ゲスト
(ka0000)
オンリーワンの羊を目指して
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在12人 / 4~12人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/07/12 07:30
- リプレイ完成予定
- 2014/07/21 07:30
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国。強大な騎士団をいくつも有し、また錬金術や機導術の総本山も有する軍事国家だ。騎士皇ヴィルヘルミナを頂点に据えた騎士団は多くの人々の羨望を浴び、吟遊詩人たちの語り草となっている。首都バルトアンデルスにはいつか自分もその名を連ねようと夢見る者たちで溢れかえる一方、その活動に必要な金銭、食、資材、そして人を送り出す地方には大きな影を落としていた。
歪虚との戦いを全面に展開する国策においては地方の腐敗政治や治安の悪化などは二の次であり、延々と続く対歪虚の軍事作戦に消費される食糧や騎士団の活動に必要なお金は税として吸い上げられるばかりで還元など期待できることもない。むしろ税は重くなり、農民たちの生活を苦しめていた。
「今年収める羊の数……なんじゃこりゃ!」
帝国で一番盛んなのは羊の牧畜だ。だいたい税はお金に換えて上納するものだが、一部の地域では現物で納める場合もある。実際は途中でちゃんと換金されているため、お金で納めるより多少目減りしてしまうが、市場まで遠く人手を割けない程小さな牧場主はこちらを選択する場合もある。
「今年は市場も冷え込んでてねぇ。なかなか金にならんのだよ」
この地域を取りまとめている貴族はほとほと困ったような顔をしてそう告げた。
が羊飼いはその口元がわずかに歪んだ笑みを浮かべていることなどすぐ見透かした。
「嘘つけっ。おめぇさんが懐にいれちまうんだろ!」
「はっ、二束三文にしかならんような羊しか作れんお前の方が悪かろう。ワシにも生活があるんじゃ、文句を言うな!」
!!!
その後、かなり苛烈な言い合いをしたような気がするが、ほとんど覚えていなかった。結局自分で売りに行くか、買いたたかれるかの選択を迫られただけであった。
「それで結局従うの?」
落胆した羊飼いの話を聞いていた娘は目をぱちくりして問い直した。
「悔しいけど仕方ありませんや。最近は羊皮紙の需要も減ってきて皮も売れねぇし……南方の羊毛がとれる品種にゃ敵わねぇし」
「ダメーっ!」
羊飼いがもごもごと言おうとするのを娘はびしっと止めた。
「あのね、あのね。おじさんがしょんぼりした分だけ、その元締めの貴族さんはタケノコみたいに増長するんだよ? そんな人がのさばっていたら、他の人も嫌になっちゃうわ。それって誰も幸せにならないことよ」
「でも……」
「あんな腐ったミカンみたいな人が元締めやってること自体おかしいし、それを看過するお役人さんも頭もバームクーヘンみたいに中が空洞なんだと思うわ。でも、そこで受け入れちゃったら何も変わらないのよ? おかしいことはおかしいって言おうよ」
娘は羊飼いの両手をがっしり掴んでそう言った。その瞳は真剣そのもので、有無を言わせぬ力を感じさせる。
「そう言ってくれるのはありがてぇ……でも、税を納めれなきゃ、俺が犯罪者になっちまう。従うしかねぇだ……取り立てて上げるものもない平凡な羊飼いには選択肢は……」
「ありますっ。ごみ屑ほどの価値もないなんて言わないでっ」
「いや、誰もそこまで言ってな」
「私は遠くからでもおじさんの顔はわかるわ。性格もそう。同じ人なんて誰もいない。特徴に気付けてないだけよ。きっと何かいい方法はあるはずだから、考えましょう? ね?」
娘にそう言われて羊飼いはうーん、と唸った。
娘も一生懸命にあれやこれやと考えてくれる。たたき売りの口上に始まり、別の品物の開発、新商品開発などなど。しかし、今年の税対策には時間的にどれも難しいものばかりだった。
