ゲスト
(ka0000)
【AN】ちょっとしたミス
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/05/27 22:00
- リプレイ完成予定
- 2015/06/05 22:00
オープニング
ラテン語で下水道の意味を持つ【Aqua Nigura】の略称である【AN】はゾンネンシュトラール帝国においては定期的に実施されるある掃討作戦の通称だ。
近代都市であるバルトアンデルスの地下を走る下水道の規模は全長1000km以上に及び、迷路のように張り巡らされている。
だが、最新鋭の機導術を誇る代償としての魔導汚染に常に悩まされている帝国の、首都ともなれば下水道の汚染から雑魔が発生するレベルの汚染となるのは避けられない。
そう、【AN】とは第一師団による定期的な掃討作戦行動の名称なのだ。
だというのに、なぜ関係ないはずの第二師団員が駆り出されているのか。
色々と訳があるとはいえ、遠くまでわざわざ出向いて下水道に潜っているこの状況を、ヴァルターは呪わずにはいられない。
がらがらと重い車輪の音が、うるさいほどに通路に響く。ただでさえ強烈な臭いに体調も悪くなりがちな上、途轍もなく重い荷車を引き摺りながらの行軍だ。脳髄を直接圧迫するような轟音を常に浴び続けて、気分はもう最悪の一言だった。
「……ヴァルター、そこ」
狙ってやってるのかいないのか、相棒のオウレルの虚ろな声は、先ほどからぎりぎり聞き取れるか取れないかの境目を彷徨っている。やる気も覇気もないその声と仕草と表情に怒鳴りたい気持ちがむくむくと沸き上がるが、一呼吸置いて、そんなことをしても意味がないと今日何度目になるか分からない言葉を自分に言い聞かせながらヴァルターは振り返る。
「お前もっとはきはき喋れよ!」
言い聞かせきれなかった。
「あ、えっと……ごめん」
対し、大の男であるはずのオウレルはびくりと肩を震わせて、虫の羽音ほどの声で呟いた。足が止まれば荷車も止まる。ちょろちょろとした水の流れる音は小さく、その声を遮ってはくれるほど頼もしいものではなかった。
ヴァルターは頭を振る。
ここ数ヶ月、この親友はずっとこの調子だ。原因は分かっている。剣魔に部下を皆殺しにされたことで、もともと卑屈だった性格がこの上なく叩きのめされた。
それは、ヴァルターがいくら慰めても、元気付けても、関係ない話題を振っても、昼飯を奢っても、飲みに誘っても、綺麗なお姉ちゃんのいる店に行こうと言ってみても、親友はまともにこちらの顔を見ることもなく。たまに笑顔を見せたとして、それは見せかけの、周りに迷惑をかけないように作られた虚飾でしかなかった。
「……んで、どこだって?」
しかし、今は任務中だ。同道を依頼したハンター達に露払いを頼んでいる以上、さっさと終わらせるべきだろう。
気を取り直し、オウレルが目聡く指さした下水道の壁面を見やる。
「あー、ヒビ入ってんなー。こりゃ深そうだ。よし、チェック」
ヴァルターは、荷車の積み荷からセメントを選んで壁に塗り込める。そして明るめの塗料でその上に×印を書いた。
下水道内の比較的古い区画における破損箇所の発見、及び応急処置。そして、当たり前のように沸いている歪虚の排除。
それが、彼らのいま遂行させられている任務の内容だ。
本格的な修繕を入れる前に、破損箇所の位置と程度をひとまず調べておく。なるほど効率的だが、後々の本職が楽をするためにいま自分達が苦行に従事させられていると思うと、ヴァルターは第二師団員特有の建築大工技能をも呪わざるを得なかった。
●
がらがらと、重い車輪の音が木霊する。無数に乱反射した音達が、群れをなしてこちらの鼓膜に体当たりを繰り返している。
それから長い時間、ハンター達と第二師団の二人は下水道内を歩き回った。破損を見つけては、その都度セメントや板や石材で補強をし、印をつけ、地図に細かく内容を書き込む。たまに歪虚を見つけては、確実に殲滅する。
どうやら、まだ歪虚の数が少ない一画のようで、話に聞いていた大量のスライムやら微生物やらは今のところ見かけていないのは幸いだった。
それでもまだしばらくかかりそうだなと、ヴァルターはうんざりしながら重い荷車に手をかけ。
「これ、この後の宴会とか参加する気力残ってっかな――」
「あ」
