ゲスト
(ka0000)
50年の罪と純愛
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/05/04 09:00
- リプレイ完成予定
- 2015/05/13 09:00
オープニング
●五十年前の悲劇
近隣の村人にとってハイキングコースとして愛されていた山があった。
ゆえに、人が登るのは珍しいことではなく、まだ5歳である息子を連れて若い夫婦は歩く。
「綺麗なお花畑を見せてあげるからねぇ」
ふんわりした空気の母が甘やかすような声で言うと、「わぁい!」ときゃっきゃしながら息子が喜んだ。
「……」
無口な父はそんな二人を眺めながら、何も言うことはなく。
花畑があるという場所は山奥にあるわけでもなくて、5歳の息子でも駄々を捏ねる事無く到着できるような近くにあった。
そこで花を眺めながら家族でお弁当を食べよう、というピクニックの計画を立てていたのだ。
―――しかし、悲劇の運命がこの家族を襲った。
楽しく弁当を食べ終わり、息子が父を連れてちょっとだけ離れていた時のこと。
レジャーシートに座りながら彼らを待っていた母の元に……大型の熊が一匹、現れたのだ。
●あれから五十年
「母さん、その日誕生日だったから、花冠を作ろうと花畑の花を何本か摘んで親父だけ連れ出したんだ……。もしあの時、母さんも一緒に連れていけば、とか、もう帰ろうって言っていれば、あんなことにはならなかったのかなぁ、って今でも思い出したり、後悔したりするんだよ」
ハンターオフィスに訪れたアトが微かに俯きながら、少し悲しそうに言った。
大型の熊に立ち向かう力を持たぬ父と子は下山し、その後父が銃を持って複数の男達と共に花畑へ戻ってきたが、そこには変わり果てた母の姿があったのだという…………。
今迄花畑に熊が出没した事例はなく、どうしてあの場に熊が居たのかは誰にも分からない。
母を襲った熊は退治されたようだが、当時5歳の少年だったアトの心を抉る出来事になり、妻子を持つ55歳の青年となった今でも忘れた日は一度たりとも無かった。
「……おっと、悪いな。そんな話をしに来た訳じゃないのに。そろそろ本題に戻すぞ。お前さん達に依頼したいってのは、その花畑の事なんだがな。近頃また、その山で熊の目撃情報があってよ。幸いにも犠牲者はまだ出てないようだが、どうも普通の熊……ってのとは様子が違うみたいでな。ハンターの力を借りたい、って訳だ」
それに……、と続けて。
「親父がその山の花畑によく墓参りに行くんだ。ただでさえ、最近体を悪くしてるから、もう行かないでくれって頼んでるのに、一人で行っちゃうんだよ。親父は無口な人でな……。息子の俺ですら、親父の思ってる事が分からない時もあるし、母さんの話も今迄してくれた事はねえんだけど、でも、やっぱ俺のように辛くなったり、忘れられなかったりするんだと思う」
だからなるべく早急に事にあたりたい、と伝えた時だった―――。
「たいへんだ! 誰か来てくれ!」
血相を変えた青年がハンターオフィスの扉を叩く。
「マリオ? どうした、そんな顔をして」
「アト……! お前の親父さんがまたあの山に登ったらしいぞ……!」
「なんだって!?」
マリオは近所に住む友人だった。
近寄らないようにと警告を立てていた筈の山に、ふらふら……と入っていくお爺さんの姿を、村の子供が見たと言い、その噂が回り回ってきて、マリオに届いたのだという。
心配になってアトの父の家を訪ねてみたが、家の中に彼が居る気配はなく―――。
山へ登ったお爺さんというのはアトの父であるということが確信に変わったのだそうだ。
「暫くは絶対に行かないようにって言ったのに…………なんでなんだよ!!」
どうしていつもいつも、何も言わずに一人で行ってしまうんだ!