しばらくすると娘もさすがにアイデアに困ってきて言葉少なになってしまい、ぼんやりと外を走る羊を眺めるようになっていた。
小屋の外では子供がその番をしているようであった。しかしまだ不慣れなのか、全力で追いかけ回すものの、羊は軽やかに走って散らばるばかり。そうとう苦労しているのが遠くからでもよくわかる。
「……おじさんとこの羊って足早いですよね。馬みたい」
「ああ、昔、狼なんかの害獣が多かったせいかな。このあたりの品種は力が強くて足も速いんじゃ。そのせいで肉がかたいし毛色も岩肌に近い色で……」
「それーっ!」
再びびしっと止められ、羊飼いはなんのことやらと首をかしげる。
「それですっ。月並な姿からは思いもかけず危険に鋭く、足は馬並、力はウシ並。新規開拓に一頭いかがですか!? っていうフレーズはどうですか」
「フレーズって……」
「町で羊レースしてみましょうよ。羊さんの品評会で走らせてみるんです。毛並みや肉質より生存本能に長けている羊を必要とする飼い主さんもいるんじゃないでしょうか。それに稲妻のように走る羊って証明できればブランドになりますよ。名前はそれで上げられます。そしたら少ない数で税金だって支払えちゃうかもしれません」
ははぁ、なるほど。羊飼いは娘のアイデアに言葉にならない感嘆の声をあげたのであった。
「思い立ったがなんとやらですよ。おじさん、羊を貸してください!」
不安と希望が入り混じったような目をしていた羊飼いだったが、娘のまっすぐな瞳に何かが氷解していくような気持ちを羊飼い感じていた。
「わかった。是非……お願いします」
●
「あのですな、クリームヒルト様? そういうのはまず宣伝役が必要なものですぞ、それに準備もいりますし、対抗馬もいなければ盛り上がりに欠けます。要するにいろいろ準備というものが必要なわけです。それにはもちろんお金がかかるわけで……」
ラムの香草煮込みを頬張ったでっぷりとした男は羊を撫でる娘にそう声をかけた。
「それ以上の価値がこの子達にあれば、回収できるのよね?」
「あー、まあ、そうですがな。それをどうするおつもりで?」
「どうしたらいいかしら?」
さっぱりと聞き返したクリームヒルトに、思わず顔を料理の皿に突っ伏してしまいそうになった。
「全くもう。……最近はハンターという職種が帝国、いやこのクリムゾンウェストで一番注目を浴びているといってもいいでしょう。しかも彼らの力は戦闘だけでなく、人によって様々な能力をもっているといいます。彼らの力を借りるのはいかがですかな?」
「さすがアウグスト! あったまいい!!」
目を輝かせて、パンと手を合わせるクリームヒルトに、アウグストと呼ばれた男はあきれ返った顔で問いかけた。
「しかしなぜそこまでされるのですか? 別に命の恩人というわけではありませんでしょうに」
「この国で悲しむ人を見たくないの。この国にいる人は皆、みんな幸せでいてもらいたいの」
果てしなく遠い絵空事のような言葉。
だが、彼女の声は本気だった。
歪虚との戦いを全面に展開する国策においては地方の腐敗政治や治安の悪化などは二の次であり、延々と続く対歪虚の軍事作戦に消費される食糧や騎士団の活動に必要なお金は税として吸い上げられるばかりで還元など期待できることもない。むしろ税は重くなり、農民たちの生活を苦しめていた。
「今年収める羊の数……なんじゃこりゃ!」
帝国で一番盛んなのは羊の牧畜だ。だいたい税はお金に換えて上納するものだが、一部の地域では現物で納める場合もある。実際は途中でちゃんと換金されているため、お金で納めるより多少目減りしてしまうが、市場まで遠く人手を割けない程小さな牧場主はこちらを選択する場合もある。
「今年は市場も冷え込んでてねぇ。なかなか金にならんのだよ」
この地域を取りまとめている貴族はほとほと困ったような顔をしてそう告げた。
が羊飼いはその口元がわずかに歪んだ笑みを浮かべていることなどすぐ見透かした。
「嘘つけっ。おめぇさんが懐にいれちまうんだろ!」
「はっ、二束三文にしかならんような羊しか作れんお前の方が悪かろう。ワシにも生活があるんじゃ、文句を言うな!」
!!!