などと、少し離れたところで作業していたオウレルに話しかけ。
そこで、ばごん、と一際大きな打音と、ぴしり、という何か嫌な音が壁の中に走ったのを、確かに耳にした。
「……あの、オウレル君?」
「……え、っと」
困ったように眉を潜めるオウレルの端正な顔立ち、その手元では、彼の使っていた大きめの金槌が……見事に壁に突き刺さっていた。
ヴァルターは慌てて、腰に下げた鞄から地図を取り出す。
壁の向こうに何があるのか。こちらの壁の向こうには……何もない。
しかしオウレルが何故か釘を打っていた壁の向こうには、
「廃水の合流管……」
さらにびしりびしりと、立て続けに嫌な音が響く。
恐らく、オウレルの一撃が何かにトドメを刺してしまったのだろうなどと嫌な想像を膨らませながら、
「ご……ごめん」
「たぶん、謝ってる場合じゃねえと思うなぁ……急いで直せぇっ!」
ヴァルターは荷車を必死に転がし、オウレルは虚ろにそれを見つめる。
そして、俄に慌てる一行に追い打ちをかけるように、汚染物質の臭いを嗅ぎつけた歪虚の群れまでもがどこからともなくずりずりがさがさとこちらへ向かってきているのだった。
近代都市であるバルトアンデルスの地下を走る下水道の規模は全長1000km以上に及び、迷路のように張り巡らされている。
だが、最新鋭の機導術を誇る代償としての魔導汚染に常に悩まされている帝国の、首都ともなれば下水道の汚染から雑魔が発生するレベルの汚染となるのは避けられない。
そう、【AN】とは第一師団による定期的な掃討作戦行動の名称なのだ。
だというのに、なぜ関係ないはずの第二師団員が駆り出されているのか。
色々と訳があるとはいえ、遠くまでわざわざ出向いて下水道に潜っているこの状況を、ヴァルターは呪わずにはいられない。
がらがらと重い車輪の音が、うるさいほどに通路に響く。ただでさえ強烈な臭いに体調も悪くなりがちな上、途轍もなく重い荷車を引き摺りながらの行軍だ。脳髄を直接圧迫するような轟音を常に浴び続けて、気分はもう最悪の一言だった。
「……ヴァルター、そこ」
狙ってやってるのかいないのか、相棒のオウレルの虚ろな声は、先ほどからぎりぎり聞き取れるか取れないかの境目を彷徨っている。やる気も覇気もないその声と仕草と表情に怒鳴りたい気持ちがむくむくと沸き上がるが、一呼吸置いて、そんなことをしても意味がないと今日何度目になるか分からない言葉を自分に言い聞かせながらヴァルターは振り返る。
「お前もっとはきはき喋れよ!」
言い聞かせきれなかった。
「あ、えっと……ごめん」
対し、大の男であるはずのオウレルはびくりと肩を震わせて、虫の羽音ほどの声で呟いた。足が止まれば荷車も止まる。ちょろちょろとした水の流れる音は小さく、その声を遮ってはくれるほど頼もしいものではなかった。
ヴァルターは頭を振る。
ここ数ヶ月、この親友はずっとこの調子だ。原因は分かっている。剣魔に部下を皆殺しにされたことで、もともと卑屈だった性格がこの上なく叩きのめされた。
それは、ヴァルターがいくら慰めても、元気付けても、関係ない話題を振っても、昼飯を奢っても、飲みに誘っても、綺麗なお姉ちゃんのいる店に行こうと言ってみても、親友はまともにこちらの顔を見ることもなく。たまに笑顔を見せたとして、それは見せかけの、周りに迷惑をかけないように作られた虚飾でしかなかった。
「……んで、どこだって?」
しかし、今は任務中だ。同道を依頼したハンター達に露払いを頼んでいる以上、さっさと終わらせるべきだろう。
気を取り直し、オウレルが目聡く指さした下水道の壁面を見やる。
「あー、ヒビ入ってんなー。こりゃ深そうだ。よし、チェック」
ヴァルターは、荷車の積み荷からセメントを選んで壁に塗り込める。そして明るめの塗料でその上に×印を書いた。
下水道内の比較的古い区画における破損箇所の発見、及び応急処置。そして、当たり前のように沸いている歪虚の排除。
それが、彼らのいま遂行させられている任務の内容だ。
本格的な修繕を入れる前に、破損箇所の位置と程度をひとまず調べておく。なるほど効率的だが、後々の本職が楽をするためにいま自分達が苦行に従事させられていると思うと、ヴァルターは第二師団員特有の建築大工技能をも呪わざるを得なかった。
●
がらがらと、重い車輪の音が木霊する。無数に乱反射した音達が、群れをなしてこちらの鼓膜に体当たりを繰り返している。