そんな怒りのような感情を零したあと、ハンター達には頼み込む。
「すまないが力を貸してくれ……! 今すぐに!!」
●クレフの罪
妻とは、親の見合いで結婚した娘だった。
最初は彼女を哀れに思っていたものだ。会ったばかりの好きでもない男の元へ、親の命令で嫁いできたような女だったから。
おまけにクレフは仕事熱心で、妻や家庭を気遣うような男ではないと誰もが思ったし、自分でもそう思っていた。
だから余計、運のない女だなぁなんて他人事のように思っていたクレフをよそに。
妻となったナタリーはクレフを心から尊敬し、愛してくれた。
そして健気に支えられている内に―――……次第にクレフの心にも変化が現れていく。
「近くに山があるだろ……。そこに綺麗な花畑があるから、今度、アトと一緒に……行かないか」
いつも仕事の事ばかりのクレフが家族と一緒に出掛ける提案をしたのは、初めてだった。
「あら! いいですねぇ! ならお弁当をもっていきましょうか。 お父さんと遊べてアトもきっと、喜んでくれますよ」
ナタリーは喜びながら、当日の弁当の用意に張り切っている様子だった。
そして同時に、誕生日プレゼントのつもりでいた。今迄一度たりとも贈った事はないのだが、気まぐれに、お祝いしてみたくなったのだ。
クレフは、味わったことのない幸福を知り始めていた。
そんな恥ずかしいこと、口にしたこともないけれど、……幸せってのは悪くないなぁ、と思っていた。
「ぱぱー!! 駄目だよっ、お母さん死んじゃうよ!! 戻ってよー!!」
――――大暴れするアトを強引に抱えて、下山するまでは。
見捨ててしまった。
(立ち向かったところで勝てた相手ではないし、万が一救えたとしても既に大量の出血をしていたナタリーを救えたとは思えない。……だが、)
我が子の命を守るために、自分の命まで守ってしまった。
ナタリーを守れず、見殺しにしてしまったのに―――。
彼女を見殺しにした自分を許せずにその後を追いたいぐらいだったが、まだ5歳である息子が一人で生きていくのは難しい。
……だから、出来なかった。
(…………)
――――そして五十年の月日が流れても。
今も変わらず蝕み続ける罪を胸に、花畑の片隅にある小さな墓石へと手を合わせていた。
近隣の村人にとってハイキングコースとして愛されていた山があった。
ゆえに、人が登るのは珍しいことではなく、まだ5歳である息子を連れて若い夫婦は歩く。
「綺麗なお花畑を見せてあげるからねぇ」
ふんわりした空気の母が甘やかすような声で言うと、「わぁい!」ときゃっきゃしながら息子が喜んだ。
「……」
無口な父はそんな二人を眺めながら、何も言うことはなく。
花畑があるという場所は山奥にあるわけでもなくて、5歳の息子でも駄々を捏ねる事無く到着できるような近くにあった。
そこで花を眺めながら家族でお弁当を食べよう、というピクニックの計画を立てていたのだ。
―――しかし、悲劇の運命がこの家族を襲った。
楽しく弁当を食べ終わり、息子が父を連れてちょっとだけ離れていた時のこと。
レジャーシートに座りながら彼らを待っていた母の元に……大型の熊が一匹、現れたのだ。
●あれから五十年
「母さん、その日誕生日だったから、花冠を作ろうと花畑の花を何本か摘んで親父だけ連れ出したんだ……。もしあの時、母さんも一緒に連れていけば、とか、もう帰ろうって言っていれば、あんなことにはならなかったのかなぁ、って今でも思い出したり、後悔したりするんだよ」
ハンターオフィスに訪れたアトが微かに俯きながら、少し悲しそうに言った。
大型の熊に立ち向かう力を持たぬ父と子は下山し、その後父が銃を持って複数の男達と共に花畑へ戻ってきたが、そこには変わり果てた母の姿があったのだという…………。
今迄花畑に熊が出没した事例はなく、どうしてあの場に熊が居たのかは誰にも分からない。
母を襲った熊は退治されたようだが、当時5歳の少年だったアトの心を抉る出来事になり、妻子を持つ55歳の青年となった今でも忘れた日は一度たりとも無かった。
「……おっと、悪いな。そんな話をしに来た訳じゃないのに。そろそろ本題に戻すぞ。お前さん達に依頼したいってのは、その花畑の事なんだがな。近頃また、その山で熊の目撃情報があってよ。幸いにも犠牲者はまだ出てないようだが、どうも普通の熊……ってのとは様子が違うみたいでな。ハンターの力を借りたい、って訳だ」
それに……、と続けて。
「親父がその山の花畑によく墓参りに行くんだ。ただでさえ、最近体を悪くしてるから、もう行かないでくれって頼んでるのに、一人で行っちゃうんだよ。親父は無口な人でな……。息子の俺ですら、親父の思ってる事が分からない時もあるし、母さんの話も今迄してくれた事はねえんだけど、でも、やっぱ俺のように辛くなったり、忘れられなかったりするんだと思う」
だからなるべく早急に事にあたりたい、と伝えた時だった―――。
「たいへんだ! 誰か来てくれ!」
血相を変えた青年がハンターオフィスの扉を叩く。
「マリオ? どうした、そんな顔をして」
「アト……! お前の親父さんがまたあの山に登ったらしいぞ……!」
「なんだって!?」
マリオは近所に住む友人だった。
近寄らないようにと警告を立てていた筈の山に、ふらふら……と入っていくお爺さんの姿を、村の子供が見たと言い、その噂が回り回ってきて、マリオに届いたのだという。
心配になってアトの父の家を訪ねてみたが、家の中に彼が居る気配はなく―――。
山へ登ったお爺さんというのはアトの父であるということが確信に変わったのだそうだ。
「暫くは絶対に行かないようにって言ったのに…………なんでなんだよ!!」
どうしていつもいつも、何も言わずに一人で行ってしまうんだ!
