ゲスト
(ka0000)
【聖呪】15年目の涙石
マスター:鹿野やいと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/05/20 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/05/29 22:00
オープニング
あの日、私は光を失った。
大人になったばかりの幼い私は、彼女を引き止めることができなかった。
「さようなら。私のことは忘れて……ね?」
まだ言うべき言葉があったはずだ。
彼女を引き止める術があったはずだ。
彼女の側にいた私にはまだ何か、別の何かが。
ただ後悔だけが私を責め苛み、怒りに溺れることさえ許されなかった。
■
王国暦1015年5月。王国北部の大渓谷に住むゴブリン等の亜人の活動が活発化し、南下して急速に人類の生活圏へと侵入した。王国騎士団副団長・青の隊隊長の老騎士ゲオルギウスは亜人討伐のために配下の騎士団を従えて北方へと出撃。途上何度かの戦闘を繰り返しつつ、過去に聖女を輩出したというパルシア村に立ち寄った。ゲオルギウスは今後の調査・戦闘を勘案し、パルシア村での駐留を願い出たが、そこで彼は思いも寄らぬ拒絶を受けた。
「教会の人間は帰れ!」「騎士団の人間は帰れ!」
たった一つの疑義を正すことすら許さない剣幕で騎士団は追い払われた。ゲオルギウスにはさっぱり事情がわからなかった。彼が知っているのはパルシア村が過去に聖女を輩出し、その聖女が儀式に失敗したこと。儀式に失敗した聖女が資格を剥奪された後に自死したことのみだ。騎士団・聖堂戦士団がここまで邪険にされる理由はわからない。騎士団での交渉らしきものといえば、その自死した聖女エリカの遺体回収を依頼された際に、戦力の問題から断らざるをえなかったことぐらいだ。亜人の住む北部大渓谷を刺激するわけにはいかず、それは村人自身もよくわかっているはずのこと。それ以上の確執には思い当たる節がない。他に考えられるのは聖堂教会だが末端の司祭は情報を知るはずもなく、引き返してセドリックに問いただしても立場上答えるとも思えない。情報が騎士団に流れた場合、彼が唯一の疑わしい接点となるからだ。この一件、ただの亜人討伐では済まない。嫌な予感を覚えつつも、ゲオルギウスは最善の手を抜かりなく打ち始めた。味方が居ないならそれも良し。赤の隊と同じく、自分達の流儀で事態を解決すれば良いだけのこと。ゲオルギウスは手始めとして、戦力として雇っていたハンターの一部を村の情勢の調査に送り込んだ。
■
騎士団が訪れた時の騒動が嘘のように、ハンター達はすんなりと村の中に入ることができた。最初こそ身構えていた門番の若者達だが、ハンター達が冒険者協会での身分を名乗るとすぐに門を開いた。いかつい顔つきだった村長は柔和な笑みを浮かべ、何事もなかったかのようにハンター達の逗留を許した。村の中を案内をしてくれた自警団の長であるアランは、ハンター達の事情を全て理解して宿舎へと連れ立ってくれた。アランは30前後の働き盛りで、細身ながらも柳のようにしなやかな体が印象的だった。足運びも安定しており、彼が本格的に武術を身に着けているのは明らかだ。自警団は半士半農と説明を受けたが、彼だけはとてもそれだけで説明できない。警戒するハンター達をよそに、アランは気楽な足取りでハンターに背を晒している。
「ここは普段、仕事でハンター達が来た時に貸している宿だ。自由に使ってくれ」
広くは無いが作りのしっかりした宿だった。2階が個室、1階が食堂。珍しい作りではない。普段はそこそこ賑わいもあるのだろうが、今は亜人の騒ぎのせいか他の旅人の姿は多くない。
「わかっていると思うけど、みんなが何も言わないのは君達が騎士団や教会の名前を出さないからだ。
君達を何の関わりも無かったハンターと思えばこそ自由にさせている。それだけ忘れないでくれ」
ハンター達はここに来るまでの村の人々の視線を思い出す。騎士団を追い返す時に先頭にたっていた村長を始め、ほとんどの村人が笑顔で挨拶を返してきた。村の様子はこれまで通過した王国北部の村々とそう大きな差は無いが、人口に対しての施設の規模では妙に大きい。自警団の装備や人数、食料その他の倉庫の数など豊かな蓄えがあることが見て取れた。領主の膝もとである城下町のような娯楽はないが、代わりに犯罪の残す退廃した空気とも無縁だ。先程の怒気に満ちた反応とは隔絶しており、余計に違和感を強く感じさせた。
「亜人達の目撃情報は増えている。特に最近は幽霊騒ぎなんてのもあってね。皆いつもより気が立ってるんだ」