それから長い時間、ハンター達と第二師団の二人は下水道内を歩き回った。破損を見つけては、その都度セメントや板や石材で補強をし、印をつけ、地図に細かく内容を書き込む。たまに歪虚を見つけては、確実に殲滅する。
どうやら、まだ歪虚の数が少ない一画のようで、話に聞いていた大量のスライムやら微生物やらは今のところ見かけていないのは幸いだった。
それでもまだしばらくかかりそうだなと、ヴァルターはうんざりしながら重い荷車に手をかけ。
「これ、この後の宴会とか参加する気力残ってっかな――」
「あ」
などと、少し離れたところで作業していたオウレルに話しかけ。
そこで、ばごん、と一際大きな打音と、ぴしり、という何か嫌な音が壁の中に走ったのを、確かに耳にした。
「……あの、オウレル君?」
「……え、っと」
困ったように眉を潜めるオウレルの端正な顔立ち、その手元では、彼の使っていた大きめの金槌が……見事に壁に突き刺さっていた。
ヴァルターは慌てて、腰に下げた鞄から地図を取り出す。
壁の向こうに何があるのか。こちらの壁の向こうには……何もない。
しかしオウレルが何故か釘を打っていた壁の向こうには、
「廃水の合流管……」
さらにびしりびしりと、立て続けに嫌な音が響く。
恐らく、オウレルの一撃が何かにトドメを刺してしまったのだろうなどと嫌な想像を膨らませながら、
「ご……ごめん」
「たぶん、謝ってる場合じゃねえと思うなぁ……急いで直せぇっ!」
ヴァルターは荷車を必死に転がし、オウレルは虚ろにそれを見つめる。
そして、俄に慌てる一行に追い打ちをかけるように、汚染物質の臭いを嗅ぎつけた歪虚の群れまでもがどこからともなくずりずりがさがさとこちらへ向かってきているのだった。
解説
・概要
壁の破壊を狙う歪虚から、修繕作業で手を離せない第二師団員を守りつつ時間を稼げ。
・敵
スライム型歪虚や、それを食べたり食べられたりした虫やネズミ型歪虚など小さな歪虚の群れです。
数は非常に多いですが、単体では全く驚異ではありません。
壁や天井を這い回る個体もいます。
それらの目的は、壁の向こうに流れる汚染物質です。
・場所
直径が五メートルほどの円筒形の排水管です。
壁に沿って左右に幅一メートルほどの作業用通路が伸び、中央には排水が流れています。水の量は多くありません。
・ヴァルター&オウレル
頑張って直しています。
・補足
悪い条件が重なってしまうと、何かが起こります。
それはあまり良いことではなく、起こってしまうと第二師団員の二人は上から存分にお叱りを受けることでしょう。
壁の破壊を狙う歪虚から、修繕作業で手を離せない第二師団員を守りつつ時間を稼げ。
・敵
スライム型歪虚や、それを食べたり食べられたりした虫やネズミ型歪虚など小さな歪虚の群れです。
数は非常に多いですが、単体では全く驚異ではありません。
壁や天井を這い回る個体もいます。
それらの目的は、壁の向こうに流れる汚染物質です。
・場所
直径が五メートルほどの円筒形の排水管です。
壁に沿って左右に幅一メートルほどの作業用通路が伸び、中央には排水が流れています。水の量は多くありません。
・ヴァルター&オウレル
頑張って直しています。
・補足
悪い条件が重なってしまうと、何かが起こります。
それはあまり良いことではなく、起こってしまうと第二師団員の二人は上から存分にお叱りを受けることでしょう。
マスターより
お久しぶりなT谷です。
今回は【AN】連動ということで、たまには下水に潜ってみたくなりました。
今回は【AN】連動ということで、たまには下水に潜ってみたくなりました。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/06/03 22:32
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ニオ・イフェチ(ka3227) 人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/05/26 20:11:33 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/24 08:41:22 |