その後、かなり苛烈な言い合いをしたような気がするが、ほとんど覚えていなかった。結局自分で売りに行くか、買いたたかれるかの選択を迫られただけであった。
「それで結局従うの?」
落胆した羊飼いの話を聞いていた娘は目をぱちくりして問い直した。
「悔しいけど仕方ありませんや。最近は羊皮紙の需要も減ってきて皮も売れねぇし……南方の羊毛がとれる品種にゃ敵わねぇし」
「ダメーっ!」
羊飼いがもごもごと言おうとするのを娘はびしっと止めた。
「あのね、あのね。おじさんがしょんぼりした分だけ、その元締めの貴族さんはタケノコみたいに増長するんだよ? そんな人がのさばっていたら、他の人も嫌になっちゃうわ。それって誰も幸せにならないことよ」
「でも……」
「あんな腐ったミカンみたいな人が元締めやってること自体おかしいし、それを看過するお役人さんも頭もバームクーヘンみたいに中が空洞なんだと思うわ。でも、そこで受け入れちゃったら何も変わらないのよ? おかしいことはおかしいって言おうよ」
娘は羊飼いの両手をがっしり掴んでそう言った。その瞳は真剣そのもので、有無を言わせぬ力を感じさせる。
「そう言ってくれるのはありがてぇ……でも、税を納めれなきゃ、俺が犯罪者になっちまう。従うしかねぇだ……取り立てて上げるものもない平凡な羊飼いには選択肢は……」
「ありますっ。ごみ屑ほどの価値もないなんて言わないでっ」
「いや、誰もそこまで言ってな」
「私は遠くからでもおじさんの顔はわかるわ。性格もそう。同じ人なんて誰もいない。特徴に気付けてないだけよ。きっと何かいい方法はあるはずだから、考えましょう? ね?」
娘にそう言われて羊飼いはうーん、と唸った。
娘も一生懸命にあれやこれやと考えてくれる。たたき売りの口上に始まり、別の品物の開発、新商品開発などなど。しかし、今年の税対策には時間的にどれも難しいものばかりだった。
しばらくすると娘もさすがにアイデアに困ってきて言葉少なになってしまい、ぼんやりと外を走る羊を眺めるようになっていた。
小屋の外では子供がその番をしているようであった。しかしまだ不慣れなのか、全力で追いかけ回すものの、羊は軽やかに走って散らばるばかり。そうとう苦労しているのが遠くからでもよくわかる。
「……おじさんとこの羊って足早いですよね。馬みたい」
「ああ、昔、狼なんかの害獣が多かったせいかな。このあたりの品種は力が強くて足も速いんじゃ。そのせいで肉がかたいし毛色も岩肌に近い色で……」
「それーっ!」
再びびしっと止められ、羊飼いはなんのことやらと首をかしげる。
「それですっ。月並な姿からは思いもかけず危険に鋭く、足は馬並、力はウシ並。新規開拓に一頭いかがですか!? っていうフレーズはどうですか」
「フレーズって……」
「町で羊レースしてみましょうよ。羊さんの品評会で走らせてみるんです。毛並みや肉質より生存本能に長けている羊を必要とする飼い主さんもいるんじゃないでしょうか。それに稲妻のように走る羊って証明できればブランドになりますよ。名前はそれで上げられます。そしたら少ない数で税金だって支払えちゃうかもしれません」
ははぁ、なるほど。羊飼いは娘のアイデアに言葉にならない感嘆の声をあげたのであった。
「思い立ったがなんとやらですよ。おじさん、羊を貸してください!」
不安と希望が入り混じったような目をしていた羊飼いだったが、娘のまっすぐな瞳に何かが氷解していくような気持ちを羊飼い感じていた。
「わかった。是非……お願いします」
●
「あのですな、クリームヒルト様? そういうのはまず宣伝役が必要なものですぞ、それに準備もいりますし、対抗馬もいなければ盛り上がりに欠けます。要するにいろいろ準備というものが必要なわけです。それにはもちろんお金がかかるわけで……」
ラムの香草煮込みを頬張ったでっぷりとした男は羊を撫でる娘にそう声をかけた。
「それ以上の価値がこの子達にあれば、回収できるのよね?」
「あー、まあ、そうですがな。それをどうするおつもりで?」
「どうしたらいいかしら?」
さっぱりと聞き返したクリームヒルトに、思わず顔を料理の皿に突っ伏してしまいそうになった。
「全くもう。……最近はハンターという職種が帝国、いやこのクリムゾンウェストで一番注目を浴びているといってもいいでしょう。しかも彼らの力は戦闘だけでなく、人によって様々な能力をもっているといいます。彼らの力を借りるのはいかがですかな?」
「さすがアウグスト! あったまいい!!」
目を輝かせて、パンと手を合わせるクリームヒルトに、アウグストと呼ばれた男はあきれ返った顔で問いかけた。
「しかしなぜそこまでされるのですか? 別に命の恩人というわけではありませんでしょうに」