そんな怒りのような感情を零したあと、ハンター達には頼み込む。
「すまないが力を貸してくれ……! 今すぐに!!」
●クレフの罪
妻とは、親の見合いで結婚した娘だった。
最初は彼女を哀れに思っていたものだ。会ったばかりの好きでもない男の元へ、親の命令で嫁いできたような女だったから。
おまけにクレフは仕事熱心で、妻や家庭を気遣うような男ではないと誰もが思ったし、自分でもそう思っていた。
だから余計、運のない女だなぁなんて他人事のように思っていたクレフをよそに。
妻となったナタリーはクレフを心から尊敬し、愛してくれた。
そして健気に支えられている内に―――……次第にクレフの心にも変化が現れていく。
「近くに山があるだろ……。そこに綺麗な花畑があるから、今度、アトと一緒に……行かないか」
いつも仕事の事ばかりのクレフが家族と一緒に出掛ける提案をしたのは、初めてだった。
「あら! いいですねぇ! ならお弁当をもっていきましょうか。 お父さんと遊べてアトもきっと、喜んでくれますよ」
ナタリーは喜びながら、当日の弁当の用意に張り切っている様子だった。
そして同時に、誕生日プレゼントのつもりでいた。今迄一度たりとも贈った事はないのだが、気まぐれに、お祝いしてみたくなったのだ。
クレフは、味わったことのない幸福を知り始めていた。
そんな恥ずかしいこと、口にしたこともないけれど、……幸せってのは悪くないなぁ、と思っていた。
「ぱぱー!! 駄目だよっ、お母さん死んじゃうよ!! 戻ってよー!!」
――――大暴れするアトを強引に抱えて、下山するまでは。
見捨ててしまった。
(立ち向かったところで勝てた相手ではないし、万が一救えたとしても既に大量の出血をしていたナタリーを救えたとは思えない。……だが、)
我が子の命を守るために、自分の命まで守ってしまった。
ナタリーを守れず、見殺しにしてしまったのに―――。
彼女を見殺しにした自分を許せずにその後を追いたいぐらいだったが、まだ5歳である息子が一人で生きていくのは難しい。
……だから、出来なかった。
(…………)
――――そして五十年の月日が流れても。
今も変わらず蝕み続ける罪を胸に、花畑の片隅にある小さな墓石へと手を合わせていた。
解説
アトの父・クレフがナタリーを大切に想っていると自覚したのは、ナタリーが死んだ後のことでした。
クレフは生前のナタリーに愛の言葉を語り掛けたことがありません。
ハンターの皆さんは大切な人に言葉や態度で伝えていますか?