アランの説明が本質でないことは、誰にとっても明らかだった。ゲオルギウスの言葉が思い出される。
「直接の原因は聖女の自死にまつわる騒動だろう。それ以外に心当たりが無い」
資料の上では、と彼はそう付け加えもした。15年前の事件は彼も資料でしか把握していない。
「とにもかくにも和解せねばならん。見捨てるわけにはいかんし、そもそも戦闘に支障をきたす。何故こんなことになっているのか、事情や経緯を調べてくれ。それが彼らとの交渉において最低限必要だろう。ついでに村の防衛戦力の内情、村内の派閥や人間関係、妙に潤沢な金周りも調べてもらえればありがたいが……そこまでは望みすぎだな」
老騎士は一通り伝えた後に愛嬌のある笑みでハンター達を送り出した。次の手はあると暗に示してもいたが、期待はしていないともとれた。ただ状況が不透明なのは変わらず、情報の価値は非常に大きい。ハンター達は改めて周囲を見た。村人の表情は温和だが、友誼を拒絶する心の壁が出来ている。
「私も……君達を信用していいものか、判断が出来ないでいる」
アランの声は優しくも苦い。アランは他の村人と違い、距離を置くことなく親切にしてくれるが、それでも肝心要である情報は何一つ明かそうとはしなかった。助けを必要としながらも、目の前にいる人々に縋ってよいものか、判断が付かないでいる。
「この村は……15年前に時間が止まったままなんだ。怒りと悲しみ、絶望と諦め。そういった思いが呪いになってる。村長も私も行き詰っているのは同じだ。村長だって、もう答えはわかっているはずなんだ」
アランは宿の戸に手をかけ、そこでハンター達に向き直った。向き合った視線には複雑な感情が渦巻いている。しかし視線はハンター達を捉えることはなく、向かい合いながらも中空をさまよっていた。
「君達や騎士団が、僕らの重荷を背負ってくれるというなら協力しよう。重荷を……理解してくれるなら……ね」
アランはそれだけ一方的に言うと背中を向けて立ち去った。結局その重荷となった過去が何であるのか、ハンター達は聞きだすことはできなかった。
大人になったばかりの幼い私は、彼女を引き止めることができなかった。
「さようなら。私のことは忘れて……ね?」
まだ言うべき言葉があったはずだ。
彼女を引き止める術があったはずだ。
彼女の側にいた私にはまだ何か、別の何かが。
ただ後悔だけが私を責め苛み、怒りに溺れることさえ許されなかった。
■
王国暦1015年5月。王国北部の大渓谷に住むゴブリン等の亜人の活動が活発化し、南下して急速に人類の生活圏へと侵入した。王国騎士団副団長・青の隊隊長の老騎士ゲオルギウスは亜人討伐のために配下の騎士団を従えて北方へと出撃。途上何度かの戦闘を繰り返しつつ、過去に聖女を輩出したというパルシア村に立ち寄った。ゲオルギウスは今後の調査・戦闘を勘案し、パルシア村での駐留を願い出たが、そこで彼は思いも寄らぬ拒絶を受けた。
「教会の人間は帰れ!」「騎士団の人間は帰れ!」
たった一つの疑義を正すことすら許さない剣幕で騎士団は追い払われた。ゲオルギウスにはさっぱり事情がわからなかった。彼が知っているのはパルシア村が過去に聖女を輩出し、その聖女が儀式に失敗したこと。儀式に失敗した聖女が資格を剥奪された後に自死したことのみだ。騎士団・聖堂戦士団がここまで邪険にされる理由はわからない。騎士団での交渉らしきものといえば、その自死した聖女エリカの遺体回収を依頼された際に、戦力の問題から断らざるをえなかったことぐらいだ。亜人の住む北部大渓谷を刺激するわけにはいかず、それは村人自身もよくわかっているはずのこと。それ以上の確執には思い当たる節がない。他に考えられるのは聖堂教会だが末端の司祭は情報を知るはずもなく、引き返してセドリックに問いただしても立場上答えるとも思えない。情報が騎士団に流れた場合、彼が唯一の疑わしい接点となるからだ。この一件、ただの亜人討伐では済まない。嫌な予感を覚えつつも、ゲオルギウスは最善の手を抜かりなく打ち始めた。味方が居ないならそれも良し。赤の隊と同じく、自分達の流儀で事態を解決すれば良いだけのこと。ゲオルギウスは手始めとして、戦力として雇っていたハンターの一部を村の情勢の調査に送り込んだ。
■
