• 戦闘

渓流の岩蟹

マスター:ゐ炉端

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/05/21 12:00
リプレイ完成予定
2015/05/30 12:00

オープニング


 心地よい湿度を帯びた風が流れる森林の間、森と森を分けるかのように流れる緩やかな川。敷き詰められた砂利を踏み鳴らし、二人の男が川に沿って歩む。さらさらと流れるせせらぎの音に合わせて、太陽の光がキラキラとリズムを刻むように光り、揺らいでいる。
 金髪で長身の男は何気なく立ち止まり、流れゆく川をぐるりと見渡しながら、隣を歩き――いや、立ち止まった男の前を少し置いて、先に行ってしまった赤茶色の無精髭を生やした男に話しかけた。
「綺麗な川だ。流れも緩やかで、見晴らしも良い。今日はこの辺にキャンプを作ろうか、トム」
 トムと呼ばれた男も歩みを止め、空を見上げ、そして金髪の男の方へと振り向き、
「少し早いが、今から山を越えるとなると日が暮れてしまうな。そうしようか」
 と、同意の意思を示す。空はまだ明るいが、やや傾きかけの太陽に、もう少し待ってくれとは言えまい。金髪の男は背負っていたリュックを降ろし、その上に括られていた、筒状に丸められたものを解き始めた。
「では私はテントを張るよ」
「ならば俺は釣りでもしてこよう。保存の利くものは取っておきたいしな」
 トムの言葉に金髪の男はピタリと動きを止め、そして渋い顔を浮かべながら、彼へと視線を送った。
「私も食べるなら新鮮なものの方が良いが……。しかしトム、君は釣りが得意だったか?」
「言うなコニィ。あの時は、釣り場所が悪かったのだ。俺の腕が悪いわけじゃない」
 腕を組み、ふんすっと息を吐くトムを横目に、コニィは小さくため息を吐いて、作業を再開した。
「ふぅ。夕飯が惨めなことにならないよう、祈っておくよ」
「ぬかせ。大物を釣り上げて、度肝を抜かせてやるぞ」
「期待はしていないよ。気楽にやりたまえ」



「……」
 それから2時間ほどして、徐々に空が茜色へと変わる頃。野営の準備を進めるコニィから少し離れて釣りに興じていたトムであったが、案の定というべきか、まだまだ空のバケツと付き合うことになりそうだった。最も、釣りをするのにもあまり良い時間とは言えない。だがそれでも、透き通る水面に目を落とせば、悠遊と泳ぐ川魚達の姿。決して獲物がいないわけではないのだが。
「……むぅ、釣れぬ」
 大きな岩に腰を掛け、岩場の陰に釣り糸を降ろし、只管待つだけの作業。もう、何度目であろうか。数えるのも馬鹿らしい。いっそ銛でもこさえて、直接刺してしまった方が早いだろう。しかし、釣ると大口を叩いた手前、意地でも釣り糸を垂らすしかないのだ。男とは面倒な生き物なのである。いや、大体だ、どうせ美味しく頂くのであれば、食材は無暗に傷付けるものではない。魚は釣るに限る。
 とは言え、ぼーっと釣り糸を垂らし続けるのも飽きるもので、落ちてた草で草笛を作ってみたり、その辺の岩などを足でグイグイ押してみたり、釣りへの集中力が散漫になってきたのが逆に良かったのか、ふと、岩陰からカサコソと小さなものが出てくるのに気が付いた。
「……むむっ? これは、蟹か?」
 蟹の一種であろうか。ダークチェリーのような黒ずんだ赤色の、手で包める程の小さな蟹がわさわさと這い出てきた。動く先を目で追っていくと、その先に低く小さな滝が注ぐ渓流があり、その岩陰へと潜って行った。
「これは良い、小ぶりではあるが、丸ごと揚げれば旨そうだ」
 暇を持て余していた男は腰を上げ、岩場に足を気を付けながら、渓流にゴロゴロと転がる岩を押し退け、裏側を覗き見た。予想通り、小さな蟹がワラワラと出てくる。トムはそれをひょいひょいと、バケツの中に放り込んだ。
 粗方取り終えると、もっといないものかと、別の岩をひっくり返したところで、異様な気配に包まれているのを感じ、トムはパッと、岩から手を離した。――刹那。何かが空を裂き、反射的に突き出したバケツを真っ二つに両断した。零れ落ちる水。そして逃げ出す蟹達。

「んぅぬわぁーーっ!?」

 そんな、ちょっと間抜けな甲高い声が飛び出し、異常を察知したコニィが、薪をその場にぶちまけて、駆け付けてくる。
「どうしたトム! 箪笥の角に小指をぶつけた様な声を出してって…………なんだ、それは?」
 見ればそこには、岩の形をした蟹――のような生き物が、口から泡をブクブクさせ、トムへと覆いかぶさっている。コニィは手にしたメイスをフルスイングして、その巨大な蟹をぶん殴り、吹き飛ばした。
「助かった、コニィ。……っと危ないっ!」
「なにっ」
 咄嗟にコニィを突き飛ばすトム。その横を真っ直ぐと、何かが風を貫いて飛び、彼らの後ろにあった大岩へ風穴を開けた。何事かとそちらに視線を移すと、先程ぶん殴った蟹とは別の蟹が両手の鋏を天へと突き出しながら、ぶくぶくと泡を吹いている。増えたのは一体だけじゃない。触発されるかのように、渓流に転がっていた岩が次々と動きだし、禍々しく赤く光る目を光らせた。男二人はそっと、顔を合わせ頷くと、踵を返し、尻を絡げて駆け出した。
「俺達は正義の味方じゃない! 金にならないなら、魔獣の相手などしてられんわ!!」
「それには同意だが、放っておくわけにもいくまいよ? 知らずに釣り人が近寄っては危険だ」
 走りながら、涼しい顔でコニィは言う。
「なら、ハンターズソサエティに報告しておこう」
「うむ。妥当だな」

解説

○依頼目的
 渓流に現れた魔獣の討伐。

○討伐目標詳細
 岩のような形をした甲羅をもつ蟹の魔獣。甲羅の大きさは40cm程。確認されたのは6体で、それ以上いる可能性もある。獲物が近付くまでは動かず、見た目も岩と変わらない。攻撃方法は鋏による斬りつけや拘束の他、水を弾丸のように吐き出すブレス攻撃(射程1~5)を使う。

マスターより

 お世話になっております、ゐ炉端です。シンプルな戦闘依頼ですが、やや足場が悪いのでご注意ください。
 自然豊かな場所なので、目的を達成したら、川辺でのんびり過ごすのもいいかもしれません。

 それでは皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/05/31 13:02

参加者一覧

  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士
  • 《一途》に想う夢の欠片
    クリスティーネ=L‐S(ka3679
    人間(蒼)|14才|女性|闘狩人
  • 白兎と重ねる時間
    玉兎・恵(ka3940
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • メテオクイーン
    キーリ(ka4642
    エルフ|13才|女性|魔術師
  • 頼れるアニキ
    ケンジ・ヴィルター(ka4938
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 相談の卓、です
クリスティーネ=L‐S(ka3679
人間(リアルブルー)|14才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/05/20 21:34:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/17 18:30:11