受ける可能性は低いと考えられます。
小屋は少々古いので場合によっては敵に破られていて、早急に足の悪い老人を保護する必要があるかもしれません。
●クレアについて
薬草に詳しい娘。薬草採取のためによく山の中を歩き回っているので体力はありますが、やはり非力な女性です。
正義感と責任感が強いので、薬草があるから大丈夫と皆の前で言いましたが、半分くらいはハッタリで、村人たちを安心させるために言っています。
実際にクレアはちょっとした怪我に使うものや、病気の症状を少し和らげるもの、リラックス効果のあるポプリに使うもの、お風呂に入れると疲れが取れやすくなるもののような、あまり効果の強くない薬草しか持っていません。
ただ、頭のいい女性でもありますので、持ち合わせの薬草で工夫したり罠を作ったりと時間を稼げる勝算もあるようです。
しかし、敵を前に彼女がどこまで持ちこたえられるかは不明ですので、一刻も早く保護する必要があるでしょう。
マスターより
こんにちは、七瀬ことりです。
勇敢な女の子には憧れるものですが、なかなか勇気を出すのは大変なことですよね。
村のために懸命なクレアと彼女のことが好きなアレス、それから村の人々のためにどうか、よろしくお願いします。
勇敢な女の子には憧れるものですが、なかなか勇気を出すのは大変なことですよね。
村のために懸命なクレアと彼女のことが好きなアレス、それから村の人々のためにどうか、よろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/07/14 06:41
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談用スレッド サトコ・ロロブリジーダ(ka2475) 人間(クリムゾンウェスト)|11才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/07/07 02:26:26 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/01 01:52:13 |
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仮プレ卓 アレックス・マクラウド(ka0580) 人間(リアルブルー)|14才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/07/07 02:24:54 |