騎士団が訪れた時の騒動が嘘のように、ハンター達はすんなりと村の中に入ることができた。最初こそ身構えていた門番の若者達だが、ハンター達が冒険者協会での身分を名乗るとすぐに門を開いた。いかつい顔つきだった村長は柔和な笑みを浮かべ、何事もなかったかのようにハンター達の逗留を許した。村の中を案内をしてくれた自警団の長であるアランは、ハンター達の事情を全て理解して宿舎へと連れ立ってくれた。アランは30前後の働き盛りで、細身ながらも柳のようにしなやかな体が印象的だった。足運びも安定しており、彼が本格的に武術を身に着けているのは明らかだ。自警団は半士半農と説明を受けたが、彼だけはとてもそれだけで説明できない。警戒するハンター達をよそに、アランは気楽な足取りでハンターに背を晒している。
「ここは普段、仕事でハンター達が来た時に貸している宿だ。自由に使ってくれ」
広くは無いが作りのしっかりした宿だった。2階が個室、1階が食堂。珍しい作りではない。普段はそこそこ賑わいもあるのだろうが、今は亜人の騒ぎのせいか他の旅人の姿は多くない。
「わかっていると思うけど、みんなが何も言わないのは君達が騎士団や教会の名前を出さないからだ。
君達を何の関わりも無かったハンターと思えばこそ自由にさせている。それだけ忘れないでくれ」
ハンター達はここに来るまでの村の人々の視線を思い出す。騎士団を追い返す時に先頭にたっていた村長を始め、ほとんどの村人が笑顔で挨拶を返してきた。村の様子はこれまで通過した王国北部の村々とそう大きな差は無いが、人口に対しての施設の規模では妙に大きい。自警団の装備や人数、食料その他の倉庫の数など豊かな蓄えがあることが見て取れた。領主の膝もとである城下町のような娯楽はないが、代わりに犯罪の残す退廃した空気とも無縁だ。先程の怒気に満ちた反応とは隔絶しており、余計に違和感を強く感じさせた。
「亜人達の目撃情報は増えている。特に最近は幽霊騒ぎなんてのもあってね。皆いつもより気が立ってるんだ」
アランの説明が本質でないことは、誰にとっても明らかだった。ゲオルギウスの言葉が思い出される。
「直接の原因は聖女の自死にまつわる騒動だろう。それ以外に心当たりが無い」
資料の上では、と彼はそう付け加えもした。15年前の事件は彼も資料でしか把握していない。
「とにもかくにも和解せねばならん。見捨てるわけにはいかんし、そもそも戦闘に支障をきたす。何故こんなことになっているのか、事情や経緯を調べてくれ。それが彼らとの交渉において最低限必要だろう。ついでに村の防衛戦力の内情、村内の派閥や人間関係、妙に潤沢な金周りも調べてもらえればありがたいが……そこまでは望みすぎだな」
老騎士は一通り伝えた後に愛嬌のある笑みでハンター達を送り出した。次の手はあると暗に示してもいたが、期待はしていないともとれた。ただ状況が不透明なのは変わらず、情報の価値は非常に大きい。ハンター達は改めて周囲を見た。村人の表情は温和だが、友誼を拒絶する心の壁が出来ている。
「私も……君達を信用していいものか、判断が出来ないでいる」
アランの声は優しくも苦い。アランは他の村人と違い、距離を置くことなく親切にしてくれるが、それでも肝心要である情報は何一つ明かそうとはしなかった。助けを必要としながらも、目の前にいる人々に縋ってよいものか、判断が付かないでいる。
「この村は……15年前に時間が止まったままなんだ。怒りと悲しみ、絶望と諦め。そういった思いが呪いになってる。村長も私も行き詰っているのは同じだ。村長だって、もう答えはわかっているはずなんだ」
アランは宿の戸に手をかけ、そこでハンター達に向き直った。向き合った視線には複雑な感情が渦巻いている。しかし視線はハンター達を捉えることはなく、向かい合いながらも中空をさまよっていた。
「君達や騎士団が、僕らの重荷を背負ってくれるというなら協力しよう。重荷を……理解してくれるなら……ね」
アランはそれだけ一方的に言うと背中を向けて立ち去った。結局その重荷となった過去が何であるのか、ハンター達は聞きだすことはできなかった。
解説
■依頼内容
・パルシア村と騎士団・教会の過去の経緯を調査する
・騎士団が駐留できるように交渉する
■調査すべきこと
・過去の経緯
・防衛戦力
・村の備蓄や資金
・人間関係
他、交渉に使えそうな情報と思えば自由に調べてください
入手した情報が有効であれば都度判定結果に上乗せします
■村民の方針
村人の多くが教会と騎士団に敵意を持っています。
特にアラン以上の世代の男性に顕著です
村長がその筆頭且つ意志決定者なので、村長を納得させれば交渉は成功します
敵意の理由である過去の経緯に関しては、それぞれが思うところがあり口を噤んでいます
緘口令は出ていません
■判定基準
・ゲオルギウスが交渉に成功する程度の情報を集める