「この国で悲しむ人を見たくないの。この国にいる人は皆、みんな幸せでいてもらいたいの」
果てしなく遠い絵空事のような言葉。
だが、彼女の声は本気だった。
解説
クリームヒルトに代わって、羊の品評会に出席してもらいます。そして預かっている羊のアピールを行い、できるだけ高評価を得て売りさばくのが目的です。羊は雄雌5頭ずつの計10頭預かっています。基本的にどれも原生種に近く、細身で身軽、毛は少なめで茶けた白、雄はまっすぐ伸びた角を持っています。騎乗に向いているわけではありませんが、乗れることは乗れます。
品評会は商人や羊飼いなどが集まります。場所は町はずれの野原です。参加者が目の届く範囲である限りどこを使っても構いません。持ち時間という概念もありません。人が適当にやってきてそれぞれの都合で出はいりをしています。時間帯は昼です。クリームヒルトは同席します。彼女は一般人です。オープニングに出てきたその他の人物は不在です。
クリームヒルトは品評会中にレースをしてはどうか、と提案しています。ですが、品評会で基本レースをさせるというのはあまり聞かない例です。全く例がないわけでもなく、帝国の人間は勝負好きなのが多いため、レースをしようと言ったらおそらくほとんどの人が前向きになるでしょう。
戦闘は発生しません。が、羊は基本怖がりなので威圧したりするとパニックを起こして突撃してくる場合があります。その場合は負傷が起こりうることはご了承ください。
全員で10頭の面倒を見ることも、それぞれが担当を持つことも自由です。またそれぞれが何かしらの企画を決めるでも一つの企画を全員で分担することも可能です。羊に名前はないので、必要なら決めてもらって結構です。
予定している金額よりも高く売れた場合、寸志をいただけます。
成功ラインは
税金が払った上でまだ生活ができる程度のお金が残る程度に、高評価を得ることです。
さらにもうひとつのラインとして、まだ売りに出していない羊達にもブランドがつくこと。が挙げられます。
プレイングは白紙提出にならないようご注意ください。
品評会は商人や羊飼いなどが集まります。場所は町はずれの野原です。参加者が目の届く範囲である限りどこを使っても構いません。持ち時間という概念もありません。人が適当にやってきてそれぞれの都合で出はいりをしています。時間帯は昼です。クリームヒルトは同席します。彼女は一般人です。オープニングに出てきたその他の人物は不在です。
クリームヒルトは品評会中にレースをしてはどうか、と提案しています。ですが、品評会で基本レースをさせるというのはあまり聞かない例です。全く例がないわけでもなく、帝国の人間は勝負好きなのが多いため、レースをしようと言ったらおそらくほとんどの人が前向きになるでしょう。
戦闘は発生しません。が、羊は基本怖がりなので威圧したりするとパニックを起こして突撃してくる場合があります。その場合は負傷が起こりうることはご了承ください。
全員で10頭の面倒を見ることも、それぞれが担当を持つことも自由です。またそれぞれが何かしらの企画を決めるでも一つの企画を全員で分担することも可能です。羊に名前はないので、必要なら決めてもらって結構です。
予定している金額よりも高く売れた場合、寸志をいただけます。
成功ラインは
税金が払った上でまだ生活ができる程度のお金が残る程度に、高評価を得ることです。
さらにもうひとつのラインとして、まだ売りに出していない羊達にもブランドがつくこと。が挙げられます。
プレイングは白紙提出にならないようご注意ください。
マスターより
帝国の中でのお話です。帝国といえば軍団率いて派手に歪虚とドンパチっ、とか錬金術とかのイメージが強い感じがありますが、それらとも少し視点が異なるお話になっています。地に足つけている人々の姿を描けばと考えております。
スキルよりもあなたのアイデアが活きてくるお話です。楽しいプレイングをお待ちしております。
スキルよりもあなたのアイデアが活きてくるお話です。楽しいプレイングをお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/07/18 20:25
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/07 18:48:07 |
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![]() |
相談卓 シェール・L・アヴァロン(ka1386) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/07/12 00:34:27 |