※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

●葡萄畑の侵略者
　同盟領、農業推進地域「ジェオルジ」にも暖かい風が吹き始めた。
　ジェオルジではさまざまな作物が生育されており、とある村では葡萄棚が平原に広がっている。その村の葡萄は食用ではなく葡萄酒用のもので、村全体が一致協力して、葡萄の生育から収穫、葡萄酒の醸造、そして製品化まで手掛けているのだ。いつの日にか、村を世界に名立たる葡萄酒の名産地にしてみせる、と村民たちは努力を惜しまず、汗水を流している。

　だが、前年の収穫を終えて休眠していた葡萄樹が新たな萌芽を迎えたあと、葡萄畑に異変が起き始めた。
「ど、どういうことだ……？　こりゃあ、足跡かぁ？」
「こっちもだ！　蕾が、食われちまってる！」
「――おい！　こっちの防獣網に穴が開いてるぞ!?」
　まだ朝陽が白い時間、葡萄樹の手入れに訪れた村民たちが見たのは、葡萄棚の枝葉が踏み荒らされて折られ、柔らかい葉や蕾が何ものかに齧られてしまった痕跡だった。
　それは、可愛い食害獣――アライグマの仕業である。このままでは、初夏の開花を待たずして今年の生産が頓挫しかねない。村民たちは獣除けの仕掛けや罠を駆使してアライグマの侵略から葡萄樹を守ろうとしたが、垂直な支柱や針金すら登ってしまうのだ。それに、もし今アライグマの侵略を防いだとしても、果実が実る秋の食害が心配でならない。
「こんなに荒らして……大運動会でもやってんのか、アライグマは」
「かといって、いきものを殺すのは嫌だしなぁ……なんとか捕まえて、山に放つしかないだろ」
「だなぁ。だけども、おれたちの仕掛けた罠じゃあ、うまいこと餌だけ取られちまうしなぁ……」
「あぁ、困ったもんだ。おれたちが寝ずの番をして追い回したって、畑が余計に荒れるだけだろうよ？」
「となると……ハンターさんたちに頼むしかねぇな」
「おう！　アライグマを捕獲できたら、葡萄酒で乾杯だな！　チーズも調達しておくかぁ」
　のんびりとした田園風景の中に、男たちの笑い声がこだました。

　こうして、可愛くて器用な侵略者――アライグマ捕獲依頼がハンターの元に届けられることとなったのである。

●目的
　夜間、葡萄畑に現れるアライグマを捕獲する。現れるアライグマは10頭弱。

●成功条件
　アライグマをすべて生きたまま捕らえる。

●失敗条件
　アライグマを逃がす。または、死なせてしまう。
（逃した場合、後日すぐに戻ってきてしまう）

●アライグマについて
　主に夜行性。立体的な動きが得意。泳いだり、後ろ足で立ったり、木登りもできる。
　指を器用に使い、簡単な檻なら脱走できる。視覚はあまり良くない。気性が荒く、人には懐きにくい。
　誘引餌には、果実、甘いものが有効らしい。

●葡萄畑について
　上部は格子状に番線が張られていて枝葉が絡められ、葡萄樹はまっすぐ列になって植えつけられている。
　葡萄棚の高さは、成人男性が立って歩けるぎりぎり。
　現在は開花前の蕾の時季なので、葡萄房がぶら下がっていて邪魔になるようなことはない。
　葡萄棚の周囲には防獣網が立てられているが、南東の端と北側中央付近に獣穴が開けられている。
　人間の出入り口は、西側中央部。
　葡萄樹の列と列の間は成人一人が通れる幅で、列内の葡萄樹どうしの隙間はアライグマしか通れませんが、５スクエアごとに人間が通れる隙間があります。

●目的達成後
　村民たちによる御礼として、報酬とは別に特産品の葡萄酒とジェオルジ産のチーズが振る舞われます。ぜひ、楽しんでください。

＊マスター基本情報の自己紹介に、依頼とリプレイの傾向について記載しております。

　こんにちは、はじめまして。
　今回は、ジェオルジの片田舎の葡萄酒農園にて、アライグマの捕物をしていただきます。
　夜の葡萄畑でアライグマを追い回しつつ、楽しんでいただければ幸いです。