そして、
目の前で救えなかった苦しみというのはどのようなものなのでしょうか。
50年、罪に苛まれたクレフの身に危険が迫っています。
……どうか、救ってあげてください。
●目的
※現状、山に登ったお爺さん=クレフではない可能性も微かにあるので、アトやマリオは、クレフの行方を聞き回りつつ村を捜索しているので同行しません。
ハンターの皆さんには、花畑へと急いで向かって貰います。
そこにはお墓参りをしていたクレフが、熊の歪虚に襲われそうになっている現場が待っていることでしょう。
クレフには自身の身のことで何か悟った事があったようで、必死の思いで覚悟しながら花畑を目指しました。
できれば戦闘中は護衛し、その後はもう少し、お墓参りに付き合ってあげてください。
●戦場
薄水色の小さな花が一面に咲く花畑があり、その周囲は広々とした草原です。
花畑の片隅には、クレフの妻・ナタリーの墓石もあります。
●熊の歪虚
3m程ありそうな大型の熊の歪虚が一体。
五十年前の熊とは関係のない個体ですが、クレフにとっては五十年前の熊を彷彿するような熊であることでしょう。
非常に獰猛で凶暴です。
人を発見すると間違いなく襲い掛かり、そして狂ったように暴れて戦います。
挑発には乗りやすいです。
主な攻撃方法は、引っ掻く・噛みつく。
●クレフ
寡黙というより無口すぎる80歳のお爺さん。
息子にも、自分の事やナタリーの事を語ったことはなく、何を考えているかは分からないような人です。
そして体の具合が悪く杖をつきつつ歩くのがやっとの身なので、一撃でも致命傷です。ご注意ください。
クレフは生前のナタリーに愛の言葉を語り掛けたことがありません。
ハンターの皆さんは大切な人に言葉や態度で伝えていますか?
そして、
目の前で救えなかった苦しみというのはどのようなものなのでしょうか。
50年、罪に苛まれたクレフの身に危険が迫っています。
……どうか、救ってあげてください。
●目的
※現状、山に登ったお爺さん=クレフではない可能性も微かにあるので、アトやマリオは、クレフの行方を聞き回りつつ村を捜索しているので同行しません。
ハンターの皆さんには、花畑へと急いで向かって貰います。
そこにはお墓参りをしていたクレフが、熊の歪虚に襲われそうになっている現場が待っていることでしょう。
クレフには自身の身のことで何か悟った事があったようで、必死の思いで覚悟しながら花畑を目指しました。
できれば戦闘中は護衛し、その後はもう少し、お墓参りに付き合ってあげてください。
●戦場
薄水色の小さな花が一面に咲く花畑があり、その周囲は広々とした草原です。
花畑の片隅には、クレフの妻・ナタリーの墓石もあります。
●熊の歪虚
3m程ありそうな大型の熊の歪虚が一体。
五十年前の熊とは関係のない個体ですが、クレフにとっては五十年前の熊を彷彿するような熊であることでしょう。
非常に獰猛で凶暴です。
人を発見すると間違いなく襲い掛かり、そして狂ったように暴れて戦います。
挑発には乗りやすいです。
主な攻撃方法は、引っ掻く・噛みつく。
●クレフ
寡黙というより無口すぎる80歳のお爺さん。
息子にも、自分の事やナタリーの事を語ったことはなく、何を考えているかは分からないような人です。
そして体の具合が悪く杖をつきつつ歩くのがやっとの身なので、一撃でも致命傷です。ご注意ください。
マスターより
アトが思う以上にクレフの苦しみや傷は根深く、そして後悔と、罪の意識に苛まれています。
誰にも語らず一人で背負い続けてきたクレフですが、……なんとなく、死期を悟っているのでしょうね。杖をつきながら震える足を前にだし続け、やっとの思いで辿り着いたばかりの状況です。
クレフは無口です。そして罪の意識が消え去る事は無いでしょう。
ですが皆さんの想いを聞かせてくれたり、皆さんの大切な人のお話だったり、他愛のない話でも、話し相手になってくれたなら――――……どうなるかは、まだ、分かりません。
宜しくお願い致します。
誰にも語らず一人で背負い続けてきたクレフですが、……なんとなく、死期を悟っているのでしょうね。杖をつきながら震える足を前にだし続け、やっとの思いで辿り着いたばかりの状況です。
クレフは無口です。そして罪の意識が消え去る事は無いでしょう。
ですが皆さんの想いを聞かせてくれたり、皆さんの大切な人のお話だったり、他愛のない話でも、話し相手になってくれたなら――――……どうなるかは、まだ、分かりません。
宜しくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/05/10 23:28
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 レイレリア・リナークシス(ka3872) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/05/03 17:35:17 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/30 01:15:50 |