→ 普通
・PCが自力で騎士団駐留の交渉を終わらせる
→ 成功
これ以上の付加価値があれば大成功
情報が不足した場合や、
交渉を行えなくなった場合などは失敗とします
■NPC紹介
・ゲオルギウス・グラニフ・グランフェルト
王国騎士団青の隊の隊長。年齢は60代で騎士団でほぼ最高齢の人物
白の隊のエリオットに続き、赤の隊のダンテに並ぶ地位にある
ダンテと正反対の後方で知略を廻らすタイプ
・アラン
年齢30前後。自警団のリーダー。覚醒者で戦力の要でもある
敵意を露にする村民の中にあっては非常に冷静で協力的。
村長以上に過去の経緯を良く知るらしいが、情報提供は拒絶している
・村長
名前はジェイク・ピチカート。自死した聖女エリカの実の父。
村を発展させてきたやり手の人物
騎士団を追い払った際は先頭に立って声を荒げていたが、
村内では別人のように穏やかに過ごしている
■その他
・幽霊騒ぎは村内の活動だけでは詳細は判明しませんので
今回は無視してもらっても構いません
・13~14日リリースの【聖呪】連動各シナリオの時間軸は同期しています
イベシナと同時参加の場合、整合性のため描写を大きく削る場合があります
・パルシア村と騎士団・教会の過去の経緯を調査する
・騎士団が駐留できるように交渉する
■調査すべきこと
・過去の経緯
・防衛戦力
・村の備蓄や資金
・人間関係
他、交渉に使えそうな情報と思えば自由に調べてください
入手した情報が有効であれば都度判定結果に上乗せします
■村民の方針
村人の多くが教会と騎士団に敵意を持っています。
特にアラン以上の世代の男性に顕著です
村長がその筆頭且つ意志決定者なので、村長を納得させれば交渉は成功します
敵意の理由である過去の経緯に関しては、それぞれが思うところがあり口を噤んでいます
緘口令は出ていません
■判定基準
・ゲオルギウスが交渉に成功する程度の情報を集める
→ 普通
・PCが自力で騎士団駐留の交渉を終わらせる
→ 成功
これ以上の付加価値があれば大成功
情報が不足した場合や、
交渉を行えなくなった場合などは失敗とします
■NPC紹介
・ゲオルギウス・グラニフ・グランフェルト
王国騎士団青の隊の隊長。年齢は60代で騎士団でほぼ最高齢の人物
白の隊のエリオットに続き、赤の隊のダンテに並ぶ地位にある
ダンテと正反対の後方で知略を廻らすタイプ
・アラン
年齢30前後。自警団のリーダー。覚醒者で戦力の要でもある
敵意を露にする村民の中にあっては非常に冷静で協力的。
村長以上に過去の経緯を良く知るらしいが、情報提供は拒絶している
・村長
名前はジェイク・ピチカート。自死した聖女エリカの実の父。
村を発展させてきたやり手の人物
騎士団を追い払った際は先頭に立って声を荒げていたが、
村内では別人のように穏やかに過ごしている
■その他
・幽霊騒ぎは村内の活動だけでは詳細は判明しませんので
今回は無視してもらっても構いません
・13~14日リリースの【聖呪】連動各シナリオの時間軸は同期しています
イベシナと同時参加の場合、整合性のため描写を大きく削る場合があります
マスターより
王国の企画による『聖呪』連動、開始しました
まずは一本目、調査・交渉依頼を担当させていただきます
今回のシナリオは重要度が非常に高いシナリオとなっています
失敗すれば今後の騎士団の活動が制限され、
連動後半の真相究明にも悪影響が出るでしょう
逆に成功すれば得るものも非常に大きいシナリオです
我こそはと思う皆さんの参加をお待ちしております
まずは一本目、調査・交渉依頼を担当させていただきます
今回のシナリオは重要度が非常に高いシナリオとなっています
失敗すれば今後の騎士団の活動が制限され、
連動後半の真相究明にも悪影響が出るでしょう
逆に成功すれば得るものも非常に大きいシナリオです
我こそはと思う皆さんの参加をお待ちしております
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/05/28 22:02
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/19 06:05:46 |
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相談卓 紅薔薇(ka4766) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/05/20 21:27:33 |